『三好in山本五十子の決断』   作:零戦

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第二十一話 星一号作戦 中編その1

 

 

 

 

 

 

 

 

「淵田機よりの電文を傍受しましたわ」

「内容は……?」

「『トキ・トキ・トキ』『我、強襲』ですわ」

「……だろうな。二匹目の泥鰌は狙えんよ……」

 

 嶋野の言葉に将和は苦笑しながら略帽を脱いで頭を掻いて再度被り直す。

 

「……山口に打電。平文で構わん、『我、カウアイ海峡ニ突入ス』」

「……カウアイ海峡ですの?」

「……成る程。そういう事か」

 

 首を傾げる嶋野に宇垣は合点がいってニヤリと笑う。将和もニヤリと笑いつつ指揮棒でカウアイ海峡をトントンと叩く。

 

「真珠湾の北方には我々しかいなかった。真珠湾も空だった……となると奴等は南方に展開していたのだろう。我々の動きを読んでいたかたまたまかは分からないが……やはりセシリア・ニミッツ……やり手だな」

「ですがカウアイ海峡を目指すには合点が……」

「カウアイ海峡を目指すという事は敵に我々が真珠湾を占領すると明確に分からせるという事だ。オアフ島の北方は上陸出来るポイントが少ない。一気に上陸して占領するならホノルル方面からの上陸しかない……という事だ。そして……」

「そして?」

「……葦原海軍の大艦巨砲主義の概念だ」

「「…………………………」」

 

 将和の言葉に嶋野と宇垣は何も言えなかった。葦原海軍の大艦巨砲主義はやはり史実日本海軍と同じく心酔していた。

 

「……我々の日本海軍はww1でのユトランド沖海戦等の参加していた事である程度の払拭はされていた……トラック諸島沖海戦、そしてマリアナ沖大海戦が『大和』型を活かせる事が出来た」

「……ではどのように?」

「いや、だからこそだ。だからこそ、葦原海軍はここいらでキチンとした艦隊決戦を行う必要がある」

「だからカウアイ海峡へ……」

 

 宇垣の言葉に将和は無言で頷くのであった。その頃、ハルゼイの主力艦隊はカウアイ海峡へ急行中だった。

 

「スプルアンスの読みが当たったな。カウアイ海峡で奴等を待ち構えるぞ!!」

『けど見込みですよ、我々の艦隊と合流するまで待って下さい!!』

 

 ハルゼイは隊内電話でスプルアンスと話していた。スプルアンスは合流を主張するがハルゼイは見敵必殺を主張する。

 

「心配するなレナ、奴等の猿戦艦ではこの主力艦隊には勝てないさ」

『ちょ、フレン……』

 

 ハルゼイはそう言って隊内電話を切る。切られたスプルアンスは舌打ちをする。

 

「クッ、フレンダめ……マリィ。カウアイ海峡に偵察機を送りなさい」

「サーイエッサー!!」

 

 だが、スプルアンスの機動部隊も後程彩雲に発見されてしまうのである。そして将和の艦隊、ハルゼイの艦隊は元よりとある海域では……。

 

「……まさかこうしてもう1隻の『大和』型と出会えるなんてね……」

「事実は小説より奇なり……ですね」

 

 攻略部隊を率いる旗艦『大和』の艦橋で五十子と渡辺船務参謀らは前方に遠ざかる『とある艦隊』を見送っていた。

 

「人の執念……いや、八百万の神々の気まぐれな遊び……かな?」

「かもしれませんね……」

「……ヨシ、じゃあ此方も任務を遂行しよっか」

「ハッ、経路はこのまま真珠湾へ」

 

 

 

 

 

「航海参謀、カウアイ海峡への到着時間は?」

「概ね28ノットで1235にはドンピシャリで到着します」

「ウム。艦隊決戦の参加は我が海軍の伝統だ」

 

 

 

 

 

 そして18日1135、将和とハルゼイの両艦隊はカウアイ海峡に到着し両艦隊は互いの艦隊を視認する。

 

