ポケットモンスターNAVY ~暴投モンスターボール~   作:サンダーゴリラ

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レポート17 ライモンシティ/きらめく

「でんきタイプか……。『まひ』を受けるかもしれないから『クラボのみ』──あと素早いポケモンが多いイメージだな。『せんせいのツメ』なんかもありかな? で、わざマシンは……」

 準備を終え、アクタは遊園地へと向かった。

『ライモンシティポケモンジム。リーダー、カミツレ。シャイニングビューティ』

「シャイニングビューティ……」

 遊園地内、ある施設前のある看板を読んで、アクタはカミツレの印象に納得する。

 外壁まで電飾で輝く、大きなドーム状の建物だ。なかに入るとさらに、少年は驚く。

「ジェットコースターだ!!」

 いくつものカラフルなレールに、ひとり乗りのコースターがせわしなく走行している。

「どうっすか? 驚いたでしょう!? このジムは見てのとおりジェットコースターなんすよね!!」

 そしていつものようにサングラスの男、ガイドーが話しかけてくる。賑やかなジムの雰囲気も手伝って、こころなしかテンションが高いように思える。

「まあ、とりあえずはこれを差し上げるっす!」

 今回も『おいしいみず』を受け取る。

「ありがとうございます。えーと、見たところ、足場はいっぱいあるみたいなんですけど、ジェットコースター以外で奥に進む方法は……」

「このジェットコースタージムでは、コースターを乗り換えてながら、ジムリーダーのいる場所を目指してくださいっす!」

「……ぼく、もしかしたらジェットコースターが苦手かもなー、なんて……」

「ちなみにでんきタイプのポケモンは、じめんタイプの技が苦手なんすよ……」

「………………」

 覚悟を決めるしかないらしい。

 観覧車にさえ腰が引けたアクタ。施設の遊具、あるいは移動設備なのだから、安全性に関しては担保されているとはいえ──

「うわああああああああ!!」

 猛スピードの急カーブ。

「あ──ああああああああ!!??」

 急勾配を昇って、降りる、浮遊感。

「きゃああああああああ!!?? うっ!?」

 レールを一回転して、一瞬の天地逆転。

「………………」

 ジムの最奥までたどり着くころには、立っているのがやっとなほどの、這う這うの体であった。

「……あまりのスピードにクラクラしてない?」

 そこには、ステージのようなジムの床に、足を伸ばして座るカミツレの姿があった。

「してるわ!!」

 思わず声を荒げるアクタ。

「恐いですよ!! ジェットコースターは!!」

「あらあら。お気に召さなかったようね」

 “なみのり”や“そらをとぶ”でポケモンに身を任せ、多少の荒い運転でもまるで平気なアクタだが、機械は話がべつである。

 絶叫マシンは、べつである。

「まあ、ちょっと疲れたけど、具合は悪くないんで……。ふう……、うん。戦えます」

「結構。じゃあつぎは、愛しのポケモンたちであなたをクラクラさせちゃうけど」

 立ち上がるカミツレ。アクタも威儀を正して、彼女に向かい合う。

「望むところです」

 カミツレには魅了されつつあるアクタだが、バトルでは真剣にやらねば、と自分のなかのスイッチを入れた。

 

 

