『えっと、見た事の無い装備で来ます‼︎ 注意して下さい‼︎』
「成程。如何やら、既存の認識とは違うか……それは用心しないとな」
人工音声からの警告を聞き、少年は高速で接近して来ると言う飛行物体を肉眼で視認すべくその方角へ視線を向けた。その先には確かに此方に接近して来る物体が見えた。
『近距離攻撃装備起動。エタニウム残量に注意して下さい』
「分かっている。さて、どう出てくる?」
開幕早々に戦闘が発生する可能性が高い。と言うよりも経験上、結果的にそうなるケースの方が多かったと言う確信に近い懸念であった。
「おい、其処の男、何者よ⁉︎ 此処はIS学園の敷地内よ‼︎」
そして、肉眼でハッキリ認識出来る範囲内に飛行物体が接近した。白と藍色の配色の機械鎧を見に纏った人間が飛行しているのが見えた。口調からして女性、そして警邏中の警備兵だと思われる。飛行スラスター
——ふむ。フィーチャーアットウォーの新型巡行機械の類では無いな。ブラックタイドやスチールレインとも違う……旧管理局の遺物、でも無いな。俺から見ても未知の兵器、か。コレクターが見れば嬉々として蒐集したがるやもな。
『やはり該当データはありません』
——それにIS学園なんて単語も聞いた事が無いな。海洋に浮かぶ島に位置する学園、か。あんなゴツい見てくれの警備兵も配備となると機密レベルの高い組織と見た。一応、ダメ元で対話を試みるか。
「悪い悪い、高深度の裏世界を巡航中にちとトラブッちまってな……。飛んだ先で此処に不時着しちまってよ。他意は無ぇし、敵対する意図も無い。まぁ……お宅の敷地内に不法侵入しちまった事は素直に申し訳ない」
巡航中にアクシデントが発生して規定外の座標に浮上するケースも無い訳では無い。裏世界では不測の事態は頻発して然るべき環境。その関連の対応は管理局が統括している。その際の被害対応手順も完備されている(それでも極力起こさない事が通達されている)。
「何を言っているのか分からないけど……男は須く死になさい‼︎」
その怒号と共に随伴している警邏兵も銃火器の類を構直しその銃口を此方に向けて来る。如何やら、相手はやる気の様である。
「ま、こうなるわな。大抵の連中は自分の縄張りで騒がれるのは良しとしない。が、後悔しない事だ」
「後悔するのはアンタよ‼︎ 男の分際で粋がるな‼︎」
その言葉の直後、上空から銃弾が雨の様にばら撒かれる。数秒経たずに着弾する弾丸の群、普通の人間ならば蜂の巣となっていよう。
その光景を見ても少年は怯まない。
降り注ぐ銃弾の雨。
その雨に対して少年は腕を振るい地面の土埃を舞わせる。それでも尚、撃ち降る銃弾の雨。
「やったわッ‼︎」
「プロなら『やった』とかの台詞は早々、吐かねぇモンだよ」
「……ッ⁉︎」
手応えの声を上げた直後、背後から声が聞こえる。自分達と同じ高度にあの少年が居たのだ。気付いた直後、回し蹴りを叩き込まれ自分が地面に叩き付けられる。
「な、い、いつの間に⁉︎」
『CRFの残量が危険域ですッ‼︎ 多用は推奨出来ませんッ‼︎』
「ああ、分かっている。非カウンターなら一撃で終わらせれる。死ぬなよ?」
そう告げた直後、淡い電流が伴う光が収束され高速で形成されて行くは銃火器の形状をしたナニカであった。
「量子変換⁉︎ 部分展開が出来ると言うの⁉︎」
——量子変換は社長のお陰で理解出来るが、部分展開の意味が分からんな。独自の用語かもな。
「生憎と現況、閊えている状態でな。何、コイツはミテクレだけだ。ま、銃火器としては既に本懐を遂げた後なんだが」
鈍い音。少年は銃火器のミテクレを振るい顔面に叩き付けた。鈍器の様な音を響かせて地面に叩き落とす。地面に激突し轟音が響き渡る。
銃火器の形状こそして居るがソレには銃火器としての本分を機能する能力は備わって居ない。一言で言えばスクラップ……先の裏世界での戦闘で弾薬切れで鈍器としてしか使い物にならなくなった成れの果てである。
「貴様ッ⁉︎ ISも展開せずにどうやって……⁉︎」
「あいえすぅ? 知らねえな、そんなモノ。取り敢えず隙だらけだ、ねーちゃん」
鈍器と化している銃火器を投げつけ視界を潰した直後に脳天から踵落としを喰らわせる。その衝撃は砲弾の威力に匹敵し、真下へと墜落。三度、轟音を響かせて地面に激突した。
「ったく。コイツは見事なスクラップだな……銃火器自体も安くは無いんだが、コレで元は取れただろ」
『弾切れの銃器を鈍器として使うなんて……』
