エルデ最初の王 《オーバーロード》   作:ガルテガルテ

3 / 3
感想、評価、お気に入り登録ありがとうございます!
また、誤字報告もありがとうございます!



※申し訳ありません、投稿したばかりですが大きく修正をしました。


第3話

 カッツェ平野、アンデッド多発地帯であるその土地の地下である存在達が生まれようとしていた。

 この世界では存在し得ない巨人の種族、■■■の世界においてはある戦争において討滅された種族である。

 

『オオ……』

 

 本来はこの世界では生まれ得ない存在が竜帝の許可を得た悪神の力の行使によりこの世界に生まれ出ようとしている。

 生まれ出ようとしている彼等の行動原理は潰し燃やす(…………)。彼等はその為だけに生まれた、つまりは……

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!』

 

 説得も不可、理解も不可。ただどちらかが殺し、殺される。それだけである。

 

 ■■■

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!』

 

 

「うひゃー、すごい光景! あいつらが《占星千里》が言ってた火の巨人て奴らかな!」

 

《占星千里》の予言から一ヶ月後、カッツェ平野に集まった《絶死絶命》を除く漆黒聖典の全隊員の前に巨大な巨人達が地下から現れた。

 大地を裂き現れた彼等は霜の巨人などを大きく上回る巨体を誇っており、その進撃により地面が揺れていた。

 その光景に大きく興奮した、《疾風走破》が声を上げた。

 

「そうでしょうね、あの様な見た目、巨体の巨人の種族は初めて見ます」

 

 次々と地下から湧き出てくる巨人達に隊長は溜息が出てしまう。

 そしてその巨人達一体一体が強大な気配を纏っている。

 

「《占星千里》奴らの難度は分かるか?」

 

「うん、さっきは分からなかったけど、今なら分かる」

 

《占星千里》が巨人達に目を向け確める。

 

「一体一体の平均が難度150くらい、中には200を超える個体もいる」

 

「まさに神話ですね、とんだ怪物達だ」

 

《一人師団》が目の前の光景に恐怖を隠さないでいる。それも無理もない事だろう相手難度が200を超えら個体もいる神話の怪物、国を滅ぼせる存在達だ。

 

「でも、アイツは違う」

 

 最後に地面から湧き出た存在に全員が震撼した。

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!』

 

 

 手に巨大な盾の様なものを持っている巨人が這い出て来た、身体は赤き体毛に覆われおり胸には顔の様な形があり、その圧は他の巨人を大きく上回っていた。

 

「あ、アイツは次元が違う、難度300に届くかも」

 

 神話の中の怪物の中の怪物の出現に誰もが畏れる中、隊長が《戦王戦斧》に告げた。

 

「《戦王戦斧》あの巨人の相手は貴方に任せてよろしいでしょうか?」

 

「承知した。其方は大丈夫か?」

 

「ええ、我らも神人、英雄と呼ばれる身、神話の怪物達であろうと討ち取って見せましょう」

 

 神話級の怪物達を前にそう豪語してみせる。戦力では《絶死絶命》《戦王戦斧》に及ばない部分はあれど、彼等も神人、人類の守り手である英雄である。

 

「そうか、では任せる」

 

「ええ。では、皆!」

 

 隊長が声を張り上げ、隊員全員に声をかける。

 

「あの巨人の相手は《戦王戦斧》が相手を務める! 私たちは周りの巨人の群れの足止め及び討伐へと移る! 特に強力な個体は私が相手をする! 見ての通り相手は神話の怪物達、あの一体でもこのカッツェ平野から出れば甚大な被害が出るだろう! 心してかかってくれ!」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

 隊長の言葉に皆が巨人の達に挑んでいく。

 

「では私も行く」

 

「お気をつけください《戦王戦斧》、あの巨人は恐ろしく強いです」

 

「ああ感じている、其方も気をつけろ」

 

