『三好in山本五十子の決断』   作:零戦

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第五話 再編 中編

 

 

 

 

 

 MO作戦のため将和の第一機動艦隊はMO攻略部隊と共に5月3日にはトラック諸島に入港していた。その時、葦原海軍から一人の将官が派遣された。

 

「南遣艦隊司令長官の小澤智里中将だ。山本長官の命により第一機動艦隊の補佐に参りました」

「第一機動艦隊司令長官の三好将和だ。ま、ゆっくりとしてくれ」

「ハッ……まさか本当に嶋野大臣……いや、嶋野大将が副官をしておられるとは……」

「これもまた運命というモノですわ」

 

 将和の傍らにいた嶋野の見つけた小澤は物珍しそうに眺める。

 

「さて、作戦だが……」

 

 将和は改めて小澤を含めて作戦計画を嶋野や宇垣達に説明をする。

 

「……ツラギの横空の水偵隊での捜索はしないのか?」

「それも当てにしている。だが、ツラギは敵機動部隊に空襲されるから余力を以て当たらなければならない」

 

 ツラギ攻略はこの日(5月3日)に攻略が成功している。しかし、翌4日に空襲されると予想されていた。この為にツラギ攻略には日本海軍の第一号型輸送艦3隻も参戦して佐世保航空隊の強風12機、一式水戦(三好世界の二式水戦)18機の計30機を輸送していた。

 また3隻の輸送艦には対空電探を搭載していたので対空警戒はしやすかった。

 

「三好長官、意見具申しても構わないかな?」

「聞こう」

「私としてはアウトレンジ戦法を具申する」

「却下」

「………一方的じゃないかな……?」

 

 小澤は直ぐに将和に作戦を却下をされムッとしながらもそう反論をする。

 

「いや、一方的ではないな。そもそもとしてアウトレンジ戦法は我が日本海軍でもあまり推奨はされていない」

「ほう……その理由は?」

「パイロットの負担が大きすぎるからだよ」

「けど、私としては空母は『弓兵』と捉える。航空機は矢、機体も『パイロットも使い捨て』ではないか?」

「あ?」

『………ッ……』

 

 小澤の『パイロットも使い捨て』という言葉に将和は強く反応した。しかも小澤に殺気を出してである。その異様な光景に嶋野も宇垣もそして殺気を当てられた小澤はビクリと身体を震わせる。

 

(あーあ……俺は知らんぞ……)

(三好長官の反応する言葉を放つこの娘が悪いですねぇ……)

(そんな事よりおうどん食べたい)

 

 元々三好世界側の航空参謀の内藤大佐や『加賀』艦長、『加賀』飛行長等はこの後の展開が分かっているが上に我、関せずを貫く構えだった。

 

「……よし、飛行長。明朝出撃後に彩雲を1機用意してくれ」

「どうするのですか?」

「何も分かっとらん小娘どもに航空機というのを実戦で教えてやる。今日は解散、明朝0400にトラック諸島を出撃する」

「了解しました」

『……………………』

 

 内藤達は動くが小澤や嶋野達は将和の殺気にまだ動けなかったのであった。そして翌0400に第一機動艦隊は出撃する。

 

「彩雲は?」

「飛行甲板で用意しています。燃料も増槽を入れて満タンです」

「ん。各自、昼食とお茶又は水を用意してるな?」

「あ、あぁ。用意はしてるぜ」

「はい」

「………………」

 

 出撃後、直ぐに飛行服に着替えるように将和から言われた三人は飛行甲板にいた。

 

「よし、なら彩雲に乗り込むぞ」

「……は?」

 

 将和の言葉に宇垣が二人を代弁するかのように目を点にして唖然とする。

 

「良いから乗り込め。三人乗りだが嶋野と宇垣が一緒に座れば問題無い」

「それは暗に私が小さいと?」

「……早く乗れ」

「長官!?」

 

 プイッと嶋野から視線を背ける将和に嶋野は驚愕しつつも言われた通りに三人は彩雲に乗り込み将和も操縦席に乗り込んで各種点検をする。

 

「コンターック!!」

 

 既に暖気運転はしていたので発動機は一発で始動する。

 

「お気をつけて。まぁ艦隊上空ですけど」

「あぁ。夕方には戻る!! チョーク外せェ!!」

 

 整備員がチョークを外し将和は内藤に敬礼をする。

 

「発艦するぞ」

『マジかよ……』

『こうなれば覚悟を決めますわ』

『……………』

 

 そして彩雲は発艦をする。将和は高度4000に上昇し第一機動艦隊上空に張り付く。

 

「これより1700まではずっと飛行するからな」

『1700までもか!?』

『ま、待って下さいまし長官!! そ、その……』

「あぁ、トイレなら我慢するか氷嚢の中にして捨てろよ」

『……………へっ………………?』

「パイロットなら常識だからな。氷嚢は各座席に置いてあるから使うならそれを使えよ」

『………………………………………』

 