 アクタのパーティはでんきタイプを苦手としている。エースのフタチマルはみずタイプで、期待の新入りであるアーケンもひこうタイプ。でんき技が効果抜群である。

「フタチマル!」

 とはいえ、バオッキーにばかり苦労をかけるわけにはいかない。足元でボールを開けて、アクタはフタチマルを呼ぶ。

「エモンガ!」

 対するカミツレは、黄色い翼膜で滑空する、頬に電気袋を持つポケモン、エモンガを繰り出した。

「ひこうタイプ……!?」

 一瞬、アクタは動揺する。フタチマルにはじめんタイプの技、“あなをほる”をわざマシンで覚えさせていたのだが、ひこうタイプのエモンガには通用しないのだ。

 ということで、作戦変更。

「先手必勝で、ガンガン攻めるよ! “みずのはどう”!」

 振動する水が、エモンガを撃つ。

「ふうん──素早くて力強くて、なにより美しい動きね。あなたとポケモン……、華やかに輝いている!」

「ありがとうございます!」

「こっちも負けてられないわね。──エモンガ、“ボルトチェンジ”!」

 雷をまとった突撃。効果抜群ながらも、フタチマルは耐える。

「よし、これならつぎの攻撃で……!」

 身構えるフタチマルだったが、衝突したエモンガの姿は、カミツレの手元のモンスターボールに戻っていった。

「え、なんで──“とんぼがえり”のでんき技版ってこと!?」

 攻撃と同時に控えているポケモンと交代する技だ。むしタイプの技である“とんぼがえり”といい、予期せぬタイミングでの交代には翻弄される。

「ご明察。それじゃ交代して──」

 カミツレの呼び出す2匹目は、ふたたびエモンガである。先ほどとはべつの個体。もちろんダメージは負っていない。

「し、“シェルブレード”!」

「“ボルトチェンジ”」

 ホタチの斬撃の直後、“ボルトチェンジ”によりフタチマルは倒れる。

「……十分な仕事だったよ。エモンガ2匹の体力を削ってくれた」

 カミツレが交代させるのは、またエモンガ。ダメージがある様子から、1匹目のエモンガである。

「エモンガ2匹による代わる代わるの攻撃か。でも──複雑に考えるべきじゃないな」

 努めて、アクタは冷静になろうとする。

「ふつうの倍くらい大きなエモンガが、1匹いると思えばいい」

「……おもしろいけど、それはちょっと違うんじゃないかしら」

 発想すら的外れでも、一応少年は冷静である。

 アクタはみずからの2匹目に、アーケンを選択した。

「エモンガ、“ボルトチェンジ”!」

 やはり交代戦法は続く。しかしアクタがアーケンに命じたのは、いわタイプの攻撃技ではなく──

「“こうそくいどう”!」

 素早さを高める変化技だった。

「速くなったところで──“げんしのちから”!」

 交代してきたエモンガに、岩を放つ。先ほどの“ボルトチェンジ”のせいで、特性の『よわき』による弱体化はあったものの、タイプ相性のおかげでエモンガはとうとう、戦闘不能となった。

「よし! えーと、いまのエモンガは……2匹目に出てきたやつ、かな?」

 “ボルトチェンジ”の数を指折り数えるアクタ。そんな少年に、カミツレは思わず舌なめずりをする。

「あなた、良いわね……。痺れてきちゃうわ」

 お互い、『ひんし』になったのは1匹。そして2匹目は手負い。しかしこの状況は互角ではない。

「アーケンの最初の技に、“げんしのちから”ではなく“こうそくいどう”を選択したことで、あなたが有利に立っている。──エモンガの素早さは知ってたの?」

「ジムトレーナーさんたちも使ってましたからね。勉強させてもらいました。だってうちのパーティ、でんきタイプ苦手みたいだし」

 なるほど、と頷いて、カミツレはエモンガ──1匹目に出した個体を繰り出した。

「エモンガ、“でんこうせっか”!」

 必ず先制攻撃を取れる技であれば、素早さは関係ない。──ただしいわタイプを持つアーケンには効果いまひとつ。これは悪あがきにしかならなかった。

「“げんしのちから”!」

 浮遊する岩に襲われ、エモンガその1も倒れた。

「これで追い詰められた、ってわけね──でも」

 カミツレは最後のモンスターボールを手に取る。アクタも、アーケンを交代させることにした。

「ドラマチックに勝つには、ピンチが必要なのよ」

 現れたのは、稲妻のようにとげとげしいたてがみを持つ、白と黒の体色のシマウマ型のポケモンだ。ジムトレーナーがシママという小ぶりなポケモンを使っていたが、その進化系だろう。

「ゼブライカ。痺れさせてあげて」

「──バオッキー!」

 いよいよアクタは、バオッキーの入ったモンスターボールを投げる。

 ボールはジェットコースターのレールの方向に飛んで行った。

「やべっ」

 しかし運よく通りかかったコースターに当たって、バトルフィールドまで戻ってきた。

「……華麗なパフォーマンスね」

「いえ、あの、わざとじゃないんです」

 バオッキーはいつもどおりの主人に、呆れたように肩をすくめた。

 

 

「ゼブライカ、“スパーク”!」

 帯電したゼブライカの突撃。どうやら素早さは相手のほうがはるかに上らしい。

「バオッキー! “あなをほる”だ!」

 わざマシンで覚えさせておいた、じめんタイプの技を使う。床の亀裂に潜行するバオッキー。特に対抗策は無いのか、足を止めたゼブライカに、やがて地中からの一撃が見舞われる。

