ポケットモンスターNAVY ~暴投モンスターボール~   作:サンダーゴリラ

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レポート39 10番道路/後悔している?

「ジムリーダーに勝ったんですか! いやースゴイっすね!」

「ガイドーさん。いままでアドバイスとかくれて、ありがとうございました」

「いえいえ! ──あっ、いままでにサービスした『おいしいみず』の代金……、そろそろもらえますかね?」

「え」

「………………」

「………………」

「………………ウソっす! ウソですよ! いやー本当におめでとうございます!!」

「ちぇっ、勘弁してくださいよ……」

 などと、和やかにソウリュウジムを出たアクタを待っていたのは。

「……ハーイ。アイリスちゃんはどうだった?」

 アララギ博士の柔らかな笑みだった。

「ムスメギ博士……」

「その変な呼び方やめて」

「す、すいません……。えっと、どうしたんですか?」

「あっ、伝説のゼクロムを復活させる方法についての報告に来たんだ。ライブキャスターで伝えるのも、なんだか申し訳ないしね」

 いまはポケモンたちがジムバトルで傷ついている。ふたりはそのままソウリュウシティのポケモンセンターに移動した。

「で、結論を言っちゃうと……」

「は、はい……」

 回復の待ち時間、ロビーでいよいよ話を聞くことにしたのだが。

「……まだ解明できていないの」

「なんだあ」

 特に有益な追加情報は無いようである。

「きっと、ポケモンがだれかを認めたときに目覚めるのね……」

「ダークストーンのゼクロムが? うーん、ぼくはどうなんだろう……?」

 全力でがんばっているつもりではあるが、自信があるかと問われれば微妙である。

 いつだって、自分にはなにかが不足している気がしてならない。

「謙虚ねえ、あなたは。──それよりもすごいじゃない! イッシュのジムバッジを8個、揃えたんでしょ」

「そうなんですよ! ほら!」

 アクタはバッジケースを開いて、輝く8つの証を自慢げに示す。

「ここのジムリーダーのアイリスちゃん、めちゃくちゃ強かったなあ。いやあ、かなり危なかったですよ。ぼくもそこそこ強いつもりだったけど、まだまだだ」

「そういえばアクタって、ほかの地方では殿堂入りしたことがあるんですって? だったら強いはずよね。最初はなんだか頼りない子だと思ってたから、すごく意外」

「ええ……?」

 軽くショックを受けてしまう。

「いまではそんなこと思ってないわ。すごくたくましくなったよね! 自分では実感ないかもしれないけど。カノコを出たときとは大違い!」

「いや、だからそれ、博士から見た印象の話なんじゃ……まあ、べつにいいですけど」

 実績に関わらず、アクタが「頼れる男」に見られることなんてほとんどない。

 それに、イッシュ地方の旅がアクタを成長させたことも間違いないだろう。

「では、ポケモンジム巡りを終えたポケモントレーナーがつぎはどこへ向かうべきか、わたしが案内するわね」

 ポケモンたちの回復を終えて、博士は連れられてソウリュウシティの北へと向かった。そこには見慣れた、つぎの道路に繋がるゲートがあった。

「あのゲートをくぐり10番道路を抜ければ、バッジチェックゲート。その先にあるチャンピオンロードを越えて、ようやくポケモンリーグよ」

 シャガから聞いてすでに知っていたのだが、そのことは口に出さず、「はい」とだけ頷いた。

「……ほんとは、もっといろいろ案内してあげたかったな。なんだか忙しさにかまけて、チェレンとベルのこともアクタに任せちゃったし。挙句の果てに、プラズマ団なんて連中に巻き込まれて……」

「気にしないでくださいよ。ぼくはぜんぜん……」

 ふと、アララギ博士は少年に向き直った。真剣な目に見つめられて、なんだか緊張してしまう。

「ねえアクタ。イッシュ地方に来たこと、後悔している?」

 その問いに

「いいえ。後悔してません。来て良かった」

 少年は、はっきりと答えた。

 なにを訊かれるのかと思えば──危うく笑ってしまいそうだった。この旅で出会ったポケモン、出会った人間、すべてがかけがえのない素晴らしいものだ。後悔なんて、その出会いを否定するようなこと、するわけがないのに。