《戦王戦斧》も武器を取り、()()()()()()()()、あの巨人へと突撃していく。

 

「この状況でも楽しんでいますか、()()()()()により多少抑えられるとはいえ、相変わらずですね」

 

 神話の怪物達相手にいつもと変わらない《戦王戦斧》に笑みを浮かべ、隊長も巨人達へと切り込む。

 

 この世界での巨人戦争が始まった。

 

 

 

 ■■■

 

 

「ゼェリャッ!」

 

《人間最強》の一撃が巨人の足を切り裂く、彼の一撃は重く巨人の体勢を崩す事に成功していた。

 

「やれぇ! 《疾風走破》!」

 

「『能力超向上』『流水加速』『疾風走破』!」

 

 そこに武技を重ね合わせた《疾風走破》が高速で巨人を登り頭へと魔法が込められたスティレットを叩き込む。

 

「オラァ!」

 

 同時に巨人の体内で魔法を発動させる。

 

『オオォ……』

 

 足に斬撃と頭にスティレットによる刺突と魔法による連撃を叩き込まれ、流石の巨人も地面に倒れ伏す……が。

 

 

「ッ! 離れろ《疾風走破》! そいつはまだ生きてるぞ!」

 

「チィっ!」

 

 しかし、巨人は死なず。

 あれだけの一撃を頭部に叩き込まれ、本来であれば生物にとって致命傷であるはずの脳を損傷しながら、巨人は起きあがろうとしていた。

 

「ハッ!」

 

 そこに漆黒聖典隊長の槍による刺突が損傷した後頭部に更に叩き込まれる。それがトドメになり、巨人は身を震わせ動きを止めた。

 

「大丈夫か!」

 

「ああ! だが、こいつらでかいだけあってやたらとしぶとく、タフだぞ!」

 

 戦場では、各々の場所で漆黒聖典の隊員達が奮闘している。しかしその生物としての性能超えた頑丈さにより、苦戦している所も多い。

 

「こちらも実感してる! 何度も身体に武器を叩き込めているのだが、中々倒れない! 攻撃する際は巨人が完全に動かなくなるまで攻撃してくれ!」

 

「了解! っと危ねっ!」

 

 巨人の拳が振り下ろされ《人間最強》がそれを寸前で避ける。振り下ろされた箇所は巨大な陥没が造られていた。

 

「とんだ馬鹿力だな。こんな一撃を喰らったらこっちがお陀仏だったろうな」

 

 タフさと膂力両方を高水準で宿す巨人達に苦戦する。特にタフさについては急所に強力な攻撃をし明確なダメージを与えても死なず動き続けるほどであった。

 

「《占星千里》! 《戦王戦斧》の戦況はどうなってる!」

 

「近づかぬが吉! 近づいたら死ぬよ!」  

 

 瞬間、遠方からも確認できるほどの爆炎が広がる。

《戦王戦斧》のいる戦場もこちらと同じく、もしくはそれ以上の神話の戦場であった。

 

「よし! 皆、《占星千里》の声が聞こえ見えたな! 後方の戦場には近付くなよ! あの戦いに巻き込まれたら死ぬぞ!」

 

「「「「「「了解!」」」」」」

 

《占星千里》と隊長の言葉に一斉に返事を返す。

 隊長に言われずとも彼等はわかっていた、轟音が響き渡るあの戦闘領域に踏み込めばタダでは済まない事を。

 

 

 ■■■

 

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!』

 

「オオオオオオッ!」

 

《戦王戦斧》の戦斧と火の巨人の大盾がぶつかり合い、大地を揺らす。

 圧倒的な武器の大きさ、圧倒的な身体の差、この大きさが有りながらも戦闘が始まり30分ほど《戦王戦斧》は火の巨人と互角の戦いぶりを見せていた。

 

『オオオオオオッ!』 

 

 火の巨人は大盾を水平に振るい、《戦王戦斧》を叩き潰そうとする。威力、速度共に申し分ない一撃であり、竜であろうともミンチに出来てしまえるだろう。 

 

