カウンター・ストラトス   作:夢現図書館

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邂逅

 

 

 

 

「……名前を聞いていなかったな。敵対する意図が無いのならば答える筈だ」

 

「ミゾレ、とでも呼んでくれて構わない。かく言うお前さんは?」

 

「私は此処、IS学園の教師をしている織斑 千冬だ」

 

——教師? 成程……校舎の様な建物……と言うには中々、自己主張の強いデザインの建物が多いモノだ。

 

 織斑 千冬と名乗る女の後を歩いて行きIS学園と呼称される建物の廊下を共に歩いて行く。

 

「此処は学校だったか。ソレにしては随分と警備員は大仰な装備で些か物騒だな」

 

「無論、此処は唯の学園では無い。その辺は場を設けて説明してやる。とは言え見た所、貴様は自力であのISを一撃で無力化した。然も生身でだ」

 

 口調は厳しさと冷徹さ、そして警戒心を内包しているがミゾレからすればフレンドリーに感じられた。

 

「ISってのはあの女達が纏っていた強化外骨格見たいな奴か? 随分とデカい代物だな」

 

——オマケにハイレグ見たいな薄っぺらい服を着ていたな……。あんな格好で空を飛び回って居る光景って……端的に痴女にしか見えないが、この世界の貞操観念は如何なっている事やら。まぁ、どこの世界でも頭のネジを紛失した奴は居るモノだな。

 

「強化外骨格か……。まぁ、その認識で間違っては居ない。繰り返すが生身でISを沈黙させると言う時点で我々からすれば驚愕モノだ。実は何かしたのか?」

 

——何かした、と言う訳では無いな。

 

「普通にスクラップ寸前の銃火器の銃身でブン殴っただけさ」

 

「……それでISのシールドバリアを粉砕出来るモノなのか……? 後、普段通りでスルーしがちであったが、貴様……かなりの重傷だ。あんまりにも健常者ぶりで流してしまう所だったが」

 

 其処で思い出したかの様にミゾレの方に視線をズラす。ミゾレの状態は頭から血を流しており両腕も血塗れで痛々しい限り。しかしながら本人は何とも無いような態度である。

 

「ああ、コレか?包帯を巻く暇無くて応急処置代わりにキツめの鎮痛剤をぶち込んだからな。痛覚死んでたから忘れて居たわ」

 

——ベロニカから貰った奴が変な所で役に立ったわ。まぁ、多用はヤバいのは承知の上だけど。

 

「包帯巻く暇が無かった?」

 

「此処に来る前は裏世界で盛大な戦闘しててな。流石に継戦出来ねぇからトンズラしたは良いが、無茶の重ね掛けで偶然此処に来ちまったんだよ」

 

「その辺は後で聞く。それよりも其の儘で学園内を彷徨くのは敵わん。医務室で包帯なりガーゼを巻いておけ」

 

「そりゃどーも」

 

 対話の場の前に医務室に寄り道して流血する疵口を包帯やガーゼで止血しておく。流血を放置して普通に動き回ると言うのは千冬から見ても常軌を逸して居た。

 

「……織斑教諭。この世界は平和か?」

 

 包帯を巻きつつ窓ガラスから見える蒼穹の空が見えその下に広がるIS学園の敷地内と橋を挟んで遠くに見える対岸の街並みを見てミゾレは唐突にそう尋ねた。

 

「唐突に何だ? まぁ……日常的に血が流れない事を平和と呼ぶならばそうなのだが。少なくとも表面上は平和と言っても良いかも知れん」

 

「……此処は唯の学園では無いと言ったな? あの装備を見てふと思ったが、この世界基準で其処までせねばならん理由があるのか? 例えるならば何かしらの脅威が存在するとか」

 

「……………」

 

 その問いに千冬は言葉に詰まった。表面上は平和とは言った。此処が普通の学園では無い事も告げた。それを踏まえ、ISと言う強化外骨格を用いてまで警備する理由を尋ねた。

 

「……ま、理由は色々あんだろうな。話す理由が無ければ構わん。この世界(・・・・)の事情に好き好んで首を突っ込む程、野暮じゃない。俺が逆の立場ならばそうするかも知れないからな。部外者の手を煩わす理由が無いってな」

 

 そう自己完結させミゾレは包帯を巻き終える。多少、邪魔な気もするが1日経てば大体、血は治まるからそれまでは我慢は出来る。

 

「……すまん。流石に自称異世界人にどう説明したものかと考えて居た」

 

「相手にとって未知の概念を説明する時、悩むのは仕方ない事だ。相手がどれだけ理解出来るか計りかねる事は多々ある事だからな」

 

——ストレガ連中の話は頭が痛くなるだけだったからな。アイツらの元凶で起きた騒動は真面目に死ぬかと思った。彼女の腕力のヤバさを思い知ったよ。

 

