カウンター能力は実に様々な系統に分類されている。
空間能力者や加速能力者。炎を放出したり、放電や氷、水を操る能力も確認されている。
ただ、日常生活に利用出来るかは甚だ疑問符が浮かぶ。年々、需要が高まるエタニウムの価格を考慮すると赤字になるだろう。
『ミゾレさん。当艦アンカレッジは無事にダイブを完了し、目標地点に到着しました』
モネカの音声がそう報告する。如何やら何事も問題無く跳躍が完了したようで何よりだ。
「こんなにも早く到着するのか? 私の予想では、こう……ワープ空間とかそう言うのを潜るのかと思っていたが」
「次元跳躍ってのは大概は一瞬だ。旧型や探査ポッドだとそうは行かないが、アンカレッジは現時点では最新鋭の次元艦船で、機動力に主眼を置いた艦体だからな。量子トンネルが見たいならお宅らの世界でやってくれ。
まぁ、それらを抜きにして虚数空間やクリフォト次元だと勝手は変わると思うがな」
「虚数空間?」
楯無がその単語に興味を持ったのか尋ねて来る。
「あの空間は生身の人間が耐えられる空間じゃない。一度、立ち入れば現実世界にも裏世界にも浮上は敵わない空間、だとされている」
『一歩間違えれば、私達もその空間に流れ込む所でしたね』
モネカは当時の事を思い出して嘆息する。あの時は本当に危ない所だった。
「さてと、のんびりしている余裕は無いからな。さっさと降下するぞ」
そう言い艦橋から降下する為に廊下へと移動する。
「……地上に降りて行動するのか?」
「アホか。裏世界は全てが侵食地帯だ。何処からでも侵食体が湧いて来る。武装も備えてはいるが相応の大きさ故に地上戦力からすればデカい的でしかない。
故に裏世界において戦闘員は降下して侵食体を掃討しつつ進行するのが鉄則だからな」
「本体が大きいと小回りが効かないモノね。大きければ良いって訳じゃないし死角も当然大きくなるもの。織斑先生、此方の常識はほぼほぼ通じないと考えて宜しいかと」
「……そうだったな。IS学園のやり方とは大きく違う、か」
「さて、クーリェも用意は良いか?」
『現在、私が人格を維持しています。……現時点でクーリェに戦闘をさせるのは危険と判断し、私が代わりに同行します。……この状態を通じて戦闘の仕方を覚えて貰おうと思います』
クーリェに声を掛けると、現在はルーの人格が表面化していた。ルーとしてはまだクーリェの戦闘忌避は払拭出来ないと判断した様である。
「そうかい。本人達で決めたんなら何も言わない。で、簪は?」
「うん。大丈夫……」
簪は自身の専用機の武装である薙刀を部分展開して見せる。専用機自体は未完成だが、部分展開程度ならば可能。カウンターとしての能力があるならば、一先ずはコレで大丈夫だろう。
「で、織斑教諭は出席簿で侵食体を殴り倒しますか?」
「変に敬語を使うな。何、IS用の近接ブレードを持って来ている。実弾が効くのならば問題あるまい?」
揶揄い半分の言葉に対して千冬はそう言い放ち、黒光りする日本刀の形状をした近接ブレードを見せ付ける。
「まぁ、否定はしねぇよ。取り敢えず準備が整ったから降下準備に入る。モネカ、アンカレッジはステルスモードで随行しろ」
『了解しました。アンカレッジ、ステルスモードを起動します』
「……此処が裏世界、何とも寂れた世界ねぇ〜」
アンカレッジが降下し地上に降り立った先、千冬や楯無達が見た光景は岩肌が目立ち遠くには高層ビルが朽ち果て、廃墟と化しているのが見えた。
「殺風景な風景が続いているな……。ミゾレ、遠くに見えるのは廃墟……。此処には元々、文明があったのか?」
