ポケットモンスターNAVY ~暴投モンスターボール~ 作:サンダーゴリラ
四番目の部屋。
四天王、最後のひとり。マントに身を包んだ赤髪の男が立っていた。
「はじめまして。アクタといいます」
「そうか、きみがアクタ! おれは四天王の大将、ドラゴン使いのワタルだ!」
「ドラゴンタイプ……!」
カントー地方では珍しいタイプだ。ギャラドスやプテラもドラゴンタイプの技は持っているものの、ポケモンとしてのタイプは異なる。
「知ってるだろ。ドラゴンは聖なる伝説の生き物と呼ばれている! ドラゴンタイプのポケモンは捕まえるのが難しいけど、上手く育てりゃ強さは天下一品だ。身体も丈夫だし、小手先の攻撃も無駄さ!」
「小手先だけじゃないですよ。きっとぼくのポケモンは、ドラゴンにだって負けやしません」
不敵な言葉を使ってみるアクタ。ワタルは少年の強がりを見抜いたように、ふっと笑った。
「……さてと、そろそろ始めよう! それとも、いまからシッポ巻いて帰るかい、アクタ!」
「ここまで来て、それはないでしょう!」
アクタはモンスターボールを投げる。壁に何度かバウンドして、ギャラドスが飛び出した。
「ほんとにノーコンなんだな」
「え、ご存知なんですか?」
「けっこう有名だぞ。──さて、こちらもギャラドスだ!」
2匹のギャラドスが相対した。それぞれが『いかく』し合い、咆哮する。
さすがは、四天王というほどの人間が育てたギャラドス。アクタのギャラドスより一回りたくましく見える。
「──っていうか、ドラゴンタイプじゃないんですね」
「そう言うなよ、まずは様子見さ。実力を見せてもらうぞ」
ワタルのギャラドスは、“たつまき”を放つ。ドラゴンタイプの技だが、大した威力ではない。
ギャラドスの弱点は電気だ。サンダースなら有利に戦えるだろうが、交代で隙ができてしまうのが問題だ。なにより──
「このまま戦ってくれるかい、ギャラドス」
竜巻に耐えながら、アクタのギャラドスは頷いた。
「“りゅうのまい”!」
攻撃とスピードを上げて。
「“かいりき”!」
尻尾の一撃を見舞う。
「やるな。こっちは“かみつく”だ!」
相手のギャラドスの牙を喰らうが、アクタたちはひるまない。
「もう一度、“りゅうのまい”!」
「また強化か。まずいな……ギャラドス、“はかいこうせん”!」
ワタルのギャラドスは、口から光を放つ。ノーマルタイプ最強の技だ。
光線が直撃するも、ギャラドスは耐えた。
「──“りゅうのまい”!」
三度目の舞い。ワタルのギャラドスは、“はかいこうせん”の反動で動けない。非常に威力の高い技であるが、代償に反動を受けてしまうのだ。
「“はかいこうせん”!」
アクタのギャラドスもまた、光線を発射した。
「見事だな」
ワタルのギャラドスは倒れた。ワタルはため息をついて、倒れたギャラドスをボールに戻す。
「悠長に構え過ぎたか。思っていたより早くやられた」
「様子見なんかするなら、それはそれで結構ですけどね。ぼくはずっと全力ですよ」
「ふっ、気を悪くしたなら謝るよ。つぎはドラゴンを見せてやる。──ハクリュー!」
それはギャラドスとおなじく、青く細長い身体をしたポケモンだった。しかし、滑らかな肌は荘厳なオーラを放っており、美しくとぐろを巻く姿に、アクタは思わず見とれた。
ドラゴンタイプのポケモン、ハクリューだ。
「ギャラドス──は、動けないかあ」
せっかく“りゅうのまい”で強化したのだが、“はかいこうせん”の反動で、ギャラドスはいまだに動けない。
「ハクリュー、“りゅうのいかり”」
ハクリューが発した衝撃波を受けて、ギャラドスは戦闘不能になってしまった。前回の戦いで負ったダメージが大きかったのだ。
