ポケットモンスターNAVY ~暴投モンスターボール~   作:サンダーゴリラ

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レポート37 ヤマブキシティ/超能力(弱)

 ジョウト地方のジム、そしてポケモンリーグを制覇したチリア。その挑戦を受けるジムリーダーたちは、高いレベルのポケモンを使うことが許されている。

 つまりカントー地方では、限りなく本気に近い実力のジムリーダーと戦うことができるということだ。

「アーボック、“どろばくだん”!」

 最初の戦い。ようやくライチュウを倒すことができたが、アーボックはダメージとともに『まひ』状態を負ってしまった。

「ネクスト! マルマイン!」

「こっちも交代! ブラッキー!」

 果たしてそれが元軍人らしい戦い方なのかわからないが、マチスのポケモンは“でんじは”や“かげぶんしん”といった技を多用し、なかなかチリアのポケモンの技を通さなかった。

「まあでも、相手への妨害と自分の強化。それってバトルの基本よね」

 2体目のマルマインとの戦い。

 ハクリューは“りゅうのまい”で攻撃と素早さを上げる。

「ハクリュー、“ドラゴンダイブ”!」

 強烈な突撃が、2体目のマルマインを倒す。

「レアコイル!」

「はがねタイプなら……カポエラー!」

 開口一番、カポエラーはレアコイルに飛びかかって。

「“ねこだまし”!」

 至近距離で攻撃のフェイントをかける。ほとんどダメージは入らなかったものの、レアコイルはひるむ。

「はがねタイプ相手のノーマル技だからダメージソースは期待してないけど、確実にひるませられるから使い得よね。それに、特性は一撃で倒せない『がんじょう』じゃなくって? いまの“ねこだまし”で潰れたでしょ」

「アメイジング! いまの一瞬でそのタクティクスを思いついたのかい!?」

天才(ジーニアス)だもの。続けて、“インファイト”!」

 カポエラーは高速回転し、レアコイルに拳と脚でラッシュを叩き込む。こちらは効果抜群。高威力の技に、レアコイルは戦闘不能となった。

 これで、マチスの残りのポケモンは1体。

「まだまだ、これからがほんとうのスタートデース!」

 最後に繰り出されたポケモンは、黄色いボディに黒い縞模様が入った、鬼を思わせる電撃ポケモン、エレブー。

「……バクフーン!」

 アーボックはすでに倒されてしまい、いまのチリアの手持ちにじめんタイプの技を持つポケモンはいない。ならば文字どおり、火力で攻めるためにバクフーンを選択した。

 投げられたボールは、部屋の壁に何度か反射して、器用に、エレブーの目前にバクフーンを出した。

「ワオ、ブラーボー!」

 拍手するマチス。パフォーマンスと思われたらしい。

 構わず、チリアはバクフーンに攻撃を命じる。

「“ふんえん”!」

 炎がエレブーを覆う。しかしエレブーは噴炎を突き破って、バクフーンに突撃する。

「“けたぐり”!」

 足元を蹴られ、バクフーンは横転した。対象の体重が重いほどに威力が高くなる、かくとうタイプの技だ。バクフーンは大のおとなほどの重量があるので、なかなかダメージは大きい。

「続けて、“でんげきは”!」

 必中の電撃に襲われる。しかしこの攻撃により、バクフーンの特性『もうか』が発動した。首から巨大な業火を噴出する。

「”だいもんじ”!」

 業火は大の字を描き、エレブーはそれを避けられなかった。

「ミーのエレクトリックなトリックが……」

 カントー地方初のジムチャレンジは、無事成功に終わった。

 

 

「この街を出たら、北にはヤマブキというビッグなシティがありマース!」

 オレンジバッジを譲ったマチスは、つぎの行き先についてアドバイスした。

 マチスとの別れ際、“Good Luck !“と書かれたサイン色紙を差し出されたが。

「要らない」

 はっきりと断った。

 マチスは切なそうに肩をすくめた。

「で、ヤマブキシティね」

 旅路に口出しされることは好まないチリアだが、大都市には興味津々だ。それにクチバシティから道路につながる道は、北と東。二者択一ならば、興味がある方向に行こう。

 というわけで翌日。6番道路を経由して、

「街の入り口にわざわざゲートがあるんだ……ほんとに大都市なのね」

 オフィスビルが整列する街、ヤマブキシティに到着した。

 

────

 ここはヤマブキシティ。

 光輝く大都会。

────

 

 この街でもっとも目立つ建物は、街の中心にそびえ立つシルフカンパニー。モンスターボールをはじめとするアイテムを生産・開発している大企業である。

「さしずめわたしはお得意様よね。あれだけモンスターボールを買って消費しているんだもの」

 背後のブラッキーは首を傾げた。

 たしかにチリアはよくフレンドリィショップでモンスターボールを買うものの、それで野生ポケモンを捕獲したためしがない。

 ノーコンなので、どんどんボールは自然に還っていく。消費というより、消耗だ。

 シルフカンパニー以外で目を引くのは、ヤマブキステーションという真新しい地下駅だ。ヤマブキとコガネをつなぐリニアモーターカーは、アクア号よりも“そらをとぶ”よりも速く、カントー・ジョウト間を移動できるらしい。