「補給無しの消耗戦に縺れ込んだんだ。エタニウムの量も限りがあったからガラクタでも使えるものは使わんと。ただでさえ俺の能力はドカ食いだからな。まぁ、元々……コイツは第三種以上の侵食体相手に殴り合う設計じゃねぇし」
空中に居た3人を地面に叩き落とした後、自身も地上に着地する。3人の内、2人は気絶しているのか動かない。死んでいるかも知れないが……。
「……せ、世界最強たるISが……非武装の男如きに……‼︎」
「お、生きてたか。誰彼構わず殺しまくると面倒ってのを知ってるからな。しかしながら、バリア装置か……その大型の外骨格は見た目以上に高性能な様だ。が、ま……未完成っぽそうだな」
最後に墜落した女性が驚愕した様な顔で現実を受け止め切れずに言葉を溢す。
「さっきから訳の分からない事を……‼︎」
しかしながら先程から会話が噛み合わない。愈愈、懸念して居た事項が現実味を帯びて来た。だが、早計ではある。何せ、この世界の1%すらまだ見ていないのだ。
「問おう」
故に口を開く。
「質問したいのは此方だ。不法侵入者」
その時、割り込まれる形で別の声が聞こえてきた。視線を向ければ其処には長身の女性が日本刀を片手で担いで歩不敵な顔付きで其処に立っていた。
「……先程、正体不明の戦艦らしき物がこの近辺に不時着したと聞いたからな……来てみれば貴様が居たと言う訳だ」
——成程。服装からして発展途上国では無い。日本やアメリカと言った先進国の人間……。
「……警備兵の隊長格、と言った所か。成程、話が早い」
「先に私の質問に答えろ。貴様は何者で、目的は何だ?」
鋭い眦。武人のソレと彷彿させる威風堂々とした佇まい。警備兵は役割に則ったに過ぎない。話が成立しそうだ。
——面倒だな、カマ掛けて見るのが手っ取り早いか。
「何者か。そうだな……カウンターと言えば分かるか?」
「反撃……? ソレが貴様と如何繋がる?」
「CSE。侵食波。裏世界。エタニウム。タスクフォースカンパニー。管理局。この単語について何処まで理解できる?」
コレらは少年が住む世界ではありふれた単語であり一般常識レベルの用語である。一般人でさえその意味を理解出来る。
「……何だ、それは?」
返ってきた反応は大凡の予想通りの内容。確定であった。
「……成程成程。当たって欲しくは無かった現実が真となってしまった。あーあ、果てしなく面倒臭い事になった」
頭を掻いた。懸念事項の中で面倒極まりない類の状況だ。コレがまだ並行世界ならば多少はやりようはあったのだが……
「……質問に答える。単純明快、俺は異世界からこの世界に流れ着いてしまった、端的に言って遭難からの緊急不時着。お前さんが報告を受けた戦艦と言うのも俺の艦船で間違っていない」
「異世界?不時着?……まるで意味が分からんぞ⁉︎」
——ま、そうなるよな。女パイセンのお陰や裏世界の存在から俺は普通に流せるけど……認知外だとその反応は然りだな。
「……成程。この世界は別次元の概念は創作や空想の類なんだな。目的に関しても遭難の類故にクソも無い。従って、現況としては状況把握が最優先事項となっている。警備兵を已むを得ず再起不能に近い状態にしてしまった件に関してはすまないと思っている。此処で死ぬ理由は無かったのでな……」
「……まだ理解は追いつかないが、貴様に敵対する意図は無い、と受け取って良いのか?」
「其方が戦争したいのならば、已むを得ない。まだ死ぬ訳には行かぬ……全力で叩き潰すしか無い。しかし、希望出来るのならば情報把握の為に対話の機会を設けて貰えるならば少なくとも友好的な関係となるだろう」
少年は其方が敵対する気が無いのならば此方も敵対はしない旨を伝えた。後は、向こうの出方次第。確かに、此方は疲弊して居るがこの程度で息の根を上げては師匠に殺されても文句は言えないだろう。
「良いだろう……。だが不審感は拭えない事は肝に銘じておけ」
「その反応は当然だ」
一応、敵対状態は解除。しかし、不審感は拭えないのは当然である。何せ相手は正体不明の自称異世界人と名乗ったのだから。
「……恐ろしい位に落ち着いているな。高校生くらいなのに肝が据わって居る」
「コウコウセイと言う単語は馴染みが薄いな。俺からみれば少々遠い世界だ」
「…………まぁ良い。此処で話すのもアレだからな。場を設ける……着いて来い」
——さて、コレから如何するか。副社長に長期出張の申請は出したとは言え期間超過は免れんなぁ。