「おつかれ、ギャラドス。──ドラゴンタイプね。エビワラー、よろしく!」
アクタは2匹目のポケモンを繰り出した。かくとうタイプのエビワラーであるが、
「“れいとうパンチ”!」
ドラゴンタイプに効果がある、こおりタイプの技が使える。
「なるほど、そうきたか! ハクリュー、“しんぴのまもり”!」
ハクリューは防御に入った。ここが好機と、アクタは続けて“れいとうパンチ”の指示をだす。
「“げきりん”だ!」
強力な技を受けるも、エビワラーはひるまずに拳を振るう。
「“カウンター”!」
反撃の拳で、ハクリューは戦闘不能に陥った。
「ふっ、やるじゃないか」
ワタルは不敵に笑う。3匹目に繰り出されたポケモンは、ハクリューだった。
「また!?」
「また、さ。カントーのドラゴンポケモンは稀少なんだ。重複しても仕方ないだろう」
青い竜は、エビワラーを睨みつける。しかし先ほどの戦いでの疲弊があるため、アクタはエビワラーを交代させた。
選ばれたのはラプラスだった。
「ふむ、こおりタイプか。──とりあえず、“でんじは”!」
ハクリューの角から発せられる雷電で、ラプラスはマヒの状態異常に陥ってしまった。
「くっ、状態異常! ラプラス、“れいとうビーム“……」
しかし、マヒで痺れてラプラスは動けない。
「ハクリュー、“げきりん”!」
美しき竜が荒ぶる。
「っ──“れいとうビーム”!」
こんどは技を発動できた。こうなれば、力と力のぶつかり合い。やがて、タイプが有利なラプラスは、ハクリューを沈めた。
「はあ、はあ……! つぎは!?」
「落ち着け、アクタ。まだ折り返し地点じゃないか」
「もう、折り返し地点ですよ! ──ああ、すいません」
アクタは深呼吸をする。焦る必要なんか、どこにもない。
「落ち着きました。続けましょう」
「うん。では、プテラ」
ワタルが繰り出した4匹目のポケモンは、見慣れたポケモンだった。
「プテラ、“げんしのちから”!」
ラプラスがみずタイプの技を出すより早く、ワタルのプテラは岩石を発射する。先の戦いのダメージと、効果が抜群なこともあり、ラプラスは倒れてしまった。
「おつかれ。じゃあ、サンダース……いや、プテラ!」
あえて、アクタは自分もプテラを出すことを選択した。
「ほう、趣味が合うな!」
「う、うん……」
実際は、趣味というよりも偶然だ。アクタには、手持ちを選べるほどにポケモンを所持していない。
「こんどは負けないぞ、“こわいかお”!」
「うっ……“いわなだれ”!」
能力を下げられつつ、攻めに出る。アクタのプテラは攻撃技しか持っていないものの、強くて頑丈だ。
ワタルのプテラは“げんしのちから”をメインに攻撃してくる。アクタは“いわなだれ”や“すてみタックル”で応戦するも──
「ここでとどめだ! “はかいこうせん”!」
相手の大技で敗北してしまった。
「うわ、さすがの技のタイミングです。悔しいな……おつかれ、プテラ」
「おれも“はかいこうせん”を使わせられると思っていなかったよ。ダメージもかなり受けたし、これでは──」
アクタはサンダースを放つ。技の反動で動けないワタルのプテラを、心を鬼にして“でんげきは”で倒した。
「──うん、そうなるな。では、最後の一匹だ」
ワタルが放ったポケモンは、山吹色の飛竜。強さの象徴として有名なドラゴンポケモン、カイリューだった。
「カイリュー、“はかいこうせん”!」
発射された光は、一撃でサンダースを戦闘不能にした。
「……いっそ光栄だな。あのカイリューと戦えるなんて」
自分を見下ろす飛竜に、伝説の鳥ポケモンたちが重なった。カイリューから感じる存在感は、彼らと引けを取らない。だが。
