『三好in山本五十子の決断』   作:零戦

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第二十三話 星一号作戦 後編

 

 

 

 

 

 

 

「………ッ……」

「気付きましたか」

 

 セシリアは瞼を開ける。どうやらあの爆撃から気絶していたようだ。起きようとしたがレイトン中佐がそれをいなした。

 

「まだ動かないで下さい」

「ですが……ッ!?」

 

 それでも起きようとしたセシリアだが両足に違和感があった。まさか……と思い毛布を捲る。

 

「……ヒッ……」

 

 セシリアは両膝から下が無い自分の両足を見て短い悲鳴を上げてしまう。

 

「……その……崩れてきた瓦礫に長官の足が……」

「……ふぅッ……ふぅッ……ふぅッ……分かりました。それは仕方ありません」

 

 セシリアは息を整えて落ち着く。

 

「それで状況は?」

「……ハルゼイ、スプルアンスの両艦隊は葦原艦隊との戦闘に敗北しました。現在はサンディエゴに向けて撤退中です」

「……正しい選択ですね。ならハワイは今? 葦原の軍が上陸していますか?」

「………長官が目覚める30分前にダイヤモンドヘッド岬の守備隊への艦砲射撃が開始されています」

 

 確かに時折地面が揺れる音がしていた。レイトンの言う通り葦原海軍が沖合いから艦砲射撃をしているのだろう。

 

「……葦原の艦砲射撃が終わり次第、平文にて葦原海軍に打電。降伏する旨を伝えなさい」

「し、しかし長官!? 我々はまだ戦えます!! 艦艇は無いにしろ、乗員は陸戦隊として陸軍と戦えます!!」

「このハワイ諸島には多数の民間人がいます。その民間人を守るためです。その民間人を巻き添えにしてまでやるのですか?」

「ッ……」

 

 セシリアの指摘にレイトンも口を噤んでしまう。確かにハワイ諸島には多数の民間人もおり内地から入植した者達もいる。無闇に戦闘をすれば民間人にも死傷が出るのは当然だろう。

 

「陸軍のエモンズ中将にも連絡しなさいレイトン、全責任は私が持ちます」

「……サー。直ちに……」

「……レイトン、我々にはまだ機会が与えられたのよ。胸を張りなさい」

「……はい」

 

 それから葦原・日本海軍の艦砲射撃は約二時間後に終了した。それに合わせるようにオアフ島は平文にてセシリア・ニミッツの名で降伏する旨を発信してきたのである。

 

「……賢明な判断だな」

「そのようですな」

 

 将和は宇垣と嶋野を伴い『出雲』に乗艦していた将和は松田と頷く。

 

「全艦砲撃停止。上陸船団はそのまま上陸予定地域に前進し上陸させよ」

「了解。山本長官にもそう伝えるぜ」

「では長官、そろそろ作戦室に参りますか。我々の詳しい事も話さなければなりませんからな」

「いや、五十子も来てからだな」

「成る程、分かりました」

 

 そして『大和』から五十子も来た事で将和らは作戦室に集まる。

 

「では説明しましょうか。始まりはやはり九州が入れ替わった事です」

「……やはり葦原の九州がそっちに行っていたのか」

「はい。当初は混乱しましたが……ソ連の満州侵攻もあったので多少力技もあったらしいですが同盟を結ぶという事に落ち着いて対ソ戦に当たり、何とか翌年の1946年9月2日には和平停戦という形で終了しました」

「……それでどの辺りで落ち着いた?」

「満州、半島は放棄。シベリア帝政も首都のウラジオストクが陥落しましたが亡命政府は無事です。後、樺太と千島列島は堅持しました」

「プアァァァフェクトだ松田」

「感謝の極み」

 

 何故かそんな芝居をする将和と松田である。なお、周りは二人の芝居に付いていけていなかった。

 

「そして漸く終わったと思った9月15日でした。今度は此方側に転移しました」

「フム……どれくらいだ?」

「全てです」

「……済まない。最近、耳掃除をしていなかったから聞こえなかった……どれくらいが来たんだ?」

「ですから全てです」

『…………………………………』

 

 松田の言葉に将和らは唖然とするしかなかった。

 

「簡単に……まぁ自分もあまり理解していませんけど……葦原と日本が合体してちょっと内地が広くなっているらしいんです」

「……土地も人も建物も転移したから広くなったと……?」

「今の段階では何とも……我々が出港する時も急遽、内地の測量を全力でやっていましたからね。今は全国規模で行っているので結果はまだ暫くは掛かりそうです」

「まぁそうなったら、そうだろうな」

 

 将和はそう納得しながらお茶を飲む。そして松田は思い出したかのように懐から一枚の手紙を出した。

 

「そうそう……長官、奥様からの手紙です」

『ッ』

 

 松田の言葉に五十子達に緊張が走るも将和は平然と手紙を受け取り中身を見る。

 

『取り敢えずは皆と一緒に帰ってきなさい。追伸、美鈴の子は元気に生まれました』

 

「……そうか……」

 

 文面は誰がとは聞かなくても分かる。薙刀を持つ嫁だろう、少し背筋がブルッと震える将和である。

 

「取り敢えずの現状は分かった。それで『星一号作戦』の続きだ」

 

 将和の言葉に全員が表情を変える。ハワイ諸島は一先ずは降伏を打診してきたので五十子もそれを受け入れる事にしたのだ。

 

