「三好長官、たまには骨休みをしませんか?」
「骨休み?」
「はい。箱根の湯にでも行きませんか?」
横須賀鎮守府に停泊する空母『加賀』の長官室で嶋野は将和はそう言う。
「んー……しかしなぁ……」
「第一機動部隊も暫くは内地での訓練ですし、楠木さんと山口中将の第二機動部隊がトラック諸島で睨みますし……」
悩む将和に嶋野はおずおずとそう言う。そこへ援護射撃として宇垣も口を開いた。
「別に良いじゃないか? 長官は今まで働き過ぎていたし3日や5日程度は垢落としを兼ねて行ったら良いじゃないか」
「んー確かにな……」
「此方も大丈夫ですよ。一週間はいなくても問題無いですし」
それでも悩む将和に更なる援護射撃として航空参謀の内藤大佐が口を開く。将和も内藤がそう言うならと思い休む事にした。
「よし、じゃあ明日から一週間くらい休暇だ」
「分かりました。手続きをしておきます」
そう言う嶋野だった。そして翌日、将和は汽車→箱根鉄道鉄道線を通して箱根湯本駅に降り立つのである……が、何故か駅前には嶋野や五十子、それに宇垣に小澤等もいたのである。
「……どゆこと?」
「全員休暇という事ですわ。米内先輩から細やかなプレゼントのようです」
嶋野はそう言うが真っ赤な嘘であった。というのもこれは嶋野達が思案した将和の為の『強制休暇作戦。いけるところまでいこうぜ』であった。なお、作戦名の命名者は長谷川である。
「まぁこの私の家が保有する温泉旅館がありますのでそちらにしましょう」
「………何か嵌められた気分だがまぁいいか」
将和はライカを仕舞いつつ(鉄道の車輌を撮影していた)用意された車に乗りつつ旅館に向かうのである。
「……狭くないか?」
「用意出来るのがこれしかありませんでしたの(クッ、まさかジャンケンで負けるとは……)」
(むぅ~)
「……まぁ良いじゃないか三好長官(み、み、三好長官が思いっきり近い……)」
「それもそうだな(あー……こりゃやべ。意識すると顔が赤くなる……)」
ジャンケンで勝利した小澤と宇垣は顔が赤くなるのを意識しつつも役得と思い旅館に到着するまで将和の左右を陣取るのである。到着後、将和は荷物を置きつつ仲居に温泉の事を聞く。
「もう入れます?」
「はい、入れますよ。効能は腰痛や肩こり等です。後は……」
「後は?」
「……子沢山でも有名なんです」
「………………」
仲居からの何かを感じる視線に将和は無言で逸らしてそそくさと温泉に入るのである。
「ふはぁ~………………」
ほぼほぼ貸し切りではある温泉に将和一人で入っていた。
「いい湯だな、ハハン。いい湯だな、ハハンっと」
数十年後に聞かれるであろう歌の一部を口ずさみながら将和は肩まで湯に浸かる。10分くらい浸かっていると入口からカラカラと引戸を開ける音がして振り返るとそこには白いタオルに身を包んだ嶋野達が入ってきたのである。
「……何してんの?」
「見ての通りの入浴ですわ」
「……此処は男風呂だが?」
「混浴ですわ」
「ア,ハイ」
チャポンと嶋野はそう言いながらゆっくりと足から湯に浸かりススッと将和の隣に腰を据える。
「あ、嶋野さん狡いぞ」
「勝負は電撃戦とも言いますわ」
「じゃあ私は隣ね」
「長官……!?」
「……俺は此処で」
「……宇垣さん、後ろとは考えますわね」
「……………………」
そして残った小澤は将和の正面にポスッと座り腰を卸すのである。
(……何だこの状況は……)
流石の将和も予想はしていなかった光景である。
(いや……確かに夕夏達に何度かしてもらったけども……)
否、やはり変態野郎である。(自分で作っておいてそれかね)
「……んで? 今回の温泉は君らの差し金か?」
「大元は五十子さんですわ。長官に休みを取らせたいと……」
「そうだねー。それで温泉と思い付いたのは夕華ちゃんと宇垣ちゃんかな」
「そして引き継ぎとか色々やったのは小澤だな」
「色々と大変だったな」
「そうか……済まなかったな……」
将和は御礼とばかりに四人の頭を順番に撫でると四人は嬉しそうにする。
「ん"ん"っ。それでですわね……」
「ん?」
「そろそろ……選ぶべきじゃないかと思いますの」
「ッ……嶋野、それは……」
「分かってますわ。貴方にも愛しい人々がいる事を……。でも貴方とは今、別になっています」
「…………………」
「その人達に勝ちたいとは言いませんわ。でも私達は貴方を支えたい。それに関しては負けるつもりも譲るつもりも微塵もありませんわ」
『………………………』
嶋野の言葉に五十子ら三人は頷く。その様子に将和は息を吐いて上に目を向ける。温泉の湯気とモクモクと上がり月が煌めく夜空にアートを描いている。
その夜空に夕夏、タチアナ、シャーリー、美鈴の四人の顔が浮かんでは消えていく。その四人の顔はどれも笑っていた。
(……許してくれるのか……?)