「勝つ気で挑戦させてもらいます。“フシギバナ”!」
アクタが投げたモンスターボールから、大輪が咲いた。しかしバトルフィールドの外に出てしまったので、フシギバナは慣れた様子でカイリューの前まで駆けて、雄々しく吠えた。
「フシギバナ? 意外だな。くさタイプはカイリューにほとんど効果はないぞ」
「ちょっとはあるでしょ。フシギバナ、“にほんばれ”!」
背負った花から光が飛び出し、フィールドを照らした。この日差しが、フシギバナにとって重要な意味を持つ。
「“ソーラービーム”!」
太陽光のチャージは瞬時に完了する。カイリューが動き出す前に、光線が発射された。
「むっ……カイリュー、“つばさでうつ”!」
カイリューの翼がフシギバナを打ち据える。ひこうタイプの技なので効果は抜群だ。
「だったら回復だ。“こうごうせい”!」
太陽光を吸収し、フシギバナの体力が回復した。
“にほんばれ”は日差しを強くすることで、ほのおタイプの技の威力を上げる効果があるのだが、“ソーラービーム”や“こうごうせい”にも影響する。
“ソーラービーム”は技の溜めを短縮し、“こうごうせい”は回復量を増やす。いずれの技も習得しているフシギバナにとって、この日差しは強い味方となった。
「“ソーラービーム”!」
再度、光線を発射する。くさタイプの技はカイリューに効果が薄いものの、ソーラービームほどの威力の高い技ならば、さすがにダメージ量は無視できない。
「いいコンボだな! だが、押し切れるかな!」
カイリューの猛攻も休みなく続く。“にほんばれ”の効果が続くのも残りわずかだ。
「“げきりん”!」
ドラゴンタイプの強力な技だ。荒れ狂うカイリューの様子に、ワタルが勝負に出たことを察した。
「フシギバナ、“こうごうせい”……いや!」
ならば、こちらも覚悟を決める。
「“ソーラービーム”!」
恐らく、最後の一撃。突進するカイリューは、“ソーラービーム”の光に包まれた。
そして。
「“れいとうパンチ”が使えるエビワラーがいただろう。なのにフシギバナを選んだんだな」
「エビワラーの体力には余裕がなかった。タイプが一致していない“れいとうパンチ”で、カイリューを一撃で倒せるとは思えない。ひこうタイプの技を喰らって負けちゃうのは目に見えてました。──できればラプラスを温存しておきたかったんですけど」
「そうか。それでも、タイプが不利なフシギバナで、おれのカイリューを倒したのは快挙だ。悔しいが……」
カイリューは、光のなかで倒れた。
ワタルは、竜に寄り添う。
「きみのポケモンの腕は本物だ」
“にほんばれ”が消えて、バトルフィールドの明度は通常に戻る。アクタは思わず、その場で腰を抜かした。
「ドラゴン軍団が負けるなんて信じられない。だが、アクタ! これからはきみがポケモンリーグチャンピオンだ!」
少年は、自分がワタルに勝利にしたことに、いまだに確信さえ持てなかった。
「ぼ、ぼくが……」
「……と言いたいとこだが」
「と言いたいとこだが!?」
挑戦は、これで終わりではなかった。
少年の前に、予想だにしていなかった第四の関門が立ちはだかっていた。
フシギバナ
れいせいな性格
アクタに構ってほしいとき、蔓で袖を引っ張ったりする。
ギャラドス
がんばりやな性格
アクタに構ってほしいとき、巻き付く。
サンダース
きまぐれな性格
アクタに構ってほしいとき、露骨に甘える。
エビワラー
ゆうかんな性格
アクタに構ってほしいとき、視界に入ってシャドーボクシングをする。
ラプラス
おだやかな性格
アクタに構ってほしいとき、歌うように鳴く。
プテラ
やんちゃな性格
アクタに構ってほしいとき、連れ去ろうとする。