「……臭うな……空母がいるぞ」
4月16日、真珠湾北方沖約450キロの海域、そこには山口機動艦隊が真珠湾に向けて航行していた。その前方約60海里には将和の主力艦隊も航行している。
「空母が……? だが情報では……」
「いや数隻はいるだろう。だが、この感覚……予定より多くはいるぞ」
「山口中将……ッ!?」
「小澤参謀長、直ちに彩雲を三好長官に出してくれ。内容はーー」
「ほぅ……多聞丸もそう認識しているか」
「という事は長官もですの……?」
「あぁ……どうも上手く事が良すぎている……そして山口からの連絡だ。点と点が線で繋がったよ」
嶋野の言葉に将和は苦笑しながら頭を掻いて略帽を被り直す。そして嶋野に視線を向けた。
「彩雲を帰す際、山口宛の通信筒を同封させてくれ」
「は、内容は何と?」
「……委細承知。航空戦に関しては山口、貴様に任せる。思いっきりやれ……とな」
「ハッ」
将和の指示に嶋野は敬礼で返して直ちに通信筒を携えた彩雲が山口機動艦隊に帰還するのである。そして日本時間の4月18日0300、両艦隊は真珠湾北方沖約250キロの海域まで進出し0530、山口機動艦隊の各飛行甲板で待機していた第一次攻撃隊は発艦を開始するのである。
『総飛行機、発動!! 総飛行機、発動!!』
「第一次攻撃隊、発艦せよ!!」
『帽振れェッ!!』
山口中将の号令の下、第一次攻撃隊は発艦を開始するのである。『加賀』制空隊一番機の新郷英美少佐はチョークを整備員が払い除けるとブレーキを離すと烈風改はスルスルと発艦していく。それを手透きの整備員達は帽振れで見送る。
「さて……行くかな」
『加賀』制空隊に属する将斉は自身の番になるとブレーキを離して発艦する。その動作は手慣れたモノであり後方で発艦を見ていた淵田は感心をする。
「お、将斉はんも出たな」
淵田は発艦していく攻撃隊を見つつ彩雲の偵察席に座る。淵田機は総隊長であるが故に彩雲を宛がわれ全体の掌握をする事にしていたのだ。
「隊長、行きますよ」
「よし、頼むわ」
操縦士の松崎大尉の言葉に淵田は頷き淵田機は発艦を開始し大空へと舞うのであった。
第一次攻撃隊
総隊長 淵田未央中佐
制空隊 新郷英美少佐
烈風改 117機
『加賀』18機
『雲龍』9機
『赤城』9機
『土佐』9機
『翔鶴』9機
『瑞鶴』9機
『鳳鶴』27機
『黒姫』18機機
艦爆隊 高橋覚音少佐
彗星 117機
『加賀』18機
『雲龍』9機
『赤城』18機
『土佐』18機
『翔鶴』27機
『瑞鶴』27機
艦攻隊 三好将弘少佐
天山 108機(『翔鶴』以降は800キロ爆弾搭載)
『加賀』18機
『雲龍』9機
『赤城』18機
『土佐』18機
『翔鶴』18機
『瑞鶴』18機
『鳳鶴』9機
偵察隊 淵田未央中佐
彩雲 12機
『加賀』6機
『雲龍』3機
『赤城』3機
以上の第一次攻撃隊354機であった。ただし、『雲龍』の彩雲3機は超低空飛行で先行していた。そして第一次攻撃隊が発艦すると山口中将は直ぐに第二次攻撃隊の準備を行わせ、準備完了すると直ちに第二次攻撃隊を発艦させるのであった。
この日、セシリアは嫌な予感を覚えていた。この日は朝から陸軍の高官と茶会の約束であった。しかし、セシリアは胸騒ぎがして茶会をキャンセルして太平洋艦隊司令部に朝早くから来ていた。
そこへ通信兵が走り込んできた。
「た、対空レーダーが……」
「敵が来たの!?」
「ふ、不明です。ですがレーダーが……全レーダーが使用不能です!?」
「な……に……?」
仕掛けたのは先行していた彩雲3機だった。彩雲3機は超低空飛行でカフク岬に到達するとそのまま急上昇、高度8000で胴体下に搭載していた大量の電探欺瞞紙のアルミ箔入り燃料タンクを投下した。
投下された燃料タンクは途中でパカリと二つに割れて中から電探欺瞞紙のアルミ箔が空中で散布された。
「レーダーが真っ白です!?」
