ポケットモンスターNAVY ~暴投モンスターボール~   作:サンダーゴリラ

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レポート22 ナナシマ/ただの修行

 マサキを呼び出したという友人の手配で、グレン島に迎えの船が現れた。シーギャロップ号という高速船である。

「イーブイはサンダースに進化しましたよ」

 海原を進む船の甲板で、アクタはボールからサンダースを出した。

「おー、イイ感じに育っとるな。──痛い!」

 撫でようとしたマサキの手に、サンダースは弱い電気を走らせた。

「そういえばその子、そういうところがあります」

「先言うてや! まあええけど……それにしても、7つ目のバッジを手に入れたか。こりゃ、チャンピオンもあながち夢物語やないなあ」

「おだてないでくださいよ」

「おいおい、謙虚やな。まともにボールを投げれんことは、負い目に感じる必要はないで? 6匹以上のポケモンを持ってて、バトルは十分にこなせるんやから」

「そうそう、6匹目と7匹目……カブトとプテラなんですけど、まだレベルが低いんで、修行したくて。これから行くところ、トレーニングには向いてますかね?」

「ああ、まずまずトレーナーはいたはずやから、いろいろ歩き回ってみるとええ。観光地としてもええところやで、ナナシマは」

 読んで字の如く、「ナナシマ」とは7つの諸島の総称である。ほどなくして船は、1の島に到着した。

 

────

 ここは1の島。

 ご縁が集まる結び島。

────

 

「ここが1の島や! この辺にはいくつか島があるんやけど、まあその中のひとつや」

「名前、1って」

「それは、ほれ……わかりやすいやろ?」

 マサキは苦笑する。

「きょう船をよこしたのは、島のパソコン通信をひとりで管理しとる、ニシキっちゅうやつや! ……ここで言っててもしゃーない。まずはニシキに会いに行こか!」

 いくつか民家が並ぶ島。ひときわ目立つ建物は、ポケモンセンター……とは、すこし違った。

「ポケモン……ネットワークセンター?」

 建物内は一般的なポケモンセンターと変わりはない。ただ、なにやら大きな装置が設置されていた。たしか、マサキの小屋で見覚えがある。

「よっ、ニシキ!」

 マサキは、装置の前で作業をしていた青年に声をかけた。

「マサキさん、来てくれたんですね!」

 眼鏡をかけた若い男性だった。

「当然や! どや、研究のほうは……っとその前に、アクタ! こいつがニシキ。がんばるパソコンマニアや! で、ニシキ。こいつがアクタ。ポケモンチャンピオン候補や!」

「どうも、アクタです」

「すごいんですね! オレ、勝負はさっぱり勝てないから……よろしくお願いします!」

 ニシキははにかんだ。「がんばるパソコンマニア」という肩書には、特に意見はないらしい。

 たしかにアクタは、彼が島のパソコン通信の管理人であることは、事前に紹介を受けていたのだけれども。

「で、どないなん? マシンのほうは」

「やはり遠すぎます……この島のパソコンからは、マサキさんのパソコンにはなかなかつながらないです……」

「どれ見せてみい……なんや、これならなんとかなりそうやないか! ちっと手伝ったるわ」

「あの……」

 胸騒ぎがするアクタは、おずおずとふたりに話しかける。

「それ、通信システムですよね?」

「そうですよ?」

 ニシキは不思議そうに頷く。

「いまは動いていないんですか?」

「はい、まだ調整中なんです」

「ってことは、いまこの島で、ポケモン預かりシステムは使えない?」

「まあそうなるわなあ」

 アクタは、膝から崩れ落ちた。

「フシギバナ……!」

「どうしたんですか!?」

「あー、ええねん。ニシキ。察しはつくわ」

 手持ちが6匹を越えたので、暫定的に古株のフシギバナを預けたのだが……そろそろ、アクタも落ち着かなくなってくる。ぼちぼち他の手持ちと交代させようと思った矢先、これだ。

 マサキは、うなだれるアクタの背中を優しく叩く。

「まあまあ、すぐに直すから。そのへんを観光して時間を潰して……せや、ひとつ頼まれて!」

「……なんですか?」

 アクタは顔を上げる。涙目だった。

「お隣に、2の島ちゅう島があって、ゲームコーナーをやってるおっさんがいてるんや」

「2の島」

 1の島があるのなら、2の島があるのは必然である。

「珍しい石が好きでな……マニア同士付き合いがあるんや。そのおっさんにこの隕石、上げたって」

 渡されたのは、ごつごつとした無骨な石だった。

「これが隕石……?」

「ただの石に見えるやろ? マニアには違いがわかんねん」

「アクタさん、2の島に行かれるなら、これを差し上げます」

 ニシキからはチケットを受け取った。

「2の島と3の島に、船で行けるパスポートです」

「これで船、乗り放題なんですか? ありがとうございます」

 けろっと機嫌が直ったアクタの様子に、マサキとニシキはほっとして顔を見合わせる。

「じゃあもうしばらく、フシギバナを我慢します。おふたりとも、()()()()()()()作業してくださいね」

「どないせいっちゅうねん」

 