「『Iowa』級2、『サウスダコタ』級4、『ノースカロライナ』級2の8隻だな」

「……対して此方の41サンチ砲搭載艦は『長門』『河内』『因幡』の3隻しかいないが……まぁ構わんさ」

「照準は敵先頭艦に合わせるぞ」

「それで頼む」

 

 艦隊は『長門』を先頭に単縦陣に移行する。それはハルゼイの主力艦隊も同様であった。砲身が左舷へ旋回する。

 

「距離は?」

「3万8000!!」

「……同航戦しかないな。流石の取舵丁字ターンは無理か……」

「ですわね……」

「距離3万6000で砲撃開始する。それまでは耐えるしかあるまい」

『敵艦発砲!!』

 

 見張り員からの報告が入る。将和が双眼鏡でハルゼイの主力艦隊を覗くと砲撃の合図である砲煙が撒き散らしていた。そして砲弾の落下音と共に艦隊手前で水柱が大量に噴き上げる。

 

「遠……次も遠か。三斉射目辺りで近かな」

「だろうな……対して此方はまだ撃てない……」

 

 二斉射目も遠、三斉射目で至近を叩き出したヴィンランド主力艦隊である。しかも砲弾はどれも先頭の『長門』を狙っていたのである。

 

「『長門』は人気者だな。まるで宝塚だ」

 

 クックックと将和は笑うがその時、『長門』は揺れた。遂に被弾したのである。

 

「報告!! 水上機発艦用カタパルトに被弾!! カタパルトは消し飛びました!! なお、被害は軽微!!」

「だろうな。水上機は全て上に上げている……距離は?」

「3万7000!!」

 

 その時、ヴィンランド主力艦隊は第五斉射目を発砲した。第五斉射目ーー『サウスダコタ』が放った砲弾は『長門』の二番砲塔に命中した。しかし、降り注いだ砲弾の角度が浅かった事もあり跳弾となって何処かへ飛んだのである。

 

「今の距離は?」

「3万6000!!」

「……ヨシ、全艦砲撃開始ィィィ!!」

「撃ち方始めェッ!!」

 

 遂に『長門』以下の41サンチ砲搭載艦が砲撃を開始した。それを双眼鏡で見ていたハルゼイは叫ぶ。

 

「猿どもが反撃を始めたぞ!! 今すぐに砲弾が降ってくるぞ、回避運動ォ!!」

「イエッサー!!」

 

 『長門』らが放った41サンチ砲弾は先頭を往く『ニュージャージー』の周囲に落下し水柱を噴き上げた。

 

「……馬鹿な!? 初弾から夾叉だと!?」

 

 ハルゼイは周囲の水柱を見つつ思わず叫ぶ。奴等の射程距離内に入っているとは認識していた。だがまさか、初弾から夾叉になるとはハルゼイ自身も思ってもみなかったのだ。

 

「敵艦隊、第二斉射目発砲!!」

「チィッ!?」

 

 ハルゼイは舌打ちをする。そして第二斉射目は『ニュージャージー』の右舷両用砲塔の2基を吹き飛ばし2基が旋回不能となって使用不能となる。

 

「右舷両用砲塔群被弾!? 現在消火活動中!!」

「……やってくれたな猿ども!? 全艦照準を『ナガト』に合わせろ!! 猿どもにメイドインヴィンランドの砲弾を叩き込め!!」

 

 『ニュージャージー』以下は再度照準を合わせて砲撃する。72発の40.6サンチ砲弾が『長門』の周囲に着弾する。

 

「キャッ!?」

「おっと、大丈夫か嶋野?」

「は、はい。ありがとうございますわ……」

「艦隊決戦の最中にイチャつくな!! 俺も抱き抱えてほしい!!」

 

 転びそうになった嶋野を咄嗟に将和が受け止めて大事には至らなかった。そして抱き抱えられた嶋野は顔を赤く染める。なお、それを宇垣がツッコミを入れるのである。

 

「四番砲塔被弾!! 砲塔員全員戦死!!」

「左舷副砲群にも被害が及んでいます!!」

「兵員区に火災発生!!」

「落ち着け!! 応急長は適切に対処しろ!! 良いか、戦艦が『長門』が簡単に沈むか!!」

『オオオォォォォォォ!!』

 

