ポケットモンスターNAVY ~暴投モンスターボール~   作:サンダーゴリラ

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レポート28 ポケモンリーグ/画竜点睛

 四番目の部屋。

 四天王、最後のひとり。マントに身を包んだ赤髪の男が立っていた。

「はじめまして。アクタといいます」

「そうか、きみがアクタ! おれは四天王の大将、ドラゴン使いのワタルだ!」

「ドラゴンタイプ……!」

 カントー地方では珍しいタイプだ。ギャラドスやプテラもドラゴンタイプの技は持っているものの、ポケモンとしてのタイプは異なる。

「知ってるだろ。ドラゴンは聖なる伝説の生き物と呼ばれている! ドラゴンタイプのポケモンは捕まえるのが難しいけど、上手く育てりゃ強さは天下一品だ。身体も丈夫だし、小手先の攻撃も無駄さ!」

「小手先だけじゃないですよ。きっとぼくのポケモンは、ドラゴンにだって負けやしません」

 不敵な言葉を使ってみるアクタ。ワタルは少年の強がりを見抜いたように、ふっと笑った。

「……さてと、そろそろ始めよう! それとも、いまからシッポ巻いて帰るかい、アクタ!」

「ここまで来て、それはないでしょう!」

 アクタはモンスターボールを投げる。壁に何度かバウンドして、ギャラドスが飛び出した。

「ほんとにノーコンなんだな」

「え、ご存知なんですか?」

「けっこう有名だぞ。──さて、こちらもギャラドスだ!」

 2匹のギャラドスが相対した。それぞれが『いかく』し合い、咆哮する。

 さすがは、四天王というほどの人間が育てたギャラドス。アクタのギャラドスより一回りたくましく見える。

「──っていうか、ドラゴンタイプじゃないんですね」

「そう言うなよ、まずは様子見さ。実力を見せてもらうぞ」

 ワタルのギャラドスは、“たつまき”を放つ。ドラゴンタイプの技だが、大した威力ではない。

 ギャラドスの弱点は電気だ。サンダースなら有利に戦えるだろうが、交代で隙ができてしまうのが問題だ。なにより──

「このまま戦ってくれるかい、ギャラドス」

 竜巻に耐えながら、アクタのギャラドスは頷いた。

「“りゅうのまい”!」

 攻撃とスピードを上げて。

「“かいりき”!」

 尻尾の一撃を見舞う。

「やるな。こっちは“かみつく”だ!」

 相手のギャラドスの牙を喰らうが、アクタたちはひるまない。

「もう一度、“りゅうのまい”!」

「また強化か。まずいな……ギャラドス、“はかいこうせん”!」

 ワタルのギャラドスは、口から光を放つ。ノーマルタイプ最強の技だ。

 光線が直撃するも、ギャラドスは耐えた。

「──“りゅうのまい”!」

 三度目の舞い。ワタルのギャラドスは、“はかいこうせん”の反動で動けない。非常に威力の高い技であるが、代償に反動を受けてしまうのだ。

「“はかいこうせん”!」

 アクタのギャラドスもまた、光線を発射した。

「見事だな」

 ワタルのギャラドスは倒れた。ワタルはため息をついて、倒れたギャラドスをボールに戻す。

「悠長に構え過ぎたか。思っていたより早くやられた」

「様子見なんかするなら、それはそれで結構ですけどね。ぼくはずっと全力ですよ」

「ふっ、気を悪くしたなら謝るよ。つぎはドラゴンを見せてやる。──ハクリュー!」

 それはギャラドスとおなじく、青く細長い身体をしたポケモンだった。しかし、滑らかな肌は荘厳なオーラを放っており、美しくとぐろを巻く姿に、アクタは思わず見とれた。

 ドラゴンタイプのポケモン、ハクリューだ。

「ギャラドス──は、動けないかあ」

 せっかく“りゅうのまい”で強化したのだが、“はかいこうせん”の反動で、ギャラドスはいまだに動けない。

「ハクリュー、“りゅうのいかり”」

 ハクリューが発した衝撃波を受けて、ギャラドスは戦闘不能になってしまった。前回の戦いで負ったダメージが大きかったのだ。

