カウンター・ストラトス   作:夢現図書館

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侵食

 

 

 

 

 

「……来たぞ、ミゾレ。立ち入り禁止の要請までするとは何事だ?」

 

「大事な話なら場所を選んだ方が良いんじゃないかしら?」

 

「それに……如何やって我々の連絡先を知った? そもそもお前は携帯の類を持ち合わせて居ないだろうに」

 

 モネカに指示を出して此方の事情を知って居る千冬と楯無の2人を第四整備室に呼び出した。こう言うのは実物を見せて話す方がやり易い。

 

「……そんな下らない話をする為に呼んだ訳じゃない。まぁ、見れば分かる」

 

 第四整備室前の廊下で2人を待って居たミゾレは一足先に中へと入っていく。廊下の時点で罅割れた壁が見えていたので嫌な予感がしつつも後に続いて整備室内に入り目に飛び込んで来た物体を見て目を丸くする。

 

「な、何だ……コレは⁉︎」

 

「グチャグチャになって居るけれど、コレは……‼︎」

 

 一部が崩落した天井。

 ボコボコに崩れた壁。

 罅割れた床。

 その何も痛々しい限りではあるがそんな戦闘か破壊の痕跡よりも1番、気になったのが部屋の中央に積み上げられた黒と赤の残骸らしき物体。粉々だったり崩れていたりと原型は分からないが酷い損壊具合であると言う事は分かる。

 

「ミゾレ……コレは何だ……?」

 

「更識会長には昼間、触り程度には話したよな。カウンターと侵食体の話」

 

「ええ……貴方やその世界がどれだけ物騒かも含めてね」

 

「その辺は後で聞かせて貰うが、それでアレは何だ?」

 

 千冬と楯無は情報を共有して居ない。情報量に差があった。

 

「アレが侵食体。その亡骸の残骸だ」

 

 2人ともカウンターと言う能力者が侵食体と呼ぶ存在と抗戦して居ると言う情報は最初に聞いて居た。その侵食体の残骸が目の前に積み上げられている。

 

「コレが……侵食体、の残骸なのか……。じゃあ、生きて此処に現れたと言うのか⁉︎」

 

「ああ、そうだ。一応、聞くがこんな現象は過去にもあったか?」

 

「いいえ、聞いた事は無いわ。当時の状況を教えてくれる?」

 

 呼称は違うだろうと判断して類似現象が起きた事はあるか尋ねるが楯無はすぐに否定した。千冬も取り分け聞いた事が無いので恐らく無いのだろう。

 

「状況は順を追って話そうか。知らん単語が出るだろうがその都度、質問してくれ」

 

「ああ、分かった。続けろ」

 

「更識会長の生徒会室からの帰りに侵食と呼んでいる侵食現象が発生したのを観測した。現場は此処だ。CSEレベルは1前後」

 

「そのCSEとは何かの略称か?」

 

「Counter Side Effect.表世界はノーマルサイド、裏世界をカウンターサイドと呼び何らかの要因で重なる時、侵食が発生する。侵食が発生した地域、地帯を侵食地域や侵食地帯と呼んでてその地域では超常現象が発生し侵食体が出没する様になる。その超常現象の強さに応じて5段階のレベル。即ちカウンターサイドエフェクト。略してCSEレベルで分類される。基本的に数字が大きい程、危険性が高まるし強力な侵食体が現れる可能性が高くなる」

 

「成程ね。レベル1なら?」

 

「第一種侵食体に分類される大概が小型程度の侵食体が現れる。大体、大型犬位の大きさから人型に近い連中だな。少なくとも雑魚の部類だが、小型であるが故に集団で現れる事が多く、単独である事はまぁ無い。が、小型と雖も人間からすれば強大な力を持つ生命体だからな」

 

「……死骸だから何とも言えんが大型犬と雖も襲われたら厄介なのに、群れるのか……。生身でかつ群れで襲われたら命は無かろう」

 

「まぁな。侵食体と言ってもかなりの種類が確認されているが、概ねノーマルサイド……つまり此方側の世界に対して強い憎悪を持って侵攻する。今回現れたのは通常の侵食体だ」

 

「それで観測したってのは置いといて、貴方は此処であの侵食体を倒して居たと言うのね」

 

「1人でやるのか。お前の性格上、中々事情を話してくれんと言うのは分かっては居たが……一言、連絡くらい入れたらどうだ? そもそも学園内での非常事態に分類されるから、増援くらいは寄越すぞ。事情を知って居る奴は限られるから、増援として送るとしたら其処の更識とか」

 

「そうよ。貴方が1番分かって居るとは言え……正直、集団で現れて1人で大立ち回りするのは危険だと思うのだけど……」

 

 侵食体と言うミゾレの世界の敵対生物の出現。勝手は違うとは言え此方の世界のこの学園に現れた以上、未知との遭遇と言う緊急時の為に対応しなければならない。その為、連絡くらいはして欲しかったと2人は告げる。

 

「そう言う訳には行かない事情があるんだよ、理由は後で話す」

 

 しかしながらミゾレにもミゾレなりの理由があった。それは増援として現れても役に立たないと言うよりも後で地獄を見ると言う理由だった。

 

「この整備室に侵食体が湧いててな纏めて片したは良いが、CSEレベルが上がって侵食体の増援が来てな。其処で最悪のパターンが発生した」

 

「最悪のパターン、だと……⁉︎」

 

「この整備室に部外者たる生徒が居たんだと、然もコイツらよりも一回り大きい第二種侵食体がその生徒の眼前に現れた。ソイツが今回の侵食現象の原因。オマケに増援を呼びやがったのもソイツ」

 

「「なっ⁉︎」」

 

「詳細は省くが、この整備室を壊しながらもその第二侵食体は仕留めた。同時に侵食現象も解消された。で、侵食体が現れると言う事実が発覚した以上、話しておこうと思ったからだ。コレっきりとは保証は出来ないからな」

 

 流石にある意味、ISをぶっ壊したと言う事実は伏せておく。然も2、3億円は掛かると言うのだから戦闘の余波で壊れた事にしておいた。ある意味、間違っていない。原因は自分だが。

 

「おいミゾレ。その生徒は無事なのか⁉︎」

 

「五体満足で見た感じ、怪我らしいモノは無かった。一先ず病院に行けとは言って退避させた……………」

 

「何故かしら、後半は何か言いにくそうなんだけど」

 

「……五体満足で怪我が無いとは言ったのに何が不満なんだ?」

 

 怪我は無かったのに何故か言い淀むミゾレに不安感が募る。

 

「……俺が最悪のパターンだとと言い、織斑教諭達に連絡を入れなかった理由(・・)だ。変に言い換えず単刀直入に言おう。何の対策も無く侵食現象が発生した地域に出入りすれば侵食変異……専ら侵食症候群と呼ばれる病状が発症する可能性がある」

 

 

 

 

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