ポケットモンスターNAVY ~暴投モンスターボール~   作:サンダーゴリラ

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レポート7 シッポウシティ/男子3人それぞれ

「アクタ、チェレン、ほんとうにありがとうね!」

 洞窟から戻ったアクタとチェレンは、幼稚園で待つベルたちのもとに成果を届けた。

「ふたりでポケモンを取り返してくれたんだよね。ほんと、ふたりと友だちでよかった!!」

「おにいちゃん、ありがとう!!」

 もう日は沈んでいる。

 幼稚園の職員に事情を相談したところ、きょうのところは園に泊まっていって良いそうだが──

「あたし、サンヨウシティまでこの子を送っていくから、ポケモンセンターに泊まるよ。じゃあね、バイバーイ!!」

「ぼくは……きょうはもうすこしだけ旅を進めたいな。つぎの街に到着しなくても、3番道路で野宿するよ」

 3人は今夜、別れることになった。

「チェレン、大丈夫? 野宿もけっこう楽しいもんだけど、きょうは大変だったし、疲れてるんじゃない?」

「……そうでもないよ。それに、負けたくないからね」

 だれに? そう尋ねる前に、眼鏡の少年は呟く。

「ポケモンの能力を引き出すトレーナーがいる。トレーナーを信じて、それに応えるポケモンがいる。──これでどうしてポケモンが()()()()()なのか、わからないね」

 どうやら彼なりに、プラズマ団のことを気にしているようだ。

 チェレンとも別れ、幼稚園で夜を明かして。

 ──翌日。

 午前中は幼稚園の手伝いをして、しばらく園児たちと遊んだ後、アクタは旅を再開した。3番道路の静寂な湖のほとりを抜けて、すぐにつぎの街に到着する。

 

────

 ここはシッポウシティ。

 シッポウは七つの宝物。

────

 

「なんか、建物のデザインが独特っていうか……倉庫みたいだ」

 レンガ造りの素朴な建物が並んでいる。実際、このシッポウシティは昔は工場街であったそうだ。道路には資材運びに使われていた線路跡まで残っている。

 いまはこの街に工場などは残っていないものの、レトロな倉庫のデザインが芸術家たちに人気を博し、多くの倉庫がアトリエとして再利用されているという。

 通称、芸術の街。

「ゲージュツかあ……。よくわかんないよなあ。そろそろぼくにも、そういうセンスが欲しいもんだけど──あ」

 すこし歩いたところで、きのう別れたばかりの友人の姿を認めた。

「チェレン」

「アクタ、来たのか。ついてきなよ」

 眼鏡の少年は、手招きをして歩き出す。

「きのうは野宿したの?」

「いや、夜遅くにこの街に着いて、ポケモンセンターに泊まったよ。さすがに疲れたから、今朝はいつもより遅く起きたね」

「やっぱり幼稚園に泊まればよかったのに。子どもたちとも遊んだし、楽しかったよ?」

「そういうのはいいよ……。──さあ、このまままっすぐ進めばポケモンセンター。あと……よければこれを使いなよ」

 チェレンから青紫色の木の実を差し出される。

「『カゴのみ』だ。いいの?」

「いくつか手に入れたからね。……効果の説明は必要ないね?」

『ねむり』から回復させるための木の実だ。アクタは味に関してもよく知っている。

「ついでにアドバイス。シッポウシティのジムリーダーは、ノーマルタイプの使い手。かくとうタイプのポケモンがいるとかなり有利かもね」

「情報までくれるなんて。ずいぶん親切っていうか……()()()()()()()()だね」

「言葉の意味はわかっているんだろうけど」

 どうやら言い間違いをしてしまったらしい。はて、とアクタはひとりで首を傾げる。

「……思えば、きみにはいくつか借りがある」

 眼鏡の少年は、そんなアクタから視線を逸らす。

「旅のサポートのことだけじゃない。ベルのこと。プラズマ団のこと。ぼくだけじゃ、手に負えたかどうかわからない」

「そんなの──借りだなんて思わないでよ。ぼくこそチェレンにはいっぱい助けてもらってる」

「……とにかく、余った木の実くらいなら上げるし、情報共有だってぜんぜんメンドーじゃないから」

「それじゃ」と言って、チェレンは背を向けて去って行った。アクタはため息をついて、背後のバオップを振り返る。

「なーんかチェレンって、いろいろと気にしてるみたい。あれじゃ疲れちゃうんじゃないかな」

 バオップは主人の手元の『カゴのみ』を、物欲しそうに見つめていた。

「あ、ダメだよ。これは……、使い時ってものがあるんだ。おやつなら後で上げるからさ」

 

