「此方の世界の基本的な説明はしました。一気に説明しても脳疲労するでしょう。それでは、貴方のお話を聞かせて頂けませんか?」
「ああ、構わんよ。其方は開いたのだから此方もカードを見せるのがフェアと言うモノだからな。しかし……どっから説明しようか」
——部外者とは言え、旧管理局絡みは口外する訳には行かねぇよな。やはり……。
「其処まで複雑な事なのか?」
「つーか、渋滞レベルの環境。お宅らみたいに歴史に詳しい訳じゃ無ぇからな。織斑教諭見たいにどう説明しようか悩む内容もある」
「なら此方から質問する形を取らせてくれ。その方が説明し易いだろう?」
「その方が助かる。で?何が聞きたいんだ?」
千冬が質問する形で此方の事情を説明する形となった。確かにその方が指向性があり此方の事情を説明し易そうである為、同意した。
「お前の言う『カウンター』について、だ。最初、お前は自分の事をカウンターと名乗ったな。アレは組織名なのか?」
「正確には『カウンター能力者』だな。超人的な身体能力に加えて特殊な能力を兼ね備え俺達が侵食体と呼ぶ連中と最前線で対峙する存在をカウンターと呼ぶ。此方の世界ではカウンターと言えば大概、それで通じるからな」
「通じなかったから異世界だと結論したのか……。思い切りが良いな」
「まぁ、裏世界……カウンターサイドと呼ばれる異世界と隣り合わせなもんでな。此方の世界でも『異世界から来ました〜』みたいなノリの奴と言う前例を見た事があるからさ。本音を言えば状況柄、当たって欲しくは無かったが」
「そのカウンター能力者と言うのは公然と認知されているのですか?」
「そうだな。別に隠す必要も無いしな……其処は本人の意思によるが」
「……つまり貴方達、カウンター能力者は侵食体と言う存在と戦う為に存在して居ると言う訳ね。じゃあ、その侵食体ってのは?」
「此方の世界の認識では世界とはコインの表裏一体の様に存在し干渉する事なく続いていた。表世界と裏世界と言う形でな。だが、時折均衡が崩れて両者の世界が繋がる事がある。それを侵食と呼び侵食体と言う裏世界に棲まう超常の生命体が湧き出る様になるのさ。まぁ、弱い奴なら銃火器程度で如何とでもなるが強い奴となれば頭数を揃えないと厳しいだろうな」
「成程な……。では、理解が多少深まった所で……お前は如何言う成り行きで此処に辿り着いたんだ?」
「……裏世界で艦船での単独作戦中に多数の侵食体と交戦。継続的な戦闘は不可能な状態となった為に離脱したは良いんだが……航路で問題が起きてな、無茶な真似をした所為か別次元……つまりこの世界に漂着してしまった。
よって、現在の俺の目的は自身の艦船を修理し元の世界に帰還すると言う事になる」
そしてミゾレは自身の目的を明かした。突発的なランダムダイブの弊害でこの様な状況になった。少なくとも艦船自体を修理した上でダイブを行い(現時点でエタニウムドライブは無茶である事も承知の上)裏世界でエタニウムを確保し元の世界に浮上する。座標も深度も分からないがやるしか無い。無論、焦って達成出来るとは思ってはいないし難航する事が予想もされる。だからと言って手をこまねく訳にも行かないのだ。
「成程……。君の事情は概ね理解しました。織斑先生、私の考えとしては現在、身寄りの無い彼をIS学園に特別枠として受け入れようと考えて居ますが如何でしょう?」
「え、学園長。それは……?」
学園長の言葉に千冬は動揺が走る。カウンター能力者と言うのは表面上でしか理解出来て居ない。身体能力は超常的。生身でISをシールドバリア諸共、粉砕する力がある。此方の世界情勢上……危険な事になる。
「ふむ。独力で現状を打破するのは困難だと考えていた所だ。やはり管理局が無い世界は思考は出来ても現実は違うからな」
「書類や体裁は此方で粗方、済ませておきます」
「学園長。お言葉ですが……此処はIS学園。ISが使えない……ましてや男性を入れるとなると各国政府からの追及は免れません。いえ、反対と言うよりも異世界人や次元間を航行する戦艦の存在は……凡ゆる組織から見れば未知の技術の塊。狙われるのは明白である事は分かりますが……」
「だからこそです。IS学園は一応、表面上は治外法権の体裁を取っています。確かに干渉を完全に受け流す事は不可能に近いでしょうが、無いよりもマシです。如何でしょう、ミゾレ君」
「ああ、その提案を受けるとする。元の世界に戻れるのならばお前達の頼みにも多少なりとも手を貸す事もやぶさかでは無い。まぁ、現状は此方の事情により限度はあるがな」
「一応、聞くけれど……そんな事、出来るの?」
「入口が有れば出口は有って然るべき。袋小路ならば無理矢理道を作れば良いさ。異世界に来ちまった事に関しては想像を超える異常事態ではあるが、生きて居る限り可能性は潰えて居ない。帰った時にパイセン達に土産話のネタには出来るだろうからな」
「貴方って、動じない性格なのかしら? 私がその立場になったら如何しようかと悩むと言うのに……」
楯無の問い掛けにミゾレはそう答えた。身の振り方を考えねばならないと言うのに動じない姿勢は感心すら覚える。
「決まりです。彼自身のカバーストーリー等は此方で用意します。では、ミゾレ君。改めて宜しくお願いしますね。更識さん、学園内の案内等を宜しくお願いしますね」
「ええ、分かりました。色々と理解が追いつかない所もお互いあるだろうけれど宜しくね?」
「ああ、宜しく頼む」
解散した後の学園長室。千冬と学園長は突発的な事態に陥った事に関しての会議を続けていた。
「……本当に宜しかったのですか、学園長。彼がISを使えると言う保証は有りません。と言うよりも限りなく低いと言えるでしょう」
「それを差し引いても異世界からの異邦人。その存在も男性操縦者と同等以上の希少性である各国政府から映る事でしょう。織斑先生、貴方から見て彼は如何見えましたか?」
「……そうですね。弟……一夏と同じ位の年齢と言うのに数々の戦闘を潜り抜けて来た印象を抱きましたね。その上、我々から見ても異常な光景だと言うのに本人は極めて冷静に物事を捉えています。その上で、理解と警戒を両立して居る様にも見えました」
「此方にも完全に全て説明した訳では有りませんが彼も必要最低限の情報しか明かして居ません。本人にとっては彼方側の世界の事情を説明する必要は無かったのでしょう。与り知らぬ事を説明するのも野暮、と言う事でしょうね」
強か。この学園に在籍する者達と然程、年齢が違わないのに全く異なる印象を抱く。此方も情報は小出しに留めたが相手も同じ様に態々、説明する必要の無い情報は見せず終いにしたと言う事。
「……お互い、まだ理解を深める期間と言う訳ですね。織斑先生、君の弟君と言った1人目の男性操縦者の件もあるのに負担を掛ける真似をしましたね」
「いえ、起こった事に文句を言っても仕方ありません。なる様になるしか有りません。願わくば今年の担当するクラスの連中の様な話の通じない奴でない事を祈ります」