ポケットモンスターNAVY ~暴投モンスターボール~   作:サンダーゴリラ

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レポート17 トバリシティ/きみを支える大地になる

 ポケモンセンターで手持ちの体力を回復させて、トバリシティの北に位置する倉庫前を訪れる。

 何棟か立ち並ぶ大型倉庫。これらはぜんぶギンガ団の持つ建物らしい。ハクタイシティのように、このトバリシティにもギンガ団の所有するビルがある。そこが本社だそうだ。

「アクタくん、こっち!」

 ヒカリと合流する。

「えっと、コトブキでナナカマド博士から研究成果を奪おうとした、ギンガ団のこと憶えてる?」

「コトブキで会ったひとたち、本人? ギンガ団のひとってみんなおなじ格好してるから、見分けがつかなくって」

「たしかにそうだけど……あたしはまだ、そんなにたくさんのギンガ団員に会ってないから」

 ソノオの発電所。ギンガハクタイビル。いずれの場所で何人ものギンガ団と戦ったアクタは、もはや下っ端の区別がつかなくなってしまった。

「そのひとたちにさっき出会っちゃって、大事なポケモン図鑑、盗られちゃったの! お願い! 一緒に戦って!」

「うん」

 即諾した。

 ヒカリの導きで、倉庫の前に立つギンガ団員ふたりのもとへ。

「あのひとたち?」

 ヒカリは頷く。

 ギンガ団たちは少年少女に気づくと、

「なんだお前たちは!」

 と詰め寄ってくる。

 アクタは、そんな団員たちに一切ひるまず、むしろ一歩踏み出して詰め寄った。

「やい」

 ヒカリは、いつもは温厚なアクタの強い口調に、ぞっとした。

「いい加減にしろよ、あんたたちは」

 アクタは怒っていた。

「いっつもいっつも、ポケモンやひと様に迷惑かけて。なにかしら事情とか理由とかあるんだろうけど、もう辛抱ならない。ヒカリさんから奪ったポケモン図鑑をいますぐに返してください」

「……ほんとうになんなんだ、お前は……?」

 ギンガ団員ふたりは気圧されていた。

「話してわかんないなら、ポケモン勝負で決めさせてもらっていいですか。ヒカリさん、いいよね? 手っ取り早く、ダブルバトルで」

 急に話を振られてヒカリは驚いたが、

「……うん」

 頷いた。「一緒に戦って」と頼んだのはヒカリだ。それに、被害者としてポケモン図鑑を奪われたのもヒカリだ。覚悟を決めなければ。

「アクタくんとアクタくんのポケモン! あたしとあたしのポケモン! みんなの力を合わせたドリームチームなら負けるわけなし!」

「そうだそうだ!」

「ひとの困ることするなんて、あたし、許さないから!」

 ふたりはボールを投げる。アクタのボールだけが、後ろのほうに飛んで行った。

「ちょっと!」

「ご、ごめん……」

 ボールから出てきたズガイドスは、アクタを頭で押した。

 

 