 

 さっそくシッポウジムに挑戦──したいところだったが、その前にポケモンたちを鍛えることにした。ミジュマルはともかく、バオップとはもっと息を合わせたいのだ。

 その日は一日中、街の西にある『ヤグルマの森』、その入り口に当たる広場で野生ポケモンやトレーナーを相手にトレーニングした。

『試しの岩』という大岩は、格闘家たちに人気だった。

「この岩をかくとうポケモンで攻撃すると、なにかアイテムが手に入るのか。じゃあまた来ないと。──かくとうタイプをゲットしたら、ね」

 そんな夢が実現できるものか、我ながらはなはだ疑問だ。

 とにかくトレーニングを終えて翌日。

「えーと、ここがジムなのか……な?」

 白い荘厳な建物、シッポウ博物館を見上げる。サンヨウシティに続き、ここもジムらしい外見ではない。しかし看板に書いてある以上、ポケモンジムであることはたしかだ。

『シッポウシティポケモンジム。リーダー、アロエ。ナチュラルボーンママ』

 どうやらイッシュ地方では、ポケモンジムはべつの施設と兼用になっているものらしい。

「まあ博物館も一緒に楽しめるんならラッキーかな。さて、さっそく……」

 建物に入ろうとすると。

「おっと」

「!」

 黒い帽子の青年と鉢合わせてしまった。道を開けようとしたアクタだが、青年の姿に覚えがあり、そのまま足を止める。

「たしか……エヌ?」

 カラクサタウンで、プラズマ団たちの演説を聞いた直後に戦ったトレーナーだ。ポケモンの言葉がわかる、というようなことを言っていたのでよく憶えている。

「久しぶり。博物館行ったの? どうだった?」

 アクタの問いに、Nは眉をひそめる。

「求めているものはなかった」

 早口で答える。

「ボクは……ダレにも視えないものが視たいんだ」

「……ふうん?」

 なぞなぞだろうか、とアクタは小首を傾げる。

「ヒントちょうだい」

「ボールの中のポケモンたちの理想。トレーナーという在り方の真実。そしてポケモンが

完全となった未来……。キミも見たいだろう?」

「無視か。──それにしても、相変わらず難しいことを言うね」

 アクタはさらに首を傾げる。

「ポケモンのこと。トレーナーのこと。エヌはいまのカタチじゃ、完全じゃないと思ってるんだ?」

「……キミがいまの世界に満足しているというのなら……、期待外れだな」

 Nは、腰元からモンスターボールを取り出した。

「それよりもボクとボクのトモダチで未来を見ることができるか、キミで確かめさせてもらうよ」

「バトルだね。いいよ」

 Nが強いことは、前のバトルでわかっている。シッポウジム挑戦前のウォーミングアップには申し分ない。

 

 

「マメパト」

 灰色と黒が混ざった翼を持つ、小鳥のポケモンが繰り出される。アクタはバオップで迎え撃つ。

「バオップ、“やきつくす”」

 主人に負けずマイペースな性格のバオップだが、この数日間の付き合いで、すっかり呼吸が合うようになっていた。軽い身のこなしでマメパトを倒す。

「オタマロ」

 続いてNが繰り出すのは、青い大きな尾びれを持つみずタイプのポケモンだ。バオップとは相性が悪いので、ミジュマルと交代させる。

 投げられたのでバトルフィールドとは離れた場所に現れたミジュマルだが、即座にオタマロに向かって行く。

「“きあいだめ”」

 急所に当たる確率を上げて。

「“たいあたり”!」

「……“ちょうおんぱ”」

 反撃で『こんらん』を受けてしまうが、ミジュマルは怯まない。

「うん、まだ大丈夫だよね。交代はさせないよ──もう一度、“たいあたり”!」

 混乱の中で、ミジュマルの攻撃は急所に命中し、オタマロは戦闘不能になった。

「……ドッコラー」

 Nの3匹目は、角材を抱えたかくとうタイプのポケモンだ。『ヤグルマの森』入り口付近でなんどか戦ったが、優れた攻撃力を持っている。ここはバオップに交代すべきかと考えたが──

