カウンター・ストラトス   作:夢現図書館

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軋轢

 

 

 

「……お、織斑先生ぃ〜。彼があんなのだって聞いていませんよ〜」

 

 IS学園の教員専用の休憩室。其処で真耶は千冬にある意味、泣きついていた。

 

「済まんな……時間が足りなくて大幅に端折ってしまって。だが、事実は事実だから受け入れてくれ」

 

「……だからと言って皆さんの目の前で平然と骨を折りに行くモノなんですかぁ⁉︎」

 

 話題は専らミゾレの事であった。一応、千冬から信頼出来ると言う理由でミゾレのトンデモ事情を聞いては居たのだが、初手からいきなり驚愕する様な行動を取られたのだ。

 

「……流石にアレは想像以上だったな。よもや脚力の圧力だけで私の骨を折られるとは……彼の言うカウンター能力者と言うのは我々の想像を遥かに超える様だ。然も本人が言うにはアレで手加減していたつもりらしいしな……本気だとしたらそれこそ、全身粉砕も虚構ではあるまい」

 

——そもそもカウンター能力に関して分からない事が多いと言わざるを得ん。身体能力の向上は把握したが超常の能力は未知数だ。超能力の類なのか?

 

 カウンターの著しい身体能力の向上ぶりは驚愕するレベル。常人や生身の生徒が食らえば無事では無くなるだろう。

 

「何故、そんなに冷静なんですか」

 

 骨が折られても千冬は考察を述べつつも冷静であった。それこそ普段通りにコーヒーを飲む精神的余裕すらある。

 

「……奴がその様なパフォーマンスを行ったのも理由があったんだ。篩を掛ける為だ。女子だらけの空間で男子が1人居れば否応無しに目立つ。それに女尊男卑と言う風潮だからな。

 彼方側では女尊男卑では無いと言う事なのだろう……女尊男卑とは言うが大半の連中に当て嵌める様に体良く言ってしまえば弱い者虐めかISの威を借る女って言うのが実情だ。強い相手に挑める度胸は持ち合わせて居ない。ミゾレの様な常識を平然と無視しそうな奴なら尚更だ。下手に手を出せば大怪我じゃ済まない」

 

「……返って逆効果な気がしますけれど」

 

「誰も彼もが卑屈とは限らん。それに奴は別の世界からの異邦人。根本的にルールが違うから、通じないのは当然だ」

 

——暴力的行為が当たり前の様にも見える。技術関連は少なくとも向こう側が上手だろう。

 

「国際交流も難しいのですから異世界交流なんて夢のまた夢ですね……」

 

 と言うか同じ国の人間同士ですら仲が悪くなると言うのに文化と言うよりも認識が全く異なる人間と仲良くなれると断言出来ないだろう。

 

「かも知れんな。我々の世界でも常に歪み合って居るんだ。表面上は表立って武力行使はしないが水面下や思想的対立は根強く続いて居る……」

 

 そんな状態で今は彼1人しか確認出来て居ないが『並行世界』や『異世界』の存在が現実として証明されてしまった。他の世界はどうかは分からないがこの世界に蔓延している女尊男卑の思想回路からすれば、恐らく相互理解は難しくなってしまうのは容易に理解出来る。だからこそ、自分達だけで留めるべきなのだ。

 

「そんな不安定な状態だ。その上で奴の意図が読めたから敢えて受けた。が、流石に骨を折られたのは想定外ではあったがな……。しかし、それが理由でくだらん理由で奴に突っかかる馬鹿者は尻込みする筈だ。轟音で集まったからのは僥倖……恐らく全校に伝搬するだろう」

 

「それで、変な抗議が来たら如何するんですか?」

 

「何、『部外者であるお前らが口を挟むな。私が良いと言えばそれで良い』と突っ撥ねてやるさ……が、中には剛の者は出て来るだろう。好奇心は猫を殺すと言うが恐れん輩が」

 

「新聞部の副部長の黛さんが筆頭ですね……」

 

「ミゾレの性格は大凡、読めて来た。黛の行動は常人でも神経を逆撫でする。その相手がミゾレであれば喧嘩を売って居る様な行動に見える。売られた喧嘩は買うと公言して居る以上、その場で殺戮劇を繰り広げかねん」

 

——……その場で怒らせて死亡……ってオチが見えるな。彼奴は身体能力は高い方だと思うがミゾレが相手だとどうなるか分からん。

 

「……流石に学園内で殺人沙汰を起こせば洒落になりませんよ⁉︎」

 

「……奴もその事態は避けたい筈だ。が、状況が許すか分からん。一応、更識は手を打った様だが……其処は彼奴の手腕に賭けるしか無いな。ん?」

 

「織斑先生?どうしました?」

 

「いや、更識から連絡が……何、ミゾレを午後の部を公欠扱いにするだと? まぁ、良い。流石に生徒達の心境の問題もあるな……」

 

「……良いんですか?」

 