『なーに、言ってるのよ。マサカズのは何時もの事だろ』
『貴方のおかげで私は生きていられるの。それはとても幸運な事なのよ』
『四人なら大丈夫ですよ。此方の三人は私に任せて下さい!!』
『貴方……子は少なくとも三人ずつね♪』
……何かそんな幻聴が聞こえた将和であった。取り敢えずは四人からの許可?を貰えた将和だった。そして最初に……五十子に視線を向けた。
「五十子」
「はい? ふぇっ、んっ…ちゅるっ……ちゅるるっじゅる……」
「宇垣、いや束」
「お、おぅ。……じゅるっちゅるるっ……ちゅる……」
「小澤、いや智里」
「ん。……ちゅるっ…ちゅるるっ…ちゅるる…じゅるっじゅる……」
「……嶋野、いや夕華」
「はい……じゅるるっじゅるっちゅるる……んちゅっ……」
将和は四人にキス(DですよD)を順番にする。そして終わるとゆっくりと口を開いた。
「……俺は誰を選ぶとかは出来ん。優柔不断な男だからな。だから……だから俺は四人を選ぶ。それでも良いかな?」
『はいッ!!』
将和の言葉に四人は嬉しそうに頷き将和に抱きつくのであった。そして場所は代わり横須賀鎮守府。
「あの四人とねぇ……まぁその節はあったわな」
「長谷川長官もですか?」
「あたぼうよ。俺は将和の同期だぞ? アイツの周りにいると女が寄ってくるのは同期じゃ俺くらいだし後知ってるとしたら『三好飛行隊』の面々だろうな」
「……まぁ『三好飛行隊』でしたら吉良中将らがいますからね……」
長谷川と内藤は互いにお茶を飲みながらそう話していた。
「それはそうと……パイロットの養成はどうなんだ?」
「順調には進んでいますね。何せ50航戦に一時的にとはいえ正規空母を編入させていますし」
練習航空戦隊である50航戦には空母『鳳翔』『龍鳳』の他にも二航戦の『蒼龍』『飛龍』に五航戦『翔鶴』『瑞鶴』の四隻を編入させてパイロットの育成に従事させていた程であった。
「まぁ正規空母四隻ならパイロットも大量に育成は可能だろうな」
「えぇ。それに教官には各飛行隊のパイロットや長官の三男もいますから」
「……ん? 将斉も此方にいたのか?」
「昭和18年の暮れから佐世保軍病院で入院していたんですよ。リハビリも漸く終わったのでパイロットに復帰するとの事です」
「そうか……まぁアイツもいるなら問題無いか」
「そうですね」
二人はそう言ってお茶を楽しむのである。そして場所はまた箱根の某温泉旅館に戻っての翌朝、将和はいつもの習慣で0550に起床した。
「ん……」
隣左右を見渡せば全裸で寝ている五十子ら四人がまだスヤスヤと寝ていたのである。
(……二度寝もたまには良いか……)
そう思い、二度寝に入る将和であった。
今まで夕夏の三男はいるのに劇中で語られる事はなかった三男が上手くいけば次話から登場します。
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