「さて、此処でクイズを出してやろう。そのウォッチの数値が0になった時、何が起こる?」
ミゾレの問い掛け、それは千冬や学園長、そして更識姉妹に向けられた言葉。
「……まさかとは思うが、侵食体になる、と言いたいのか?」
「正解だ」
答えたのは千冬だった。その解答にミゾレは正解と答えた。その事実に、動揺が走る。
「正確には『デーモンタイプ』或いはシャドウと区別される種類の侵食体だな」
——一般の人間が侵食されると侵食体になるがカウンターが侵食され切った時、より強大な侵食体に変貌を遂げる事となる。
「また違うのですか?」
「侵食体の上位存在と考えて良い。元々強いカウンターだった場合、比例して強力なシャドウに変貌を遂げる事となる。自分で言うのもアレだが、俺自身が侵食体となった場合、かなり強力なシャドウと化すだろう。俺の世界の基準ならば第四種相当……国が滅亡の瀬戸際の窮地レベル。
其処の簪の場合でも、現状のこの世界の技術水準の場合……先進国の1つや2つ、壊滅するだろうよ」
「「「…………」」」
頭ごなしに鵜呑みにする訳には行かない情報。しかし、ミゾレが嘘を吐く理由は無い。
「……だからあの時、その時が来れば全力。つまり初期の時点で叩けと言ったのね」
「そう言う事だ。変異したてならば隙を突くくらい、出来ない訳じゃないだろう?」
寧ろ出来なかったらとんだマヌケだ。
「……ミゾレ、1つ質問良いか?」
「どうぞ。と言うか数値を上げる方法って言うんだろ?」
「ああ、その通りだ」
「ああ、ある。と言うか織斑教諭には前にエタニウムの説明をしたよな? アレ、艦船やら薬の材料以外にももっと重要な役割。ウォッチにエネルギーをチャージさせる事で数値を回復させる事が出来る。と言うか現状、それ以外に方法が無い」
「……成程、つまりエタニウムを確保出来れば侵食体に成ら……そう言う事なのね⁉︎」
其処で楯無がミゾレが『時間がない』だの焦っているだの告げた理由を理解した。そもそもエタニウムの話は初耳だが、初耳だからこそ理解した。
「そうだ。この世界ではエタニウムを確保、供給する術が無い。チャージする方法が分かっても侵食が跋扈する裏世界に行く手段が無ければ意味が無ぇ」
「それに私達……いえ、この世界にとってその世界に行く手段である貴方の艦船の修理をしなければそれすらもままならないのですね」
「ま、そう言う事だ。何事も無く平穏に過ごせば人並みの寿命は過ごせると思うがな」
簪の立場上、それは難しいかも知れない。
「……話は分かった。いや、分かりたくは無かったが……生徒をみすみす見殺しには出来んし、この手で殺したくは無い。学園長」
「はい。ミゾレ君、1つ契約を交わして頂けませんか?」
「内容によるが?」
「IS学園は貴方に対して全力で支援します。代わりに更識簪君の為にもそのエタニウムの確保に協力して頂きたいのです」
「他にも侵食体云々はその概念が現れた以上、お前に任せきりにするつもりは無い。しかし、そのノウハウ位は伝授して欲しい。お前も分かっていると思うが、我々が隠蔽工作しても侵食は無差別に起こると言う以上、各国政府に発覚するのは時間の問題だ」
「ならアドバンテージは此方が握っておいた方が後々、有利になるのは明白。貴方にとっても有益な取引だと思うわ」
「……成程。確かに、魅力的な提案だな。何はともあれ、俺は艦船を火急速やかに修理し裏世界にてエタニウムを確保しなければならない。その傍で簪の分を調達する。簪と言う前例が現れた以上、他にもカウンター能力者が現れる可能性もあるだろう。其方の件は其方の判断に任せる、其方の世界の住人だからな」
「ええ、任せなさい。それで、受けてくれるの?」
「受けるも何も、そうしなければ話が進まん。良いだろう、その提案に乗ろう」
「有り難う御座います。貴方にとっても時間が足りないでしょうから今から修理作業に取り掛かりましょう」
「ああ、そうだな」