『三好in山本五十子の決断』   作:零戦

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時折、新規話を投下します。


第三話 会談

 

 

 

 

 

 

「やぁ吉田さん、今到着で?」

「これは三好大将。なに、福岡から飛行機ですから直ぐですよ」

 

 陸軍省の入口で将和と宮様は一緒に転移に巻き込まれた吉田茂外務副大臣と岸信介商工大臣と合流した。他にも九州地方の防備視察に訪れていた第2総軍司令官の畑俊六陸軍元帥もいた。なお、九州地方を担当する第16方面軍司令官の横山中将は留守番役のため福岡に残っていた。

 岸は元々九州地方の工場視察、吉田は万が一ソ連との和平になった時のために福岡に待機していた。それがまさかの転移であるからさもありなんである。他にも主税局長の池田勇人も一緒に転移していたが今は福岡で居残りである。

 

「しかし……会談のためにわざわざ陸軍省に呼び出すとは……」

「まぁまぁ……向こうにも都合がありますから」

「しかしだね三好大将。仮にも首相なのだから兼務している陸軍省に呼ぶのは道理かね?」

「畑さんもいますから、恐らくは陸軍の事で聞きたいから陸軍省としているのですよ」

 

 そう言って将和は吉田に葉巻の箱を数箱渡す。

 

「おや、これは……」

「此方にも葉巻はあったみたいなので買い置きをしておきましたのでね。良かったらどうぞ」

「これは有難い。もう数本しかなかったからどうしようと思っていたところだったよ」

 

 葉巻好きな吉田は将和から葉巻の箱を数箱貰えた事で機嫌を良くし将和は吉田から見えないところで深い溜め息を吐いた。それを見ていた岸が苦笑する。

 

「君も苦労するねぇ……」

「苦労するのは軍関係だけと思っていましたけどね……」

 

 将和はそう言いながらも陸軍省から出てきた佐官に総理大臣南条秀樹陸軍大将との会談をしに来た事を告げ、佐官は一回中に入って確認してから再度出てきて将和達を陸軍大臣室まで案内をする。

 

「御待ちしていました」

 

 大臣室では南条が一人だけ座っていた。テーブルにはお茶と煎餅が入った受け皿が置かれていた。

 

「帝政葦原中津国総理大臣の南条秀樹陸軍大将です」

「大日本帝国廣田内閣の商工大臣の岸信介です」

「同じく外務副大臣の吉田茂です」

「大日本帝国海軍軍令部総長の伏見宮です」

「同じく、第一機動艦隊司令長官の三好将和大将です」

「大日本帝国陸軍第2総軍司令官の畑俊六陸軍元帥です」

 

 一通りの挨拶をすると口を開いたのは南条からだった。

 

「貴国の心情、察するばかりです。仮にもこれが反対だったなら私も驚きしかなかったでしょう」

「南条閣下、我々は……」

「分かっています三好大将。昨日……嶋野大臣が来られましてね、表情は死んでいましたが大日本帝国と葦原が協力していく事は我々としても大いに有難いと思います」

 

 南条はそう言ってお茶を啜る。自らが口に付ける事で相手に安心感を与える。成る程、これが南条の器なのだろう。そこへ口を開いたのは岸であった。

 

「南条総理、日本と葦原が協力するに当たって先ずすべき事があります」

「日本との条約締結ですかな?」

「いえ……葦原の工業力を向上させる事です」

 

 岸はそう言って南条に書類を提出する。

 

「兵器を増産するのは容易い事です。しかし、兵器を製造するための工作機械……これが今の葦原には足枷となっています」

「……成る程。続けてどうぞ」

「実は先日、三好大将が葦原海軍との会談後に近くの兵器工場を見学したのですが兵器工場で使用されていた工作機械が磨り減っていたり磨耗していたりとかなりの古いモノであると判明しました。他にも聞けばどの工場も似たような事例があると聞いています」

「…………」

「そこで日本としては葦原側の工業力を向上させるために現在、24時間態勢で工作機械の増産を行っています。その工作機械を順次葦原側に提供します」

「それは構わないのかね? 日本にも何らかの形で報いなければならないが……」

「ありがとうございます総理。ですがまずは葦原を向上させなければなりません」

(成る程……日本に貸しを作るわけか……)