 

────

 ここは2の島。

 ひとりよりふたりの遊戯島

────

 

 港からふたたびシーギャロップ号に乗って、アクタは2の島に渡った。ここもまた、町といくつかの自然で構成された、小規模な島だった。

「うーん……でも修行できそうな場所はないな。とりあえず、ゲームコーナーに行ってみるか」

 小さな町で、ゲームコーナーはすぐに見つかった。入店する。カウンターで、店主らしき男が落ち着かない様子で、ブツブツと独り言を呟いていた。

「なんだマヨのやつ、きょうはどうしたってんだ? 毎日、この時間には弁当を持ってくるのに……」

「あのお」

「ん、あんた! マヨの友だちかい? なあマヨを見なかったかい? どこへ行っちまったんだか、全然来ねえんだよ!」

 男の頭のなかは「マヨ」なる人物のことでいっぱいのようだ。

「い、いや、マヨさんってひとは知らないですけど……」

「マヨはわしに似て可愛いから、危ない目に遭ってたら……!

「じゃあ大丈夫じゃないか」という言葉は呑み込んだ。初対面だし。

「娘さんですか? 心配ですね」

「そうなんだよ! なあ、あんたさ……」

 男がなにか言いかけたところで、店の自動ドアが開いた。

 そして、バイクが乗り込んできた。

 オートバイである。

「なんだあ? このシケたゲームコーナーは? あいつら島で待ってるとか言って、だれもいねーじゃねーか!」

 暴走族らしき男だった。サイクリングロードでも彼のような男たちに出会ったアクタだが、さすがに店内にまでバイクで乗り込んでくるのは驚いた。どうしてもバイクから降りられない理由があるのだろうか。

「オイおっさん! 3の島ってここだけかよ?」

「寝ぼけたこと言ってんじゃねえ若造! ここは2の島だよ!」

 店主は暴走族の勢いに負けることなく、ドスの利いた声で怒鳴りつけた。

「ほら、バイクで入ってくんなよ!」

「え……あ、ああそうかよ。ちっ、わかりづれえ島だな」

 店主の剣幕に負けて、暴走族の男は去って行った。

 アクタは店主のほうが「恐い」と思った。

「あーあーもう、床が汚れちまったよ」

「……ええと」

「あ、そうそう、あんたさ! わりいが3の島まで行って見てきてくれよ! マヨになにかあったらわしは……」

「わ、わかりました! 任せてください!」

 涙ぐむ店主に負けて、アクタはすぐに頷いてしまいた。

 この男、喜怒哀楽が激しい。

「そうかありがとう! うちは3の島にある赤い屋根の家だ。悪いねえ、店のほうも留守にはできねえんだ」

「お客さんが来るかもしれませんからね」

「いや、マヨが来るかもしれんから」

「…………」

「頼んだよ!」

 

 

────

 ここは3の島。

 大小揃って。親子島。

────

 

 港から三度シーギャロップ号に乗って、アクタは3の島に渡った。観光にしては各島の滞在期間が短いアクタに、船員は若干、不思議そうな顔をした。

 1の島や2の島に比べると、島の規模は大きい。

「お祭りかな? 町が賑わって……あ」

 その賑わいは、バイクによるものだった。

 2の島にひとりだけ来たオートバイの男、彼を含めた暴走族が、町中を走り回っていた。

「きみがボスだな! いますぐカントーに帰れ!」

 町の中央では、まさに住人と暴走族たちが睨み合っていた。

「はァ? なんで来た途端にそんなことを言われなきゃなんねーんだよ!」

「きみの子分たちが、毎日バイクで乗り回して……島のみんながどれだけ迷惑してるのかわからないのか?」

「ぜんぜんわかんねーな! こんななんにもない島に遊びに来てやったんだ。ありがたく思ってほしいぜ」

 アクタは、どこで割って入ったものかと、とりあえず様子をうかがう。

「どうしても帰ってほしけりゃ、かかってこいよ!」

「くっ…そんな大勢で卑怯だぞ!」

「あのお」

 割って入った。

「なんだおめーはさっきからジロジロ見やがって! やんのかコラァ!」

「はい!」

 いい返事をして、アクタはモンスターボールを構えた。予想外の答えに、暴走族たちはすこしたじろぐ。

「い、いい度胸じゃねーか! 負けたら小遣いよこせよ!」

「もちろん、それがトレーナーとしてのマナーですからね」

 アクタは嬉しかった。

 悪人たちに島が脅かされている状況は、まったく喜ばしくないのだが、アクタにとっては都合がいい。

 ポケモンバトルの修行ができるからだ。

「プテラ!」

 アクタの投げたボールが、天空でプテラを放つ。巨大な翼の化石ポケモンの、ようやくまともな実戦が始まった。

 