「ある意味、彼奴の存在其の物が精神的圧力があるのは言うまでも無い。生徒会室が密室となれば奴にとっても有益なのだろう。それに、彼奴にISの知識は重要ではあるまい」

 

 

 

 

 

 

 

 

「は〜い。ミゾレ君、いきなり派手にやってくれちゃったわね」

 

「……そう言うオチかい」

 

 のほほんさんに連れられて辿り着いた先はIS学園の生徒会室。其処では生徒会長たる楯無が『暴力厳禁』と言う文字が書かれた扇子を開いて見せながら出迎えてくれた。

 

「まさか、織斑先生の腕を蹴り折るなんてね。流石に驚愕モノよ。生身であの人に怪我……と言うか骨を折らす事が出来たのは貴方が初よ?」

 

「…………成程。のほほんさんがお前さんの部下なのか? 耳が早い事だ」

 

「……家ぐるみで関係があるのよ。よもや初日でそんな衝撃的な行動を起こすとはね。貴方の行動で世界各国は動揺しているみたいよ? 何せ、この世界で世界最強の織斑先生に手傷を負わしたのだからね。いざと言う時の為に本音を付けて正解だったわ」

 

「あん? どう言う意味だ? 何か仕組んで居たのか?」

 

「ええ。IS学園の生徒会長って結構、権限があるのよ。でも、今回は配置を初手で弄るだけで後は帳尻合わせただけよ」

 

「ふぅん……ツー事は生徒会とやらは」

 

「ええ、全員。貴方の事情を知って居るわ。と言うか生徒会は私の家絡みの人間で固めて居るから信用出来るから安心して良いわよ」

 

——生徒会は隠蓑か。となると……。

 

「……のほほんさんも唯の人間では無い。更識会長、お前さん、何者だ?」

 

「そうね。知っておいて良いかしらね。私は更識 楯無。日本の対暗部用暗部の更識家の現当主。昔から私の家系は諜報を担当する暗部なの。それで本音は布仏家。布仏家は更識家に代々仕えて来た家系よ」

 

「てひひ〜、そうなのだ〜」

 

「成程、腑に落ちた。更識会長の佇まいが常人のソレとは違っていたからな……」

 

「あら、気付いて居たの?それに相変わらず驚かないのね。正直、私の年齢で当主なんて知ったら驚くと思うけど」

 

「知って居る奴の中に同じ年代で党首をして居る奴が居るからな。大して驚かんよ」

 

「……其方の世界の話ね。案外、交友関係が広いのね」

 

「不本意ながらもな。で、更識会長はのほほん、いや本音か? 監視役として付けて居たのか?」

 

「まぁ、そうなるかしらね? でも今更ながら付けて正解だったわ。貴方の行動、割と洒落にならないわ……」

 

 ミゾレの行動は楯無から見れば洒落にならないと評した。

 

「それでね、おじょー様。ミゾッチがまた騒動を起こしそうだったんだよ〜。だから、危ないと思って連れて来ました〜」

 

「……大体読めて来たわ。恐らく薫子の一件ね……彼女の事だから昼休み辺りに嗅ぎつけて来る事は予想出来たから虚ちゃんに迎えに行かせたのだけど、入れ違いになっちゃったわね」

 

「……生徒会って何人居るんだよ」

 

「私達、3人よ」

 

「私は居ても仕事が増えるだけだから来ないのだ〜」

 

「……だから事実上、私と虚ちゃんの2人なのよ。まぁ、織斑君に加えて貴方の一件もあって仕事は山積みなのよね」

 

「……不時着して悪かったな」

 

「過ぎた事は嘆いても仕方ないわ。そう言えばミゾレ君の話をもっと聞きたいと思って居たのよ?」

 

「あん?」

 

「此処には私達、事情を知る者しか居ないわ。だから気兼ねする必要は無いし、私個人としても気になるのよ。私達の世界は女尊男卑だけど、女尊男卑の無い世界と言うのは興味があるわ」

 

「…………大して変わらんと思うがね」

 

「……それと貴方の事情柄、IS学園に在籍して居るのも一種のカモフラージュ。IS関連の知識は然程、重要ではない。生徒会長権限を使って午後の部は公欠扱いにして懇談会にしようって訳。昨日はゴタゴタして居たし、貴方にとっても都合が良いんじゃないかしら?」

 

「……俺としてはさっさと艦船の修理に取り掛かりたいのが本音なんだがな。それに繋がるのならば乗っても良い」

 

——正直、授業云々なんてやってられんからな……。

 

「決まりね」

 

「ねーねー、おじょー様。私は〜?」

 

「……本音、貴方は普通に授業に出なさい。仮にも世界で唯一の男性操縦者が在籍する1組の動向を探る役でもあるのだから」

 

「は〜い……」

 

 のほほんさんはそう言うや少し肩を落として生徒会室を後にした。

 

「さて、織斑先生に連絡にメールで連絡を入れて、と。コレでOKね。それじゃあ、早速始めましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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