ポケットモンスターNAVY ~暴投モンスターボール~   作:サンダーゴリラ

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レポート11 シオンタウン/オバケなんてないさ

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 ここはシオンタウン。

 シオンは紫、尊い色。

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 イワヤマトンネルを出て、すぐ南のシオンタウンに到着したアクタたちは、まずポケモンセンターでぐっすりと休んだ。

「めちゃくちゃ疲れた」

 翌朝になって、ようやく町を散策する。

 曇り空。町にはどこか、辛気臭い雰囲気が漂っていた。

「ここはポケモンのお墓で有名な町じゃ」

 ポケモンハウスなる施設のフジという老人は、お茶を淹れながらそう語った。

 ポケモンハウスとは、ひとに飼われていたが、事情があって手放されたポケモンを引き取っている施設らしい。部屋のすみには、頭に骨を被った小さなポケモンがいた。孤独ポケモン、カラカラだ。

「飼っていたポケモンが死んだとき、ポケモンタワーに行って、冥福を祈るのです……」

「ポケモンタワー……。そこがお墓なんですか?」

 そびえ立つ塔は、町でもっとも目立っていた。ひとの出入りが多いものの、観光地というわけではなく、ポケモンの墓が集まった施設らしい。

「おじいさん、なんだか元気がないみたいですね」

「ほっほっほ、そう見えますか」

 誤魔化すように笑うも、老人はやがてため息をついた。

「……あのポケモンタワーに、幽霊が出るという噂がありまして」

「幽霊? あ、どうも」

 アクタは、フジ老人からお茶を受け取る。

「塔を登ろうとする者が、その幽霊に追い立てられるのです」

「ゴーストタイプのポケモンじゃないんですか?」

「はじめはそう思いました。ゴーストポケモンのイタズラではないかと……だが、どうも違う。事態の解決のために応戦したトレーナーや、祈祷師の巫女が、取り憑かれてしまったのです」

「とっ……!?」

「そんなこと、ゴーストポケモンの仕業にしては、行き過ぎている。それに、あの幽霊を一目見ればすぐにわかります。あれは生きているポケモンではない」

 思わず、湯呑みを持つ手に力が入った。

「少年、悪いことは言わない。旅をしているならば、先を急ぎなさい。ポケモンタワーには近寄らないほうがいい」

「……はい」

 一応、頷いておいた。

 だが、どうにも気になる。ポケモンハウスを後にして、その足でポケモンタワーに向かった。

 建物内は、荘厳な雰囲気に満ちていた。

 供養のための来訪者の数は、決して少なくない。幽霊騒動なんて嘘ではないだろうか、と疑いつつ、アクタは塔を登った。

 3階にさしかかったところである。

「……え?」

 すぐにわかった。

 ()()はポケモンではなかった。

「ふ……フシギソウ!」

 思わずモンスターボールを投げてしまった。あらぬ方向へ飛んで行く。

「ああごめん! でも助けてフシギソウ!」

 ボールから出たフシギソウは、こちらまで駆けてきて()()に向き合う。

 不自然な黒い影。だが、「なにもない」とは思えない。

 ()()はこちらを見ている。アクタを認識している。

「お……オバケなんてないさ」

 せめてもの抵抗だった。

 狼狽する少年の口から発せられるのは、童謡というよりもはや念仏。

「オバケなんてないさオバケなんて嘘さゴーストポケモンと見間違えたのさだけどちょっとだけどちょっとぼくだって怖いなあああああああああ!」

 耐えられなくなり、アクタは踵を返す。フシギソウをボールに収めて、脱兎の如く逃げ出した。

 

 

「いやー、怖かった」

 ポケモンセンターでひと息つく。

 フジ老人の話は、はっきり言って半信半疑だった。ただのゴーストポケモンだったら捕まえてやろうと──ノーコンだから無理かもしれないけれど。

 だが、あれは本物だと確信した。

 ()()()()()()()()()()()()()

