『三好in山本五十子の決断』   作:零戦

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第七話 MI作戦 前編

 

 

 

 

 

 

「微速前進」

「微速前進ヨォーソロォー」

 

 光文17年7月7日0300、柱島泊地を三好将和大将の第一機動艦隊が最初に出撃し7日1500に五十子の主力艦隊が出撃したのである。

 出撃した艦隊は以下の通りに編成されていた。

 

 

 

 

 MI作戦参加艦隊

 

 第一機動艦隊

 司令長官 三好将和大将

 参謀長 宇垣束少将

 旗艦『加賀』

 

 第一航空戦隊

 司令官 三好将和大将(兼務)

 『加賀』

 【零戦54機 彗星27機 天山27機 彩雲12機】

 『赤城』

 【零戦30機 彗星21機 天山21機 彩雲6機】

 『土佐』(葦原側の元『加賀』)

 【零戦30機 彗星27機 天山27機 彩雲6機】

 第二航空戦隊

 司令官 楠木多恵少将

 『蒼龍』

 【零戦27機 彗星18機 天山18機 彩雲3機】

 『飛龍』

 【同上】

 第三航空戦隊

 司令官 大林末雄少将

 『雲龍』

 【零戦30機 彗星18機 天山18機 彩雲6機】

 『蓬莱』

 【同上】

 『葛城』

 【同上】

 第四航空戦隊

 司令官 草鹿龍之介中将

 『生駒』

 【零戦30機 彗星18機 天山18機 彩雲6機】

 『飯盛』

 【同上】

 『信貴』

 【同上】

 第五航空戦隊

 司令官 原幸江少将

 『翔鶴』

 【零戦27機 彗星27機 天山27機 彩雲6機】

 『瑞鶴』

 【同上】

 第一防空戦隊

 『祥鳳』

 【零戦27機 彩雲3機】

 『瑞鳳』

 【同上】

 第三戦隊

 司令官 南雲汐里中将

 『河内』『因幡』『金剛』『比叡』『榛名』『霧島』

 第五戦隊

 『妙高』『羽黒』『鈴谷』『高雄』

 第八戦隊

 『利根』『九頭竜』『筑摩』

 第一護衛隊

 『五十鈴』

 艦隊型駆逐隊

 『雪風』『長波』以下16隻

 防空型駆逐隊

 『涼月』以下16隻

 第一水雷戦隊

 『阿武隈』

 『不知火』以下12隻

 

 

 

 主力部隊

 山本五十子大将

 第一戦隊

 『大和』『長門』『周防』(葦原側の元『長門』)『陸奥』

 第二戦隊

 『伊勢』『志摩』(葦原側の元『伊勢』)『日向』『扶桑』『山城』

 第六航空戦隊

 司令官 角田斗角少将

 『龍驤』

 【零戦42機】

 『隼鷹』

 【零戦18機 彗星18機 天山9機 彩雲3機】

 『飛鷹』

 【同上】

 『紀伊』

 【零戦45機 彗星45機 流星45機 彩雲12機】

 他多数

 

 

 

 

 第二艦隊

 司令長官 近藤迦具夜中将

 旗艦『愛宕』

 第四戦隊

 『妙義』『愛宕』『摩耶』『鳥海』

 第七戦隊

 『最上』『三隈』『石狩』『熊野』

 第二水雷戦隊

 『神通』以下10隻

 第四水雷戦隊

 『那珂』以下10隻

 

 

 

 

 今回の作戦のために航空機は全て大日本帝国側で統一されているが零戦は33型の機材が足りなく22型をも使用しているが現時点ではF4Fを圧倒出来るので問題無しとされた。

 

「三好長官」

「どうした?」

 

 通信兵からの電文を確認した嶋野が将和に声をかける。

 

「フレンチフリゲート礁に向かっていた伊『123』潜より入電ですわ。やはり敵艦が展開していたのでK作戦は決行出来ず……との事ですわ」

「やはりか」

 

 嶋野の報告に将和はそう呟いた。だが首席参謀の小澤は笑みを浮かべた。

 

