ポケットモンスターNAVY ~暴投モンスターボール~   作:サンダーゴリラ

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レポート4 ニビシティ/ジムチャレンジ

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 ここはニビシティ。

 ニビは灰色、石の街。

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 ニビ科学博物館。入場料の50円を払い、「宇宙博覧会」と称される展示物を楽しんだ。アクタにとっては、月の石やスペースシャトルの模型よりも、ポケモンのカセキがおもしろかった。

「いいなあ、プテラとカブトプス」

 もちろん、アクタが求めているのは実物のほうだ。

 博物館を後にして、フレンドリィショップでアイテムや生活用品を買いそろえる。名物の「ニビあられ」もおやつに買った。

「さてと」

 この街を訪れた理由は、観光や買い物、宿泊だけではない。もっとも重要な用が残っている。

 そういうわけで少年は、ニビポケモンジムの門を叩いた。

「おっす! ポケモンチャンピオンを目指してみないか?」

 いきなり眼鏡の男性に声をかけられた。予想外の洗礼に、少年はたじろぐ。

「あ、あなたは? ジムトレーナーさん?」

「いや、おれはトレーナーじゃない。しかし、勝つためにばっちりアドバイスできるぜ!」

「はあ」

「きみの名前は!?」

「アクタっていいます」

「な、アクタ。一緒にポケモンチャンピオンを目指そうぜ。いろいろ教えてやるからさ!」

 ポケモンチャンピオン。すなわち、ポケモンリーグの覇者。それは、アクタが掲げるにはあまりにも大それた目標であったが──

「んーと、ぼくは初心者なんで、アドバイスとかいただけるんなら、ありがたいです」

「よっしゃーっ! じゃ、さっそく……!」

 受付に引っ張られて行った。

 

 

「トレーナーカードを出せ。バッジはゼロ、つまり一回目のチャレンジだな!? ジムでのバトルは公式試合として扱われる。野良試合とは違って、細かいルールがあるから、そこんところは気をつけろよ!」

 

 

「まず、バトルで使えるポケモンは最大で6匹。使える技は4つだ。7体目を出したり、申請している以外の技を出したら、その時点で失格だからな! ──なんだ、フシギダネ1匹でいいのか? タイプ相性は有利だろうが、油断するなよ!」

 

 

「挑戦者側は道具の使用に制限はない。でも、認可されてる道具しか使っちゃダメだぜ。たとえば、市販されていないドーピング剤や、ポケモンに関係のない道具も持ち込んじゃダメだ。一応、使用可能なアイテムの一覧があるから、チェックしておけ!」

 

 

「トレーナーカードの履歴から……うん、ポケモンセンターにはちゃんと通っているな。ポケモンセンターではポケモンの回復のほかにも、簡単な健康診断や、悪いウイルスを持っていないかチェックされるからな。ジム戦の直前に行っておけば安心だろう!」

 

 

「きょうのスケジュールだと、すぐにでもチャレンジが開始できるな。20分もせずに呼ばれるだろうから、控室で待っていろ。──ああ、ジム側にも準備ってものがあるからな。挑戦者がいくつバッジを持っているかで、ジムトレーナーのレベルや、ジムリーダーが使うポケモンも変えるんだ。挑戦者全員に本気の戦力でかかってしまったら、だれもバッジなんてゲットできないからな! はっはっは!」

 

 

「ほかに質問はあるか?」

「結局、あなただれなんですか?」

「さあ控室に行け!」

 眼鏡の男は、たしかにいろいろと詳しく教えてくれた。だが実際の手続きを行う受付の者はべつにいて、その受付も、男の存在には慣れているようだった。

 こういったガイドは、どのジムにもいるのだろうか。

 ──なんて「不思議だなあ」と考えているうちに、控室の扉がノックされた。

 緊張する暇もなく、アクタにとって最初のジムチャレンジが始まる。

 

 

