ポケットモンスターNAVY ~暴投モンスターボール~ 作:サンダーゴリラ
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ここはニビシティ。
ニビは灰色、石の街。
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ニビ科学博物館。入場料の50円を払い、「宇宙博覧会」と称される展示物を楽しんだ。アクタにとっては、月の石やスペースシャトルの模型よりも、ポケモンのカセキがおもしろかった。
「いいなあ、プテラとカブトプス」
もちろん、アクタが求めているのは実物のほうだ。
博物館を後にして、フレンドリィショップでアイテムや生活用品を買いそろえる。名物の「ニビあられ」もおやつに買った。
「さてと」
この街を訪れた理由は、観光や買い物、宿泊だけではない。もっとも重要な用が残っている。
そういうわけで少年は、ニビポケモンジムの門を叩いた。
「おっす! ポケモンチャンピオンを目指してみないか?」
いきなり眼鏡の男性に声をかけられた。予想外の洗礼に、少年はたじろぐ。
「あ、あなたは? ジムトレーナーさん?」
「いや、おれはトレーナーじゃない。しかし、勝つためにばっちりアドバイスできるぜ!」
「はあ」
「きみの名前は!?」
「アクタっていいます」
「な、アクタ。一緒にポケモンチャンピオンを目指そうぜ。いろいろ教えてやるからさ!」
ポケモンチャンピオン。すなわち、ポケモンリーグの覇者。それは、アクタが掲げるにはあまりにも大それた目標であったが──
「んーと、ぼくは初心者なんで、アドバイスとかいただけるんなら、ありがたいです」
「よっしゃーっ! じゃ、さっそく……!」
受付に引っ張られて行った。
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「トレーナーカードを出せ。バッジはゼロ、つまり一回目のチャレンジだな!? ジムでのバトルは公式試合として扱われる。野良試合とは違って、細かいルールがあるから、そこんところは気をつけろよ!」
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「まず、バトルで使えるポケモンは最大で6匹。使える技は4つだ。7体目を出したり、申請している以外の技を出したら、その時点で失格だからな! ──なんだ、フシギダネ1匹でいいのか? タイプ相性は有利だろうが、油断するなよ!」
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「挑戦者側は道具の使用に制限はない。でも、認可されてる道具しか使っちゃダメだぜ。たとえば、市販されていないドーピング剤や、ポケモンに関係のない道具も持ち込んじゃダメだ。一応、使用可能なアイテムの一覧があるから、チェックしておけ!」
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「トレーナーカードの履歴から……うん、ポケモンセンターにはちゃんと通っているな。ポケモンセンターではポケモンの回復のほかにも、簡単な健康診断や、悪いウイルスを持っていないかチェックされるからな。ジム戦の直前に行っておけば安心だろう!」
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「きょうのスケジュールだと、すぐにでもチャレンジが開始できるな。20分もせずに呼ばれるだろうから、控室で待っていろ。──ああ、ジム側にも準備ってものがあるからな。挑戦者がいくつバッジを持っているかで、ジムトレーナーのレベルや、ジムリーダーが使うポケモンも変えるんだ。挑戦者全員に本気の戦力でかかってしまったら、だれもバッジなんてゲットできないからな! はっはっは!」
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「ほかに質問はあるか?」
「結局、あなただれなんですか?」
「さあ控室に行け!」
眼鏡の男は、たしかにいろいろと詳しく教えてくれた。だが実際の手続きを行う受付の者はべつにいて、その受付も、男の存在には慣れているようだった。