「セイッ!」

 

 が、この男はそれを()()()見せた。水平に迫る超重量超威力の一撃を戦斧を叩きつけ強引に上に弾き飛ばす。

 

『オオッ!?』

 

 強制的に力の向きを変えられた火の巨人はその力に体制を崩したたらを踏む。その隙に《戦王戦斧》は背中に追撃を加えていく。火の巨人もただやられるだけではなく、その大樹の如く太い脚で牽制も含ませた蹴りで攻撃を加えていくが直撃はせず、防がれ同時に脚にも追撃を入れられていく。

 

『オオッ!』

 

 有効打にはならないと理解した火の巨人が蹴りをやめ、腹の口から火を取り出し、両手を地面に叩き付ける。同時に周囲の大地から()()()()()それを察知した《戦王戦斧》は脚に力を込め跳躍、その攻撃範囲から即座に離脱した。

 その直後、大地から火柱が無数に出現し、カッツェ平野を火の大地へと変えていく。

 

「その体躯でありながら、魔法を使いこなすか」

 

 悪神の力を借り受けた火の巨人は火の魔法……彼方の世界では祈祷と言うものを使いこなす。

 一度距離をとった《戦王戦斧》を火球で牽制を行い、新たに火球を生み出す、火球は特大の火球となり《戦王戦斧》へと急接近する。

 

「でかいな……」

 

 その火球は先程の火球よりは遅い、しかし、対象を追跡するのが厄介だ。《戦王戦斧》が移動するに合わせその軌道を正確に変えてくる。 

 その火球が対象に近づいた時、火球が更に燃え盛り、()()()()()で爆発した。

 威力もさる事ながら此方へ当たる前に爆発すると言う性質が厄介であり、迎撃しようと戦斧を振り上げていた《戦王戦斧》は直前に後ろに下がっていながらもその威力に吹き飛ばされ、後方に大きく下がってしまう。

 近距離では大盾による直接攻撃、遠距離では火球や追跡する特大の火球による攻撃を行い、時に火柱による範囲攻撃を行う。隙が少ない堅実な戦闘方法に傷は与える事ができていても決定打を与えられずにいた。

 

『《戦王戦斧》、そっちの戦闘はどんな感じ〜』

 

 攻略方法を思案している《戦王戦斧》の元へ《伝言》が伝わってきた。

 

「《無限魔力》か、其方は大丈夫なのか?」

 

『相手がタフすぎてしぶとすぎるから時間掛かっちゃつてるけど、外に出ないようにお誘えられるし、徐々にだけど減らせて来てるからきたこうやって話すくらいは大丈夫〜』

 

 少し目を逸らし後方を見ると、漆黒聖典の隊員達が巨人を外に出さないように完全に抑え込めていた。そして、少しばかり見てる間でも、互いに連携し巨人に攻撃を加えてダメージを蓄積させ討伐させていく《戦王戦斧》には真似ができない事である。

 

「さすがだな、もうあそこまで数を減らしているとは」

 

『まあ、あいつら連携とかはないみたいだからね、そこを突いてなんとかやってる。そっちはどう? 上から見てたけど苦戦してるみたいだね』

 

《無限魔力》は《飛行》を使い、上空への攻撃手段をあまりも立たない通常の巨人達に魔法での絨毯爆撃などを行い支援していた。その為、《占星千里》に及ばずとも、《戦王戦斧》の戦闘状況が把握できていた。

 

「ああ、攻守共にバランス良く揃っている。強いなあの巨人は」

 

『うへー、《戦王戦斧》にそこまで言わせるなんて相当な化け物だねあの巨人』

 

「大きな隙があれば有効打を与える事ができるが、それが少ない」

 

 攻守共に優れており、その見た目とは裏腹に堅実な戦闘を行う巨人に隙は少なかった。少ない隙を完全に狙うには何か()()()()()必要があった。

 

