カウンター・ストラトス   作:夢現図書館

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 カウンターサイドや侵食地帯においてエタニウムシールドは生命線となり得る。
 カウンター以外の一般傭兵はコレが無ければ侵食変異を起こして醜い最期を遂げる事になるから。


抗う為の装置

 

 

 ロシア国内にあるとある孤児院周辺が崩落した。近くには民家はほぼ無い辺鄙な所に建っていた為に近隣住民に対しての被害は無かった。

 孤児院の入所していた孤児達は当初訪問して居たロシア代表である更織 楯無が避難させた為に全員、無事であった。大半の孤児達は状況を踏まえて別の受け入れ先の孤児院や養子先の家庭を検討するとの事。また、孤児院は未来のIS操縦者を育成する目的があったがその内、クーリェ・ルククシェフカはIS学園が保護者と言う形で引き取る形にしたと発表した。

 尚、崩落した孤児院周辺には極めて有害なガスが発生しており近隣住民含めて立ち入り禁止処置が行われたと言う。以後、慎重な姿勢で調査を続行するとの事。

 

 『世界のニュースより一部抜粋』

 

 

 

 

「……以上が、今回の顛末と言うかロシア政府の隠蔽となりました」

 

「……いきなり彼がロシアへ向かうと言い出した事を聞いた時は何事かと思いましたよ」

 

「彼の言うタスクフォースカンパニーの社員と言うのは侵食体と殴り合う都合上、彼方此方に飛び回るみたいです。それこそ普通に国を跨いで移動する事もザラらしいです。管理局公認タスクフォースカンパニーの社員なら顔パスとかで普通に入国とか出来るらしいです」

 

「フットワーク軽過ぎだろ……。まぁ、それくらいじゃなきゃやって行けないんだろうな」

 

 ロシアから帰国した楯無。やはりと言うべきかロシア政府から説明が求められたが、侵食現象と言う特異現象に関してはどう説明したものかと考えた矢先に『君が分からないなら此方で調査しよう』と言う形に落ち着いた。

 楯無も楯無で侵食現象に出会したのは初であり、事前情報だけでは説明しようがなかった。結果、ロシア政府主導で調査が入ったが……案の定、侵食汚染は調査隊に容赦無く牙を剥き無惨な死体と化した。故にロシア政府は対外的には侵食地帯を『有毒なガスが蔓延してしまっている』と称して秘密裏に調査する運びとなる。

 今朝のニュースを踏まえて、楯無は改めて学園長室にて学園長と千冬を交えた報告兼、談話をして居た。

 

「で、例のルククシェフカ。だったか……書類上ではIS学園が引き取った形になっているが」

 

「実質、ミゾレ君の預かりです。まぁ、クーリェちゃん本人の意思で決めた事ですので」

 

 クーリェ・ルククシェフカはミゾレが預かる形となっていた。本人がミゾレの世界に引っ越す意思を見せたからだ。千冬や学園長はクーリェの取り巻く環境は楯無から聞いている。余り接点が無い以上、とやかく言うつもりは無い。

 

「意外だな。奴なら『自分の生まれた世界で如何にかしろ』とでも言いそうなのにな」

 

「……ミゾレ君自身にも思う所があったのやも知れませんね。……クーリェさん自身の環境を踏まえるとそれがベストかも知れませんが」

 

 IS適性Sランクに加えてカウンターと言う状況。

 何れはミゾレは元の世界に帰還しなければならないし、侵食現象が発生する以上、正直に言えば、此方の世界で誕生したカウンターにその責務が課されるのは目に見えて分かる。

 だが、IS操縦者よりも少ないカウンターに任せてはおけないと宣う連中が居るだろう、そうIS委員会や女性権利団体と言った女尊男卑を崇拝、推進する者達だ。……まぁ、今考えても仕方ないだろう。

 

「フッ、部外者があーだこーだ言うのもお門違いか。本人達が納得しているのならば我々が文句を言う筋合いも無いだろう。

 話を変えるが、更織。侵食現象、と言う物に遭遇したそうだな?」

 

 其処で空気が張り詰めた。

 

「はい……。突発的状況ではありましたが遭遇しました。彼の言う事を理解させられました。……ISを展開出来てもマトモに戦う事すら出来ませんでした」

 

 孤児院の玄関前に突如現れた第3種侵食体、タイラントソード。その侵食地帯にて楯無は武器を振るう事は愚か、立ち続ける事すら叶わなかった。

 

「自分の声や簪ちゃんの声による幻聴が鳴り響いて頭が割れそうでした。……ミゾレ君が間に合わなければ、私は絶対防御ごと叩き潰されて死んでいたでしょう。

 現に、私の目の前でロシアの代表候補生3名がシールドバリア諸共、粉砕され一撃で絶命しました」

 

 その言葉を固唾を飲んで聞く、学園長と千冬。シールドバリア、絶対防御を備えた世界最強のISと言えど幻聴を防ぐ機能は無い。

 

「その時、幻聴だけで済みましたが侵食地帯では初期症状として幻覚も見えるそうです。コレでまだマシな部類との事です」

 

「そうか……。侵食現象と言うのは想像以上に厄介な代物みたいだな。ISの皮膜装甲は愚か、操縦者保護機能すらも無意味、か」

 

「私の前に現れたのはミゾレ君が言うには第3種侵食体。識別名はタイラントソード。巨大な剣を携えた大型の上半身が鳥の様な人間、下半身が多脚と言う姿をしていました」

 

「……以前、整備室で見せられた犬みたいな奴よりも大きいのか?」

 

「はい。少なくとも5、6m以上はあったと思います。距離があった上に視界も朧げでしたので何とも言えませんが」

 

