ポケットモンスターNAVY ~暴投モンスターボール~   作:サンダーゴリラ

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レポート6 ソノオタウン/おかしな格好の悪いやつら

「おお、アクタ! ジムリーダーに勝ったのか!」

 アドバイスをくれた眼鏡の男は、アクタの勝利を喜んでくれた。

「どうだおれのアドバイス、役に立ったか? 役に立ったと思うなら、おれのファンになってくれよな!」

「逆じゃないんですか」

 この男とはまた会うことになりそうだ。そんな直感があった。

 さて。ジュンから──もとい、ジュンの母から貰ったタウンマップを広げる。ここから近い街は……

 ()()()()()

「おっと!」

 走ってくる少年とぶつかってしまった。ジュンだった。

「アクタ、ジムバッジ貰えたか!」

「うん、もらえたよ。きみ、移動手段がダッシュなのはやめたほうがいいよ」

 タウンマップが汚れないよう死守したら、転んでしまった。ジュンの手を借りて立ち上がる。

「ここからすぐ行けるのは、ハクタイシティのポケモンジムだろ?」

 ジュンは北の方向を振り返る。

「で、207番道路に行ったけど、自転車がないと通れないのな。まあポケモンを戦わせて鍛えたからいいけど」

「自転車が? そういう専用の道になってるの?」

「砂の坂になってんだ。あれは自転車とかでスピード出して登らなきゃムリだぜ。──でさ」

 ジュンはアクタに向き直る。

「オレ、コトブキに戻る!」

「コトブキに? ──ああ、コトブキの北から迂回すれば、ハクタイに行けるんだね」

 アクタがタウンマップを見ている間に、ジュンはふたたび走る体勢に入る。

「つぎはハクタイのジムバッジ! じゃ、ダッシュ10秒前!」

「だから、走ると危ない……」

「9……って数えてられるか!」

 ジュンは走り去って行った。

「慌ただしいわ、ひとの話を聞かないわ……困ったやつだなあ。でも……」

 アクタはクロガネジムを振り返る。

「あれだけせっかちなのに、ぼくのジム戦が終わるまで待っててくれたんだなあ」

 

 

 コトブキシティに戻ると、道端のベンチでホットドッグを食べるハンサムの姿を見かけた。近くにキッチンカーがあったので、アクタもホットドッグ(ケチャップ多め)を注文し、隣に座る。

「休憩中ですか」

「うむ。お? きみはたしか──」

「自己紹介してなかったですよね。ぼく、アクタっていいます」

 初めて会ったとき、この男は自分のことばかり語り、アクタやヒカリには自己紹介の時間をくれなかった。

 ハンサムは顔をほころばせつつ、それでも「おほん」と厳めしく咳払いをした。

「よし、アクタ。前も言ったけど、わたしは国際警察の任務中だからして、気軽に話しかけられるのは……」

「でも、休憩中ですよね?」

「……それもそうか」

 ハンサムは肩をすくめた。

「あと国際警察って言葉、あんまり言わないほうがいいんじゃないですか?」

「うん、それもそうだ」

 すくなくともホットドッグを食べている途中、アクタとハンサムは他愛のない話をした。ハンサムは油断すると「国際警察は~」と漏らすので、そのたびにアクタはたしなめた。

「ほう、クロガネのジムリーダーに勝ったのか! やるなあきみは」

「いやあ、まだまだ1個目です。自慢するようなことじゃ……それに、ポケモンのおかげですし」

「うむ、立派な心がけだ。──ふーむ、それにしてもコトブキに怪しいやつはいないようだ。べつの街を調べるとするかな」

 食事を終えたハンサムはベンチから立ち上がる。

「きみも怪しいオトナには気をつけろよ!」

「あなたも怪しいですよ」とはさすがに口に出さなかった。初対面とか抜きに、まあまあひどいからだ。

 

 

「さあ、さあさあさあ! ナナカマド博士、あなたの研究の成果をただでワレワレによこしなさい!」

 コトブキシティ、北。ハクタイシティを目指して204番道路を目指したところで、知った顔のふたりを見つけた。

 ひとりはナナカマド博士。ふたり目はその隣のヒカリ。

 しかしふたりが対峙する相手は、アクタにとって知らない──その風貌を含めて未知の者だった。

「そうしないとあなたの助手、痛い目に遭わせます」

 水色の髪のボブヘアー。白と灰色を基調としたスーツは制服だろうか。「G」に見えるエンブレムが見受けられる。

 第一印象ではあるが、怪しい。

 しかもそれが、ふたり。

 ハンサムはなにを見ていたのだろう──アクタは心のなかで、もうこの街を去って行った国際警察に呆れた。

「おお、アクタか」

 ナナカマド博士は、どうにも物々しい雰囲気の「彼ら」をまるで気にしていないようで、アクタに気づいて声をかけた。

「こ、こんにちは博士」

「どうだ、ポケモン図鑑のほうは?」

「これは困ったポケモン博士ですね!」

 奇抜なファッションの彼らは、無視されつつも博士に喰いつく。

「ワレワレはお仕事としてお話しているのです。──というか、ワレワレの話を聞け! というのです」

「お前たちうるさいぞ!」

 ようやく、ナナカマド博士は彼らに目を向ける。

「ほんとうに困ったやつらだな。お前たちの悪いところその1、用はないのにいつまでもいるな。悪いところその2、ひとの話を邪魔するな。その3、思い通りにならぬからと、大声で脅すんじゃない。その4、集団でいることで強くなったと勘違いするな。その5、そもそもそのおかしな格好はなんなのだ!?」