「まぁこれで我々の暗号は解読されているのが分かったな」

「良いのか悪いのか……あんまり深くは言えないな」

 

 小澤の言葉に宇垣は溜め息を吐いた。帝国海軍は葦原陸海軍に暗号が解読されていると前々から伝えていたが、トメニアからもたらされて暗号機エニグマは絶対に解読されないと自信を持っていた。しかし、今回ので葦原の陸海軍はその考えを改めなければならなかった。

 

「まぁいい、艦隊は予定通りに進める。三人とも今のうちに休んでおけ。戦いの時は休めなくなるからな」

「……分かりましたわ」

「おぅ、ならそうさせてもらうわ」

「分かった」

 

 三人はそう言って艦橋を退出するのであるが宇垣が艦内の廊下を歩いていると嶋野が声をかけてきた。

 

「……何ですか?」

「たまにはお茶をと思いましてね……どうですか?」

(やっぱ変わったな……)

「じゃあ私もお邪魔しようかな」

 

 嶋野の言葉に宇垣はそう思いながらも了承して嶋野の部屋にお邪魔する事にした。なお、小澤も勝手に付いてきた。そして嶋野の部屋に入ると宇垣は目を見開いた。

 彼女の部屋は既存のベッドやロッカー、机以外には着替え等が入った箱、数冊の本とティーセットしか置かれていなかったのだ。

 軍令部総長時代の嶋野の自室を知っていた宇垣からすれば驚愕に等しかった。

 

「驚いたかしら?」

「まぁ……あの部屋を知ってるアタシからしたらな……」

「それもそうですね」

 

 クスリと笑う嶋野に宇垣は肩を竦めながらも椅子に座り嶋野が紅茶を注ぎ二人に渡してから一口、口に付ける。

 

「相変わらず腕は落ちてはいませんね」

「これだけは絶対に負けたくはありませんわ。それに対して五十子さんはお砂糖を入れてはガバガバと飲んでは御代わりを要求したり……」

「ハハハ、山本長官らしいな」

 

 そう言ってブツブツと文句を言う嶋野である。そんな嶋野を見て宇垣はやはり変わったなと思う。ふと、本の中身が気になって嶋野に質問をする。

 

「ところであの本は……」

「向こうの世界に関連する書物と戦闘詳報ですわ」

 

 そう言って嶋野が本ーー戦闘詳報を手に取り、宇垣に渡す。戦闘詳報は『真珠湾作戦』と記載されていた。

 

「これってまさか……」

「そのまさかですわ。彼方の……三好長官側の戦闘詳報を借りてますの」

「良いのですか借りて?」

「三好長官に頼んでみたら二つ返事で貸して頂けましたわ」

「まぁ三好長官なら……」

 

 思わず納得する宇垣。宇垣は戦闘詳報をパラパラと捲り最後の結言で唸る。

 

「真珠湾攻撃は失敗……としたか」

「幾ら真珠湾を水道で半年間封鎖しても空母を叩いていなければその戦略的価値は低下する……そうらしいですわ」

「成る程……」

「私にも見せてくれ」

「あいよ」

 

 小澤の言葉に宇垣は真珠湾の戦闘詳報を渡してもう一つの戦闘詳報に手を取りパラパラと見るがとある一文を見てピタリと手を止めた。

 

『戦艦『大和』マリアナ沖にて戦没。同艦には第一戦隊司令宇垣中将が乗艦しており沈没時に『大和』と運命を共にした』

 

 そのように記載されていたのだ。

 

「これ……」

「あぁ……向こうの宇垣さんが戦死した海戦のですわね。ごめんなさい、配慮がありませんでしたわ」

「いやいい……」

 

 謝る嶋野に宇垣はそう言いながらもマリアナ沖海戦の戦闘詳報を読み耽る。それを嶋野は何も言わずにただ紅茶を啜る。そして最後まで読み終えた宇垣が顔をあげた時、宇垣は一筋の涙を流していた。

 

「こんな……事が……」

「三好長官にそれを聞きましたの。本当に残る気だったのかと……」

「……どういう事だ?」

 