「ありがとッ! 最高の返事よね!」

 アララギ博士は安心した様子で、笑顔を取り戻した。

「わたしもきみたちにポケモンをプレゼントできて、すごく嬉しかったの! だってまたひととポケモンのステキな出会いが生まれたから!」

「あのとき貰ったミジュマル、いまではダイケンキですよ。──ほら」

 軽く放ったモンスターボールは、軽く変な方向に飛んで行き、ダイケンキを呼び出した。

「まあ、立派に育ったのね! 見違えたわ!」

「えへへ……」

 嬉しそうにダイケンキに抱き着く。しばらくされるがままだったダイケンキは、やがて鬱陶しくなり、主人を振り払った。

「変わってない部分もあるのね」

 アクタたちの様子に、博士は肩をすくめる。

「そう……、変わらないってことも大事なの。アクタはアクタ。どんなことがあっても、迷わずにポケモンと進んでね!」

 ダイケンキに転ばされたアクタは、その体勢のまま頷いた。

 

 

「メラルバ! “ニトロチャージ”!」

 炎をまとった高速の突撃にて、モンスターボールに似た姿のきのこポケモン、タマゲタケを倒した。

「ふう……、ようやくメラルバ1匹で戦えるようになったね。──といっても、まだ相性が有利な野生ポケモン相手だけど」

 メラルバは嬉しそうに、アクタによじ登ろうとしてくる。バトルの直後ということもあって、すこし熱い。

「この調子でどんどんレベルを上げたいところだけど、ポケモンリーグのほうにも急いだほうがいいな。まあこの先もチャンピオンロードがあるし、きっときみも戦力として成長するさ」