 その後、学園長室と言う場所に案内された。其処では初老の老人と制服らしき服を着た同年代と思わしきこの学園の生徒らしき少女が待っていた。執務机の前に置かれた両向かいのソファに対面する形で座る。

 

「……さて、先ずは初めましてと言いましょうか。唐突な形で大した用意は出来ていませんがご容赦の程を。私はこのIS学園の学園長を務めている轡木 十蔵と申します」

 

「いや、大変不本意な上にお宅の敷地に不時着しちまった此方も悪い。突然の来訪は申し訳なかった。俺はミゾレと言う。今回の場を設けて頂き有難い限りだ。ま、其方の警備員をボコってしまったのは申し訳無かったが」

 

「いえ、彼女達の件は職務を全うしただけです。まぁ、態度に関しては指導を徹底せねばなりませんが」

 

 学園長の名乗りに対してミゾレも相応の対応を見せる。

 

「……して、其方の人は?何方様か?」

 

「彼女はこの学園の生徒会長を務めている更識さんです」

 

「初めまして、私は更識 楯無よ。宜しくね?」

 

 楯無と名乗った少女は手に持った扇子を勢いよく開く。其処には『未知との遭遇』と書かれていた。大道芸か何かか?

 

「さて、単純明快に言えば俺は異世界からこの世界に来た。故にこの世界の事を教えて欲しい」

 

「織斑先生から連絡が来たけど、本気で言って居るのね……」

 

「ISなんてモノやIS学園は初耳だからな。その反応からすると秘匿する気は全く無さそうだな」

 

 十蔵からこの世界に関する説明をして貰った。

 IS、インフィニット・ストラトス。それは篠ノ之 束が開発したと言うマルチパワードスーツ。個人が携帯する中で最強と自負する戦闘能力を持つ存在。最もミゾレに一撃で大破されてしまったのだが……。

 

「白騎士事件。インフィニット・ストラトス……アラスカ条約。IS学園。つまり、そのISとやらを扱う者達の養成する機関がIS学園と考えて良いんだな? 競技ってのは元々は闘争行為の代用とも言われて居るからな。まぁ、無い訳では無いが……誕生理由がイマイチピンと来ねぇがまぁ、その辺は興味は無いが」

 

「その認識で間違いは無い。差し当たってISは数が限りがありその養成機関は此処しか無い。そして、ISは戦闘性能やその操縦者に至るまで軍事力のパワーバランスを崩しかねないのでな」

 

 その理解した内容に関して千冬は肯定の意を示す。概ね、その認識で問題無いと。

 

「織斑先生。敢えて避けて居ませんか?」

 

 其処で楯無が口を挟んだ。ミゾレから見てISは兵装と認知されていると把握して兵器と言う側面はあるが競技用として表向きは認知している事も説明したが、最も根本な所を説明していないと指摘した。

 

「…………」

 

「……ミゾレ君。インフィニット・ストラトス……ISは女性にしか使えません。原理は不明ではありますが唯一の例外を除いてIS操縦者は全員が女性。故にIS学園は事実上の女子校……。ISは女性にしか使えない……その事実と現実。その認識が肥大化して……ISは世界最強の兵器。ISを使えるのは女性のみ。故に女性は強いと言う認識が社会病理的に拡散して、何から何まで女性が優位に立つ社会情勢。所謂『女尊男卑』の環境となりました」

 

「……ISを使えるから女性の方が優秀だと認識する女性が爆発的に増加しちゃっているのが現状なの。政治にもその思考が激しく食い込んでいて男性には不利、女性には有利に働く政策が数多く施行されちゃっているの。例えば男性なんか道を歩けば何の前触れも無く冤罪を吹っかけて潰す行為が横行している位なの」

 

「成程な」

 

 女尊男卑と説明されてもミゾレは然程、驚きはしなかった。

 

「同年代でこの件は初耳な筈なのに凄く冷静ね……」

 

「……精神的優位による優越感、か。自分が特別だと見做す上での過激な自己主張。公に認知された一般人より特異的な力を持てば多かれ少なかれその様な光景が出て来るさ……。だが、此方の場合はより過激な様だな。成程、表面上はと言うのはこう言う意味だったか」

 

「……同年代の者達よりも見識がありそうですね。嫌悪感を抱かず冷静に考えられる。君は一体、どんな人生を歩んで来たのですか?」

 

「ま、色々あるもんだよ。色々とな……」

 

「此方の世界の基本的な説明はしました。一気に説明しても脳疲労するでしょう。それでは、貴方のお話を聞かせて頂けませんか?」

 

「ああ、構わんよ。其方は開いたのだから此方もカードを見せるのがフェアと言うモノだからな」

 

 

 

 

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