視点が変われば見えるモノも違う。
生きる世界が違うのであれば尚更、そう映るだろう。
第六アリーナ。
IS学園の学園長との取引にて、ミゾレは元の世界に帰還する迄の間、このアリーナ全域の使用権限を得た。このアリーナは現在は使われておらず放置されていた為に此処を拠点とする運びとなった。本校舎ともに距離が遠く、他人との干渉を極力減らしたいミゾレからすれば願ったり叶ったりの状況と言えた。
『短距離次元跳躍完了。艦底部の損害軽微。エタニウムドライブのチャージ効率60%低下が予想されます。連続使用は推奨されません』
そして第六アリーナは完全屋内で天井は湾曲した屋根で覆われており外部からの目視を遮断出来る。元々は屋内戦を想定していたのであろうが、使われない理由に繋がったのだろう。その辺の事情はミゾレにとって興味は無かった。
「ドローン解放。まもなく修理用の鋼材が搬入されるから可能な箇所から進めてくれ」
『命令受付完了。修理用ドローン、全解放。オーダー指定、外装部より修理を開始します』
短距離同次元跳躍で第六アリーナ内に跳躍し、アリーナのほぼ中央に着陸したアンカレッジ。独力でなけなしの鋼材だけで行っていた為に今だに手付かずの状態のままである。だが、事態が進んだ為に一先ずミテクレ程度は修理が進む事が予想される。
「ステルスモードを解除された状態を初めて見るけれど、予想よりもかなり大きいわね」
「……だが、素人目から見ても酷い損傷のダメージだと言わざるを得ないな」
「お前ら何しに来たんだよ……」
「あ、改めて見ると凄い技術、ですよね……」
「で、でも……かなりボロボロ」
アンカレッジから飛び降りたミゾレ。その着陸した先には楯無と千冬の2人がいた。その後ろにはまだミゾレが怖いのか千冬の後ろに隠れている真耶がいるし、他にも簪も同行していた。簪としてはアンカレッジを見るのは初めてなので、その全貌に驚いている様子だ。
「折角、協力契約したのだからちょっと見学にね。今まではステルスモードやら周りの木々で良く見えなかったから」
「単純に人手が必要だろう? ISを使えば多少なりとも修理の進行が進むと思ってな」
単純に先程の話で手を貸しに来た様である。
「そうかよ。で、鋼材の件は?」
「貴方の事だから、第三者に見られたくないでしょ? 第六アリーナの搬入口に入れておく様に業者に通達したわ。でも、流石に1日の猶予はちょうだいな」
発注したのは今日、今日中には届かないと言う。修理する気満々だったのに拍子抜けとなってしまった。
「遅過ぎないか?」
その言葉に千冬は半目になって呆れる?
「……お前の世界ではどんなに速いんだ?」
「プラチナって言う運送会社は即日だったからな」
「じ、常識的にも物理的にも凄まじい企業ですね、それ……」
ミゾレ自身も色々、ぶっ飛んでは居るのだが、その世界の常識も色々と可笑しいと痛感して真耶は戦々恐々となって相槌する。
「……焦る気持ちは分かるがコレばかりは我慢しろ。それで……お前の艦船。かなりデカいな」
話題は今も修理中のアンカレッジ、ソノモノに移る。外装の大半が夥しい穴だらけ、引き裂いた痕、抉れて中が丸見えと言う痛々しい姿である。
「コレでも小型艦船の部類に入る。大型となるとお前らの学園の校舎一棟分くらいにはなる」
「コレで小さいと言うの⁉︎ それはまた……」
「……しかし、かなりのダメージだと思うぞ。お前の言う裏世界、そして侵食体との激戦が想像出来るな」
「「「…………」」」
大破と言って良い程のダメージ。かなりの激戦であった事を想像させる。
「まぁ、第四種を筆頭に第三種やらそれ以下の大群が相手だとな。流石に限界は来るものだ」
「群れる、の?」
「当たり前だ。単体で現れる事は、早々ないな。……侵食地帯で取り残され孤立した人間が侵食体に変貌する事を除けば」
「……山田先生。今後の事を考慮してツーマンセル以上の人数で行う訓練を授業に盛り込もう。……後になって始めてからでは遅過ぎる」
「で、ですね……」
その話を聞いて千冬は直ぐに予定していた授業内容の変更を視野に入れる。多数相手となるとワケが変わって来るからだ。
「……何だ、乱戦は不得手か?」
「いやぁ、ISって基本的に図体が大きいし単体相手が想定……或いは多数のISが1人の侵入者を制圧……。貴方と初めて遭遇した時の構図しか考えられて無かったのよ」
ISにはISしか勝てない。そう考えられていたけど、貴方がその幻想をぶち壊しちゃったけどね。とも付け加えられた。変な所で干渉してしまったらしい。
「やれやれ……想像力の欠如と言うのは如何し難いモノだな」
「ね、ねぇ。ミゾレ君……」
話が区切れたタイミングで今度は簪が声を掛けて来た。一応、彼女はこの世界で初のカウンター……まぁ、気にかける程度の理由はある。
「何だ?」
「か、艦橋に行っても良い……?」
軍艦と言った艦船に乗る機会なんてほぼ無い。IS操縦者と雖も、軍属で無ければ早々無いだろう。それが未知の世界で尚且つ次元艦船と言うまた違う艦種。
「……それは私も気になるわね。折角の機会だし、私も同行して良いかしら?」
「興味が無いと言われると嘘になる。興味本位でお前が良ければ見てみたいが、どうだ?」
楯無と千冬も興味本位ではあるが便乗して来る。見応えがある場所は無いと思うのだが……。
「……はぁ、内部も良い打撃を喰らいまくってて見応えある様なモンは無いぞ?」
『まぁまぁ、ミゾレさん。折角の協力者ですし、その程度なら問題は無い筈ですよ?』
「その位の事情は把握している。流石に何も無い所で寝るのもアレだろう。場所さえあれば寝具くらいは運ばせるさ、更識姉にな」
「え⁉︎ 織斑先生⁉︎」
変な所で振られてしまう楯無。
「やれやれ、次元艦船に興奮するとか物好きな連中だな」
「貴方の認識ではそうかも知れないけど、私達からすれば艦船どころか船に乗る機会すら一生に1回あるか無いか、なのよ?」
「そうかい……。取り敢えず機材の類とか触らないでくれよ?」
「ああ、分かっている」
「え、えっと私は⁉︎」
「ああ、山田先生を忘れていた。構わないか?」
「一々俺を見て怯えないでくれるなら」
すっかり蚊帳の外にされていた真耶も一緒にアンカレッジの艦内へと入る事となった。