「ミジュマル、どうする?」

『こんらん』状態でふらふらのミジュマルは、それでもドッコラーから目を離さない。

「じゃあもうちょっとがんばってみよう。“みずでっぽう”!」

 Nはそんなアクタをじっと見つめる。

「………………」

「……エヌ? なにボーっとしてんの? どんどん攻撃しちゃうよ?」

「ああ──ドッコラー、“けたぐり”」

 転ばされるミジュマルだが、そのまま側転して体制を建て直す。──いつの間にか『こんらん』は解けていた。

「“みずでっぽう”!」

 水流を受けて、ドッコラーは膝をつき、やがて戦闘不能となった。

「まだ未来は視えない……。世界は未確定……」

 敗北したNは天を仰ぐ。

 一応、落胆はしているようだ。しかしその様子は、自分の実力を嘆いているというよりも──

「いまのボクのトモダチとではすべてのポケモンを救い出せない……。世界を変えるための数式は解けない……。ボクには力が必要だ……。だれもが納得する力……」

 ぶつぶつと途切れ途切れの早口で呟くN。

「もしもし?」

「……必要な力はわかっている」

 Nは、アクタを無視して背を向けた。

「……英雄とともにこのイッシュ地方を建国した伝説のポケモン! ボクは英雄になり、キミとトモダチになる!」

 アクタの知り得ぬ決意を口にし、そのままNは立ち去ってしまった。ポツンと残されたアクタは、勝利したミジュマルを労う。

「おつかれ。強かったよ、ミジュマル」

 何度か撫でられて、やがてミジュマルはアクタの手を振り払った。気難しい。

「『いまのボクのトモダチとでは』──か。いまの手持ちじゃ弱いって言いたいのかな。だから伝説のポケモンが欲しいって? だったら贅沢どころか、バカ言ってやがる」

 ノーコンのアクタは自力でポケモンをゲットできず、選り好みができない。

 ──否、それ以前にアクタはそもそも選り好みをしない。

「どんなポケモンも、凄くて、強くて、偉いのに……」

 Nがなにを考えているのかわからない。しかし自己中心的な思い違いをしているというのなら、悲しいことだ。

 目を伏せるアクタだが、そんな主人を覚醒させるが如く──ミジュマルの身体が()()した。

「あ! あ! うわ! 来た!」

 この光は知っている。何度経験しても驚きと興奮は抑えられない。

 光はその輪郭を大きなものに変えて、やがて光が晴れるころには、進化は完了していた。

「……フタチマル」

 ポケモン図鑑がその姿の名を示す。

 体毛の色は青く。頭部の毛は髷のように逆立ち、髭も立派に伸びた。太ももに携えられた二枚の貝は、さながら太刀のように鋭く光っている。

「チェレンも、そしてエヌも、きっと自分なりに考えて旅をやってるんだ。ぼくたちもそうしよう。一歩一歩、進めばいい。一緒にね」

 アクタが差し伸べた手に触れて、フタチマルは、しっかりと頷いた。




チーちゃんへ

イッシュ地方ひとつ目のバッジ、無事にゲットしました。
サンヨウシティのポケモンジムは、ジムリーダーが3人もいたし、紅茶も美味しくて、楽しかったです。

前回の手紙に書いた、新しい仲間のバオップが活躍してくれました。
イッシュ地方に前の仲間たちを連れていけなかったのは寂しかったけど、その分、新しい仲間たちとどんどん息が合ってきているのがわかるので、これで正解だったのかもね。
チーちゃんには、みんなのお世話を任せてごめんと思ってます。
いつでもお母さんとかグリーンとかを頼ってください。

あしたはふたつ目のポケモンジムに挑戦します。
チェレンも応援してくれてるし、がんばるぞ!

アクタより
シッポウシティにて
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