「クッ、やられた……」
レーダー員達は真っ白になったレーダー画面を見ながら舌打ちをする。こうなってはどうしようもなかった。
「兎に角戦闘機を全て上げるのです!! 1機も多く上げるのです!!」
オアフ島の各航空基地から陸海の戦闘機が慌てて離陸していく。だが時既に遅しであった。既に第一次攻撃隊はオアフ島上空に侵入していたのである。
「見えたで、真珠湾や!!」
淵田は約一年と少しぶりの真珠湾を見出だした。あの時と何も変わらないフォード島、そして停泊するヴィンランド海軍の艦艇があった。だが、双眼鏡を覗いていた淵田は舌打ちをした。
「アカン、空母が1隻しかおらんで!?」
この時、真珠湾にはたまたま整備のために入港していた空母『イントレピッド』しかいなかった。肝心の空母は真珠湾南方で訓練中だったのだ。
「クソ、しかも敵戦闘機も多いわなッ!?」
真珠湾上空には最新鋭のF6FやP-47が多数飛行していた。そして淵田の隣をスッと将斉の烈風改が飛んできた。
『淵田隊長……』
「何や将斉はん?」
『……別に全機落としても構わんのでしょう?』
「……ハハッ、ハハハッ!! その通りやで!! 全機落としてまえや!!」
『了解!!』
『あ、三好中尉!? たくもう、制空隊全機は突撃、攻撃隊を守れ!!』
先に抜け出した将斉機に新郷少佐は悪態をつくも直ぐに突撃を発令させ制空隊は突撃するのである。
「まずは……1機目!!」
将斉は反航からのF6Fの射撃を横滑りで回避しつつ98式射爆照準器を覗きながら発射レバーを引く。一連射、僅か一連射でF6Fは吹き飛んだ。将斉は後方を確認しつつ離脱し縦旋回宙返りをしつつ他の敵戦闘機を探すのである。そして攻撃隊は所定の位置につき、攻撃を開始しる。
「地上で大人しく眠ってなさい!!」
艦爆隊隊長の高橋少佐は中隊を率いて急降下をしホイラー飛行場の駐機場に駐機していたP-40の列に500キロ爆弾を叩き込むのである。高橋隊の攻撃によりホイラー飛行場は瞬く間に前回と同じく壊滅するのである。
そして将弘の中隊は停泊から出航しようとしていた空母『イントレピッド』を照準した。
「攻撃目標、前方の空母!!」
『イントレピッド』は既に数機の彗星により急降下爆撃で飛行甲板が被弾炎上していた。それでも機関は破壊される事なく全速力で水道に抜けようとしていたのだ。
「用意……」
将弘は咄嗟に高度を5メートルから3メートルまで下げた。その直後に対空砲火が中隊を襲い瞬く間に4機が撃墜された。それでも将弘は怯まなかった。
「撃ェッ!!」
91式航空魚雷改四が投下され安定器も機能発揮し直ぐに浮き上がる。5本の魚雷は2本が外れるも3本が『イントレピッド』の左舷に突き刺さったのである。水柱を噴き上げた『イントレピッド』は瞬く間に傾斜していきあっという間に飛行甲板は波に晒され水道手前で擱座したのである。
「うーん、流石に二匹目の泥鰌は無理だったか」
真珠湾封鎖を目論んでいた将弘だったがどうせ占領したウチが使用するのでまぁ良いかと思うのである。その光景をセシリアは太平洋艦隊司令部から眺めていた。
「……これがキンメルが味わった屈辱なのですね……」
「長官……」
「それでスプルアンスとハルゼイとの連絡は付きましたか?」
「はい、既に両艦隊とも北上してアドミラル・ミヨシの機動艦隊を捜索するとの事です」
(……果たしてこの攻撃はアドミラル・ミヨシのものなのでしょうか……)
セシリアは攻撃が単純明確過ぎてむしろ疑心暗鬼に陥っていた。だが、その思考も急降下してくる彗星に消し去れてしまう。
「敵急降下!! 直上ォ!!」
「なッ……」
彗星が投下した500キロ爆弾は司令部付近に着弾、その爆風はセシリア達に襲い掛かったのであった。
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