千冬は遠くに見える高層ビルの廃墟を見て質問する。
「さぁな、裏世界では良く見られる光景だ。此方の世界では色んな陰謀論やら諸説が唱えられているがハッキリと結論は出ていない」
「そうか……何故、あるのか分からない。と言う事か。で、この後はエタニウムの確保との事だが」
「エタニウムは基本的に地表とかに露出している奴を採掘するか、侵食体を掃討してその残骸から回収するかの2択だ。大型かつ強い個体程、回収出来るエタニウム量は多いと考えて構わない」
『皆さん、当艦の出現に気付いた侵食体がこの地、周辺に集まって来ています。速やかに迎撃準備をお願いします』
その時、モネカからその通信が入る。ミゾレ個人的には気付くのが遅過ぎだと勝手に思ってしまう。
「だ、そうだ。向こうから湧いて来てくれた様だな」
「……いよいよ、ね。皆、準備は良いかしら?」
楯無は自身の専用機たるIS、『霧纏いの淑女』を展開し、螺旋槍を構え直す。
「ん? ルー、そのISは捨てたんじゃ無かったのか?」
『ロシア政府が送り付けて来たのです。クーリェはIS学園に引き取られましたがロシア政府は『将来有望な者に貸し出す』との事。ロシア政府にも何かしらの思惑があるのでしょう。……なら、今は利用するだけ利用するまでです』
クーリェの身体を借りているルーもあの時、廃棄した筈の黒いISを展開する。……如何にも、クーリェはこの世界に居る限りISからの腐れ縁は免れない様である。
「……で、お前は武器の類が見えな」
『可視圏内に侵食体多数‼︎ 来ます‼︎』
千冬の言葉を遮る形でモネカから警戒通信が入り、その直後に地面から赤と黒の配色のバイター種の侵食体が多数、這い出て来る。
「コイツらああやって出現するのか⁉︎ 然も予想よりも多いぞ⁉︎」
「ッ。あの時よりも多い……‼︎」
千冬は生きた侵食体を目撃するのは初めてであった。明らかに物理法則を無視した形での出現。
——全く。
その刹那、ピンク色の残光が煌めいたかと思うと出現した侵食体の団体様が纏めて斬り裂かれた。
「……え?」
「この程度で驚いていたら、先が思いやられるぞ」
ミゾレの手にはピンク色に燃え盛る質量を持った炎で形成された薙刀が握られていた。その薙刀で眼前に現れた侵食体を薙ぎ払ったのだ。
「ミゾレ……それは……?」
「ああ、見せるのは初めてか。師匠が言うには相応に珍しい類の能力だとな」
ミゾレはそう言い炎の薙刀を放り投げると、その薙刀は粉々の粒となり次第に消滅して行った。
「そうなの? いや、私達から見れば炎を操るなんて能力は、アニメや漫画の世界だけど」
「炎や氷、水とか雷と言ったエネルギー関連の放出と言ったモノは割と良く見かける能力だが、俺の場合は例えば炎と言った気体を
「気体や固体をその状態で相転移……か。汎用性が高そうだな?」
「いんや、先ず燃費が悪い。対象範囲が大きくなればCRFの消費量も比例して跳ね上がる……。畳の半畳程の大きさでしようモノならあっという間に枯渇しかねないレベルになる。その癖、俺の手元から離れればその形状は短時間しか維持出来ない」
「……思いの外、制限が多いのね」
「CRFを実用性として見出そうにも価格高騰が青天井のエタニウムの事を考慮すれば、圧倒的に出費が嵩むだろうよ。さて、雑談は終いだ。次はお前らが連中を仕留めろ」
「でも、貴方の一撃で」
『第二波、来ます‼︎』
その言葉の直後、再び多数の侵食体の群勢が殺到して来る。然も先程よりも更に多い群れであった。今度は飛行する侵食体も出現していた。
「斥候を潰しただけだ。ほら、戦う術があるんだから行ってこい‼︎」