「待ちなー! 子どもがなんの用だ!」

 最初の関門は、ジムトレーナー戦であった。

 各ポケモンジムに配置された、修行中のトレーナーだ。ジムリーダーとの戦いの前に、挑戦者の実力を測るのが役割である。

「タケシさんに挑戦なんて、10000光年早いんだよ!」

「光年?」

 ともあれ、キャンプボーイの少年はイシツブテを繰り出す。球状の岩石の身体に、左右の腕を伸ばした、いわとじめんタイプのポケモンだ。

 アクタは手元でフシギダネを放つ。ジムリーダーに挑戦するには、最低限、彼らジムトレーナーを退けなければならない。

「──“つるのムチ”!」

 イシツブテ、そして続くサンドも、効果抜群のくさタイプの技で撃退した。

「しまった! 10000光年は……時間じゃない! ……距離だ!」

「あ、やっぱりそうですよね」

 タイプの相性は重要である。くさタイプのフシギダネは、いわ・じめんタイプのイシツブテには四倍ものダメージを出すことができる。

 だからといって、油断できない。

 これから戦う相手は、ジムリーダー。ジムバッジの数に応じて、挑戦者にレベルを合わせてくれると言っても、トレーナー自身はプロ中のプロなのだ。

「来たな!」

 体格の良い細目の男が、アクタを迎えた。

「おれはニビポケモンジムリーダーのタケシ!」

「はい。あ、ぼくはアクタです」

 目の前には、岩に囲まれた広いバトルフィールド。白線で描かれた中央の円は、「公式試合」であることを強調するようだ。

「おれの固い意志はおれのポケモンにも表れる! 硬くて我慢強い! そう、使うのはいわタイプばっかりだ!」

 各地のジムでは、主にひとつのタイプをテーマされている。このニビジムでは、いわタイプなのだ。

「岩ポケモンは優れた防御力が特徴だ。生半可な攻撃じゃ、びくともしないぞ! それでも覚悟はいいか!?」

「は、はい! よろしくお願いします!」

 ここにきて、緊張が高まる。アクタはモンスターボールを握りしめる。

「ふはは! 負けると分かってて戦うか! ポケモントレーナーの性だな。いいだろう、かかってこい!」

 ジムリーダーのタケシはイシツブテを繰り出した。

 アクタはモンスターボールを投げる。投げてしまった。

 ボールは岩々にバウンドして、しかし幸いにも、フシギダネはバトルフィールドに着地した。

「お、おい、緊張してるか? 大丈夫か?」

 心配されてしまった。

「すいません、大丈夫です! フシギダネ、ごめん!」

 フシギダネは慣れているので、「問題ない」と言わんばかりに鳴いて、イシツブテに向き直った。

 審判の合図とともに、試合が開始される。

「さあイシツブテ、“まるくなる”!」

「フシギダネ、“つるのムチ”!」

 草の蔓がイシツブテを打ち据える。絶大なダメージが入ったが、戦闘不能とまではいかない。

「あらかじめ防御を上げておいたからな。相性が悪いとはいえ、一矢報いらせてもらうぞ! “たいあたり”!」

 イシツブテの突撃を喰らう。

「もう一回、“つるのムチ”!」

 二発目の攻撃で、ようやくイシツブテは沈んだ。“たいあたり”のダメージは大したものではないが、くさタイプの技一発で倒せなかったことは、アクタにとって意外だった。

「やっぱりジムリーダーって、すごいんですね」

「くさタイプで挑めば楽勝、とでも思ったか? 相性の有利不利を覆すのも、ポケモン勝負の醍醐味さ。──さあ、イワーク! お前の力を見せてやれ!」

 岩石を数珠繋ぎにした胴体は、さながら岩蛇。巨大な影に、アクタとフシギダネはたじろいだ。

「つ、“つるのムチ”!」

 先ほどのように防御力を上げられる前に、先手を取れた。が、一発目は耐えられてしまった。

「“がんせきふうじ”!」

 岩石が襲い掛かり、フシギダネの動きを封じる。

「続けて“しめつける”!」

 イワークの尾が伸びて、フシギダネに巻きついた。岩石による絞めつけがフシギダネを傷つける。

「フシギダネ! ──いや、大丈夫だよな!」

 アクタは不安を振り払う。

「きみなら大丈夫! あと一発、全力で“つるのムチ”だ!」

