カウンター・ストラトス   作:夢現図書館

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 交通事故の様にやって来るのは車両だけじゃない。


蟻地獄

 

 

 

「……一先ず、初のダイブ作戦。ご苦労さん」

 

 アンカレッジの艦橋にて、ミゾレは今回の探査作戦に千冬達を同行させて初の対侵食戦の実戦、更に裏世界に慣らせる思惑も兼ねて行った。

 

「ISの試合でも彼処までの長期戦闘は早々無いわよ……」

 

「更識姉。試合でも何でも無い、コレが実戦と言うモノだ。……しかし、改めて振り返れば私もまだまだ把握しなければならない事が山積みであると思い知らされたな。……今回の作戦に参加せずIS学園で遭遇した場合、ノウハウの無さに加えて想定外の状況である事から対応が後手に回り想定よりも被害が拡大された事が予想出来る」

 

 エタニウムシールドは侵食波に抵抗する為の装置。防御性は備わっていない。

 

「アニメや漫画の創作物だと少人数で多数を圧倒するシーンは良くあるけど、実際にそう動ける保証が無いのよね」

 

「噛まれた所が痛い……」

 

『包帯を巻いてあげますからジッとして下さい』

 

「う、うん」

 

 ハイパーセンサーで360度の視界を有するが、同時に対応出来る者は限られて来るだろう。出来るなら生身の時点でそうなっている。

 四方八方から同士討ちを顧みず襲って来る連中相手には意味が無い……。

 

「困った事態だな……。ISの技術も必要だが、何よりも基礎体力を考慮すると対侵食戦はハードルが高いぞ。お前らの世界は生身でも身体能力が高い連中ばかりなのか?」

 

「調子に乗った奴から死んでるから、基準は知らん。ガソリン代よりも人件費の方が安いからな。……犠牲無く撃退したいと考えるのは勝手だが、早々上手く行く保証は無いぞ?」

 

「……少しは人の命を大切にした方が良いんじゃないのか? 我々の世界も人の事は言えんと思うが」

 

 今回相手したのは小型の第1種と第2種。ミゾレが言うには『根性足りない雑魚』扱いの連中らしい。この調子のままだと何れ第3種以上と遭遇した場合、死者が出かねない。

 

「さてと、話は変わるが良い話と悪い話。何方から聞きたい?」

 

 其処でミゾレは2つの話。良くある良い話と悪い話を持ち出した。何方から聞いても最終的に一緒ではあるのだが……。

 

「……どうせ頭を抱えるのは一緒だから良い話からお願いするわ」

 

「そうか……。今回のダイブ作戦でのお前らの取り分だ」

 

 ミゾレはそう言うと複数の小型ドローンが艦橋の扉の方から飛来して来る。吊り下げられた箱には精製されたエタニウムが積まれており、其々、簪、クーリェ、千冬と楯無の前に置かれた。其々、量が違う様にも見える。

 

「コレは、エタニウムか?」

 

「此方の世界のタスクフォースカンパニーが参加するダイブ作戦ってのは基本的に主管に取られる手数料を除けば、仕留めた分だけ報酬が上乗せされる。歩合制って奴だ。

 つまり、倒せば倒した分だけソイツの総取りだ。まぁ、今回は乱戦みたいな形で結構、ざっくりした計算になるが……其処は勘弁してくれ」

 

——最も、手数料代わりに幾らか失敬したがな。

 

「コレ、貰って良いの……?」

 

「簪、君が仕留めて得た戦利品でそれは全て君のモノだ。ウォッチにチャージすればその数値は上がる」

 

『成程、こうやって命を繋いで行くのですね』

 

「そう言う事だ。今回の場合は特殊過ぎるから報酬は精製したエタニウムと言う形にさせて貰った」

 

「……私達もエタニウムシールドにチャージすれば残量が増える訳ね?」

 

「そうだ。2人は計算が面倒だったから共同だ。エタニウムは他にも用途は多岐に渡る。その使い道は自由にしてくれ。自分で仕留めて得た戦利品だから、俺がとやかく言う権限は無い」

 

「……ふむ。私達が持っているエタニウムシールドのチャージ以外にも使い道があるのが悩み所ではあるな。武装や装甲と言った装備品にも使われるから……使用量の調整をせねばな」

 

「其方は帰ってから検討しましょう。それで悪い話ってのは何かしら?」

 

 良い話が終わり次に悪い話を尋ねる。

 

「今回のダイブ作戦。侵食体の過剰とも言える湧き方……。普通ならあり得ん現象でな、湧いたと言うよりも誘引されたと言って良いな」

 

「誘引された、だと?」

 

『何に、誘引されたのですか?』

 

「モネカが検証した結果。如何やらISのISコアの放つエネルギー周波数が侵食体を引き寄せる類の周波数の形状に類似しているそうだ」

 

「つまり、ISに引き寄せられて侵食体が出現すると言う事か⁉︎」

 

 その言葉に千冬はマズいと言う感情がいの一番に出て来た。楯無も視線が鋭くなった。そう考えると過去に2回現れた時、近くにISが存在していた。辻褄は合う。

 

「……そうなると危険、だと思う。世界各地にISコアは配布されている。実験用として使われているのもあるけど、実際に機体として使われているモノも多い」

 

『カウンターでも無い、それにエタニウムシールドは現品限りの2つだけ……』

 

 侵食地帯の危険性は楯無は身を持って知っている。侵食症候群の存在から戦いにすらならない。今回直に戦った第1種、第2種ならば侵食波の相乗効果で大ダメージ級(思わず目を見開いた程)。第3種以上だとシールドバリアや絶対防御は紙同然の有様。

 

「俺の予想なら一致するならば、同時か散発かは分かれるが世界各地で侵食現象が乱立する可能性があるだろうな」

 

「……侵食地帯の危険性は私も知っているわ。ISコアがあるのは研究施設だけじゃない。IS企業は街中……そんな場所で発生すれば」

 

「計り知れん被害が出るのが想像に難く無い……‼︎ 無論、IS学園もその枠組みに入る……‼︎

 ミゾレ、事前に防ぐ方法はあるのか⁉︎」

 

「あったらとっくに管理局が実施しているし、俺も言っているさ。……既に各地で何件か侵食地帯が発生しても可笑しく無ぇだろうな。こりゃ確実にバレたな。先が思いやられる」

 

「「…………」」

 

『ミゾレさん。この後は如何しますか? 少なくともクーリェちゃん達は長期戦闘故に疲労が蓄積し、更にISの残存エネルギーも心許ない状態。戦闘継続は困難であると進言します』

 

「……師匠なら強行突破しそうだけどな。ま、最初はコレで良いだろ。IS学園の繋がる座標は荒地地帯である事が分かっただけでも収穫の内だ」

 

 その後、アンカレッジは現実世界へと浮上しIS学園の第6アリーナの中央部に着陸した。

 

「ミゾレ、私と楯無は直ぐに学園長室に向かう。お前の話が本当ならば既に異変が起きている筈だ」

 

「俺の事は良いからさっさと行けよ。要件があるのならば連絡してくれ。まだ中途半端な箇所があるから俺は修理を続行するさ」

 

「分かった。更識妹とルククシェフカは如何する?」

 

「わ、私は……休みます。流石に疲れましたので」

 

『クーリェと今回の戦闘を通じて話をしたいと思いますので失礼します』

 

「そうか、ゆっくり休むと良い。では、解散だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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