 ──のだが。

「休止中?」

 白い車体のいかにもスピードを発揮しそうなリニアは、停車したまま動いていなかった。

 駅員の話では、電力異常らしい。

「ふーん……まあいいか。カントーには来たばかりだし、帰省の手段を整えておくのは時期尚早だわ。時間をかければ“そらをとぶ”でも帰れるし──いや、トゲチックにぶら下がって長時間飛行はちょっとしんどいかもだけど」

 なんにせよ、この街を訪れたのはジムに挑戦するためだ。チリアとポケモンたちは街の北東、ヤマブキジムに到着した。

 隣によく似た建物があったが、こちらは格闘道場らしい。

『ヤマブキシティポケモンジム。リーダー、ナツメ。エスパーレディ』

「こっちか」

 ドアをくぐると、やはり今回もあの男がいた。

「おーす! 未来のレジェンド! あんたほどのトレーナーなら、エスパータイプの攻略法はもちろん知ってるよな! 期待してるぜ! グッドラック!」

「いよいよアドバイスをしなくなったわね」

 ジム内は、各部屋をワープパネルで移動する形式となっていた。部屋の数も、ワープパネルの移動先も、さすがの天才チリアでも初見では看破できない。

「クチバといい、どうも攻略に時間がかかるジムば続くわね。めんどくさい……」

 などとぼやきつつも、記憶力に優れているチリアは、移動を繰り返すうちにワープパネルの接続関係を完全に把握した。「めんどくさい」仕掛けも、理解してしまえば一本道である。ジムリーダー、ナツメのもとに到着するのに時間はかからなかった。

「……やっぱり来たわね!」

 黒髪の女性。彼女の姿をあらためるなり、チリアは顔をしかめた。

「やな感じ。めっちゃ美人だ」

 自分の容姿に自信があるチリア。もちろん、旅のなかで自分より容姿が優れている女性なんて山ほど出会ってきた。しかし彼女たちはチリアより年上で、収入と余裕があって、それ故に美容に対して手段を持ち合わせていた。あくまでも「10歳の少女」という分野ならば、チリアは自分が世界で一番美しいのではないかと、なかば本気で考えていた。

 さて。それを加味した上でも、目の前にいる、ひと回りは年上であろうナツメという女性は、チリアに敗北感を覚えさせるだけの美貌を備えていた。

 たとえば十年後、自分は現在の彼女より、美しい容姿になれるだろうか──そんなどうでもいい葛藤がチリアのなかに芽生える。

「……いや、どうでもいいか」

 そしてすぐに消えた。

 自分にとって、容姿の優先順位はそこまで高くない。それを思い出したのだ。

「やっぱりって、どういう意味?」

「あなたが来る予感は1年前からあったのよ」

 ナツメは少女に、神妙な目を向ける。

「あなたの目的は、ズバリわたしの持つバッジ!」

「……来るひとみんなにそう言ってるの?」

 ポケモントレーナーがジムを訪れる理由なんて、大多数がそれだろうに。

「わたし、戦いは好きじゃないけど……バッジを相応しい相手に渡すことがリーダーの務め。あなたが望むのなら、わたしのエスパー能力、見せてあげるわ!」

 なんだかマイペースに話すナツメだが、チリアが気になったのは、彼女の両手に装着された腕輪だった。

 緑のラインが発光する、黒い大きな腕輪。まるで鎖のない手錠みたいだ。チリアのセンスでは、とてもじゃないがオシャレには見えない。

「……他人のアクセのセンスに口出すのは野暮か。とにかく始めましょう。──ブラッキー!」

 チリアはモンスターボールを投げる。

 ボールは真後ろに飛んで行く。

「あら」

 ──と思いきや、空中でピタッと止まって、そのままバトルフィールドの中央まで運ばれ、開かれた。

 ナツメが手をかざしていた。両手の腕輪は、力強く緑の光を放っている。

「エスパー……って、ほんとなのね。その手首のはどういう装置?」

「テレキネシスを増幅しているの。ここ1年でエスパー能力がめっきり衰えてね。最近は未来予知も完全ではなくなった。他人の脳内を読んだり、話しかけたりもできなくなったわ」

