『三好in山本五十子の決断』   作:零戦

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第八話 MI作戦 中編

 

 

 

 

 

(今度こそ勝たなくては……)

 

 ミッドウェー島東方約350浬の海域をジェニファー・フレッチャー少将率いる第17任務部隊とレナ・スプルアンス少将の第16任務部隊が航行していた。二個任務部隊はそれぞれ空母2隻ずつを主力とした機動部隊であった。

 ジェニファーの第17任務部隊には空母『ワスプ』『レンジャー』が配属され、レナの第16任務部隊には空母『サラトガ』と無理矢理修理工事から復帰した『エンタープライズ』が配属されその周囲には重巡『ミネアポリス』ら7隻、防空巡洋艦『アトランタ』、駆逐艦17隻が護衛していたのである。更にその後方には護衛空母『ロング・アイランド』『チャージャー』『ボーグ』『カード』と護衛艦艇14隻が航行していた。護衛空母も今回の作戦には急遽参戦していたのである。

 航空機も約400機近くが配備されていたが『ワスプ』『レンジャー』は約70機程、『サラトガ』約90機、『エンタープライズ』はまだ修理工事が多くあるため約60機程しか搭載していない。

 しかも彼女達の腕はそこそこであり一番突き出ていたのは『サラトガ』飛行隊であった。

 また護衛空母『ボーグ』『カード』の2隻についてはまだ進水しか済ませておらず就役はまだだったが航行は可能であり航空機の運用も可能だったので参加させたのだ。

 

(それでも……せめて敵空母の飛行甲板を叩けば……)

 

 ジェニファーは敵空母を沈めるのは無理と判断しせめて飛行甲板を叩いて撤退をさせれば……と思っていた。飛行甲板を叩けば後は貧弱の工業力を持つ葦原だ、復帰するまでには相当の時間を必要とする筈でありその間に我々は来年に就役する『エセックス』級空母が葦原本土を襲う筈である。

 そう踏んでいたジェニファーだったが一つミスをしていた。それが普通の葦原だったら問題はなかっただろう。しかし、葦原の九州地方は転移して三好将和ら大日本帝国の九州地方が転移していた事でその工業力は日々強化されていたのである。

 それはさておき、葦原海軍及び日本海軍だが彼等の艦隊もミッドウェー島に近づきつつあった。

 

「ミッドウェー島攻撃には二航戦及び三航戦、四航戦の全力攻撃で行う」

「では敵艦隊攻撃には……」

「一航戦と五航戦で対処する」

「けどそれだと二兎を追う羽目になるぞ?」

「まぁな。だからこそ、我々は此処を使う」

 

 宇垣の指摘に将和はニヤリと笑って頭をトントンと叩く。

 

「作戦『乙』を発動する」

『ッ!?』

 

 将和の言葉に宇垣ら三人は目を見開く。

 

「それは……」

「なに、百%の勝率は難しい。ならばその確率を高めるための作戦『乙』だ」

 

 驚く二人を他所に将和はニヤリと笑い、長年将和の航空参謀をしている内藤大佐は仕方ないと言わんばかりの肩を竦める。

 

「そうなると我々も忙しくなりますな」

「そうだな内藤。何せ二回目のMI作戦だ、忙しくなるのは当たり前だな」

「ハハハ、そのようですな。何せ『今回』は護衛艦艇が多いですからな」

 

 そう言って内藤は艦隊配置図に視線を移す。ミッドウェー島を目指す第一機動艦隊、その後方30海里には近藤中将の第二艦隊が、更に70海里後方に展開するのは五十子率いる主力部隊であった。将和は配置図に歩み寄り、墨を含んだ筆を持ち第一機動艦隊と主力部隊の中間を航行している第二艦隊に円を描いた。

 

「二航戦に三航戦、四航戦はミッドウェー島攻撃後は護衛艦艇と共に退避し第二艦隊に合流、敵機動部隊攻撃に備えとする。また五航戦も同じくとする」

 

 残ったのは第一航空戦隊の3隻と第一防空戦隊の2隻のみである。

 

「ミッドウェー島攻撃隊発艦後、電波を発せよ。意味は不明で良い。奴等を俺の前に引き摺り出す」

『…………………』

 

 将和はニヤリと笑う。その様子に三人は背筋に氷を入れられたようなゾクリと感触を味わう。

 

「ミッドウェーのあの光景を味わう者が贈る素敵な物語……というわけですな」

「だろうな、航空参謀。だが俺は一度あのマリアナ沖で死んだにも等しい男だ」

「長官……」

「だが……」

 

 将和は前方の海面を見つめつつ笑みを浮かべる。その笑みも背筋が凍るような思いをする三人である。

 

「一度死んだ人間は……恐いぜ……」

 

 斯くして『加賀』から彩雲1機が発艦し後方の主力部隊に向かい将和の作戦『乙』発令を伝える。作戦『乙』発令を伝えられた五十子は前方の海域を見つめつつ将和を思う。

 