「おつかれ、ギャラドス。──ドラゴンタイプね。エビワラー、よろしく!」

 アクタは2匹目のポケモンを繰り出した。かくとうタイプのエビワラーであるが、

「“れいとうパンチ”!」

 ドラゴンタイプに効果がある、こおりタイプの技が使える。

「なるほど、そうきたか! ハクリュー、“しんぴのまもり”!」

 ハクリューは防御に入った。ここが好機と、アクタは続けて“れいとうパンチ”の指示をだす。

「“げきりん”だ!」

 強力な技を受けるも、エビワラーはひるまずに拳を振るう。

「“カウンター”!」

 反撃の拳で、ハクリューは戦闘不能に陥った。

「ふっ、やるじゃないか」

 ワタルは不敵に笑う。3匹目に繰り出されたポケモンは、ハクリューだった。

「また!?」

「また、さ。カントーのドラゴンポケモンは稀少なんだ。重複しても仕方ないだろう」

 青い竜は、エビワラーを睨みつける。しかし先ほどの戦いでの疲弊があるため、アクタはエビワラーを交代させた。

 選ばれたのはラプラスだった。

「ふむ、こおりタイプか。──とりあえず、“でんじは”!」

 ハクリューの角から発せられる雷電で、ラプラスはマヒの状態異常に陥ってしまった。

「くっ、状態異常! ラプラス、“れいとうビーム“……」

 しかし、マヒで痺れてラプラスは動けない。

「ハクリュー、“げきりん”!」

 美しき竜が荒ぶる。

「っ──“れいとうビーム”!」

 こんどは技を発動できた。こうなれば、力と力のぶつかり合い。やがて、タイプが有利なラプラスは、ハクリューを沈めた。

「はあ、はあ……! つぎは!?」

「落ち着け、アクタ。まだ折り返し地点じゃないか」

「もう、折り返し地点ですよ! ──ああ、すいません」

 アクタは深呼吸をする。焦る必要なんか、どこにもない。

「落ち着きました。続けましょう」

「うん。では、プテラ」

 ワタルが繰り出した4匹目のポケモンは、見慣れたポケモンだった。

「プテラ、“げんしのちから”!」

 ラプラスがみずタイプの技を出すより早く、ワタルのプテラは岩石を発射する。先の戦いのダメージと、効果が抜群なこともあり、ラプラスは倒れてしまった。

「おつかれ。じゃあ、サンダース……いや、プテラ!」

 あえて、アクタは自分もプテラを出すことを選択した。

「ほう、趣味が合うな!」

「う、うん……」

 実際は、趣味というよりも偶然だ。アクタには、手持ちを選べるほどにポケモンを所持していない。

「こんどは負けないぞ、“こわいかお”!」

「うっ……“いわなだれ”!」

 能力を下げられつつ、攻めに出る。アクタのプテラは攻撃技しか持っていないものの、強くて頑丈だ。

 ワタルのプテラは“げんしのちから”をメインに攻撃してくる。アクタは“いわなだれ”や“すてみタックル”で応戦するも──

「ここでとどめだ! “はかいこうせん”!」

 相手の大技で敗北してしまった。

「うわ、さすがの技のタイミングです。悔しいな……おつかれ、プテラ」

「おれも“はかいこうせん”を使わせられると思っていなかったよ。ダメージもかなり受けたし、これでは──」

 アクタはサンダースを放つ。技の反動で動けないワタルのプテラを、心を鬼にして“でんげきは”で倒した。

「──うん、そうなるな。では、最後の一匹だ」

 ワタルが放ったポケモンは、山吹色の飛竜。強さの象徴として有名なドラゴンポケモン、カイリューだった。

「カイリュー、“はかいこうせん”!」

 発射された光は、一撃でサンダースを戦闘不能にした。

「……いっそ光栄だな。あのカイリューと戦えるなんて」

 自分を見下ろす飛竜に、伝説の鳥ポケモンたちが重なった。カイリューから感じる存在感は、彼らと引けを取らない。だが。

「勝つ気で挑戦させてもらいます。“フシギバナ”!」

 アクタが投げたモンスターボールから、大輪が咲いた。しかしバトルフィールドの外に出てしまったので、フシギバナは慣れた様子でカイリューの前まで駆けて、雄々しく吠えた。