『もう真っ正面から突っ込めばいいんじゃない! なんて、あはは〜』

 

「……そうか、その手があったな、感謝する《無限魔力》。少々頭が固くなっていた』

 

『へ? 感謝って何が? ちょっ、《戦王戦斧》何する気……』

 

《無限魔力》の言葉に天啓を得たりと、全力で脚に力を込め、真っ正面から突っ込む。

 

 

 真っ正面から突っ込んできた、《戦王戦斧》に対し火の巨人は火球で攻撃するが、《戦王戦斧》は避けず、戦斧で払い除け全力で突き進む、火の巨人は続いて先程のよりも力を込めた特大の火球を進ませる。

 牽制の為の火球でもあったが、《戦王戦斧》は避けず、突き進み、そして着弾し、爆炎が広がる。

 通常の火球より強化された火球が直撃した事により、笑みを浮かべる火の巨人、これで大きなダメージを与えられたはずだとほくそ笑む。 

 

「ハァッ!」

 

『!?』

 

 体に少し焦げた跡を残しながらも、更に脚で大地を踏み込み加速し火球によりできた煙から飛び出してきた。あの火球に大したダメージを負っていない事に驚きながらも、更に接近して来た《戦王戦斧》に火の巨人は次の手を打つ。攻撃範囲に入った瞬間、火の祈祷による火柱を広範囲で発動させ、足止めを狙う。広範囲にそして強力に燃え盛る火柱には《戦王戦斧》も足止めを食らうだろう。

 

「ムンッ!」

 

『!!?』

 

 だが、それは彼が何もしなかった場合の話である。

 火柱が燃え盛る地を目前に《戦王戦斧》は斧を振り上げ、より力を込めた一撃を撃ち放つ。

 轟音が響き渡った後その火の柱が燃え盛る地には、火の無い道が出来ていた。戦斧の一撃とそれと同時に発生する衝撃波により、火柱を大地ごと叩き潰し、強制的に火柱のない道を()()()()()

 作り上げた安全圏を通り抜け《戦王戦斧》は火の巨人へ急接近する。その力技に動きを一瞬止めていた火の巨人もそれに気づき手に持つ大盾で叩き潰そうと標的目掛けて振り下ろす。

 

「遅い」

 

 しかし、それは遅すぎた行動だった。火の巨人の大盾を掻い潜り、最大速度からの一撃はその勢いのまま両脚を纏めて()()()()

 

『オオオオオオオオオ!!!???』

 

 両脚を纏めて失った、火の巨人は支える脚を無くしバランスを崩し、悲鳴をあげ倒れる。切られた両脚からは血がとどめなく溢れていた。

 

『……無茶する〜、隙を作るってそう言う事?』

 

「頑丈さには自信があるのでな」

 

『そういう問題じゃないと思うんだけど、確かにあまり傷は負ってないようだけどさ』

 

《戦王戦斧》の体を確認し、呆れた頑丈さにため息をつく《無限魔力》。確かに身体を見る限り大きな傷は負っていなそうに見える。

 

『……はぁ〜まあいいか、でも帰ったらちゃんと治療してよ? ダメージが蓄積してないとは限らないんだからさ』

 

「了解した、では……」

 

 とどめを、と言おうとした《戦王戦斧》の目の先ではは火の巨人が斬られた()()を立ち上げ、それを掲げようとしていた。

 

『ッ! 《戦王戦斧》!』

 

「ああ!」

 

 何をしようとしてるかはわからないが、この状況でのあのような行為、良い事であるはずがない。

 それを阻止しようと《無限魔力》が魔法を放ち《戦王戦斧》が斬りかかった。

 

『オオオオオッ!!』

 

「ッ!?」

 

 突如として地面から湧き出て来た巨人に阻まれた。構わず叩き斬ろうとするがその巨人の様子はおかしかった、全身が()()()()()のである。

 そして、()()()()