(……大丈夫、大丈夫だよ三好長官。私達は勝つから)

 

 

 

 

 

 

 

 7月14日、第一機動艦隊はミッドウェー島北北西約220海里の地点まで進出していた。ミッドウェー島攻撃隊である第二航空戦隊、第三航空戦隊、第四航空戦隊の8空母の飛行甲板では攻撃隊の発艦準備が行われていた。

 

「攻撃隊は予定通り0510に発艦開始と出来るぜ」

「ん」

 

 宇垣からの報告に将和は頷く。上空には第一防空戦隊から警戒機の零戦12機が発艦して警戒に当たっていた。そして0510、8空母から攻撃隊が発艦が開始されたのである。

 

「総飛行機発動ォ!!」

「チョーク外せェ!!」

 

 チョークを外された一番先頭の零戦が両翼下に積載されたロケット補助推進離陸用RATOの噴進器を使用しながら発艦していく。8空母は全力出撃のため飛行甲板には多くの攻撃隊が準備されていたのだ。

 

「帽振れェ!!」

 

 8空母は元より各艦艇では発艦していく攻撃隊に惜別の証である帽振れで見送ったのである。そして各艦艇は作戦『乙』の発令に基づき行動を開始したのである。

 

 

 

 第一機動艦隊

 第一航空戦隊

 『加賀』『赤城』『土佐』

 第一防空戦隊

 『祥鳳』『瑞鳳』

 第三戦隊第二小隊

 『榛名』『霧島』

 第五戦隊

 『妙高』『羽黒』『鈴谷』

 第一護衛隊

 『五十鈴』

 防空型駆逐隊

 『涼月』以下6隻

 艦隊型駆逐隊

 『雪風』『長波』6隻

 

 

 

 

 

 

 

「カタリナが敵機動部隊を発見したと?」

「はい、空母5隻の機動部隊です」

 

 レナ・スプルアンスはミッドウェー島から発進したカタリナからの報告を受けていた。この時、ミッドウェーでは保有するカタリナ32機を索敵に回しておりその内の1機が将和が率いる第一機動艦隊を発見したのである。無論、カタリナは電文を放ってから零戦隊に撃墜されたがミッドウェー島では直ちに攻撃隊が発進して攻撃に向かったのである。

 

「……分かりました。我々も全力攻撃に移行します」

 

 スプルアンス少将は直ちに4空母に対し攻撃隊発艦を発令した。しかし、彼女達も第一機動艦隊から発艦した彩雲に発見されたのである。

 

「いたぞ、敵機動部隊だ!?」

 

 発見したのは千早猛彦少佐の彩雲であり千早少佐は飛行していた高度5000から一気に2000まで降下して高速で美機動部隊上空を飛び回り詳細な電文を発信するのである。

 

「来たぜ長官!? 美機動部隊の発見だ!!」

「ん、読め」

「おぅ!! 『敵機動部隊発見セリ。敵空母4ヲ視認。方位ーーー』」

「やはりミッドウェー島東方ですね」

 

 海図を見ていた内藤は将和にそう答える。そしてそれを聞いた将和は艦橋を飛び出し飛行甲板に向かって叫んだ。

 

「全機発艦!! 始めェ!!」

 

 直ちに待機していた攻撃隊は発艦を開始する。第一航空戦隊の全力出撃である。

 零戦54機、彗星75機、天山75機は総隊長淵田中佐に率いられて美機動部隊に向かう。更に後方へ退避した第五航空戦隊からも攻撃隊が発艦していた。

 

「全機発艦!! 三好の旦那を死なすわけにはいかんぞ!!」

 

 第五航空戦隊司令官の原幸江少将は空母『翔鶴』の艦橋でそう発破をかけていた。彼女も将和を航空戦の第一人者と自覚しており五航戦をも下げた理由も何となくではあるが理解していた。

 

(五航戦の2隻は開戦前に就役したばかりの最新鋭艦……成る程、ロートルの空母2隻の代わりとしては理解出来っちゃあいるが……あんたを死なすわけにはいかねぇわな)

 

 潮っ気で第六航空戦隊司令官の角田少将と同じ性格の彼女は井上等の理屈ではなく本能で将和の凄さを感じていた。だからこその将和を守る命令であった。

 そして二個の攻撃隊が美機動部隊に向かう中、将和の第一機動艦隊はミッドウェー島からの攻撃に晒されていた。この時、第一機動艦隊上空には第一防空戦隊の零戦54機と第一航空戦隊残存の零戦60機が展開しており飛来したミッドウェー島の攻撃隊は瞬く間に全滅したのである。

 

「給油と再装填を各自で急がせろ。本命の敵攻撃隊が来るぞ!!」

「了解!!」

 

