ポケットモンスターNAVY ~暴投モンスターボール~ 作:サンダーゴリラ
マサキを呼び出したという友人の手配で、グレン島に迎えの船が現れた。シーギャロップ号という高速船である。
「イーブイはサンダースに進化しましたよ」
海原を進む船の甲板で、アクタはボールからサンダースを出した。
「おー、イイ感じに育っとるな。──痛い!」
撫でようとしたマサキの手に、サンダースは弱い電気を走らせた。
「そういえばその子、そういうところがあります」
「先言うてや! まあええけど……それにしても、7つ目のバッジを手に入れたか。こりゃ、チャンピオンもあながち夢物語やないなあ」
「おだてないでくださいよ」
「おいおい、謙虚やな。まともにボールを投げれんことは、負い目に感じる必要はないで? 6匹以上のポケモンを持ってて、バトルは十分にこなせるんやから」
「そうそう、6匹目と7匹目……カブトとプテラなんですけど、まだレベルが低いんで、修行したくて。これから行くところ、トレーニングには向いてますかね?」
「ああ、まずまずトレーナーはいたはずやから、いろいろ歩き回ってみるとええ。観光地としてもええところやで、ナナシマは」
読んで字の如く、「ナナシマ」とは7つの諸島の総称である。ほどなくして船は、1の島に到着した。
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ここは1の島。
ご縁が集まる結び島。
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「ここが1の島や! この辺にはいくつか島があるんやけど、まあその中のひとつや」
「名前、1って」
「それは、ほれ……わかりやすいやろ?」
マサキは苦笑する。
「きょう船をよこしたのは、島のパソコン通信をひとりで管理しとる、ニシキっちゅうやつや! ……ここで言っててもしゃーない。まずはニシキに会いに行こか!」
いくつか民家が並ぶ島。ひときわ目立つ建物は、ポケモンセンター……とは、すこし違った。
「ポケモン……ネットワークセンター?」
建物内は一般的なポケモンセンターと変わりはない。ただ、なにやら大きな装置が設置されていた。たしか、マサキの小屋で見覚えがある。
「よっ、ニシキ!」
マサキは、装置の前で作業をしていた青年に声をかけた。
「マサキさん、来てくれたんですね!」
眼鏡をかけた若い男性だった。
「当然や! どや、研究のほうは……っとその前に、アクタ! こいつがニシキ。がんばるパソコンマニアや! で、ニシキ。こいつがアクタ。ポケモンチャンピオン候補や!」
「どうも、アクタです」
「すごいんですね! オレ、勝負はさっぱり勝てないから……よろしくお願いします!」
ニシキははにかんだ。「がんばるパソコンマニア」という肩書には、特に意見はないらしい。
たしかにアクタは、彼が島のパソコン通信の管理人であることは、事前に紹介を受けていたのだけれども。
「で、どないなん? マシンのほうは」
「やはり遠すぎます……この島のパソコンからは、マサキさんのパソコンにはなかなかつながらないです……」
「どれ見せてみい……なんや、これならなんとかなりそうやないか! ちっと手伝ったるわ」
「あの……」
胸騒ぎがするアクタは、おずおずとふたりに話しかける。
「それ、通信システムですよね?」
「そうですよ?」
ニシキは不思議そうに頷く。
「いまは動いていないんですか?」
「はい、まだ調整中なんです」
「ってことは、いまこの島で、ポケモン預かりシステムは使えない?」
「まあそうなるわなあ」
アクタは、膝から崩れ落ちた。
「フシギバナ……!」
「どうしたんですか!?」
「あー、ええねん。ニシキ。察しはつくわ」
手持ちが6匹を越えたので、暫定的に古株のフシギバナを預けたのだが……そろそろ、アクタも落ち着かなくなってくる。ぼちぼち他の手持ちと交代させようと思った矢先、これだ。
マサキは、うなだれるアクタの背中を優しく叩く。
「まあまあ、すぐに直すから。そのへんを観光して時間を潰して……せや、ひとつ頼まれて!」
「……なんですか?」
アクタは顔を上げる。涙目だった。
「お隣に、2の島ちゅう島があって、ゲームコーナーをやってるおっさんがいてるんや」
「2の島」
1の島があるのなら、2の島があるのは必然である。
「珍しい石が好きでな……マニア同士付き合いがあるんや。そのおっさんにこの隕石、上げたって」
渡されたのは、ごつごつとした無骨な石だった。
「これが隕石……?」