「フシギバナ? 意外だな。くさタイプはカイリューにほとんど効果はないぞ」

「ちょっとはあるでしょ。フシギバナ、“にほんばれ”!」

 背負った花から光が飛び出し、フィールドを照らした。この日差しが、フシギバナにとって重要な意味を持つ。

「“ソーラービーム”!」

 太陽光のチャージは瞬時に完了する。カイリューが動き出す前に、光線が発射された。

「むっ……カイリュー、“つばさでうつ”!」

 カイリューの翼がフシギバナを打ち据える。ひこうタイプの技なので効果は抜群だ。

「だったら回復だ。“こうごうせい”!」

 太陽光を吸収し、フシギバナの体力が回復した。

 “にほんばれ”は日差しを強くすることで、ほのおタイプの技の威力を上げる効果があるのだが、“ソーラービーム”や“こうごうせい”にも影響する。

 “ソーラービーム”は技の溜めを短縮し、“こうごうせい”は回復量を増やす。いずれの技も習得しているフシギバナにとって、この日差しは強い味方となった。

「“ソーラービーム”!」

 再度、光線を発射する。くさタイプの技はカイリューに効果が薄いものの、ソーラービームほどの威力の高い技ならば、さすがにダメージ量は無視できない。

「いいコンボだな! だが、押し切れるかな!」

 カイリューの猛攻も休みなく続く。“にほんばれ”の効果が続くのも残りわずかだ。

「“げきりん”!」

 ドラゴンタイプの強力な技だ。荒れ狂うカイリューの様子に、ワタルが勝負に出たことを察した。

「フシギバナ、“こうごうせい”……いや!」

 ならば、こちらも覚悟を決める。

「“ソーラービーム”!」

 恐らく、最後の一撃。突進するカイリューは、“ソーラービーム”の光に包まれた。

 そして。

「“れいとうパンチ”が使えるエビワラーがいただろう。なのにフシギバナを選んだんだな」

「エビワラーの体力には余裕がなかった。タイプが一致していない“れいとうパンチ”で、カイリューを一撃で倒せるとは思えない。ひこうタイプの技を喰らって負けちゃうのは目に見えてました。──できればラプラスを温存しておきたかったんですけど」

「そうか。それでも、タイプが不利なフシギバナで、おれのカイリューを倒したのは快挙だ。悔しいが……」

 カイリューは、光のなかで倒れた。

 ワタルは、竜に寄り添う。

「きみのポケモンの腕は本物だ」

 “にほんばれ”が消えて、バトルフィールドの明度は通常に戻る。アクタは思わず、その場で腰を抜かした。

「ドラゴン軍団が負けるなんて信じられない。だが、アクタ! これからはきみがポケモンリーグチャンピオンだ!」

 少年は、自分がワタルに勝利にしたことに、いまだに確信さえ持てなかった。

「ぼ、ぼくが……」

「……と言いたいとこだが」

「と言いたいとこだが!?」

 挑戦は、これで終わりではなかった。

 少年の前に、予想だにしていなかった第四の関門が立ちはだかっていた。

 




フシギバナ
 れいせいな性格
 アクタに構ってほしいとき、蔓で袖を引っ張ったりする。

ギャラドス
 がんばりやな性格
 アクタに構ってほしいとき、巻き付く。

サンダース
 きまぐれな性格
 アクタに構ってほしいとき、露骨に甘える。

エビワラー
 ゆうかんな性格
 アクタに構ってほしいとき、視界に入ってシャドーボクシングをする。

ラプラス
 おだやかな性格
 アクタに構ってほしいとき、歌うように鳴く。

プテラ
 やんちゃな性格
 アクタに構ってほしいとき、連れ去ろうとする。
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