『三好in山本五十子の決断』   作:零戦

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第二十二話 星一号作戦 中編その2

 

 

 

 

 

「新たな敵艦隊だと!?」

「『ヤマト』級、新型『カワチ』級がそれぞれ1隻ずつの艦隊です」

 

 ハルゼイは新たなる敵艦隊ーー松田艦隊に顔を歪める。まだ沈没艦は出てないがどの艦も損傷しており沈没艦が出るのも時間の問題であった。

 

「ハルゼイ司令!! 此処はあえて撤退すべきじゃないかと思います!!」

 

 そう主張したのは参謀長のカーニー少将だった。カーニー少将の主張にハルゼイはジロリと睨む。

 

「撤退してどうする? オアフ島にはセシリアがいる。アイツは脱出しないぞ」

「そ、それは……」

「アタシはアイツが脱出するまでこの海域に留まる。司令部は頭脳だ、アイツがいないと司令部は機能しない!!」

 

 ハルゼイはそう言ってカーニー少将の撤退を取り下げ砲撃を続ける。その一方で将和は松田中将と隊内電話で話していた。

 

「これで数は8対5。だが数的有利は向こうにあるも此方は水雷もある」

『では少し、脅かしてやりますか?』

「大丈夫だ。その効果はもうすぐ出るさ」

『流石は長官ですな。ならば此方も水雷戦隊を突撃させますかな』

 

 松田中将は直ぐに日本艦隊第二水雷戦隊旗艦『矢矧』に信号を出した。

 

「『出雲』より信号!! 『二水戦ハ直チニ突撃セヨ』」

「よし、全艦突撃するぞ!!」

 

 日本艦隊第二水雷戦隊司令官の吉川少将は突撃を発令した。その発令を受け、マリアナ沖大海戦を生き残った各駆逐隊で構成された二水戦は突撃を開始する。

 

「敵水雷戦隊が突撃してきます!!」

「阻止しろ!!」

「ダメです、他の『カワチ』級の砲撃で損傷艦艇多数!! 阻止出来ません!!」

「クソッタレがァッ!?」

 

 そして将和の主力艦隊から突撃してきた二水戦も漸く囲みを突破する事に成功し『ニュージャージー』らに向かって突撃を開始する。

 

「魚雷戦用意!!」

「準備宜し!!」

「撃ェッ!!」

 

 各駆逐艦から61サンチ酸素魚雷が艦尾方面から1本ずつ発射していく。艦尾方面からだと扇状になるためより確実に敵艦を葬れるのである。酸素魚雷を発射した発射管は再度正面に旋回すると発射管後部の蓋が開く。

 魚雷発射管後方にある次発装填装置から次発の酸素魚雷が装填される。本来、いや駆逐隊は一度離脱すれば離脱中に再装填だった。だが主力艦隊二水戦司令官の田中少将はそれを嫌い、離脱中ではなく戦闘中での次発装填に踏み切ったのである。

 その前の戦闘で『荒潮』『大潮』『早潮』『夏潮』『時津風』『霰』の6隻が沈没又は損傷して離脱していたがそれでも残存の駆逐艦隊は必殺の酸素魚雷を発射しつつ次発装填を行いそのままの突撃をするのである。その光景を日本艦隊の第二水雷戦隊旗艦『矢矧』の艦橋で日本艦隊第二水雷戦隊司令官の吉川潔少将は苦笑していた。

 

「気合いを入れろよお前ら!! もう一つの世界の日本に二水戦の華を見せつけろ!!」

 

 『矢矧』は吉川の叱咤に答えるかのように15.5サンチ連装砲を撃ちまくり敵駆逐艦の穴を空けさせる事に成功する。

 

「今だ!? 突っ込めェッ!!」

 

 穴を空けた吉川はその隙に駆逐艦隊を突撃させた。突撃の道中で2隻が撃沈されるも14隻の駆逐艦は次々

酸素魚雷を発射したのである。

 

「りょ、両舷から雷撃が……ッ!?」

「クソッタレがァッ!?」

 

 カーニーからの報告にハルゼイは叫ぶ。そして次々とヴィンランド艦隊に水柱が吹き上がるのである。

 

「左舷に3発、右舷に2発が命中!! 傾斜はまだありませんが浸水が激しくダメコンに時間が掛かります!!」

「『インディアナ』左舷に5発が命中!! 傾斜が激しく総員退艦を発令中です!!」

「同じく『マサチューセッツ』右舷に4発が命中!! あっという間に波間に消えました!?」

 

 ヴィンランド艦隊は雷撃戦により戦艦『インディアナ』『マサチューセッツ』『ノースカロライナ』が撃沈される事になる。

 

「……ハルゼイ長官」

「……何だカーニー?」

「……サンディエゴへの撤退を具申します」

『………………………』

 

 カーニーの言葉に『Iowa』の艦橋は静まり返りハルゼイはカーニーを睨み付ける。

 

