「……織斑教諭。この世界の倫理観に関していちゃもんを付けるつもりは毛頭無いのだが」
第3アリーナにて専用機持ち達がISに搭乗して自身の主な戦闘方法を披露していた。一通り見せ終わった後、千冬の前で整列して待機している中、隣に立っているミゾレは空間投影ウィンドウに確認内容を纏めた後に口を開く。
「何だ……改まって」
「……流石にスクール水着に似た格好で空を飛び回るのは恥ずかしくないのか?」
「「「…………」」」
全く持って忌憚無き言葉。IS操縦者はISに登場する上でスクール水着に近いISスーツを着用してから搭乗する。その為、身体のラインとか丸分かりなのである。
「あー……一般と言うか、男性からとか、異世界の住人から見ればやはり異常に見えるか……。アレでも銃弾程度なら貫通しない耐久性はあるし、専用機持ちならば目視できないが被膜装甲がある。……元々、女性しか使えんからな。流石に目に毒か……しかし、我慢し」
「と言うか高金利闇金融の社長の戦闘態勢に良く似ているから、軽くトラウマ抉られるんだけど?」
「そんなモンは、知らん‼︎」
ミゾレの世界の闇金融はそんな格好しているのかと別の意味で恐怖を覚える。
「さて、話を戻すとして……。基本的に対侵食戦は最低でも小隊規模での作戦行動だ。余程の実力者やバカじゃない限り、単独で挑むのは危険だ」
「……何故ですの?」
長い金髪に碧眼の女子生徒が質問する。確か長いスナイパーライフルの武装を持っていた生徒だ。
「殆どの侵食体は群れるからだ。複数種類の侵食体が群団となって行動、侵攻して来るからだよ。大型の侵食体を中心とした一個中隊規模を形成する場合もままある。単独だと包囲殲滅か各個撃破されるのが関の山だ。孤立した場合も同様」
——……まぁ、師匠とか大佐辺りならば第3種位は一撃で潰しちまうしな。
「踏まえて前衛と後衛に分かれるのが基本だな。近接戦闘が得意な奴を前衛に、で射撃と言った銃火器等が得意な奴を後衛で援護射撃等の後方支援や牽制……が、基本的な構図となる。無論、想定通りに事が進むのは稀だがな」
「ふむ……成程。編成を如何するかは此方で構わないな?」
「当然だろう。あくまで俺は意見を言うだけに留める。陸にお互い知らん上に大して関係が強い訳では無いのに、あーだこーだ言っても上手く行く筈が無い」
ミゾレはそう言い踵を返していく。
「……それもそうだな。で、何処に行く?」
「IS関連は俺はど素人だ。訓練等は織斑教諭、教師の本分だろう。ついでに言うなら根本的に俺は教える役に向いていないしな。作戦方針云々に関しても全部丸投げする」
この世界を守るのはこの世界の者達。自分は部外者、意見は出来るが、作戦方針に関してはこの世界の住人の都合と言うモノがある。
「そうか。分かった。ただ、生徒達から話がある時は乗ってやれ。関係が不明瞭だと双方に不安になる(コイツ……。本当に他人を寄せ付けようとしないな。私達や更識姉とのやり取りも、殆ど事務的な会話が殆どだしな……)」
「極力、善処するさ」
IS学園の食堂。異常事態故に新体制へと移行した為に普段は姦しさで溢れていたこの場所だが、大半の生徒が避難した為にかなり閑散としていた。
「……多国籍編成って言うのはある意味、寄せ集めで纏まりが無いと言う欠点があるんだよなぁ」
纏めた資料を見返してミゾレはそうボヤく。現在、IS学園の1学年の代表候補生及び専用機持ちは日本、イングランド、後は未完成の日本。
聞けば後から専用機持ちと言う名で前回の侵食現象に諸事情あって出撃しなかった代表候補生も戦力としてIS学園に臨時編入させる運びとなっているとの事。
『まぁまぁ、私達も似たようなモノじゃありませんか』
「……俺達の場合は人間か人間以外かのレベルなんだよなぁ」
——AIと言った人工知能にも給料が発生する時代だし。国籍云々もクソ如何でも良いレベル。……と言うか人間か疑わしい奴、何人か居るんだけど?
「さて、俺は俺の目的があるしな」
——IS学園の座標地域の裏世界の情報は粗方、洗い終わった。次は……。
「ミゾッチ〜、居た〜」
その時、閑散とした食堂に響く間延びした声。視線を向ければ其処で見えたのは相変わらずダボダボの袖を振り回す簪とその様子に呆れている簪の2人組であった。
「おー、のほほんに簪か。何かあったか?」
「今は色々とゴタゴタしているし、それから私はまだISが完成していないから……」
簪はカウンターとは言え、使えるモノは多い方が良い。その為、自身のISの完成を目指して開発を続けている。本来、ミゾレが手伝う形だったが侵食現象の遭遇により有耶無耶になってしまった経緯があった。
「……そうか」
「ねーねー、ミゾッチって沢山の事を知っているよね〜」
「知っている事だけな。……知っていると思うがお前達の為に戦うつもりは毛頭無い。ましてやこの世界で発生した侵食地帯に出向く必要性は無くなったからな」
アンカレッジがほぼ航行可能な状態になっている以上、エタニウムは裏世界にて採掘しつつ航路開拓の為、進行は可能となる。無論、極力戦闘は回避したいのが本音ではある。
「……確かに、貴方の目的の都合上、確かにその通り……。お互いの事情は知った事では無い……」
「で? 要件があったんじゃないのか?」
「要件が無ければ話ちゃダメなの〜?」
「……悪いが俺は場を和ませる話題は殆ど持ち合わせていないんでな。君らの言う『日常』と言うモノは理解し難い概念だ」
「じ、じゃあ、ミゾッチの世界の話をしてよ〜。私達は〜、ミゾッチの事を余り知らないもん〜」
「…………仕方ないな。しかし、余り気分の良い話は無いぞ」