 将和の怒号に乗員は雄叫びで答え、『長門』も二番砲塔の砲撃によって答えるのである。そして他の戦艦達も将和の意志に答えようとしていた。

 

「『扶桑』『山城』が取舵!! 敵艦隊に進路を取ります!!」

「馬鹿どもが!! まだ早い!!」

 

 突撃を選択した2隻に将和は罵倒する。2隻では砲撃しつつ距離を詰めてようとしていた。

 

「罐室、もっと速力を上げて!! 敵に肉迫よ!!」

『艦長、これが一杯一杯です!!』

 

 『山城』艦長の早川美喜子大佐の言葉に機関長がそう答える。そうしながらも2隻は『ノースカロライナ』『ワシントン』を砲撃するが砲弾は弾いてしまう。

 

「アハハハ!! そんなヒョロヒョロ砲弾なんか効かないわ!! 砲手、焦る事はないからよく狙いなさい!! どうせ敵の砲弾は効きやしないわ!!」

 

 御返しとばかりに『ノースカロライナ』と『ワシントン』が砲撃して2隻が被弾炎上する。

 

「2隻に後退命令!! 後退後は単縦陣に従えと厳命しておけ」

「分かりましたわ」

「さて……」

 

 将和は再度、敵艦隊先頭の『ニュージャージー』を見る。『ニュージャージー』も炎上していたが致命傷にはなっていないのは明白だった。だからこそ将和の次の矢を放つ事を決断させた。

 

「……三戦隊及び五戦隊に下命!! 各戦隊は突撃し二水戦の切り開く道を支援せよ!!」

「ハッ!!」

 

 発光信号を傍受した三戦隊旗艦『河内』の艦橋で三戦隊司令官の中瀬少将はニヤリと笑う。

 

「長官め……水雷戦隊に賭けてみるのか、面白い。『因幡』に信号、我に続け。砲撃目標を戦艦から巡洋艦に切り換える!! 此処が正念場だぞ!!」

 

 『河内』は照準を戦艦『サウスダコタ』から甲巡『ミネアポリス』に切り替えて砲撃をする。照準を切り換えられた『ミネアポリス』は距離が2万7000とあったものの僅か二斉射で轟沈するのである。

 

「ファック!! 奴等め、巡洋艦に狙いを……そうか!! 奴等、突撃してくるぞ!! 巡洋艦隊は全力で対処しろ!!」

 

 将和の狙いを読んだハルゼイは巡洋艦隊を差し向けるが相手は41サンチ砲搭載艦の『河内』と『因幡』も含まれていたのだ。それでも巡洋艦隊はハルゼイの命令を忠実に守り突撃を阻止しようとする。

 

「フム……やるな……」

 

 思わず将和も感心してしまうが『長門』は集中砲撃を受けている。既に6発が命中し一番、四番砲塔は使用不能だった。だがそれでも『長門』は『ニュージャージー』に負けじと撃ち返して命中弾を叩き出している。

 

「敵も……苦しい……」

 

 己に言い聞かせるように将和が呟くのを宇垣は聞き逃さなかった。直後、『長門』が揺れる。被弾したのだ、今度の被弾は大分近かった。

 

「艦橋後部に命中弾!! されど不発でそのまま海面に飛び込んだ!!」

「……命拾いしたか……」

「更に報告!! 三番砲塔被弾炎上!! 後部弾薬庫に火災が迫る勢いです!!」

「後部弾薬庫はそのまま注水しろ!! どうせ使えん!!」

「ハッ!!」

「敵も苦しい……そうだろ?」

 

 宇垣の呟きは誰にも聞こえなかった。そしてハルゼイは照準を『長門』にさせつつも旧式艦艇である『扶桑』『山城』『伊勢』らをも優先させた。

 

「砲数は奴等のが多い。なるべく叩け!!」

 

 ハルゼイの命令を受けた『インディアナ』『アラバマ』『マサチューセッツ』『サウスダコタ』の4隻は『扶桑』ら5隻に砲撃を集中させる。

 

