カウンター・ストラトス   作:夢現図書館

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歓喜

 

 

「……やれやれ、少し話し過ぎたか」

 

 生徒会室から離れたミゾレ。楯無に対して話し過ぎたと自粛したくなる。お互いの世界は知らぬが吉である。

 

『朝の行動は推奨出来ませんよ。貴方のウォッチのCRFの数値は既に危険域なんですよ⁉︎ これ以上、使えば……‼︎』

 

「ああ、分かって居る」

 

——……最低でも第三種、運が悪ければ第四種相当と言えるな。まだ何とも言えないが恐らく甚大とも言える犠牲が出るだろう。

 

「異世界と言うのも又、難儀なモノだ。此方の常識がまるで通じやしない」

 

 自分が正規の方法だと知って居る金稼ぎ方法が此方では違法とまで言われた。と言うかそれ以前に傭兵の需要がまるで無いとも言われてしまった。

 

「モネカ。現在の艦体の状態でダイブすればどうなる?」

 

『無謀です。現段階の艦船ではダイブした直後、お腹から真っ二つになっちゃいます。それにダイブ自体も後、1回が限界ですし……如何に私でも現段階の艦船では制御が難しいので何処に不時着するか分かりません。せめて、艦船自体の修理が完了しなければとても……』

 

——やはり最低限度、艦船の破損率が1割未満でなければ強行は無謀か。艦船の修理も重要だが……今現在の優先事項はエタニウムの確保だ。

 

 エタニウムとは裏世界で採掘出来る希少鉱石。それは凡ゆる分野で用いられる資源だ。そして、それはカウンターの持つウォッチにも使われる。ミゾレもカウンターであり当然、ウォッチを所持して居る。モネカの言う通り、既に数値は危険域。早急にウォッチにエタニウムをチャージしなければならない。本音を言えばこれ以上の戦闘行為自体も避けねばならないのだ。もし、CRFの数値が0を示した時……ミゾレは死ぬ。

 

「流石にエタニウムの概念をこの世界の連中に教える訳には行かないな……有用性はあるにはあるが……」

 

——独り占めとは言い方は悪いが……コインの表裏の様なリスクとしては余りにもデメリットが大き過ぎるだろう。

 

『…………データベースのアップグレードした所……この世界の人達の思想は、個人的にはやや危険域に該当します。世界全体がアンダーグラウンドみたいですね。ミゾレさんも充分、気を付けて下さい』

 

「その癖、表向きは法律だの何だので一杯一杯か……インテリヤクザかっての」

 

——……然し乍ら、更識会長が何かしら企んで居るな。……何を企んで居るのかは知らんが主導権を取られるのは面白く無い。

 

『……ミゾレさん。CSEレベル1.0が発生して居ます‼︎』

 

——は?

 

「おーい、モネカさんや。今、現状況では全く持って想定外にも程がある単語が聞こえたのだが……幻聴でも幻覚でも気の所為だろうか?」

 

『……ですからCSEレベルが1.0です。つまり、この世界で侵食現象が発生しています。発生地点まで距離はおよそ1km』

 

「……あー、そう……俺個人的には嬉しいんだが後の事を考えると素直に喜べんな」

 

——俺の居る世界のキチガイ連中ならば兎も角、此処の世界の連中は如何にも、期待出来そうに無さそうな気がする。まだ、数人しか見て居ないから何とも言えんけれどな……。

 

『しかし、レベルは1前後で上昇段階は緩やかです。現時点では未調査故に侵食コアの有無は不明です』

 

「逆にCSEのレベルが1ってのもある意味、レアケースだろ。大概がレベル2前後だと言うのに……が、規模が小さいからか侵食現象を引き起こす侵食体は此方に浮上しなければその領域を広げるのは無理だろうな」

 

『……はい。このレベルですと第一種侵食体しか現れない事が予想されます。ですが、侵食現象やカウンターサイドでは何が起こるか分かりません』

 

「そうだな。さて、起きてしまった以上は仕方ない。コレが幸運か不運かは当事者にとっては如何様にも映る事だろう」

 

——如何に第一種侵食体と雖も、侵食体は侵食体。今は少量と言えどエタニウムは欲しい。小さくともエタニウムはエタニウム。普段ならば少量や純度の低いモノは誰も見向きもしないだろうが、現況は無視はしない。

 

『衛星のクラック完了。IS学園のセキリュティOSに侵入、掌握完了。地図データの情報をアップグレード完了。ナビゲート開始します』

 

 モネカから情報過多と言える報告が届く。こう言う時、彼女はとても頼りになる。

 

『改めて通告します。相手が第一侵食体と言えど、現在のミゾレさんのCRFは依然と危険域です。侵食現象の規模が小さくとも決して油断出来る事態ではありません。更に艦船の修理も依然と進んでいませんので支援攻撃が出来ません』

 

「ああ、充分理解している。第一種と言えど、此方に浮上して来た連中が俺の手に負えない強い個体であるならば異界の地でくたばる事になるな」

 

『…………』

 

「冗談だ。俺は此処でくたばるつもりは無い。まだ『ゲーム』が始まってすら居ないのに葬式の予定なんて見積もって居ないからな。それに仕事ならば兎も角『ゲーム』に遅刻欠勤なんて真似をして見ろ、副社長にどんな目に遭わされるか分かったものでは無い」

 

『……そうですね。では、3時方向に直進して下さい』

 

 侵食現象が発生して居る現場へ向かう。侵食はその名の通り、徐々に侵食して行く。規模は小さくとも徐々に広く大きく深くなって行く事だろう。何も知らない人間であれば、その現象に為す術は無い。

 

「ぶっちゃけ、此処の学園の人間が居たら本当の意味でご愁傷様としか言えんな……」

 

——侵食被災は現時点であっても明確な治療法は無い。現状維持による延命が限界……。ましてや、屑砕のエタニウムしか無い今、どうする手立ても無い。

 

 悲劇が起こる原因はいつだって当事者にしか無いのだから。

 

 

 

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