 

 岸の言葉に南条はそう判断する。

 

「ただ……現段階で望むのであればですが……」

「ほぅ、何かね?」

「私と吉田君を内閣入りさせてほしいのです。そうすれば我が日本との連携も取りやすいと思います」

「成る程……分かりました、椅子を二つ必ず用意します」

 

 取り敢えずは岸や吉田達の第一段階は成功した。次は畑の第二段階である。

 

「我が日本陸軍としては……葦原陸軍に戦車の譲渡をする予定です。あぁ、これが戦車の諸元一覧表になります」

「拝見します」

 

 畑から渡された資料を南条が一目するとカッと眼を見開き身体を震わせる。そして視線を畑に向ける。

 

「こ……こ……これを我が葦原陸軍に譲渡して下さる……と?」

「如何にも」

 

 身体を震わせる南条に畑を笑みを浮かべて頷く。日本陸軍が譲渡しようとしていたのは九七式中戦車である。しかし、その九七式は性能は格段に葦原とは違っていたのだ。

 

 

 

 九七式中戦車『チハ』

 

 

 

 全長 7.5メートル

 全幅 2.9メートル

 重量 31トン

 懸架方式 独立懸架及びシーソー式連動懸架

 速度 45キロ

 行動距離 260キロ

 主砲 48口径75ミリ戦車砲×1

 副武装 九五式車載機関銃×2

 装甲

 砲塔前面75ミリ

 側面50ミリ 傾斜20゜

 後面50ミリ 傾斜10゜

 車体前面75ミリ 傾斜45゜

 側面50ミリ 傾斜50゜

 後面40ミリ 傾斜45°

 上面20ミリ

 エンジン 水冷V型12気筒ガソリンエンジン 500hp

 乗員 五名

 

 

 

 

 ぶっちゃけ、月とスッポンである。(酷いが事実でもある)

 

 

 

「現時点では2個戦車独立旅団のチハを……凡そ100両近くを譲渡する方針です。また、その操縦訓練等のためにも我が陸軍からも隊を出す予定にしています」

「して、その派遣場所は……」

「一つは内地、もう一つは……満州であります」

「……成る程。ルーシに備えるため……ですか」

 

 南条の言葉に畑は無言で頷く。

 

「トメニアに勝機はありません。ルーシに敗れるのは明白です」

「フム……(成る程。陸軍はチハを量産してルーシの侵攻に備えるべし……か)」

 

 畑らの狙いに南条は読めた。

 

「分かりました。強硬派は多少いますが私が必ず抑えます。我が葦原陸軍は日本陸海軍と共同で当たります」

「感謝します南条閣下」

 

 南条は畑と将和に握手をして協力に至るのであった。翌4月29日、将和は佐世保に戻り日本海軍艦艇の掌握に努める。

 

「それで……結局のところ、我が海軍艦艇は何隻いたのだ?」

「第一機動艦隊の他にも海上護衛隊旗艦『龍田』二個護衛隊群と三個掃海隊群、工作艦『三原』もいます。また第一号型輸送艦12隻、第101号型輸送艦19隻も展開していました。それと小笠原諸島沖海戦で鹵獲して改装中の『ミッドウェー』もいます」

「フム……」

「それと佐世保工廠と大神工廠で改『夕雲』型7隻、改『秋月』型6隻、海防艦24隻が建造中です」

「鹵獲した『ホーネット』の状況は?」

「修理と改装を同時に行っています」

「ん」

 

 草鹿の報告に将和は頷く。

 

「『三原』がいるのは頼もしいな」

「はい、此方には『明石』しかいませんからな。ソロモン方面の作戦が展開されるならトラック諸島とラバウルに工作艦が展開出来ます」

「ん。まぁまだどうなるかは分からんがな」

 

 将和は肩を竦めるのであった。そしてその佐世保に一人の女性が現れるのである。

 

 

 

 

 

 

 




昭和の大妖怪に葉巻の馬鹿野郎に広島ヤクザもいます

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