情報は洗脳の道具だ。
「さて、何処から話したモノか」
本音からせがまれる事となった、此方の世界の話。と言っても景気の良い話題はほぼ皆無なのが此方の世界の実情でもあったりする。
「ミゾッチって昔はどうだったの〜?」
「1番、キッツイ所を突いて来るんじゃねぇよ。思い出したくねぇ所なんだよ」
「うう〜、じゃあ止めておくよ〜」
のほほんとミゾレの関係はやや微妙な所であり、友達未満と言った関係に留まっている。そもそもミゾレは他人と壁を作っており一定以上、踏み込めない。
かと言って関係を拗らせてしまうとこの世界における対侵食戦がより難しくなってしまうのが目に見えている。
のほほんもそんな対応のミゾレの様子も理解出来る。腐っても暗部の側控えの家系の1人だ。
「……えっと、他は?」
「他、ねぇ。俺が耳にする話題は辛気臭い話が大半だ。そもそもカウンターや傭兵と言うのは常に死と隣り合わせだからな……。管理局の統治下にある地域は生き方は選べるが、それ以外の管理局の統制を拒んだ地域となるとな……」
「うへぇ……。気分が沈む話は嫌だよ〜」
「……常日頃から戦ってばかりだったの?」
「否定はしない。タスクフォースカンパニー、『会社』の社員……『傭兵』は戦って稼いでナンボの職業だからな。無論、出過ぎた真似をして死ぬ若造は何人も出て来る。
それでも、タスクフォースカンパニー、侵食体と戦う道を選ぶ者は多い。別に管理局はカウンター各位に戦う事を強制した覚えは無い……が、10代のカウンターで1番人気の就職先はタスクフォースカンパニーと言う統計が出ている」
「……戦うのが怖くないのかな?」
「さぁな。ただ、本人達にとって確かな理由があるんだろうよ。誰かの為か、自分の為か……国の為か、未来の為か……戦うってのは見せ物のような茶番で片付けるようなモンじゃねぇ……最も多いであろう確固たる理由を挙げるならば、明日を生きる為だな」
「「…………」」
その言葉に本音と簪は無言になる。IS業界に憧れてその未来を志望する若者は多い。こと、ISに関連する教育をする機関はIS学園以外に存在していない。だが、今年度の新一年生の者達は模擬戦でも試合でもない本当の意味での生きるか死ぬかの『戦闘』を前に及び腰となった。だから、今回の侵食現象を前に多数の生徒がIS学園から避難した。……戦えぬ者に戦場は辛いだけだ。
「あー、居た居た‼︎」
その時、食堂に第三者の声が響いた。視線を向ければ『新聞部』の腕章を付けたIS学園の上級生と思わしき生徒が此方へと近付いて来る。その様子に白地な態度ののほほんと簪。
その態度を察したのかミゾレは席を立って立ち去ろうとする。
「あ、待って待って‼︎ 行かないで⁉︎」
その行動に女子生徒は慌てて呼び止めようとする。
「生憎、捏造や偏向報道が大好きなマスゴミと言葉を交わせる程、お人好しじゃねぇんだよ」
「凄い偏見⁉︎ 貴方って記者に対してそんな印象を持ってるの⁉︎」
「此方の世界だと、お前のような身の程知らずの記者って生き物は、大体が生死不明になるからな。有る事無い事のゴシップを書いて報復される連中が後が絶たない」
——カウンターを憎んだのか偏向記事を書いて裏社会の連中を敵に回した挙句、愚か『評議会』に目ぇ付けられて、消されたマスゴミなんて者も居る。……信用出来る情報ってのは見極めが難しいもんなんだよな。侵食絡みは曖昧になりやすいから特に。
「…………」
「一応、警告にはなるが此方の世界に対して興味津々な事は結構だが……お前の想像よりも安全圏は無いぞ?」
——ナニが何処で聞いているか、分からんぞ。特に……シャドウって奴は。