 果たして彼女等はやって来た。第一機動艦隊は0650頃から断続的に美機動部隊からの攻撃隊の攻撃を受ける事になる。

 

「左舷から敵雷撃機!!」

「魚雷を投下したら報告!!」

「魚雷投下!!」

「おもぉーかぁーじ!!」

 

 空母『加賀』艦長の吉田英三大佐は将和が見守る中で懸命に回避していた。そして上空の敵機は散発になり出した。

 

「……引き上げていったのですか……?」

 

 双眼鏡で覗いていた嶋野がそう呟く。

 

「いや……ッ!?」

「長官!?」

 

 将和が上空のある部分を見た時、キラッと光るモノがあった。何かを感じた将和は直ぐに防空指揮所に駆け上がり、嶋野と宇垣、小澤もそれに続いた。

 

「吉田!! 操艦、代わるぞ!!」

「は、はい!? 操艦、三好長官に代わる!!」

 

 将和の命令に吉田は直ぐに下がり艦橋に降りる。そして先程のある部分を見て伝声管に叫ぶ。

 

「続けて敵機約50、来るぞ!! 回避用ォ意!!」

『回避用意、ヨーソロォー!!』

 

 現れたのは経路ミスで遅れてきたF4F約20機とSBD約40機程だった。直ちに両用砲、高角砲、ボフォースが火を噴く。上空にいた零戦隊が攻撃をするがSBDは雲を利用して接近してきた。

 

「敵機直上ォォォォォォ!! 急降下ァァァァァァァァァァ!!」

「………取舵20!!」

『取舵20!!』

 

 将和の号令により『加賀』は軽快に回避運動を展開し急降下してきたSBD10機を回避に成功する。

 

「『赤城』上空に急降下!?」

「何!?」

 

 この時、『赤城』『土佐』は給油と再装填が完了した零戦を発艦させようとしていた。2空母の上空に雲はあって視界不良であったが、対空電探は反応しなかった為油断していた。敵機はいたのだ。2空母の対空電探は葦原側が急遽完成させた21号対空電探を搭載しておりまたそれが故に故障も頻発しておりその効果を十分に発揮させる事が出来なかったのだ。

 

「敵機直上ォォォォォォォォォォォォ!! 急降下ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

「回避、急いで!!」

 

 『赤城』艦長の青木梅子大佐は懸命に回避をさせるが1発の1000ポンド爆弾が全てを引き裂いた。他のSBDに隠れた1機のSBDが近寄って1000ポンド爆弾を投下した。

 

「『ヨークタウン』の仇ィィィ!!」

 

 投下された1000ポンド爆弾は『赤城』中部飛行甲板で発艦しようとしていた零戦に突き刺さり格納庫に飛び込んでからその力を解放したのである。

 

「『赤城』被弾炎上ォ!!」

 

 『赤城』は被弾炎上する。爆風は格納庫で待機していた零戦を薙ぎ倒し爆発していく。

 

「更に『土佐』上空に急降下!?」

 

 『土佐』にもSBD11機が群がり艦長の岡田次子大佐は回避命令を出すも4発が命中、内1発は艦橋付近にいた燃料車を爆発させ爆風は『土佐』の艦橋を吹き飛ばし岡田艦長ら艦橋にいた者全員を戦死させるのである。

 

「『赤城』『土佐』炎上!!」

「………」

 

 嶋野の報告に将和は頷く事もせずに上空を警戒し回避命令を出す。

 

「更に来るぞ!! 取舵20!!」

 

 更に4機が『加賀』に急降下してきたが4発とも回避に成功する。至近弾の水柱が防空指揮所に降り注ぐ。降り注ぐ海水に将和は嶋野と宇垣を抱き寄せる。

 

「大丈夫か?」

「え、えぇ。大丈夫ですわ///」

「お、おぅ///」

 

 抱きしめられた二人は若干頬を紅く染めるも直ぐに表情を戻す。

 

「更に2機来るぞ!!」

「……取舵20!!」

『取舵20、ヨォーソロォー!!』

 

 更に2機のSBDが急降下してきたが将和はそれも回避をして水柱が『加賀』の防空指揮所に降り注ぐ。今度は小澤をも抱き寄せる。

 

「さて……今度こそ引き上げたか……大丈夫か小澤?」

「………はッ!? だ、大丈夫だ!!///」

 

 将和は上空を見ながらそう呟く。どうやら今度こそは終わったようであった。なお、抱き寄せられた小澤は顔を真っ赤にしながらも略帽を深く被るのであった。

 

「2空母の被害状況を詳細に報告させよ。曳航可能か、航行可能であれば後方へ退避させる」

 

 将和はそう言って略帽を深く被る。

 

「二度も……やられた仕打ち……この仕打ちは高くつくぞ……?」

 

 将和はそう呟くのであった。

 

 

 

 

 

 




護衛空母を増やしました
御意見や御感想等お待ちしていますm(_ _)m
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