 フシギダネはどうにか、蔓を伸ばす。そして自らを絞めつけるイワークに、叩きつけた。

「──お見事」

 タケシが呟くと同時に、イワークは崩れ落ちた。審判の旗がアクタに上がる。

「きみを見くびっていたようだ。ぼくに勝った証にポケモンリーグ公認、グレーバッジを授けよう!」

「え? あ、そうか、勝ったんだ!」

 アクタはフシギダネに駆け寄る。

「やったねフシギダネ! ありがとう!」

 息を切らすフシギダネだが、それでも嬉しそうに応えた。「おつかれさま」と彼をボールに戻す。

「よく戦ったね。さあ、グレーバッジだ」

 タケシの手から渡されたのは、灰色に輝く八角形のバッジだった。

「タイプ相性が良かったので……」

「ははは、謙遜することはない。きみは愛情を持ってポケモンを育てているようだね。フシギダネが伸び伸びと戦っていたから、よくわかったよ」

「いやあ、えへへ」

 アクタは照れた。たしかに、初めてであり、唯一のポケモンであるフシギダネには深い愛情を注いでいる。それが正解だと褒められたのが嬉しかった。

「旅を始めたのは最近だろう? この広い世界では、いろんな奴がポケモンで戦いを繰り広げている! たくさんバトルをして学ぶと良い。きみにはポケモントレーナーの才能があるようだ!」

「ありがとうございます、タケシさん。がんばります!」

「つぎに行くジムは決まっているのか?」

「まだです。トキワジムは休業中だったし……」

「じゃあ、ハナダはどうだ? オツキミ山の向こうにあるんだ。山を越えるのもそれなりに大変だろうが、きみの力を試してみるといい」

「ハナダシティかあ。はい、そうします」

「……ところで」

 タケシは悩まし気に腕を組んだ。

「最初の挨拶では、『意志』と『石』をかけたんだけど、気づいたかな?」

「あー……いや、ぜんぜん」

 ジムリーダーも大変なのだな、とすこし同情した。

 

 

「さすがだな! この調子で目指せ、ポケモンチャンピオン!」

 ニビジムを後にする際、眼鏡の男に背中を押された。どういうひとだったのだろう、と首を傾げつつも、応援には礼を言った。

 ポケモンセンターで休んだ後、さっそくハナダシティを目指すことにする。ニビシティの東、オツキミ山へとつながる3番道路へ踏み出そうとしたとき。

「あ! アクタくん」

 ある男性に声をかけられた。

「あ、研究所の……」

「間に合って良かった……はい、オーキド博士の助手です」

 オーキド研究所で何度か顔を合わせたことがある。よく仕事であちこちを飛び回っている、忙しい男である。

「お仕事ですか?」

「ええ、博物館に用事がありまして。そのついでですけど、きみにお届け物を頼まれたのでお渡しします。どうぞ!」

 箱を手渡される。

「だれからですか?」

「ふふふ、さてだれでしょう? ではわたしは研究所に戻ります。それでは!」

 助手は去って行ってしまった。ひとまず、アクタはニビシティのポケモンセンターまで戻り、ベンチで箱を開けた。

 まず、手紙が目に入った。

 

 

 アクタへ

 結局、家に帰らず旅立ってしまったのね。ちょっと寂しいけど、旅を楽しみにしてたんだもんね。我慢します。

 旅をするって大変なことなのよ。良いひとはたくさんいるけど、悪いひとだっているもの。どうか、無事に帰ってきてくれることを祈っています。

 なんだかんだでがんばり屋さんのアクタに、ランニングシューズをプレゼントするわ!

 応援しているわよ。

 ママより

 

 

 箱の中の包みには、黒地に赤いラインが入った、じつに歩きやすそうな靴が入っていた。アクタは新しい靴、ランニングシューズに履き替える。

「お礼の電話しなきゃな」

 オツキミ山だって、どんな場所だって、走り抜けられそうな気がした。

 




フシギダネ
 れいせいな性格
 日向で昼寝をする姿を見かける。太陽に光をいっぱい浴びることで、背中のタネが大きく育つのだ。
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