 アクタとヒカリは、博士の言葉を指折り数える。この指摘を自分が犯してしまったとき、叱られるんじゃないかと思ったからだ。

「やれやれ……駄目なオトナというやつだな。お前たちはこんなふうになるなよ」

「キーッ!! 頭に来ました!」

 さんざん侮辱された彼ら──()()()()()()のふたりは、憤ってモンスターボールを手にする。

「こうなったら力ずくです! ギンガ団をバカにしたこと、後悔させてあげますよ!」

「博士、ここは──」

 アクタは博士を庇うように間に入る。

「わ、わたしも……」とヒカリがアクタに並ぶ。

「ふむ、そうか? ではお前たち、ちょいと懲らしめてやれ」

「アクタくん! あたしたち一緒に戦おうね!」

 ダブルバトル。

 互いに2匹のポケモンを戦わせる──もしくは、トレーナーふたりがそれぞれ1体ずつを同時に戦わせる、つまるところ2対2のポケモンバトルの形式だ。

 相手が繰り出してきたのは、紫の体毛のスカンクポケモン、スカンプー。そしてしなやかな身体の猫ポケモン、ニャルマー。

 ヒカリはポッチャマを、アクタはナエトルを呼び出す。

 ちなみに、アクタはボールを投げてしまったので、ナエトルはナナカマド博士の足元に現れた。

「す、すいません……ナエトル、おいで」

「もう! 先にやるからね! ポッチャマ、“はたく”!」

 ヒカリは先にバトルを始めてしまう。が──

「ニャルマー、“ねこだまし”!」

「スカンプー、“どくガス”」

 どうやら、相手はヒカリよりも一枚上手だ。

「ナエトル、ポッチャマに当てちゃダメだよ。──“はっぱカッター”」

 発射した刃は、ニャルマーとスカンプーに命中した。ダメージは2体に分散されているし、スカンプーはどくタイプなので効果は薄いが、それでもポッチャマを救うには十分だった。

「ヒカリさん、一旦下がっていいよ。『どくけし』はある?」

「う、うん……」

「ポッチャマはほかにはどんな技が使える?」

「なにをお喋りしてるんだ! “みだれひっかき”!」

 迫るスカンプーの爪を、ナエトルが受け止める。

「“あわ”が使える。2体に同時に攻撃できるわ!」

「じゃ、同時にやってみよう」

 ポッチャマが“あわ”を。ナエトルが“はっぱカッター”を放つ。突然の同時攻撃に敵はたじろぎ、ニャルマーが戦闘不能となった。

「くそ! こうなったらスカンプー、1体でも道連れにしなさい! “みだれひっかき”!」

「ナエトル、“たいあたり”」

 向かってくるスカンプーだが、ナエトルは冷静にとどめを刺した。

「なんと負けてしまった……!? お子様ふたりにワレワレが?」

「これはいけません……作戦大失敗です」

「ヒカリさん、ほら、手」

 アクタが掌を向ける。ヒカリも戸惑いつつ真似をする。

「いえい!」

 たどたどしく、ハイタッチ。

「アクタくん、なんかバトル慣れてない!?」

「え? いやあ、ダブルバトルはあんまりやんないけど、クロガネでジムバッジは貰ってきたからさ」

 奇抜なファッションの彼らは、喜ぶ少年少女をしり目に、自分たちのポケモンをボールに戻す。

「仕方ないです。ここは引き揚げます。なぜならギンガ団はみんなに優しいからです」

 震えた声で捨て台詞を残し、奇抜なファッションの男たちは立ち去った。

「あの困った連中、ギンガ団とか言っていたか……」

 ナナカマド博士はため息をつく。

「たしかにポケモンが進化するとき、なにかしらのエネルギーを出しているのかもしれん。

が、それはひとにはどうにもできぬ神秘の力だろうな。なのにギンガ団は、それがなにかに使えるエネルギーなのか、調べようとしていたようだ」

「博士はポケモンの進化について研究しているんだよ」

 ヒカリが耳打ちしてくる。

「なんでも博士の研究だと、ポケモンの90パーセントは進化に関係するんですって! そのせいかな。さっきのひとたち、博士の研究成果を無理矢理奪おうとしてきたの! そんなの許せないよね!」