「ただの石に見えるやろ? マニアには違いがわかんねん」
「アクタさん、2の島に行かれるなら、これを差し上げます」
ニシキからはチケットを受け取った。
「2の島と3の島に、船で行けるパスポートです」
「これで船、乗り放題なんですか? ありがとうございます」
けろっと機嫌が直ったアクタの様子に、マサキとニシキはほっとして顔を見合わせる。
「じゃあもうしばらく、フシギバナを我慢します。おふたりとも、
「どないせいっちゅうねん」
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ここは2の島。
ひとりよりふたりの遊戯島
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港からふたたびシーギャロップ号に乗って、アクタは2の島に渡った。ここもまた、町といくつかの自然で構成された、小規模な島だった。
「うーん……でも修行できそうな場所はないな。とりあえず、ゲームコーナーに行ってみるか」
小さな町で、ゲームコーナーはすぐに見つかった。入店する。カウンターで、店主らしき男が落ち着かない様子で、ブツブツと独り言を呟いていた。
「なんだマヨのやつ、きょうはどうしたってんだ? 毎日、この時間には弁当を持ってくるのに……」
「あのお」
「ん、あんた! マヨの友だちかい? なあマヨを見なかったかい? どこへ行っちまったんだか、全然来ねえんだよ!」
男の頭のなかは「マヨ」なる人物のことでいっぱいのようだ。
「い、いや、マヨさんってひとは知らないですけど……」
「マヨはわしに似て可愛いから、危ない目に遭ってたら……!
「じゃあ大丈夫じゃないか」という言葉は呑み込んだ。初対面だし。
「娘さんですか? 心配ですね」
「そうなんだよ! なあ、あんたさ……」
男がなにか言いかけたところで、店の自動ドアが開いた。
そして、バイクが乗り込んできた。
オートバイである。
「なんだあ? このシケたゲームコーナーは? あいつら島で待ってるとか言って、だれもいねーじゃねーか!」
暴走族らしき男だった。サイクリングロードでも彼のような男たちに出会ったアクタだが、さすがに店内にまでバイクで乗り込んでくるのは驚いた。どうしてもバイクから降りられない理由があるのだろうか。
「オイおっさん! 3の島ってここだけかよ?」
「寝ぼけたこと言ってんじゃねえ若造! ここは2の島だよ!」
店主は暴走族の勢いに負けることなく、ドスの利いた声で怒鳴りつけた。
「ほら、バイクで入ってくんなよ!」
「え……あ、ああそうかよ。ちっ、わかりづれえ島だな」
店主の剣幕に負けて、暴走族の男は去って行った。
アクタは店主のほうが「恐い」と思った。
「あーあーもう、床が汚れちまったよ」
「……ええと」
「あ、そうそう、あんたさ! わりいが3の島まで行って見てきてくれよ! マヨになにかあったらわしは……」
「わ、わかりました! 任せてください!」
涙ぐむ店主に負けて、アクタはすぐに頷いてしまいた。
この男、喜怒哀楽が激しい。
「そうかありがとう! うちは3の島にある赤い屋根の家だ。悪いねえ、店のほうも留守にはできねえんだ」
「お客さんが来るかもしれませんからね」
「いや、マヨが来るかもしれんから」
「…………」
「頼んだよ!」
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ここは3の島。
大小揃って。親子島。
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港から三度シーギャロップ号に乗って、アクタは3の島に渡った。観光にしては各島の滞在期間が短いアクタに、船員は若干、不思議そうな顔をした。
1の島や2の島に比べると、島の規模は大きい。
「お祭りかな? 町が賑わって……あ」
その賑わいは、バイクによるものだった。
2の島にひとりだけ来たオートバイの男、彼を含めた暴走族が、町中を走り回っていた。
「きみがボスだな! いますぐカントーに帰れ!」
町の中央では、まさに住人と暴走族たちが睨み合っていた。
「はァ? なんで来た途端にそんなことを言われなきゃなんねーんだよ!」
「きみの子分たちが、毎日バイクで乗り回して……島のみんながどれだけ迷惑してるのかわからないのか?」
「ぜんぜんわかんねーな! こんななんにもない島に遊びに来てやったんだ。ありがたく思ってほしいぜ」
アクタは、どこで割って入ったものかと、とりあえず様子をうかがう。