 反射的にチリアは帽子を深く被った。

「まさか、テレキネシスをバトルでは使わないから安心して。それにしてもあなた、すごいノーコンね」

 ナツメはなぜか、嬉しそうに笑っている。チリアには彼女の脳内が読めるわけもないので、その笑顔の理由はわからない。

「友だちにもね、ノーコンがいるのよ。かわいい男の子なんだけど。彼氏かって? うふふ、そういう特別な関係じゃ……()()、ないんだけどね?」

「なんでもいいから早くやりましょうよ。ご指摘のとおり、わたしはバッジ目的でここに来たんだから」

「あら失礼」

 ニヤニヤしていたナツメはすっと表情を切り替えて、手にしたモンスターボールを、ふわりと浮き上がらせた。そのボールからエーフィが放たれる。

 薄紫色の体毛を持つエーフィは、ブラッキーとおなじくイーブイから進化したポケモンだ。

「タイプ相性ではそちらが有利ね。ちょうどいいハンデよ! エーフィ、”めいそう”!」

 エーフィの特攻、特防が上がった。チリアはおさげをくるくると指でいじりながら、小さく舌打ちをする。

「ハンデ、ね……舐めんなよ。挑戦者とはいえ下に見られちゃ、やな感じだわ」

 ナツメが腰に装備しているモンスターボールは、たったの3つ。3体のポケモンだけで退けられると思われているのならば、さすがに心外である。

「ブラッキー、“あくのはどう”!」

 波動はエーフィに強力なダメージを与えるものの、一撃で『ひんし』には至らない。

「っ──エーフィ、“シャドーボール”!」

 反撃に放たれたゴーストタイプの黒い弾丸は、ブラッキーには効果がいまひとつで、ほとんどダメージにならない。

「“おんがえし”」

 物理攻撃を受けて、エーフィは倒れた。

「やるわね……じゃあつぎは、バリヤード!」

「ブラッキー、こっちも交代。トゲチック!」

 チリアの手元から、トゲチックが空を舞う。ナツメはさっそく、

「“ひかりのかべ”!」

 特殊攻撃に対する障壁を張った。

「やっぱり、トゲチックなら特殊型だと思うわよね。ま、正解なんだけど──“シャドーボール”!」

 せめて、効果抜群の技を選ぶ。“ひかりのかべ”で“シャドーボール”は弱まり、期待したほどの威力は出ない。

「さあ攻めに転じるわよバリヤード! “サイコキネシス”!」

「こっちも攻めよう。”ひかりのかべ”が消えるのなんか待ってられない。“シャドーボール”!」

 さながら殴り合うように。

 バトルフィールドで、“サイコキネシス”と“シャドーボール”が混ざらんばかりに応酬される。果たして、この混乱を勝ち抜いたのは──

「“サイコキネシス”とは追加効果が似ているけど、特防を下げる確率は、“シャドーボール”のほうが高いのよ」

 トゲキッスが、大きなダメージを負いながらも空中に君臨している。バリヤードは倒れていた。

「つぎで最後の1体でしょ」

「……ええ。だけどこのあとどうなるか、わたしにはもう視えているのよ」

「それ、未来予知?」

 バリヤードが回収されるのと同時に、チリアもトゲチックを交代させる。

「自分の負けをネタバラしされるのって、やな感じじゃない?」

 少女の挑発に、ナツメはかすかに眉をひそめる。

「……チリアと言ったわね。あなた、性格が悪いって言われない?」

「へー。エスパーってそういうことまでわかるんだ」

「超能力なしでもわかるわよ」

 チリアはハクリューを。

 ナツメはフーディンを、それぞれバトルフィールドに呼び出した。

「“りゅうのまい”」

「“リフレクター”」

 物理攻撃に対するバリアを張られ、チリアは浅くため息をつく。このまま“りゅうのまい”を重ねるべきか、それともこの時点で攻勢に入るべきか──

「“ドラゴンダイブ”!」

 選んだのは後者だった。高威力の攻撃も、“リフレクター”に守られては大したダメージにはならないのだが。

「フーディン、“サイコキネシス”!」

 エスパータイプの強力な一撃に、ハクリューは苦しみつつもフーディンから目を離さない。

「……きみがそういう態度だと、わたしも交代という選択肢は取れなくなるわね、ハクリュー」

 “アクアテール”により水気を帯びた尾が、フーディンに叩きつけられる。反撃の“サイコキネシス”を喰らうが、ハクリューはまだ倒れない。

「わたしが視た未来と……違う!?」

「あっそ。じゃあ、わたしの予測通りだね。ハクリュー、“ドラゴンダイブ”!」

 命中が高い技ではないが、チリアはそれを不安に思っていなかった。ハクリューの呼吸を理解している。バトルフィールドを俯瞰できている。

 それ故に、完全な技のタイミングにフーディンはついに戦闘不能となった。




バクフーン ♂
 おくびょうな性格

トゲチック ♂
 さみしがりな性格

アーボック ♀
 しんちょうな性格

ブラッキー ♂
 まじめな性格

ハクリュー ♀
 なまいきな性格

カポエラー ♂
 ようきな性格
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