こういったガイドは、どのジムにもいるのだろうか。
──なんて「不思議だなあ」と考えているうちに、控室の扉がノックされた。
緊張する暇もなく、アクタにとって最初のジムチャレンジが始まる。
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「待ちなー! 子どもがなんの用だ!」
最初の関門は、ジムトレーナー戦であった。
各ポケモンジムに配置された、修行中のトレーナーだ。ジムリーダーとの戦いの前に、挑戦者の実力を測るのが役割である。
「タケシさんに挑戦なんて、10000光年早いんだよ!」
「光年?」
ともあれ、キャンプボーイの少年はイシツブテを繰り出す。球状の岩石の身体に、左右の腕を伸ばした、いわとじめんタイプのポケモンだ。
アクタは手元でフシギダネを放つ。ジムリーダーに挑戦するには、最低限、彼らジムトレーナーを退けなければならない。
「──“つるのムチ”!」
イシツブテ、そして続くサンドも、効果抜群のくさタイプの技で撃退した。
「しまった! 10000光年は……時間じゃない! ……距離だ!」
「あ、やっぱりそうですよね」
タイプの相性は重要である。くさタイプのフシギダネは、いわ・じめんタイプのイシツブテには四倍ものダメージを出すことができる。
だからといって、油断できない。
これから戦う相手は、ジムリーダー。ジムバッジの数に応じて、挑戦者にレベルを合わせてくれると言っても、トレーナー自身はプロ中のプロなのだ。
「来たな!」
体格の良い細目の男が、アクタを迎えた。
「おれはニビポケモンジムリーダーのタケシ!」
「はい。あ、ぼくはアクタです」
目の前には、岩に囲まれた広いバトルフィールド。白線で描かれた中央の円は、「公式試合」であることを強調するようだ。
「おれの固い意志はおれのポケモンにも表れる! 硬くて我慢強い! そう、使うのはいわタイプばっかりだ!」
各地のジムでは、主にひとつのタイプをテーマされている。このニビジムでは、いわタイプなのだ。
「岩ポケモンは優れた防御力が特徴だ。生半可な攻撃じゃ、びくともしないぞ! それでも覚悟はいいか!?」
「は、はい! よろしくお願いします!」
ここにきて、緊張が高まる。アクタはモンスターボールを握りしめる。
「ふはは! 負けると分かってて戦うか! ポケモントレーナーの性だな。いいだろう、かかってこい!」
ジムリーダーのタケシはイシツブテを繰り出した。
アクタはモンスターボールを投げる。投げてしまった。
ボールは岩々にバウンドして、しかし幸いにも、フシギダネはバトルフィールドに着地した。
「お、おい、緊張してるか? 大丈夫か?」
心配されてしまった。
「すいません、大丈夫です! フシギダネ、ごめん!」
フシギダネは慣れているので、「問題ない」と言わんばかりに鳴いて、イシツブテに向き直った。
審判の合図とともに、試合が開始される。
「さあイシツブテ、“まるくなる”!」
「フシギダネ、“つるのムチ”!」
草の蔓がイシツブテを打ち据える。絶大なダメージが入ったが、戦闘不能とまではいかない。
「あらかじめ防御を上げておいたからな。相性が悪いとはいえ、一矢報いらせてもらうぞ! “たいあたり”!」
イシツブテの突撃を喰らう。
「もう一回、“つるのムチ”!」
二発目の攻撃で、ようやくイシツブテは沈んだ。“たいあたり”のダメージは大したものではないが、くさタイプの技一発で倒せなかったことは、アクタにとって意外だった。
「やっぱりジムリーダーって、すごいんですね」
「くさタイプで挑めば楽勝、とでも思ったか? 相性の有利不利を覆すのも、ポケモン勝負の醍醐味さ。──さあ、イワーク! お前の力を見せてやれ!」
岩石を数珠繋ぎにした胴体は、さながら岩蛇。巨大な影に、アクタとフシギダネはたじろいだ。
「つ、“つるのムチ”!」
先ほどのように防御力を上げられる前に、先手を取れた。が、一発目は耐えられてしまった。
「“がんせきふうじ”!」
岩石が襲い掛かり、フシギダネの動きを封じる。
「続けて“しめつける”!」
イワークの尾が伸びて、フシギダネに巻きついた。岩石による絞めつけがフシギダネを傷つける。
「フシギダネ! ──いや、大丈夫だよな!」