「……死んだポケモンが、幽霊になった? どうして?」

 推測だけならばできる。

 たとえば、恨み。

「うらめしや──ってか? でもぼくには襲いかかったり、取り憑いたりなんかはしなかったな」

 あのとき、ただひたすらにアクタの脳内に声が響いた。

「タチサレ」と。アクタはその声に従うしかなかった。あと、ふつうに怖かったというのもあったが。

「一体、どうすれば……」

 不意に、ポケモンセンターに置かれていたフリーペーパーが目に入った。

『見えないポケモンもよく見える? 新製品、シルフスコープ! ……シルフカンパニー』

「これだ!」

 

 

 シルフカンパニーはヤマブキシティに本社を置く、ポケモン関連のアイテムを開発する企業だ。現状ヤマブキシティに入れないことは先刻承知である。

 そういうわけで、アクタが目指すのはタマムシシティ。人口の面ではカントーでもっとも栄えており、タマムシデパートなる大型商業施設がある。シルフスコープも売られていると踏んだのだ。

 8番道路、そして地下通路を経由して、タマムシシティへ。自転車のおかげで移動が楽だった。

 

────

 ここはタマムシシティ。

 タマムシ虹色、夢の色。

────

 

「うわあ……」

 賑わう街。行き交う人々に、アクタは圧倒される。

「こんなにひとが多いと、ポケモンも多いんだろうなあ……いいなあ」

 まずは、タマムシデパートへ。

 5階建ての大型デパートだ。1日中だって過ごせそうな規模の商品と店舗数。さしあたっては、シルフスコープを探すも……

「売り切れ!?」

 店員は申し訳なさそうに首を振る。

「申し訳ございません、ただいま入荷待ちでして……なにぶん、ヤマブキシティとの流通が滞っている状況なので」

 要するにロケット団のせいだ、とアクタは解釈した。店員に礼を言って、仕方なくデパートの散策を続ける。

 歩き疲れて、屋上の休憩スペースへ。ミックスオレを片手に、広い街を見渡す。

「家、家、ビル、家、ビル──お、あそこがジムか。行かないと。ゲームコーナーってあれかな。で、あの大きい建物がタマムシマンション……」

 ふと、アクタは思い出す。

「マサキさんが言ってたな。マンションの屋上に……ポケモン講座、だっけ?」

 勉強は億劫だが、ポケモンに関わることならば知っておいて損はないだろう。

 屋上への行き方は少々複雑だった。裏口に回って、ひたすら階段を上る。息を切らせつつ、ようやく到着する。

 タマムシマンション屋上のペントハウスには、「ポケモン講座」と看板が掲げてあった。アクタは門を叩く。

「よくぞ参った! わしが塾長である!」

 道着に身を包んだ男が、いきなり出迎えた。

「わしにわからぬことはない! さあ、わしの授業は甘くないぞ! そして受講料は安くないぞ!」

「すいません! マサキさんの紹介で来たんですけど!」

 大声で返した。このままでは流れで入講させられそうだったからだ。

 男は「ん?」と首を傾げる。

「マサキの……とすると、きみがアクタくんか?」

「あ、はい。アクタです」

「そうか、遅かったな。まあいい、準備はできているぞ!」

 男は、モンスターボールを取り出した。ポケモンバトルかと思ったが、そのボールはそのままアクタに手渡された。

「マサキからの贈り物だ。大事に育てろよ!」

「……はい?」

 ボールを開けてみる。

 四足歩行の、イヌ科を思わせる体型。茶色い体毛に、首回りはクリーム色の毛皮が覆っている。長い耳に、ふさふさ尻尾。実際に目にするのは初めてだった。

「イーブイだ~~~~!!!!」

 




フシギソウ
 れいせいな性格
 アクタの手前、がんばったものの、オバケは怖かった。

ギャラドス
 がんばりやな性格
 人間が争いを始めると現れて、灼熱の炎ですべてを焼き尽くす。非常に凶暴なポケモン。

イーブイ
 きまぐれな性格
 3種類のポケモンに進化する可能性を持つ、珍しいポケモンだ。
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