「どうしても帰ってほしけりゃ、かかってこいよ!」
「くっ…そんな大勢で卑怯だぞ!」
「あのお」
割って入った。
「なんだおめーはさっきからジロジロ見やがって! やんのかコラァ!」
「はい!」
いい返事をして、アクタはモンスターボールを構えた。予想外の答えに、暴走族たちはすこしたじろぐ。
「い、いい度胸じゃねーか! 負けたら小遣いよこせよ!」
「もちろん、それがトレーナーとしてのマナーですからね」
アクタは嬉しかった。
悪人たちに島が脅かされている状況は、まったく喜ばしくないのだが、アクタにとっては都合がいい。
ポケモンバトルの修行ができるからだ。
「プテラ!」
アクタの投げたボールが、天空でプテラを放つ。巨大な翼の化石ポケモンの、ようやくまともな実戦が始まった。
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「なんだこのガキ……!」
「ちきしょう……ナメんなよ!」
「…………」
かかってきた暴走族の男たちは、すべて打ち倒した。
「ふう! ええと、つぎのひと?」
エビワラーをボールに戻し、アクタは満面の笑顔で男たちを見渡す。
「ボス、このガキなんとかしてくださいよ!」
ボスと呼ばれた、ひときわ大柄がスキンヘッドの男が立ち上がる。
「さっきから黙って見てりゃ……お前はなんなんだよ」
「なにって……ただの、旅のトレーナーですよ」
あっけらかんと言い放ち、アクタはモンスターボールを手にする。
「あんたたちみたいなほかのトレーナーと戦うのは、当たり前でしょ? ほら、勝負しましょうよ。強いんでしょ、ボス」
「ナメやがって……マタドガス!」
アクタはラプラスを放つ。
「ラプラス、“しんぴのまもり”」
「マタドガス、“ヘドロこうげき”!」
どくタイプの攻撃を受けるも、“しんぴのまもり”で状態異常にはならない。
「“サイコキネシス”!」
ラプラスが放つ念動波は、マタドガスに効果抜群だ。
「くそ! マタドガス、“えんまく”を張れ!」
「もう遅いですよ。──“れいとうビーム”!」
冷凍光線を受けて、マタドガスは倒れた。
「わざわざ遠い島まで来て暴れなくたって、サイクリングロードで走ればいいじゃないですか。あそこには暴走族のみなさん、いっぱいいますよ」
「ああ!? おれたちカントー連合を、あんな遊びでゾクやってるやつらと一緒にするんじゃねえよ! 行け、ベトベトン!」
2匹目のポケモンの登場に、アクタは一度ラプラスを交代させる。
「プテラ、“ちょうおんぱ”!」
ベトベトンは混乱し、満足に行動することができない。
「いいぞ、つぎは“げんしのちから”!」
岩石を飛ばして攻撃に、ベトベトンはたじろぐも、まだ体力に余裕はありそうだ。
「うーん……そうだプテラ、ちょっと交代」
プテラは不満そうに唸るも、アクタに従ってボールに戻った。続いてアクタが選択したのはカブトだった。
「ベトベトン、混乱してんじゃねえ! “ヘドロこうげき”!」
いわタイプのカブトには効果は薄く、ラプラスが残した“しんぴのまもり”で毒の状態にもならない。
「カブト、“マッドショット”!」
泥の塊を発射する。じめんタイプの技は、ベトベトンに効果抜群だった。混乱状態のベトベトンは、連射される“マッドショット”に対処できず、やがて戦闘不能になった。
「ぐっ……!」
「サイクリングロードのひとたちに、口を利きましょうか? ぼく、あのひとたちとは友だちなので」
「要らねえよ! ていうかどんな交友関係だてめえ!」
スキンヘッドの男は悔しそうに地団太を踏んだかと思うと、バイクにまたがって、ハンドルを港の方向に切った。
「わかったよ、出てけばいいんだろ! こんなつまんない島、喜んで出てってやるぜ! ──行くぞ野郎ども!」
ボスのバイクに続いて、暴走族たちは去って行った。
「いい修行になったなあ」
アクタだけは、晴れやかだった。
ギャラドス
がんばりやな性格
フシギバナが不在なのでちょっと寂しい。
サンダース
きまぐれな性格
マサキには昔に会ったことはあるのだが、まったく覚えていない。
エビワラー
ゆうかんな性格
アクタが一緒にシャドーボクシングをしてくれると、大いに喜ぶ。
ラプラス
おだやかな性格
よくアクタが甲羅の上で昼寝をするが、身体を痛めないか心配である。
カブト
さみしがりな性格
化石から復活したポケモンだが、稀に生き続けているカブトを発見できる。その姿は3億年変わっていない。
プテラ
やんちゃな性格
コハクから取り出した遺伝子を再生して復活した、恐竜時代のポケモン。空の王者だったと想像されている。