アクタは不安を振り払う。
「きみなら大丈夫! あと一発、全力で“つるのムチ”だ!」
フシギダネはどうにか、蔓を伸ばす。そして自らを絞めつけるイワークに、叩きつけた。
「──お見事」
タケシが呟くと同時に、イワークは崩れ落ちた。審判の旗がアクタに上がる。
「きみを見くびっていたようだ。ぼくに勝った証にポケモンリーグ公認、グレーバッジを授けよう!」
「え? あ、そうか、勝ったんだ!」
アクタはフシギダネに駆け寄る。
「やったねフシギダネ! ありがとう!」
息を切らすフシギダネだが、それでも嬉しそうに応えた。「おつかれさま」と彼をボールに戻す。
「よく戦ったね。さあ、グレーバッジだ」
タケシの手から渡されたのは、灰色に輝く八角形のバッジだった。
「タイプ相性が良かったので……」
「ははは、謙遜することはない。きみは愛情を持ってポケモンを育てているようだね。フシギダネが伸び伸びと戦っていたから、よくわかったよ」
「いやあ、えへへ」
アクタは照れた。たしかに、初めてであり、唯一のポケモンであるフシギダネには深い愛情を注いでいる。それが正解だと褒められたのが嬉しかった。
「旅を始めたのは最近だろう? この広い世界では、いろんな奴がポケモンで戦いを繰り広げている! たくさんバトルをして学ぶと良い。きみにはポケモントレーナーの才能があるようだ!」
「ありがとうございます、タケシさん。がんばります!」
「つぎに行くジムは決まっているのか?」
「まだです。トキワジムは休業中だったし……」
「じゃあ、ハナダはどうだ? オツキミ山の向こうにあるんだ。山を越えるのもそれなりに大変だろうが、きみの力を試してみるといい」
「ハナダシティかあ。はい、そうします」
「……ところで」
タケシは悩まし気に腕を組んだ。
「最初の挨拶では、『意志』と『石』をかけたんだけど、気づいたかな?」
「あー……いや、ぜんぜん」
ジムリーダーも大変なのだな、とすこし同情した。
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「さすがだな! この調子で目指せ、ポケモンチャンピオン!」
ニビジムを後にする際、眼鏡の男に背中を押された。どういうひとだったのだろう、と首を傾げつつも、応援には礼を言った。
ポケモンセンターで休んだ後、さっそくハナダシティを目指すことにする。ニビシティの東、オツキミ山へとつながる3番道路へ踏み出そうとしたとき。
「あ! アクタくん」
ある男性に声をかけられた。
「あ、研究所の……」
「間に合って良かった……はい、オーキド博士の助手です」
オーキド研究所で何度か顔を合わせたことがある。よく仕事であちこちを飛び回っている、忙しい男である。
「お仕事ですか?」
「ええ、博物館に用事がありまして。そのついでですけど、きみにお届け物を頼まれたのでお渡しします。どうぞ!」
箱を手渡される。
「だれからですか?」
「ふふふ、さてだれでしょう? ではわたしは研究所に戻ります。それでは!」
助手は去って行ってしまった。ひとまず、アクタはニビシティのポケモンセンターまで戻り、ベンチで箱を開けた。
まず、手紙が目に入った。
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アクタへ
結局、家に帰らず旅立ってしまったのね。ちょっと寂しいけど、旅を楽しみにしてたんだもんね。我慢します。
旅をするって大変なことなのよ。良いひとはたくさんいるけど、悪いひとだっているもの。どうか、無事に帰ってきてくれることを祈っています。
なんだかんだでがんばり屋さんのアクタに、ランニングシューズをプレゼントするわ!
応援しているわよ。
ママより
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箱の中の包みには、黒地に赤いラインが入った、じつに歩きやすそうな靴が入っていた。アクタは新しい靴、ランニングシューズに履き替える。
「お礼の電話しなきゃな」
オツキミ山だって、どんな場所だって、走り抜けられそうな気がした。
フシギダネ
れいせいな性格
日向で昼寝をする姿を見かける。太陽に光をいっぱい浴びることで、背中のタネが大きく育つのだ。