「よし! 床のことはごめんなさい!!」

「気にしないで。バトルフィールドなんてどうとでも修繕できるわ。──“スパーク”!」

 ゼブライカの攻撃は重い。この“スパーク”も何発も耐えれるものではない。そう悟ったアクタは、“あなをほる”に頼る作戦を変更することにした。

「“あくび”!」

 バオッキーの吐息が、ゼブライカの眠気を誘う。──が、『ねむり』の状態に陥るには時間がかかる。これにはカミツレも、思わずため息をついた。

「ゼブライカが眠る前に、バオッキーは倒せるわよ。“スパーク”!」

「だとしても──“あなをほる”!」

 素早さはゼブライカのほうが高い。なので、ここでバオッキーが負けてしまうことも、アクタにとっては計算せざるを得なかった。

『ねむり』の状態にして、アーケンにより勝負を制する。そのつもりだったのだが──

「あら」

 ゼブライカの攻撃は、空振りした。

 帯電した突撃よりも速く、バオッキーは地中に潜っていたのだ。

「あ──『せんせいのツメ』!?」

 主人であるアクタが、驚愕の声を上げた。

「念のために持たせておいたのが……、こんな都合よく発動してくれるなんて……!」

『せんせいのツメ』。ポケモンに持たせておくと、たまに相手よりも速く行動できるようになる道具である。旅の道中で手に入れたのだが──『こんなこともあろうかと』と言えないほど確実性に欠けるため、期待せず、本気で念のために持たせておいたのだ。

「都合よく──いいえ、きっとあなたとバオッキーは、運を引き寄せたのだわ」

 ゼブライカは、“あなをほる”に襲われる前に、『ねむり』の状態となる。

「誇るべきよ。すべてあなたたちの実力だわ」

「はい。──バオッキー!」

 “あなをほる”でゼブライカが襲う。そして──

「“はじけるほのお”!!」

 続く炎にて、眠り続けるゼブライカはそのまま戦闘不能となった。

「やった! すごい!」

 勝利を収めたバオッキーを労う。バオッキーは自分の肩を撫でる主人を、じっと見つめた。

「う……はい、そうです。きみが負けると思って、アーケンに交代させるつもりでした……。そのあと、『げんきのかけら』とかを使って強引にでも……、なんて……」

 いささか無情ともいえるアクタの想定に、バオッキーは特に怒ってなどおらず、肩をすくめて小さくため息をついた。

「クラクラさせるつもりが、あなたに痺れさせられたのね」

 ゼブライカを収め、カミツレがアクタたちに歩み寄ってくる。

「ステキ……、ホレボレしちゃうファイトスタイル。あなた良いトレーナーね。なんだか感激……」

「そ、それほどでも……」

 照れるアクタに、「これを……」とカミツレは稲妻を模したバッジを差し出した。

 ボルトバッジ。このライモンジムを制した証である。

「やった!」

 はしゃぐアクタ。バトルの功労者であるバオッキーも、誇らしげである。

「あなた……、つぎはホドモエシティには行くの? だってあそこにもポケモンジムがあるもの」

「えっと──」

 アクタはタウンマップを開く。

「ぼくら、4番道路の方向から来たので……、つぎは5番道路か16番道路ですね」

「ワンダーブリッジはいま封鎖されてるから、16番道路の先には進めないわ」

「じゃあ5番道路から──はい、たしかにホドモエシティです」

 ふと、カミツレは考え込む。

「──あの街も、たまに跳ね橋が封鎖されてるのよね。でもあたしが口を利いて通れるようにしてあげられるから、この街から旅立つときは声をかけて」

「いいんですか? それは助かります」

 アクタはカミツレにしっかりと頭を下げて、ジムから去ろうとし──不意に足を止めて、彼女に振り返った。

「このジェットコースターなんですけど」

「なあに?」

「やめたほうがいいと思います。恐いので」

 それはさながら、懇願だった。

「カミツレさん、モデルさんだっていうから、こう──ステージのランウェイみたいな? そういうのがいいと思います!」

「………………ま、考えとくわ」

 仕掛けの改善には期待できないが、よく考えたら、バッジを手に入れた以上、アクタがふたたびこのジムに来る可能性は低いので、このジェットコースターのシステムが継続されようが関係ないのだが。

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