 拳を握りしめて打ち震えるヒカリ。「怒ってるなあ」とアクタはすこし引いた。

「落ち着きなさい。お前たちのおかげでなにも起こらずに済んだのだ。感謝しているぞ」

 博士に褒められ、ヒカリは落ち着いた。彼女はずいぶんとナナカマド博士のことを尊敬しているようだ。

「ときにアクタ! 見事な戦いぶりであったな」

「そ、そうですか?」

 照れるアクタ。

「しかしボールのコントロールはひどいものだな。噂通りだ」

 手厳しい。

「クロガネジムのバッジを手に入れたと言っていたな。お前は、シンオウ地方のバッジを集めるつもりか?」

「はい、そのつもりです」

 バトルは好きなほうだ。それに、ジムのある街を巡るのは旅の指針にもなる。

「そうか。ならばその途中で多くのポケモンに出会うだろう。ということはポケモン図鑑のページもどんどん埋まる! つまりわたしとしても助かるのだがな」

「もちろん、そっちのほうもがんばります」

「うむ。まあポケモンもポケモン図鑑も、お前に託したのだ。お前の好きなようにやってみなさい! ではな」

 ナナカマド博士とヒカリは去って行く。

「好きなように……か。ありがたいな。じゃあ、ぼくらのペースでがんばろっか」

 ナエトルはバトルで疲れたのだろうか、アクタの足元で寝息を立てていた。

 

 

 予定通り、コトブキシティの北側からハクタイシティを目指す。204番道路ではトレーナーたちと戦い、「荒れた抜け道」という洞窟を通り抜け、ソノオタウンという町にたどり着いた。

 

────

 ここはソノオタウン。

 鮮やかに花香る町。

────

 

 あちこちに花が咲いており、フラワーショップは賑わっている。町の北にある花畑は壮観で、花や木の蜜からは甘いにおいがする。

「ナエトル、こういうところは好きなんじゃない?」

 花畑にナエトルを放してみるが、ナエトルはすこし花のにおいを嗅いだかと思うと、そのままうずくまり、眠ってしまった。

「そ、そうですか。気持ちいいもんね」

 ナエトルをボールに戻す。先を急ぐことにしよう。ハクタイシティはまだ先だ。

 ソノオタウンから東に出て、205番道路へ。

「ねーねートレーナーさん!」

 道の真ん中で、女の子が話しかけてきた。目に涙を浮かべており、見るからに困った様子だ。

「どうしたの? なにか力になれる?」

 かがみこみ、女の子に目線を合わせる。

「あたし、パパに会いたいの!」

「うん、パパに」

「あたしとパパね、発電所をお家にしていたの。でも、宇宙人みたいなひとがたくさんやってきて……」

 宇宙人みたいなひと? アクタが脳裏に浮かべたのは、銀色の肌のやせ細った怪人だった。

「あたしは追い出されちゃったし、パパはなにかさせられてるの。ねーねートレーナーさん! あたしパパに会いたい!」

「うーんと、その宇宙人に発電所とパパを盗られちゃったのか。よし、とりあえず行ってみよう」

 アクタと少女は川沿いに進んで、谷間の発電所を訪れる。入り口に立っていたのは──

「あ、なるほど宇宙人」

 水色の髪のボブヘアー。白と灰色を基調とした、「G」の紋章が入った制服。コトブキシティで戦った、ギンガ団の団員だ。

 彼らとは別人のようである。ギンガ団とはみんなああいう格好をするものらしい。

 アクタはモンスターボールを握りしめ、女の子には「ここで待ってて」と言い聞かせ、発電所に向かって行った。

「入るなよ? いいか、絶対に発電所に入るなよ?」

 ギンガ団の男は、アクタを睨みつける。

「ギンガ団の仲間以外は『だれも入れるな』って命令されてんだからよ」

「…………」

「なんだその顔は? 入りたそうだな? だったら、オレと勝負してみろよ!」

 ギンガ団の男はニャルマーを繰り出した。

 なんとも話が早い。アクタはモンスターボールを足元に放つ。ナエトルはぱっと目を覚ました。

「ナエトル、いい? ちょっとこれから連戦になるかもしれないけど」

 あくびをしつつも、ナエトルはニャルマーに向かって行く。

「なにをのんびりしている! ニャルマー……」

「“はっぱカッター”!」

 緑の刃は、一撃でニャルマーを『ひんし』にする。

「……はっ!?」

 驚愕するギンガ団をしり目に、アクタとナエトルはずんずんと歩を進める。

「いや、ちょっ、入っちゃダメなんだって……」

「お邪魔します」

 勝手にドアに手をかけ、アクタは谷間の発電所に侵入した。

「どこにでも、悪いひとたちっているもんなんだな。まあいいさ。やれる範囲で解決していこう。ナエトル、付き合ってくれるかい?」

 頷くように、のんびりした声で鳴いたナエトルだったが──ふと、その身体がぶるりと震えた。

 やがて小さな身体が光に包まれる。

「お? おお、おおおお……!」

 どうやら、攻め入る準備は整ったようだ。




ナエトル ♂
 のんきな性格
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