 メラルバを胸に抱く。やはり熱い。

「冬場だからあったかくて助かるな……。でも、草むらとかを焼かないように気をつけるんだよ? さ、行こう」

 メラルバを連れ歩きながら、真下に川が流れる橋を渡ったところで。

「……ストップ」

 知った声に呼び止められる。

「その声は──?」

 期待して振り返ると。

「アクタ!」

「やっぱりチェレン!」

 眼鏡の少年が駆け寄ってくる。そして遅れて、ベルも。

「よう、カノコタウン旅立ち三人組が揃ったね。リュウラセンの塔以来かな?」

「うん! ちょっと久しぶりだよね」

 きょうもクールな様子のチェレンに比べ、ベルはいつものとおり笑顔である。

「シャガさんやアララギ博士から教えてもらったけれど、ポケモンリーグに向かうんだね?」

「うん。8つ目のバッジも手に入れたし、挑戦者としての資格はあるはずだ」

 チェレンは? と尋ねる前に、眼鏡の少年は神妙な面持ちで口を開いた。

「アデクさんなら……チャンピオンなら大丈夫と信じているけど、最悪の場合、きみがプラズマ団のボス、Nと戦うんだね……」

「そうなるね」

 アクタも真剣な顔で頷く。

()()()()()なんて言うけど、ぼくとしてはエヌと戦いたいんだよね。もちろんアデクさんに負けてほしいわけじゃないけど」

「そ、そうかい」

「ていうかアデクさんとも戦いたい。ふたりと戦えるなら、それがぼくにとっても()()()()()だね」

「きみも好きだね……」

 チェレンはすこし引いている。

「でも、そういうところがきみの強さに繋がっているんだろうね」

「うーん……まあ、そうかもね。でもチェレンだって強いんだし、バトルのことはちゃんと好きなんだろう?」

 アクタは、自分の足元に隠れているメラルバに目を落とす。

「そんなぼくたち、どっちが強いんだろうね?」

「……ボクもそれを確かめたい。きみがどれだけ強いか、それを知るためにここに来たんだ!」

 どちらかともなく、距離を取る。ベルは戸惑いながらもその場から離れ、空間を作るのに協力する。

 もちろん、ふたりともが好きなバトルの始まりである。

「レパルダス!」

「メラルバ!」

 アクタに足元に潜んでいたメラルバだが、号令とともに勇ましく飛び出す。

「ご覧あれぼくの4匹目! 例のタマゴから孵ったんだよ。すでにそれなりの実力を……持つはずだ!」

「自信の無さが隠し切れてないよ。まだ育成途中なんでしょ」

 レパルダスは容赦なく、メラルバに接近する。

 “きりさく”。一発で『ひんし』にこそならなかったものの、十分に大ダメージである。

「くっ……、負けるなメラルバ、“きゅうけつ”だ!」

 むしタイプの技なので、あくタイプのレパルダスには効果抜群である。体力を吸収することである程度は回復できたものの、格上のレパルダスへのダメージは微々たるものだ。

「こうなったら──メラルバ、交代だ!」

「………………」

 ともすれば間抜けにも見えるアクタだが、チェレンの目にはそうは映らなかった。

 メラルバに経験を積ませた上で、即時撤退も賢明な判断だ。なにより、ほかの3匹が強いことをチェレンは知っている。交代で現れたのはダイケンキ。特に油断ならない相手だ。

「なんでもいいさ。これまでの旅で培ったすべてを、きみにぶつける! “つじぎり”!」

「ダイケンキ、“メガホーン”!」

 またもやむしタイプの技。今度はレパルダスは耐えきれず戦闘不能となる。

「……ケンホロウ!」

 顔に赤い飾りがついた鳥ポケモン、ケンホロウが飛び出す。こちらもひこうタイプのアーケオスで対抗しようと思ったが──

「いや、このまま行こうダイケンキ。“シェルブレード”!」

「“エアスラッシュ”!」

 斬撃が交差する。ケンホロウのバランスが崩れたタイミングを見計らって、

「いまだ! “ふぶき”!!」

 現在、アクタのパーティで唯一のこおりタイプの技。ケンホロウは氷雪に呑み込まれ、地に落ちた。

「まさかこおり技とは……! ますます強敵になったね、ダイケンキは。だからこそ本気で追い込む!」

 続いてチェレンが繰り出すのは、ヒヤッキー。対してアクタはダイケンキを交代させ、バオッキーを呼んだ。

「いいのかい? 相性はそちらが不利だよ」

「戦略でカバーするのさ。というわけでバオッキー、まずは“にほんばれ”!」

 小さな太陽が打ち上がる。これでみずタイプの技の威力が下がる。

「さて、ここで“ソーラービーム”を出せれば良かったけど、覚えさせてないので──“くさむすび”!」

 ヒヤッキーの足元に草が巻きつき、転倒させる。くさタイプの技であると同時に、ヒヤッキーの重量も伴い、なかなかの威力である。

「負けるなヒヤッキー! 威力が下げられようと、みず技で攻めて間違いない! “ねっとう”!」

 強い日差しの下であっても、やはりバオッキーには効果抜群である。引き続き“くさむすび”で攻めるが、さすがにこの勝負を制したのは──

「惜しかったけど……、おつかれバオッキー」

 3発目の“ねっとう”を浴び、ついにバオッキーは倒れた。アクタは冷静に、モンスターボールを足元で放ち、アーケオスを呼ぶ。

「“アクロバット”!」

 アーケオスの素早い一撃により、仇討ちは一瞬で完了した。

「これでボクのポケモンは、ラスト1匹か」

 チェレンは最後のモンスターボールを握りしめる。

 対して、アクタの戦闘可能なポケモンは3匹。まだレベルの低いメラルバを数えなくとも、明らかに不利な戦力差である。

 それでも、チェレンに「諦め」の気配はない。それは立ち合っているアクタにもよくわかった。

「……最後まで諦めない! ぼくもポケモンも、あらん限りの力を奮う!」

 緑色の大蛇、ジャローダが飛び出す。

「そうじゃないと! アーケオス、“とんぼがえり”!」

 攻撃の後、アーケオスはアクタの元へ戻り、つぎのポケモンと交代する。

 つぎの──というか、アクタもこれで最後のするつもりだ。

「ダイケンキ、“シェルブレード”!!」

「ジャローダ、“リーフブレード”!!」

 アシガタナと、ジャローダの刃状に変形した尾が鍔迫り合う。

 バオッキーの“にほんばれ”の効果はまだ継続している。みずタイプの技が命中したとしても、効果いまひとつなこともあり大した威力にはならない。

 しかしダイケンキには、“ふぶき”と“メガホーン”というくさタイプに有利な技を持っている──が、これらの技は威力はともかく、命中が心もとない。確実に当てるためには隙を作らなくてはならない。

「ジャローダ、“ギガドレイン”!」

 しかし長期戦になれば、こちらの体力のほうが先に尽きる。

「負けたくないよな、ダイケンキ」

 肯定を示すように、ダイケンキはジャローダの尾を捌き続ける。

「大丈夫、きみなら──ぼくらなら、やれるよ」

 集中。

 呼吸を合わせる。

 狙うべき箇所(ポイント)。挑むべき(チャンス)。やがてそれらが輝くように見えた。

「はいそこ、“メガホーン”」

 ダイケンキの角が、ジャローダの急所を貫いた。

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