 

「なんだこのガキ……!」

「ちきしょう……ナメんなよ!」

「…………」

 かかってきた暴走族の男たちは、すべて打ち倒した。

「ふう! ええと、つぎのひと?」

 エビワラーをボールに戻し、アクタは満面の笑顔で男たちを見渡す。

「ボス、このガキなんとかしてくださいよ!」

 ボスと呼ばれた、ひときわ大柄がスキンヘッドの男が立ち上がる。

「さっきから黙って見てりゃ……お前はなんなんだよ」

「なにって……ただの、旅のトレーナーですよ」

 あっけらかんと言い放ち、アクタはモンスターボールを手にする。

「あんたたちみたいなほかのトレーナーと戦うのは、当たり前でしょ? ほら、勝負しましょうよ。強いんでしょ、ボス」

「ナメやがって……マタドガス!」

 アクタはラプラスを放つ。

「ラプラス、“しんぴのまもり”」

「マタドガス、“ヘドロこうげき”!」

 どくタイプの攻撃を受けるも、“しんぴのまもり”で状態異常にはならない。

「“サイコキネシス”!」

 ラプラスが放つ念動波は、マタドガスに効果抜群だ。

「くそ! マタドガス、“えんまく”を張れ!」

「もう遅いですよ。──“れいとうビーム”!」

 冷凍光線を受けて、マタドガスは倒れた。

「わざわざ遠い島まで来て暴れなくたって、サイクリングロードで走ればいいじゃないですか。あそこには暴走族のみなさん、いっぱいいますよ」

「ああ!? おれたちカントー連合を、あんな遊びでゾクやってるやつらと一緒にするんじゃねえよ! 行け、ベトベトン!」

 2匹目のポケモンの登場に、アクタは一度ラプラスを交代させる。

「プテラ、“ちょうおんぱ”!」

 ベトベトンは混乱し、満足に行動することができない。

「いいぞ、つぎは“げんしのちから”!」

 岩石を飛ばして攻撃に、ベトベトンはたじろぐも、まだ体力に余裕はありそうだ。

「うーん……そうだプテラ、ちょっと交代」

 プテラは不満そうに唸るも、アクタに従ってボールに戻った。続いてアクタが選択したのはカブトだった。

「ベトベトン、混乱してんじゃねえ! “ヘドロこうげき”!」

 いわタイプのカブトには効果は薄く、ラプラスが残した“しんぴのまもり”で毒の状態にもならない。

「カブト、“マッドショット”!」

 泥の塊を発射する。じめんタイプの技は、ベトベトンに効果抜群だった。混乱状態のベトベトンは、連射される“マッドショット”に対処できず、やがて戦闘不能になった。

「ぐっ……!」

「サイクリングロードのひとたちに、口を利きましょうか? ぼく、あのひとたちとは友だちなので」

「要らねえよ! ていうかどんな交友関係だてめえ!」

 スキンヘッドの男は悔しそうに地団太を踏んだかと思うと、バイクにまたがって、ハンドルを港の方向に切った。

「わかったよ、出てけばいいんだろ! こんなつまんない島、喜んで出てってやるぜ! ──行くぞ野郎ども!」

 ボスのバイクに続いて、暴走族たちは去って行った。

「いい修行になったなあ」

 アクタだけは、晴れやかだった。

 




ギャラドス
 がんばりやな性格
 フシギバナが不在なのでちょっと寂しい。

サンダース
 きまぐれな性格
 マサキには昔に会ったことはあるのだが、まったく覚えていない。

エビワラー
 ゆうかんな性格
 アクタが一緒にシャドーボクシングをしてくれると、大いに喜ぶ。

ラプラス
 おだやかな性格
 よくアクタが甲羅の上で昼寝をするが、身体を痛めないか心配である。

カブト
 さみしがりな性格
 化石から復活したポケモンだが、稀に生き続けているカブトを発見できる。その姿は3億年変わっていない。

プテラ
 やんちゃな性格
 コハクから取り出した遺伝子を再生して復活した、恐竜時代のポケモン。空の王者だったと想像されている。
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