 嶋野の言葉に宇垣は問う。真珠湾の戦闘詳報を読んでいた小澤も嶋野に視線を向けていた。

 

「三好長官程の人物であるなら……幾ら『大和』が沈もうが生存者救助を優先させて退艦をする筈ですわ。それなのに長官は遭えて……遭えて残ろうとした……何かが矛盾しますの」

『………………』

 

 確かにと宇垣と小澤は思う。三好長官なら退艦をして次の戦いに備える筈である。だが長官は遇えて残ろうとし代わりに致命傷を負っていた向こうの宇垣が残った。

 

(三好長官に何かがあった……?)

 

 宇垣と小澤はそう判断する。そう思った時、宇垣は……いや三人は真意を聞こうとした。黙ってはいられない性格上、そう判断したのだ。

 宇垣は席を立とうとするがそれを止めたのは嶋野だった。

 

「宇垣さん、貴女の事だから三好長官の元に行こうとするのでしょう?」

「……止めるのですか?」

 

 宇垣の言葉に嶋野は笑みを浮かべて肩を竦める。

 

「まさか。むしろ私も聞きたいのです、何故そうするに至ったのかを……もしかしたら私も何かを掴めるんじゃないか……」

「………………」

 

 嶋野の言葉に宇垣は笑みを浮かべる。突然の笑みに嶋野は警戒する。

 

「……何ですの?」

「いや……やっぱ変わったなぁって思ってな」

「う、五月蝿いですわ!! ほら、行くなら早く行きましょう!!」

「……あれがツンデレというやつかな」

 

 嶋野は宇垣の言葉に顔を真っ赤にし部屋を出るのである。それを見届けた宇垣と小澤は苦笑しながらも続いて部屋を出て将和の元に赴くのであった。

 

「長官、失礼しますわ」

「おぅ、三人ともどうした?」

 

 将和も休憩で自室に戻っており寛いでいた。寛いでいた将和にさしもの三人もいざ聞こうとすると声にはなかなか出せなかった。

 

「…ん?どうしたんだ?」

「あの……ですわね……」

「その……な……」

「むぅ………」

「??」

 

 歯切れが悪い三人に将和は首を傾げるが切り出したのは宇垣だった。

 

「……向こうのマリアナ沖海戦の戦闘詳報を見た」

「……ッ………」

 

 宇垣の言葉に将和はピクリと身体を震わせながらもやがて深く息を吐いて三人の椅子を用意した。

 

「まぁ座りなさい」

 

 将和は三人を座らせグラスを用意して食器棚の中からラム酒のビンを取り出した。トクトクと三人分のを少量入れて三人に差し出す。

 

「それで何を訊ねたいのかね?」

「……何故残ろうと?」

「………………………」

 

 嶋野の言葉に将和はラム酒を一口舐める。脳裏に思い出すのはあの時の光景だった。

 

『長官、貴方は此処では死んでいけない人です』

『宇垣ィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!』

 

 内側に秘められた想いを隠した仮面を剥がさないように将和を守ろうとする。

 

「……これまでに戦死した者達への謝罪を込めてに残ろうとした」

「それは本心なのか?」

「……何が言いたい?」

 

 宇垣の言葉に将和は眉を潜める。ピキッと何かが割れた音がする。

 

「貴方程の人物がそう易々と艦と運命を共にしない。そうじゃないか?」

「向こうのミッドウェー海戦でも『蒼龍』の柳本艦長を説得させて退艦させているではありませんか、ならば何故あの海戦で長官は……」

 

 宇垣に続いて嶋野がそう言い切る前、将和はラム酒を一気に飲み干す。またピキッと何かが割れる音がする。

 

「……残ろうとした理由は先程言った筈だ」

「矛盾しか残らないんだよ長官」

 

 あくまでもそう主張する将和に宇垣はそう斬り込んだ。宇垣の真っ直ぐな視線に将和は一瞬、たじろぎそうになりそれを堪えるが更に斬り込んだのは嶋野だった。

 