 

「ムゥ!?」

 

 自爆した巨人から発生した大爆炎に吹き飛ばされる《戦王戦斧》。直撃を受けたことにより、これまでよりも大きく吹き飛ばされ、大きく火の巨人との距離を空けてしまう。

 

『《戦王戦斧》大丈夫!?』

 

「ああ、傷は大した事ない……だが、()()()()()()()()

 

 自爆した巨人は十分にその役目を果たしていた。時間を稼ぐという大きな役目を。

 火の巨人は同胞がその命で稼いだ時間の中で掲げた脚を贄とし悪神へと祈りを捧げる事により、新たにそして大きい、悪神の力を手に入れた。

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!』 

 

 

 儀式を終え、贄に捧げた脚は燃え尽き、胸にある顔の()()()()。悪神への儀式は成功し、腹の口にこれまでとは比較にならない熱量が収束する。

 

「《無限魔力》退避だ! 全隊員、全力で離脱しろ!!」

 

『了解! 『全隊員! 退避! 全力退避!』』

 

《無限魔力》が全隊員に伝える最中にも腹には熱量が集積し腹は煮えたぎっていた。

 そしてその熱量が臨界点に達した直後、火の巨人の腹から大火球が無数に噴出した。噴火した山から降り注ぐ火山弾が如く、カッツェ平野全域に恐ろしい速度で空から降り注ぐ。

 自然界の大噴火に匹敵する大火球は、火柱とは比べものにならない速度でカッツェ平野を消し炭に変えていく。

 

「おおおお!? マジぃぞこれ!」

 

「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ! マジで死ぬって!?」

 

「いいから! 全力で走れ! 本当に死ぬぞ!」

 

《無限魔力》からの《伝言》に即座に対応し退避を始めた漆黒聖典にもその火山弾は襲いかかっていた。大火球一つにあたれば即死、そんな状況になりふり構わず全力で退避していた。

 

「くそっ、ここまでとは……!」

 

 思わず悪態をついてしまう隊長。

 本来であればここまでの規模の祈祷を火の巨人は行使する事が出来なかったが、今回は状況が違った。

 斬られた両脚を贄に使うことにより片脚を贄にするよりもより莫大な力を悪神より賜った事により強大な力を手に入れた。

 そして両脚を斬られた火の巨人は怒りによりその力を制御する気がなく、本来使えるはずだった祈祷を使わず、噴火だけを使いその力を完全に解放し暴走状態に陥っている。

 

 今の火の巨人は災害そのもの、その命尽きるまで止まる事は決してない、大災害である。

 

「致し方ないな……」

 

 だが、この男はこの状況でも前に進んでいた。

 

「《無限魔力》隊長に《伝言》を繋いでくれ」

 

『《戦王戦斧》!? 今それどころじゃ! ッあぶな! 今当たりそうになった!』

 

「すまない、そのような状況では無いのは分かってる、だが緊急の要件だ頼む」

 

『ああもう!? わかった! 隊長《戦王戦斧》からの伝言がきた!』 

 

『《戦王戦斧》か!? 何をしている!? 貴方も退避を……』

 

 この非常事態に退避もせずに《伝言》を繋いできたことに退避を促す。この間にも

 

「すまない時間がないため手短く伝える、これより()()()()()を持って火の巨人を討伐する、衝撃に備えてくれ」

 

『全力の一撃!? まさか()()を……』

 

「悪いが議論してる暇はない、このままでは被害はカッツェ平野を超えて広がっていくだろう、その前に火の巨人を討伐する」

 

 周囲を見渡す。広がる大火球は、カッツェ平原を恐ろしい速度で燃やし尽くしている。

 このままでは、カッツェ平野を超えその外にまで被害が広がり、カッツェ平野だけでは済まさない、致命的な損害を受けるだろう。

 その前に止める必要がある。

 

『ッ! ……やむ得ませんね! わかりました、こちらも衝撃に備えます!』

 