「1万まで詰めるのよ!! 1万まで肉迫すれば35.6サンチ砲でも威力は倍加する!! 刺し違えてでも沈めるのよ!!」

 

 『山城』艦長の早川大佐は叫ぶ。状況を見た将和は『伊勢』『日向』『志摩』の3隻を差し向けるも状況は好転せず『扶桑』に5発が命中、『扶桑』は爆発が続いた。

 

「『扶桑』が!?」

 

 『扶桑』は一際大きい爆発をするとその特徴的だった艦橋が左舷に横倒しになって海面に落下、その直後に弾薬庫が引火し『扶桑』は轟沈したのである。

 

「『扶桑』轟沈!?」

「クッ、何をしている!! 早く『ニュージャージー』級を片付けないか!!」

 

 『扶桑』轟沈の報に宇垣も思わず叱咤してしまう。が、その間にも『山城』『日向』『志摩』は炎上する。『伊勢』は三好世界ので防御の改装していたおかげか、3隻に比べてまだそこまでの炎上はしていなかった。

 

「『山城』速力低下!! 戦列を離れる!!」

「畜生!!」

 

 後方を見ていた宇垣が壁を叩く。炎上する『山城』は被弾を避けようと単縦陣から徐々に離れていっていた。

 

「……………………」

「長官……」

 

 将和は腕を組み先頭の『ニュージャージー』を直視していた。その様子に嶋野は何も言えなかった。

 

「ウァハハハハハ!! 良いわよ良いわよ!! そぉれ一気に葬るのよ!!」

 

 『インディアナ』艦長は笑う。その時であった。別の砲声が戦場に響いたのである。

 

「何!?」

 

 ヒュルルル……と落下の直後に戦艦『マサチューセッツ』の艦橋に一発の徹甲弾がめり込んで爆発、『マサチューセッツ』は瞬く間に大破したのである。

 

『ッ!?』

 

 両艦隊は突然の出来事に唖然とする。だが、将和は大破した『マサチューセッツ』の艦橋を見て舌打ちした。

 

「まさか……五十子の奴来たのか!?」

「馬鹿な、まだ距離は離れている筈だぞ!!」

『六時の方向から新たなる戦艦出現しました!! 超弩級です!!』

「何!?」

「あ、長官!?」

 

 将和はそのまま防空指揮所へと駆け上がる。それに続いて嶋野と宇垣も後を追って駆け上がる。防空指揮所へと辿り着くとそのまま六時の方向に双眼鏡を覗く。

 確かにそこには数隻の戦艦が徐々に水平線から上がっていた。

 

「あれは……『大和』ですわ!?」

「山本長官が!?」

「『大和』だ!?」

「『大和』が来てくれた!!」

 

 嶋野の言葉に宇垣達は表情をくしゃくしゃにするがそれを遮ったのは将和だった。

 

「違う!! あれは『大和』じゃない!! あれは……ッ!?」

「あ、長官!?」

 

 そう言って将和は再び昼戦艦橋に降りていき慌てて隊内電話の受話器を取る。

 

「六時の方向にいる戦艦に電話だ、急げ!!」

 

 待つ中、将和は思い出す。あれは『大和』じゃない。『大和』なら副砲があるがあの戦艦は副砲が無かった……。あの戦艦はマリアナ沖大海戦で『大和』が沈んだ後に乗艦した………………程なくして相手が出てきた。

 

『……もし……?』

「此方、大日本帝国海軍第一戦隊戦艦『長門』だ!! そちらの艦は……」

『此方、大日本帝国海軍第一戦隊戦艦『出雲』です。その声は三好長官ですね、お久しぶりです』

「その声……やはり松田か!?」

『はい、松田です。お久しぶりです三好長官!?』

 

 相手は将和とマリアナ沖大海戦で戦った松田千秋中将だった。だが松田は転移時は横須賀にいた筈だった。

 

『詳しい話は後程……今は敵艦隊の殲滅です』

「ウム。頼むぞ」

 

 斯くして戦艦『出雲』以下の日本艦隊は艦隊決戦に参戦するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 




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