「侵食体にも多種多様、と言う訳か。そんな奴がもしIS学園に現れたら、被害は甚大になるだろうな……」

 

 対策無しでは戦闘する事すら叶わない上に、絶対防御すらも貫通する一撃必殺級の攻撃力。如何にISが高い戦闘能力を持つとは言えど、戦闘にならない蹂躙劇となる。

 

「……IS操縦者が1人2人程度では、数の暴力に押し潰されるでしょう。そうでなくても侵食地帯其の物を如何にか出来なければ、意味がありません」

 

「既存のテロとか襲撃案件なら撃退して終わりとなるが、環境そのものを作り変えてしまうとなると勝手が違ってくるな」

 

 やはり糸口はミゾレ。自分達よりも遥かにこの現象に関して博識だ。いや、元々そう言う環境の世界、知ってて当然なんだろう。

 

「よう、織斑教諭。山田教諭に聞いたら此処に来ていると聞いたぜ」

 

 その時、タイミングが良いのか悪いのか勝手知ったる形でミゾレが学園長室に入って来て、部屋の中のソファに腰を沈めた。

 

「お前、普通に入って来るなよ……仮にも学園長室だぞ?」

 

 その態度に千冬は顳顬を指で押さえつつ呆れる。

 

「そう、カリカリすんな。別に学園長室を壊すつもりは無ぇよ。全く、良い知らせを持って来たって言うのによ」

 

「良い知らせ?」

 

 楯無の相槌にミゾレは服の懐から小型の八面体の様な物体を取り出しソファの間の机に置いた。

 

「コレは何だ?」

 

「以前話したよな? カウンター能力者以外で侵食に対抗する為の防護策が確立されている、と。それがコイツだよ」

 

「コレが……?」

 

 楯無と千冬はその物体を手に取って見てみる。八面体で頂点部にホルダーの様な物がついている。

 

「エタニウムシールド。正式名称は個人用侵食汚染防止装置。それがあればカウンター以外でも侵食地帯に立ち入ってもソレが侵食汚染に抵抗してくれる。

 正規品じゃない俺のオリジナル形式だが、過去に何回か造った事があるから効果は保証する」

 

「つまり、コレがあれば私達でも侵食地帯で問題なく行動出来ると言う訳ね?」

 

「ああ、その通りだ。先日の孤児院に現れた侵食体は予想以上に多かった。必要経費分を差し引いて釣りが出たから造ったんだよ。2個は造る事が出来た」

 

 懸念事項であった侵食地帯での行動。それが解決したのは大きいと言える。名称の通りやはり、エタニウムが必要な装置の様だ。

 

「1つ、貰って良いのね?」

 

「俺はカウンターだからな。持つならば普通の人間だ。もう1個は織斑教諭が持っておけば良いだろ。指揮を取れる奴が1番に御陀仏になったら全員死ぬぞ」

 

「ふむ、お前がそう言うならそうしよう……。本音を言えば教員や生徒達、全員分欲しい所なんだが……労力を考えれば何かを要求するだろ?」

 

「当然だ」

 

 今回は余ったから造ったに過ぎない。追加で欲しいのなら何かしら『対価』が必要だ。

 

「でも、私が動ける事は大きいと言えるわ。貴方に頼りっぱなしじゃ生徒会長としては恥ずかしいもの」

 

「CSEレベルが高い程、エタニウムシールドの消費量が増える。つまり、危険度の高い侵食体が出没する程の侵食地帯だと活動限界が短くなると言う事だ」

 

「具体的にはどれ程、行動可能になるんだ?」

 

「今回造ったエタニウムシールドは都合上、CSEレベル2程度なら5時間程。レベル3なら4時間程と考えてくれ。規模や状況にもよるが目安としてはそうなる。仮にそれ以上となると……更に短くなるだろう」

 

「転戦、連戦の可能性を考慮すると悠長に出来ないかも知れないわね……」

 

 1体、2体ならば兎も角、団体で来る以上、1回の戦闘で時間を掛ける余裕は無くなるだろう。

 

「楯無。孤児院の時は、短期間で離脱出来たから大した後遺症も侵食症候群にならずに済んだが……次回はそうとも言えない。シールド残量は常に気を配っておいた方が身の為だ」

 

「ええ、気を付けておくわ」

 

「さてと、渡すもんは渡したし、俺は戻るぜ」

 

「要件が済めばさっさと退散か。相変わらずだな」

 

「言ったろうが、目的は決まっているし。悠長に構えている余裕も無ぇんだ」

 

「艦船の修理具合はどうですか?」

 

 其処で成り行きを見守っていた学園長が尋ねて来る。

 

「まぁ、山場は越えたって所だな。曲がりなりにもエネルギーは確保出来たし、残っている必要箇所の修理を終えれば、往復1回分。カウンターサイドにダイブ出来るだろうな」

 

「……自分の世界に帰れる、と?」

 

「いいや、直ぐには無理だろう。アンカレッジに集約されている座標情報も、此方の世界基準だ。此方の世界基準の座標だと計算が違うから手探りで航路を構築するしか無い。

 つまり何回もダイブを繰り返して少なくとも俺が知っている地域座標を見つけるしか無い。裏世界と一言と言ってもその広さは想像以上だ。深度のレベルの概念も勝手が違って来るから、向こう基準で何処の階層かすらも分からん」

 

「気の遠くなりそうな話ね……」

 

「ま、やらなきゃ俺は帰れないからな。意地でも見つけてやるつもりさ。まだ、くたばる訳には行かないんでね」

 

 

 

 

 






 ……覚醒クリス。何処からどう見てもISじゃん、コレ。
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