 隊員達へ、今から行う作戦について手短に説明をする。襲いかかる大火球がら回避していた隊員達がその作戦を聞いた時、その顔に焦燥が浮かんだ。

 

「本当にアレをする気か!? ()()()()()()()()()()()()()()!?」

 

「それだけ緊急事態ってことなんだろうけどさぁ!? ていうか本当にまじでヤバい! オラァ! クソ兄貴へばってないでちゃっちゃと走れクソボケ!」

 

 ビーストテイマーのクラス故体力が近接戦闘を行うメンバーに劣りながらも、戦場を自分の足で駆け回っていた事が多かったクアイエッセの尻目掛けてクレマンティーヌが蹴りを叩き込んでいた。

 

「ぬごっ!? け、蹴りを入れるなクレマンティーヌ!? 言われなくても事態は理解してる!」

 

「ならさっさと死んでも退避しろや! ()()で吹き飛びたいのかよ!」

 

 全力で退避していく隊員達を確認し、隊長は火の巨人へ進む《戦王戦斧》へ目を向ける。

 

『《戦王戦斧》ご武運を!』

 

「ああ……」

 

 隊長からの激昂を受け、《伝言》を切る。降り注ぐ大火球を避けながら火の巨人の下へとできる限り接近する。そして噴火が発生している真上へ跳躍し、戦斧に力を込める。 

 神器である戦斧でなければ即座に砕け散る程の力が加えられ、神器が悲鳴を上げる。

 

()()を使うのは随分と久しぶりだな」

 

 この技を《戦王戦斧》が行使するのは久方ぶりだ。だが、それも仕方ない事だろう。この力を使用した際は悪魔がいた祭壇を()()()()()()()()()()()

 

『オオオオオ!?』

 

 火の巨人は自分の遥か頭上にある気配に気づいた。

 

 白き髪を広げ、戦斧を振り上げるその姿。

 

 頑健極まる筈の脚を両脚ごと切り裂いた怨敵である。

 

『オォ──ッ』

 

 感じたのは怒り、本来の行動原理であれば薄いのである筈の感情を先ほどの一撃により獲得した火の巨人は爆炎を腹に集中させ、放つ。

 自らの脚を切り裂いた不届者を、怨敵を、屠りさるために。

 

「オオオオ!」

 

 噴き上がる大噴火に《戦王戦斧》は降下する。

 彼の武技は自分を中心とした線上に超強力な衝撃波を放つ技である。その威力は通常で放つ衝撃波よりも広範囲で、より強い。

 しかも、山を粉砕した時よりも一年、自らの身体をより鍛え上げた為その威力は計り知れない。

 

「ウオオオオオオオオオオオオオォオオッ!!!」

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!』

 

 雄叫びを上げ、戦斧を振り下ろし、巨人の火に突貫する。 

 

 自然界の大噴火勝るとも劣らない猛火がたった一人に放たれる。

 

 互いに今繰り出せる最大級の一撃が、ほんの僅かな間だけ拮抗する。

 

 

『オ──?』

 

 

 怒りに呑まれた、火の巨人が短い生の最後に見たのは。

 

「見事だった」

 

 その身を炎に包まれながらもはっきりと見える。

 

 揺らがない、灰色の瞳であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────世界を揺らす大衝撃が伝播した。

 

 

 

 

 

 

 

「うおおおおおおおお!?」

 

「んぎゃああああああああ!?」 

 

 その衝撃は漆黒聖典にも届いた。

 

 可能な限りの遠方に流れ続けていた彼らにもその衝撃は襲いかかる。

 爆破の一撃の様に広がる衝撃はカッツェ平野全体に広がった。

 

 襲いかかった衝撃に、備えていた彼等も吹き飛ばされてしまう。

 

「おおおぉいてぇ、《戦王戦斧》の野郎あの時より威力上がってやんなぁ、ここまで衝撃が来るとは」

 