「本気かカーニー? まだオアフ島にはセシリアを筆頭に多数の仲間がいるんだぞ?」

「無論……それは承知して具申しています。此処で艦隊を喪失すればヴィンランド本国を守る艦隊は消えてしまいます」

「………………」

「私の具申が卑怯な事とは自覚しています。軍法会議でもやっても構いません。ですが、ハワイ諸島……艦隊とその乗員の命、どっちを取りますか?」

「……………………………………」

 

 ハルゼイはカーニーを睨み付ける。そんなカーニーは拳銃を出してハルゼイの胸元に押し付ける。

 

「殺しても構いません。全ては貴女に委ねます……ハルゼイ長官ッ」

『……………………………………』

 

 二人の動向を見守る乗員を他所にハルゼイは制帽を叩きつける。荒く吐く息を整え、叩きつけた制帽を拾いカーニーに視線を向ける。

 

「……艦隊は直ちに反転。サンディエゴに進路を取れ」

「サー・イエッサー!!」

 

 乗員達はハルゼイの決定に動き出す。そしてハルゼイは右拳を窓に叩きつける。

 

「……私は……負けたのか……」

「いえ、まだ負けたわけではありません!!」

 

 涙を流し身体を震わせるハルゼイにカーニーはそう言う。そのカーニーも涙を流していた。

 

「我々は与えられたのです。雪辱の機会を……」

「……畜生……畜生……済まねぇセシリア……」

「『Washington』『Iowa』再度反転します!!」

「何だと!?」

 

 ハルゼイが慌てて後方を見ると被弾炎上している『Washington』『Iowa』が艦を反転させて日本・葦原艦隊に砲撃を続行していた。その意図をハルゼイは直ぐに読んだ。

 

「あの馬鹿野郎ども!? 直ぐに戻れと伝えろ!!」

「2隻より発光信号!! 『我、囮トス。ヴィンランド海軍ニ栄光アレ』」

「…………………………………」

 

 ハルゼイは涙を流すしかなかった。結局、離脱に成功したのは『ニュージャージー』『South Dakota』の2隻を主力とした艦隊だった。そしてハルゼイらを逃がすために囮となった『Washington』と『Iowa』は砲撃を続けていた。だが、次第に2隻にも命中弾は出てほぼ大破した。

 

「……見事だな。艦隊を逃がすために敢えて残りそれでも俺達を食い破ろうとしている……」

「……如何なさいますか?」

「降伏勧告を送る。既に彼女達は義務を果たした。無駄に死ぬ事は許されんよ」

「分かりましたわ、直ちに降伏勧告を送ります」

 

 嶋野はそう答え、直ちに『長門』から発光信号で降伏勧告を送る。しかし2隻からは「艦が沈むまでは降伏しない」との返答だった。その返答に将和はキレた。

 

「馬鹿どもが!?」

「ヒッ!?」

 

 将和のキレ具合に嶋野はあの時のトラウマを思い出したのか身体を震わせる。そんな嶋野に済まないと内心は思いつつ通信兵に打電させる。

 

『貴官らは十分にその責務を果たした。この上は貴官らは国に五体満足で帰還し家族・両親・恋人に自身の姿を見せる事が責務である。家族・両親・恋人らを悲しませるな。再度勧告する、直ちに降伏せよ』

 

 平文で送信される程の事だった。電文を受け取った艦長の二人は先ほどの決心が揺らいでしまう。そこへ副長や応急長らが具申する。

 

「艦長……人命は何物にも代えがたいと思います」

「……そう……分かったわ。『Washington』に発光信号……降伏しましょう。我々のハルゼイ長官を逃がす事は成功したわ。胸を張って降伏しましょう」

 

 『Iowa』艦長はそう言って降伏を決断するのである。そして2隻は航行を停止すると消火活動をしながらも葦原とヴィンランドの国旗を掲げるのである。

 

「……よし、駆逐艦を数隻残して消火活動の支援に当たれ。『長門』と残存艦艇と日本艦隊は五十子の艦隊と合流して対地支援に移行する」

「プッ……了解した」

 

 大破して航行するのもやっとなのな『長門』なのに将和はまだやろうとしていて宇垣は思わず吹き出して了承するのであった。

 その後、主力艦隊は日本艦隊と合流し将和らは『出雲』に乗艦する。

 

「久しぶりだな松田」

「お久しぶりです長官」

「オイオイ泣くなよ」

 

 将和らを出迎えた松田は久しぶりに将和を見て涙を流す。

 

「スミマセン……ですが長官は元より九州地方が生きていて東條さんらもホッとしています」

「ん、それを聞きたいんだ……一体どうやって来たんだ?」

「……まだ何とも言えませんが……九州地方と同じ展開です。ただ、状況は違いますが……取り敢えずはコーヒーでも飲みながら話しましょう」

「ん」

 

 将和らは作戦室に案内されコーヒーを飲みながら松田の口から状況を語られるのであった。

 

 

 

 

 

 




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