「実はもっと他に理由があったのではありませんか?」

「ーーーッーー」

 

 嶋野の言葉にラム酒の酔いが廻り始めていた将和は思わず椅子からよろけてしまい崩れてしまう。そしてバリンと何かが割れた音がした。

 

「長官!?」

「来るな!!」

 

 崩れた将和に嶋野が駆け寄ろうとしたが将和はそれを大声で制した。

 

「長官……」

「来るな……来ないでくれ……」

 

 将和は頭を抱える。

 

「やめてくれ……心が……心が抉れる……」

「長官……?」

 

 気付けば将和の身体は震えていた。そして将和はポツリと呟いた。

 

「『帰れる』……『帰れる』と思ったんだ……」

「『帰れる』……?」

 

 そして将和は身体を震わせながらも口を開いた。

 

「明治の……あの時から来て……日露を、第一次世界大戦を、シベリアを、大東亜を駆け抜けて『大和』が沈もうとした時、俺は思ったんだよ……夢オチじゃないかって……『大和』に残れば……そうしたら平成の元の世界に戻って来れるんじゃないかって……またあの馬鹿な日常に戻れる……そう思ったんだ……」

『……………』

 

 気付けば涙を、大量の涙を流していた将和の言葉に三人は何も言えなかった。何の因果か、八百万の神々の悪戯か、未来の日本にいた、たった一人の青年の人生の全てを犠牲にして時を越えた。その時を越えたのが三好将和だったのだ。

 

「だからそうさ、夕夏を……ターニャや皆は俺の妄想だと思った……思ってしまった!! だからこそ俺は『大和』に残ろうとした……けど俺は宇垣に生かされてしまった……俺は……俺は自分が生きているなんて!!」

「生きていますわ」

 

 懺悔の言葉を繰り出す将和にそう言ったのは嶋野だった。

 

「夢ではありませんわ長官。ほら証拠に……」

 

 嶋野はそう言ってソッと将和にキスをする。

 

「夢……だったらキスの感触も分からないじゃありませんか」

「しま……の……」

「もしかして……私の名前で反応していたのは奥様を思い出してしまったので?」

「……あぁ……」

 

 嶋野が挨拶をした時、将和は夕華(ゆうか)で反応した。それを不審に思っていた嶋野は漸く合点がいったと思った。

 

「少し……嫉妬しますわね、三好長官の奥様に……」

「……確か愛人も複数人いると聞いたぞ?」

「おいおい、天下の嶋野様が人妻に嫉妬するのかい?」

「なら会えたら御挨拶をしませんとね。女の嫉妬は怖いモノですわよ」

 

 宇垣と小澤の言葉にクスリと笑う嶋野である。そしてポケットからハンカチを出して将和の涙を拭う。

 

「私……あれだけ怒られたのは初めてでしたのよ……? だから長官には感謝しているんですの。本当の私を探してくれて。兵学校に入った時の……原点の私になれましたの……だからこそ長官には生きていてほしいのですわ」

「嶋野……」

「まぁ私もそうかな。向こうの私がどう思ったのかは知らないけど、私にも分かるような気がするぜ」

 

 宇垣はそう言って床に座り将和と正対する。

 

「未来を……日本の未来を長官に託したのかもな」

「………」

 

 ニカッと笑う宇垣に将和はあの時を思い出す。

 

『長官はまだ死ぬ運命ではありません』

 

 致命傷を負った自分の代わりに生きてほしい。生きて生きて生き抜いてほしい。だからこそ宇垣は笑って『大和』の長官室に消えていったのだ。

 

「ありがとう……」

 

 漸くあの時の宇垣の言葉を理解出来た将和は再び涙を流すのである。

 

「フッ……鬼の目にも涙……か」

「あーら小澤さん、それはどういう事かしら?」

「なーに、彩雲の出来事の仕返しだよ」

「そ、それは私もそうなるかもしれませんが……」

「それ以上は言うなよ小澤」

「……ククッ」

 

 言い合う三人に将和は苦笑するのであった。

 

 

 

 

 

 




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