 将和の言葉に無言にならざるを得なかった三人であるが小澤は口を開いた。

 

『三好長官、この飛行に何の意味があるんだ?』

「お前が推奨するアウトレンジ作戦の意味だ。経験する方が早いからな」

 

 そして午前中、将和は第一機動艦隊上空を飛行し1200には各自で昼食を取る。なお、弁当は腐敗をなるべく無くすために海苔巻きが主流であり将和のは『ラボール巻キ』であったりする。

 

「……史実ではな」

『え?』

「俺達の史実ではな。8月7日にソロモン諸島のガダルカナル島というところに米軍……ヴィンランド軍が上陸する。近場はラバウルの海軍航空隊であり海軍航空隊は零戦隊と爆撃隊をガダルカナル島に送るが……片道約1000キロだ」

『か、片道1000キロ!?』

『確か航空地図が此処に……』

『ちょ、ちょっと嶋野さん。胸に腕が……』

『我慢して下さいまし宇垣さん。あった、これですわ……って大体が内地から屋久島間じゃありませんの!?』

「そう、それをラバウルの航空隊は往復約2000キロと空戦をして帰ってくる」

『アウトレンジ作戦じゃないか。それなら……』

「だが毎日ならどうだ?」

『毎日……?』

「そう、ラバウル航空隊はほぼ連日に渡って長駆ガダルカナルを飛行して空戦をしそしてまた帰ってくる……これを繰り返した」

『……それだと身体が持たないな』

「そう、持たない。事実、帰還途中に疲れでそのままソロモン海や陸地に墜落するパイロットは多かったそうだ」

 

 確かにそのような事例は多かった。だからといってGF司令部は負担を軽減するためにブカ島やブーゲンヴィル島南部のブイン、ニュージョージア島のムンダに航空基地を建設してガダルカナル島の距離を短くしようとした。

 というよりもそもそもはMI作戦での空母4隻の喪失から始まった事である。元々はMI作戦後にFS作戦を行う予定だったがMI作戦での空母4隻喪失でFS作戦をソロモン諸島の島伝いで行う方針に持って行く事にした。その第一段階でガダルカナル島に航空基地を建設する事だった。確か海軍設営隊の設営によってガダルカナル島の航空基地は後僅かで建設完了だった。

 しかし、米軍は逆手に取って奇襲上陸してこれを占領しヘンダーソン飛行場と名付けた。そこからは……泥沼の消耗戦であった。

 

「確かにアウトレンジ作戦は一時的……一回限りの戦法であるならば有効性はあるだろう。だからと言ってそれを常時続ければ……母艦飛行隊は元より海軍の航空戦力は消耗してその力を発揮出来なくなる」

『………そうか……私は間違っていたのか……』

「いや……間違いではないよ。ただ、日本……葦原には合ってはいない戦法なんだよ」

 

 ポツリと呟く小澤に将和は諭すように言うのである。

 

『あ、あの長官……』

「ん?」

『や……やはりトイレは……』

「パイロットの気持ちを知ってもらう為だ。やるなら氷嚢にしろよ」

『………………………』

 

 三人が機内でやったかはこの場では伏せるが1700まで将和は飛行を続け、着艦後に三人は顔を真っ赤にして艦尾から『ナニか』を投げ捨てるのであった。そしてその日の夜、将和の元に小澤がやってきた。

 

「私はこれまで航空戦を理解しているつもりだったが浅はかだった……お願いします、私にも航空戦を教授して頂きたい」

「構わないよ」

 

 小澤の表情は覚悟を決めた表情をしており将和はそれを見込んだのである。

 そして5月4日の早朝、ツラギに停泊していた第一号型輸送艦の13号対空電探が接近してくる敵攻撃隊を探知したのである。

 

「全艦に対空戦闘用意!! 水戦隊は直ちに離水!!」

 

 ツラギ攻略部隊司令官の志摩清美少将は旗艦『沖島』の艦橋で吠える。

 

(全く……日本軍様々ね。これがあの3隻いなかったら奇襲を喰らっての大損害だったわ……)

 

 志摩は対空電探の性能を間近で見せつけられた。ツラギの砂浜では揚水していた強風12機、一式水戦18機にパイロット達が乗り込んで直ちに離水を開始していた。他にも九七式飛行艇も順次退避のために発動機を回しており各艦艇も高角砲に対空機銃の砲身銃身を上空に向けていた。

 

「さぁ来なさいよヴィンランド海軍……奇襲と思った攻撃が待ち伏せをされていたらどう思うかしらね……?」

 

 ニヤリと笑う志摩であった。

 

 

 

 

 

 

 




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