ポケットモンスターNAVY ~暴投モンスターボール~   作:サンダーゴリラ

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レポート16 ヤマブキシティ/道場破り

「ふぁいへんひゃ! ふへほはんひ、ひへほほほへへひほうはっ!」

「それは災難でしたね」

「はっ! はふへへふへ!」

「うん、もちろん」

「よほひふ はほひまふは!」

「で、場所は?」

「はふは、はふぁりほーんひゃ!」

「さっそく探してみますね」

 サファリゾーンの園長は、サファリゾーンで入れ歯を失くしてしまったという。

 入れ歯を失って満足に話すことができない園長の言葉を、なぜアクタが聞き取れたのかというと、彼がヤドンというポケモンに似ていてなんだか親しみが湧いたからである。

「ちょうどサファリゾーンにも行ってみたかったしね。ついでに探してあげよう」

 モンスターボールが震える。

「なんだいフシギバナ。やってみなくちゃわからないだろ」

 500円を支払い、専用のサファリボールをもらって、ゲーム開始。

「あ、ストライクだ!」

 捕まらなかった。

「ラッキーだ!」

 捕まらなかった。

「カイロスだ!」

 捕まらなかった。

「ガルーラだ!」

 捕まらなかった。

「ケンタロスだ!」

 捕まらなかった。

「ハクリューだ!」

 捕まらなかった。

 

 

 捕獲したポケモンはゼロ。それでも、恐らく園長のものであろう金の入れ歯を発見できたことが、不幸中の幸いだろう。

 園長はアクタから入れ歯を受け取ると、急いで口にはめた。

「いや、洗ったりしたほうが……」

「すんまへん! ほんまに助かったわあ! だれになに言うても全然通じへんし、恥ずかしゅうて事務所も顔出せへんかったんや。そや坊主! お礼にえんもんやるわ!」

 “かいりき”のわざマシンを貰ってしまった。

「そんな、当然のことをしただけなのに。ありがとうございます」

「偉い! よっしゃ、お菓子でも食ってけ!」

 と、園長はテーブルに菓子やお茶を並べる。おとなしくごちそうになり、サファリゾーンのポケモンについて、園長と盛り上がる。

「サファリゾーンのポケモンは、人間相手に攻撃してこないんですね」

「わしら、サファリゾーンという生態系の保護には全力で取り組んどる。ポケモンたちもそれをわかってくれとるんやろ。だからやつらにとって、人間は敵やないっちゅうわけや」

「なるほどー」

「で、坊主はサファリゾーンで、何匹ポケモン捕まえた?」

「ゼロです」

「ゼロ!?」

 会話の途中、ふと、点けっぱなしになっていたテレビ画面がぱっと切り替わった。

『速報です』

 ニュースキャスターは深刻そうな表情で、ある街の様子を解説する。

『シルフカンパニーのヤマブキシティ本社が、占拠されました。犯人グループはロケット団とみられます。シティ内のいくつかの施設も、黒いスーツの男たちによって封鎖されており、事実上、ヤマブキシティの全体が占領されている状態です。警察の判断が待たれますが……』

 思わずアクタは立ち上がった。

「坊主、どないした?」

「すいません、ぼく、行くところあるんで。ごちそうさまでした」

 

 

 全速力で自転車を漕いで、ヤマブキシティのゲートに到着する。ゲートには警察関係者の集団が待機していたが、まさか、いまのヤマブキシティに侵入する者がいるとは思わなかったのだろう。ましてやアクタは子どもだ。身を隠しながらこっそりと進み、少年はヤマブキシティに入ることができた。

 

────

 ここはヤマブキシティ。

 ヤマブキ金色、輝きの色。

────

 