「いてててて……離れていてやっぱり正解だったねぇ、近くにいたらどうなってたことやら」

 

《人間最強》と《疾風走破》がぼやきながら立ち上がる。他の漆黒聖典の隊員も衝撃で吹き飛ばされながらも被害は最小限になるよう動いており無事であった。

 

「ていうか、クソ兄貴生きてる?」

 

「い……い、生きているぞ、アホ妹……」

 

 体力の消耗や《無限魔力》や《占星千里》と違い大丈夫だろうと庇われなかったクアイエッセは盛大に吹き飛ばされながらもテイムしたモンスターに受け止めるよう指示をして何とか無事ではあった。

 

「ふぅ、皆無事だな? 仲間の攻撃に巻き込まれて死亡するなんて笑えないぞ」

 

「隊長〜それ本当に笑えない」

 

 軽口を叩きながら、隊員達が立ち上がる。流石、漆黒聖典に選ばれただけあって皆丈夫である。

 

「《占星千里》戦況の確認を」

 

「わかった」

 

《占星千里》がその能力を駆使し、現在の戦況を確認する。ないとは思うが、もし今の一撃で倒れていなければ、こちらの終わりである。

 そして、《占星千里》の目に爆心地が映る。

 

()()()()()()()()がカッツェ平野の風景を変えた。 

 

 そこに立つ、《戦王戦斧》。

 

 そして

 

 

 半分に分たれたように叩き斬られている、火の巨人。

 

 

 

 勝敗は明らかであった。

 

 

「倒れているのは火の巨人、立っているのは《戦王戦斧》!」 

 

《戦王戦斧》が手に待つ戦斧を掲げ此方を見る。

 

 体に傷はあれど、その姿に揺らぎはない。 

 

 

 

 その二つ名に相応しい、《戦王》の姿であった。

 

 

 

「火の巨人討伐成功!!!」

 

「「「「「「よっしゃああああああッ!!!!!」」」」」」

 

 

《占星千里》の報告に漆黒聖典の全員が沸き立つ。これまでにない戦いに、大戦果に、そして仲間の勝利に。

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 火の巨人達が消えていく、本来はこの世界で生まれるはずが無かった存在としてなのか霞のように消えいく。

 

「《戦王戦斧》────!!」

 

 霧のように消えていく火の巨人をみていた《戦王戦斧》に後ろから声がかけられる。

 

「《疾風走破》か」

 

「お疲れ! ってアレ? あの巨人消えてってるじゃん」

 

「ああ、あの個体以外も消えていってる。アレでは証拠品などを取るのは無理だ」

 

 装備品であるはずの大盾ですら霧のように消滅する。此度の戦闘での証拠品を取ろうとしたが、消滅してきている為それは不可能だった。

 

「仕方ありません。証拠隠滅の手間が省けたとして今回は良いとします。それよりも今は他の国からの偵察が来る前にこの場を離れ法国に早く戻りましょう」

 

「賛成〜早く戻ろう《戦王戦斧》」

 

 帰還を告げる隊長の次に《無限魔力》が続いて賛成した。

 

 周辺を見渡せば他の火の巨人達も三分の一が漆黒聖典に討伐され、もう三分の二は先程の個体の大噴火の巻き添えをくらい、全滅していた。

 

 漆黒聖典は皆顔に疲れが出ており、その疲れ具合が此度の戦闘の激しさを物語っている。

 疲れを癒すには早く法国に戻るのが最適であるだろう。

 

「ああ、賛成だ」

 

 漆黒聖典はカッツェ平原を離れ、法国への帰路につく。

 

 

 

 この時、この世界での巨人戦争が終結を迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




戦闘描写難しかったです。

漆黒聖典をが強化されています。任務+演武場による《戦王戦斧》《絶死絶命》による模擬戦(巻き込まれた隊員多数)や武闘派との模擬戦(巻き込まれた隊員も多数)による強化です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。