カウンター・ストラトス   作:夢現図書館

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 カウンターサイドにおいて予定通りに事が運ぶ方が少ない。だから常々、油断しないようにする事だ。足元を掬われない為には。


共同作戦規則

 

 

『システム、オールグリーン。エタニウム活性体、整列。エネルギーチャージ率、安定しています。ふ〜、此処まで長かったですね〜』

 

「ゴタゴタのトラブル続きだったからな。が、この状況が前提でありまだ1%も進展していない」

 

 アンカレッジの艦橋。其処でほぼ修理が完了した艦体のシステムの最終チェックをモネカが行っている。

 

『……しかし、主砲の方に回せるエネルギーはありませんね。折角の改良されたブラックホールドライブだと言うのに』

 

「仕方あるまい。其方に回せるだけのエネルギーが無いのもまた事実。今回のダイブは深追いしない様に努めようか」

 

 準備は万全にして臨むべきである。中途半端な状態で挑む事は早死にを示す。それは愚かな者が好むやり方だ。

 

「それで、アイツらに連絡はしたんだろ?」

 

『はい。此方の準備が完了したので該当者に対して連絡を入れておきました〜。……果たして本当に来るのでしょうか?』

 

「当人の判断に委ねるさ。自分の意思が無ければ意味が無い。裏世界、カウンターサイドはそう言う世界だ」

 

——カウンターサイドはピクニック気分で行くような環境じゃない。……何処にでも危険は転がっているのだからな。

 

「さてと……問題は山積みだが、順次対応して行くしか無いな」

 

『そう、ですね。……やはり管理者様を始め、皆さんの状況が心配ですね』

 

「『ゲーム』が始まる前なら問題無いだろ」

 

「来たぞ、ミゾレ」

 

「はぁい。数時間振りね? 相変わらずセッカチなのねぇ」

 

「……うん、ルーちゃん」

 

「…………」

 

 その時、後方の扉が開かれて連絡を受け取った面々が艦橋へと入って来た。簪とクーリェは言わずもがな、千冬と楯無も一緒に来たようだ。

 

「一応、連絡は入れたが本当に来るとは思っては居なかったがな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フッ、伝聞だけでは対処し切れんだろう。目下の問題でもあり、現場責任者たる私が把握出来るのならばしなくて如何する?」

 

——数十分程前に、AIであるモネカから通信による連絡が入った。

 『カウンターサイドへのダイブへの準備が整いました。現実を目の当たりにする覚悟があるのならお越し下さい』と。

 タイミング的に1組のクラス代表を決める模擬戦があったが、其方は山田君に任せておいた。

 

「へぇ、伝聞だけで済ますと思っていたぞ」

 

「この事態は深刻だ。並のテロや襲撃案件とは大きく違う……人類の脅威となり得る。直に感じで把握しなければ木偶の坊に過ぎん。違うか?」

 

「否定しねぇよ。カウンターを始めとした傭兵連中からすれば日常だが、非戦闘員の連中からすれば只々、脅威だ」

 

——カウンターサイド。話には聞いていた、侵食現象の元となる世界。世界とはコインの表裏のように存在し、この世界の裏側にあると言う。

 生徒の1人がカウンターへと覚醒し、尚且つ何れは直面する可能性は大いにあり得るこの状況。そして、我々が知る限りその世界を知って理解している者は何れは元の世界へと帰還する。

 それまでに我々はその脅威に対抗する術を体得せねばならない。もしかしたらの話だが本来ならば未知の脅威に対しては試行錯誤を繰り返し多大な犠牲を強いながら体得したかも知れない。その犠牲が抑えられる形で体得出来るのならばやるしか無いだろう。

 

「簪ちゃんやクーリェちゃんのCRFだったかしら?そのエタニウムを確保しなきゃ行けない。私も関わっている以上、動かない訳には行かないわ。……何れは私達だけで侵食体に対処しなくてはならない。貴方が居るうちにノウハウを積まなきゃね」

 

 千冬も楯無も相当の思惑を持って今回のダイブ作戦に参加したと言える。幸い2人にはエタニウムシールドを渡した。参加条件は満たされている。

 

「クーリェと簪は言うまでも無いな?」

 

「う、うん……。ルーちゃんと沢山話した……。戦うのは怖い、けど。生きたい、から」

 

「うん……。大丈夫……何もせずに死にたくは無いから」

 

——この2人は現状、この世界出身のカウンター能力者だ。侵食現象に普通に対抗出来るのはカウンターを始めとした面々に限られる(エタニウムシールドがあれば問題無いが、まだ量産出来ない)。

 かく言うルククシェフカはこの世界から離脱してしまう為に、残るは更識妹のみとなってしまう。彼女1人に任せ切る訳にはいかず代替案を構築せねば大きな被害が出るのは確実だ。

 

「ああ、それから遺書の類は用意したか? こちとらの場合はそんなモン、残す相手居ないからそんな心配は無いけどな」

 

「其処まで不安になるような環境なのか⁉︎」

 

「不安云々の前に、カウンターサイドで死んだら遺体の類は持ち帰れないぞ。此方の世界だと傭兵になる連中は身寄りが居ない連中が大半だから遺書の類は不要なんだよ」

 

——……話は常々聞いていたが、予想よりも壮絶かも知れんな。

 

「さて、茶番はこの辺にしておこう。承知の上で来たんだからさっさと向かうとしよう。モネカ」

 

『はい。まもなく、次元跳躍の為にダイブ・シークエンスが開始されます』

 

「突っ立てても良いが、適当な椅子に座っとくと良いさ。まぁ、修理したてだから多少は揺れるかも知れないからな」

 

「あ、ああ。更識姉妹も、ルククシェフカも近くのオペレーターの席に座れ」

 

——まぁ、私なら大丈夫だ。それに、此処の方が良く見える。

 

『カウンターサイドの目標地点の大まかな位相座標の計算中。及びエタニウム活性体、整列。エタニウム・ドライブのエネルギーチャージ……臨界量突破‼︎』

 

 その言葉の後に起動したのか艦橋全体に震動が走る。駆動したと分かる感触であった。

 

『カウントを開始します』

 

——いよいよ、か。裏の世界と言う未知の世界……恐らくはマトモな光景では無いのかも知れんな。

 

『3、2、1……。エタニウム・ドライブ起動‼︎』

 

 モネカの言葉の直後、一際強い振動と共に艦橋から見える外の光景が白い光に包まれ一変した。

 

 

 

 

 

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