「大都会だなあ……」

 しかしその大都会を歩く人間は皆無だ。ときおり、街を見張るロケット団員の姿が見える。

 ニュースで言っていたように、彼らによって町の主な施設は封鎖されていた。

「ポケモンジムまで。あれじゃジムリーダーも解決には動けないのか。あれ? あっちにもポケモンジム?」

 ジムらしき建物が、2つあった。片方は特に封鎖されていない。気になって、アクタは封鎖されていないほうに入ってみた。

「オスッ! ここは格闘道場! 入門か、小僧!」

 ポケモンジムじゃなかった。

「い、いえ、違います……」

「では道場破りか! 者ども、出合え!」

 格闘技の男たちがずらりと並ぶ。アクタは格闘技どころか、喧嘩すらしたことがない。せいぜい。母やグリーンとの口喧嘩くらいだ。

 見逃してもらえないか、説得の文言を考え出すが──男たちの手にモンスターボールがあったので、胸を撫で下ろした。

「ああ、ポケモンバトルならいけるわ」

 4人の格闘家は、オコリザルやゴーリキーといった強力な格闘ポケモンを繰り出すが、フシギバナとギャラドスでつぎつぎと撃破する。

「オスッ! わしが格闘道場の師範、空手大王である!」

 最後に、奥に控えていた男が立ちはだかった。

「お主が道場破りか! ならば容赦はせんぞ! トオリャー!」

 現れたのはサワムラー。バネ状の脚を持つキックポケモンだ。

「フシギバナ、“どくのこな”!」

「サワムラー、“こころのめ”!」

 それは、つぎの攻撃を必中にする技だった。大技が予測できるが、格闘タイプの技ならばフシギバナに効果はいまひとつだ。とりあえず“はっぱカッター”を撃つ。

「ウオリャ! “とびひざげり”!」

 サワムラーはジャンプした勢いで、膝蹴りを放った。やはり効果はいまひとつではあるが、強烈な技だった。思わずフシギバナはたじろぐ。

「さらに! “とびひざげり”!」

 続けざまに技が繰り出される。しかし溜めが大きいだけに軌道は読みやすく、フシギバナは攻撃を回避した。勢いあまって、サワムラーが地面に激突した。

 そのまま戦闘不能になった。

「やるな!」

「自滅だったのに!?」

「つぎだ! エビワラー!」

 両腕がボクシンググローブのような形状になっている、パンチポケモンだ。

「ギャラドス!」

 ダメージを受けたフシギバナと交代で、ギャラドスを放つ。ひこうタイプを持つギャラドスにも、かくとうタイプの技は効き辛い。

「ふふふ……サワムラーは上手くやり過ごせても、エビワラーはそうもいかんぞ。こいつは技術の鬼! 3タイプのパンチを持っているのだ!」

「3タイプ?」

「まずは“ほのおのパンチ”!」

 燃える拳が、ギャラドスに打ち込まれる。

「続いて“れいとうパンチ”!」

 凍える拳が放たれる。

「最後に──」

「“みずのはどう”!」

 ギャラドスの放つ水流で、エビワラーは混乱状態に陥った。

「だあっ! なにをする!?」

「なんでおとなしく攻撃を受けなきゃいけないんですか! あと、“かみなりパンチ”でしょ? それは困るんですよ」

 ギャラドスにとって、かみなりタイプの技は最大の弱点だ。

「ええい! “かみなりパンチ”!」

 しかし混乱状態のエビワラーは、わけもわからず自分を攻撃した。

「ギャラドス、“かいりき”!」

 エビワラーは倒れた。

「だーっ! やられたあー!」

「よし!」とアクタは小さくガッツポーズをする。

「むむむ……わしはたしかに負けた! しかし道場の看板……だけは! 持って行かないでくれい!」

「か、看板?」

 ジムバッジならともかく、看板なんてもらえない。重すぎる。

「代わりに、修行中の大事な格闘ポケモンを渡す!」

「マジですか!?」

 アクタは大いに喰いついた。空手大王は、圧倒されつつも頷く。

「お、おうとも! どうか! 好きなほうを選んでくれい!」

 差し出された2つのモンスターボール。サワムラーとエビワラーだ。先ほど戦ったポケモンとはべつの個体である。

「うわあ、迷うな~……」

 サワムラーは使う技の攻撃力が高い。エビワラーの3タイプのパンチも魅力的だ。

「ど、ち、ら、に、し、よ、お、か、な……」

「悩むなあ、きみ」

「……エビワラーで!」

「ウスッ! 唸る拳! エビワラーだな?」

 エビワラーのモンスターボールを受け取る。さっそく放ってみる。

「これからよろしくね、エビワラー」

 エビワラーはやる気ありげにシャドーボクシングをする。

「あとぼく、ノーコンだから苦労すると思うけど、それは追々、身をもってわかると思うから」

 今回は事前に告知しておいた。まだその異常を理解していないエビワラーは、首を傾げた。

「──それにしても、外は大変ですけど」

「外? なんだ、外がどうしたのか?」

 師範の空手大王をはじめ、道場の男たちはみな、きょとんとしている。

「知らないの!? ええと……」

 アクタはヤマブキシティの状況を説明した。シルフカンパニーがロケット団に占拠され、ヤマブキシティも自体が見張られていること。

「それは大変だ! 助けに行かなくては! なあみんな!」

「いやいや待ってください! 街中にロケット団がいるんですよ!?」

「それがどうした! 我らの敵ではない!」

「そうじゃなくて、これは暴力とかバトルでどうこうなる状況じゃないでしょう! 街の外には警察のひとがいっぱいいますけど、突入してこれないんです。なぜかというと、いまは街のひとが──ていうか、街そのものが人質に取られてる状況なんです!」

「…………」

 空手大王は深く頷く。

「街が人質だから、()()()()か。言いにくいな」

「いま、そういうのいいですから」

「だからといって、道場にこもっているわけにもいかないだろう。この街のために、わしらにできることがあるはずだ!」

 彼らが奮起するのも、もっともである。アクタは考える。街を歩くロケット団はそう多くはない。空手家5人にかかれば、それぞれの施設でひと助けができるかもしれない。

「建物をひとつずつ回って、住人を街の外まで逃がすことって、できませんか? さっきも言った通り、ゲートの外には警察がいるから、そこまでこっそり連れ出せればオッケーでしょう」

「おう! それならお安い御用だ! 皆、こっそりだぞ!」

「オスッ!」と男たちが応じる。そのテンションで、静かに動いてくれるか不安に思った。

「それで少年! きみはどうする!?」

「あ、ぼくはシルフカンパニーに行きます」

 窓の外には、ひときわ大きなビルが見えた。

「たぶん、ロケット団のボスも来ているはずだ。話をつけてきます」

 




フシギバナ
 れいせいな性格
 十分な栄養と太陽の光が、花の色を鮮やかにするといわれる。花の香りは人の心を癒す。

ギャラドス
 がんばりやな性格
 よくアクタに巻き付いて甘える。最近、ちょうどいい絞め加減がわかってきた。

イーブイ
 きまぐれな性格
 ブラッシングの後、抜け毛を収集するアクタにちょっと引いている。

エビワラー
 ゆうかんな性格
 プロボクサーの魂が乗り移っている。パンチのスピードは新幹線よりも速い。
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