「上陸部隊の状況は?」

「現在はオアフ島の軍港を掌握中だよ。上陸第二陣も上陸に成功しているしホノルル市街地での治安維持に移行しているかな」

「ん。なら軍港を掌握次第我々も上陸しようか。奴さんはホノルルの軍病院だったな?」

「うん。重傷だけど、私達と面会したいと言っているみたいだね」

「ん。ならそうしようか」

 

 五十子と将和は頷き、翌日0700には軍港に上陸した。その足で車両に乗り込んでホノルルの軍病院に向かうのである。

 

「どうぞ」

「失礼する」

 

 見舞い用の花(カーネーション)を用意してからノックをし、了承を得てから将和らは入る。部屋のベッドには将和らが来ると知らされていたのか女性がベッドから起き上がっていた。

 

「初めましてアドミラル・ヤマモト。私がヴィンランド海軍太平洋艦隊司令長官のセシリア・ニミッツです」

「うん、初めまして。私が葦原海軍連合艦隊司令長官の山本五十子です。そして此方が……」

「大日本帝国海軍第一機動艦隊司令長官の三好将和大将だ」

 

 将和はあえて元の官職で自己紹介をしセシリアに手を出す。だがセシリアは手を出さなかった。

 

「男……ですか……葦原……ですが大日本帝国とは……? ですが海を渡るには……」

「えぇ、まずはその点からの説明をしなければなりませんな」

 

 そして将和は語り出す。大日本帝国とは、そして将和の正体をだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「成る程……そういう事でしたのね。通りで葦原が強くなったと思ったら……まぁ神……はいるのかもしれないけども神も不公平ですわね。我がヴィンランドには手を差し伸べてはくれないのですからね」

 

 将和の説明(タップリと三時間)を聞いたセシリアは苦笑しながら頷く。だが将和は首を横に振る。

 

「そんな事はない。神はヴィンランドにも手を差し伸べている」

「フム……それは何でしょう?」

「……我々、大日本帝国が捕虜としているアメリカ軍人達です。彼らも世界は違えどヴィンランドと同じ故郷を持つ者達だ。彼等をヴィンランドに引き渡しても良い」

「それはッ!?」

 

 将和の言葉にセシリアはハッとする。話では将和の世界は男が海に入ってもラ・メール症状に掛かる事はなく生存している。そしてアメリカ軍人もそうである。ならば……。

 

「彼等と子を成せばラ・メール症状に耐性を持つ子が生まれる可能性がある……」

「あくまでも推測に過ぎないがね。それに我が大日本帝国軍は各地で捕虜にした各国の軍人が収容所で暮らしていたからな。場合によっては主要国の捕虜もいる」

「……それは……ッ」

「そう、場合によっては戦争終結になるやもしれん……という事だな」

 

 驚くセシリアに将和はニヤリと笑みを浮かべる。セシリアはふぅと溜め息を吐く。

 

「成る程……となるとそれを知った私をヴィンランドに向かわせると?」

「やってくれるか?」

「残念ですが答えはNoです」

「ほぅ……それはまたどうしてだ?」

「私は上司に疎まれていますので私がヴィンランドに戻れば閑職、または寝首を掛かれるかもしれないのですよ」

 

 事実、セシリアは海軍作戦部長であるヴィレッタ・キング大将と仲は悪く今回のハワイ迎撃作戦でも対立していた程であった。セシリアは戻っても自身の話を信用されずむしろ「葦原と内通していた」とか謂れのないデマを流されて逮捕されるのがオチと踏んでいたのだ。

 

「成る程……ならば誰か代役はいますかな?」

「……レイトンならばやってくれるでしょう」

「レイトンちゃんね、私からも話してみるよ」

 

 五十子はレイトン中佐と知り合いだった事もあり手を挙げたのである。その後、話を聞いたレイトン中佐も「ニミッツ長官の御指名でしたら……」と頷き、2日後にはヴィンランド本国にハワイで捕虜にした兵士らを載せた輸送船で向かうのである。

 そして将和も損傷艦艇を率いて内地に戻るのであるがそこには何故かセシリア・ニミッツも同行していた。なお、真珠湾には近藤中将の第二艦隊を配備させていた。

 

「どうしてまた葦原に向かおうと?」

「……葦原もそうですが貴方方の日本を見てみたいという気持ちもありますのでね」

「成る程(体よくヴィンランドから逃げたな……)」

 

 車椅子のセシリアはそう言いながらコーヒーを飲むのであった。そして艦隊は内地に戻るのである。

 

「うーん……上手く混合しているな」

「ですわね。あの建物とかありませんでしたわ」

 

 横須賀鎮守府に到着し将和らは埠頭に降りると風景は様変わりしていた。だが、よく見れば将和の世界にあったガントリークレーンとかもあったので交ざりあった世界なのは確かだった。その足で将和らは鎮守府で将和らを待っていた宮様に面会をした。

 

「では陛下も此方に?」

「ウム。三好の事を案じておられたよ」

「勿体無い言葉ですね」

 

 宮様の言葉に将和は頭を下げる。が、宮様はニヤニヤしていた。

 

「取り敢えずは一週間の休みをやるから山本君達と家に帰る事だな」

「……待ってます?」

「ワシが行った時は夕夏君、薙刀を持っていたぞ」

「…………………………」

 

 宮様の言葉に胃の辺りを抑える将和であった。

 

 

 

 

 

 

 




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