「ポッタイシ、“バブルこうせん”!」

 ヒカリのポッタイシがダメージを調整した上で、

「ハヤシガメ、“はっぱカッター”!」

 ハヤシガメ2体同時攻撃により、相手のスカンプーとグレッグルは戦闘不能となった。

「ちくしょう! 弱いポケモンだぜ! アジトに戻って新しいの貰ってくるか」

 負けたギンガ団員の物言いに、アクタはむっとする。また詰め寄りそうになったが、アクタの前にはいつの間にか、ハヤシガメがのっそりと戻っていた。

 まるで少年をなだめるように。

「へん! こんなポケモン図鑑、どうでもいいんだよ! ギンガ団はすべてのポケモン、いや、世界を、宇宙を独り占めするんだからな! ほらよ! ポケモン図鑑だ!」

 ヒカリは、放り投げられたポケモン図鑑を受け止める。

「こらー! 投げるな!」

 バトルの直後であるせいか、ヒカリは感情が昂っていた。

「倉庫にしまっていた例のブツは、もうノモセに運んだしな……ここはあえて下っ端らしく、『おぼえてろ!』と言ってやる!」

「おぼえてろ!」と言い残し、ふたりのギンガ団員は逃げ去って行った。

「例のブツ……?」

「なんなの! っていうかなんでギンガ団が堂々と街中にいるの!?」

 憤慨するヒカリ。アクタが「落ち着いて」となだめようとしたところ、彼女はこんどはアクタのほうに向きなおった。まさか怒りの矛先が自分に向いたのかと身構えたが、

「アクタくん、ありがとうね。ポケモン図鑑、盗られたままだと、ナナカマド博士の研究を手伝えなくて大変だったもの」

 とりあえず冷静になってくれていた。

 アクタはすこし引きつつ、「そうだね」と頷いた。

 そこに、くすんだ色のコートの男が現れる。ハンサムだ。

「倉庫の前で、子どもとギンガ団が揉めていると聞いて来たら、きみたちか」

「あっ……コトブキの変なひと」

 ヒカリからしてみれば、そんな印象なのか。

 まあ、アクタもハンサムのことを、わりと「変なひと」と思っているが。

「きみは果てしなく失礼なことを言うんだな」

 ハンサムはすこし傷ついたようだ。

「ごめんなさい。ギンガ団に大事なポケモン図鑑を奪われて、イライラしてて、ついうっかり……」

 ヒカリは苦笑し、アクタとハンサムの顔を見合わせる。

「それじゃ、あたし行くところあるし……ふたりともギンガ団に気をつけてね」

 そう言い残して去ってしまった。

「お、おい、ちょっと……行ってしまったよ。物を盗られたのなら、話を聞かせてもらわなきゃならんのに」

「ちゃんと取り返しましたよ。ね」

 ハヤシガメを撫でる。やがて手を噛まれた。

「痛たたたた」

「……まあいいさ。それにしても」

 咳払いをするハンサム。

「きみたち子どもの持ち物を奪おうとするだなんて、ギンガ団の悪事は小さいな。まあそれがかえって不気味でもあるんだがな」

 それからハンサムは、倉庫を調べに行ってしまった。アクタはハヤシガメの隣に座り込み、休むことにした。

「おつかれさま。さっきはありがとう。ヒカリさんほどじゃなくても、ぼく、キレちゃってたよね」

 ハヤシガメは短く鳴く。

「大丈夫なのかな。このまま戦いを続けて」

 それはさながら、自問自答。

「ああいう悪いひとたちの相手をしているうちに、恐怖とかの感情が、ちょっとずつ薄れていってる気がするんだ。すくなくともカントー地方のときよりは。だから、この調子で戦っていたら、いつかきみたちのことを傷つけることになるんじゃないかって……」

 ハヤシガメは特に返事もなく、ぐんと伸びをする。

「危険なことしてるって、わかってる。だけど困ってるひとやポケモンのことは見過ごせないし……一体、どこが潮時なんだろう」

 その身体が震えた。ようやく、アクタはハヤシガメの異変に気づく。

「ハヤシガメ……?」

 その身体が光に包まれる。甲羅はまるで大地。そこに生える樹木は、しっかりと根の張ったものだった。

 ドダイトスへの進化であった。

 巨体は太陽を見上げて、その身を震わせる。

「す、すごい……!」

 アクタは感動し、その巨大な甲羅を撫でる。

「おーい、戻ったぞー……ってうおおお!?」

 倉庫から帰って来たハンサムが驚嘆の声を上げる。

「そうか、進化か! いやーなにより! たくましくなったものだ!」

 ドダイトスに手を伸ばそうとするハンサムだったが、ハヤシガメのときにアクタが噛まれていたことを思い出し、引っ込めた。

「ええと、倉庫だがね。重要な保管物を調べるには、カギが必要らしい。さっき逃げた連中を追いかけるのは、いまのところ諦めるしかないな。つまり大したことはわからなかったが……それよりもゲームコーナーで聞いた話が気になるな」

「どうでしたか? スロット」

「負け越しだ。……いや、そんなことはどうでもいい! なんでもギンガ団は……ノモセシティになにかを運んだらしい」

 意外にも、ゲームコーナーでの情報収集はちゃんと行っていたらしい。

「そういえばさっきのギンガ団たち、去り際に『例のブツ』がどうとか言っていました。たしか、ノモセに運んだ、とも言ってたような」

「ふーむ……なにをするつもりかわからないが、ちょっとイヤな感じだな」

「ノモセシティ、近いですよね。ジムもあるからすぐに行くと思いますんで、ぼくもそれとなく調べておきますね」

「いいのか?」

 ハンサムは不思議そうに首を傾げる。

「もう、手を引いてくれていいんだぞ。ジムバッジ集めに注力すればいいじゃないか。協力はありがたいが、やはりギンガ団を相手にするとなると危険が伴う」

「心配、ありがとうございます。でもいまさら知らんぷりもないでしょう」

 アクタはドダイトスをモンスターボールに戻す。

「きっと、潮時はいまじゃない」

 

 

「ねえきみ! さっき、ギンガ団と戦ってたトレーナーさんだよね?」

 ハンサムと別れたあと、とりあえずポケモンセンターで休もうかと考えていると、ある老人に話しかけられた。

「えっと、はい、そうです」

「すこしだけ戦いを見たけど、すごくバトルが強いんだね。それにきみはポケモンへの思いやりもあるようだ」

 アクタは「はあ」とすこし照れた。

「あのね。そんなきみに、面倒を見てほしいポケモンがいるわけさ」

 ぱっとアクタの目が輝く。

「ポリゴンってポケモンだけど、ギンガ団のビルの近くで見つけちゃったんだよね……よかったら引き取ってもらえるかな?」

「よろこんで!」

 即諾した。

「おお! ありがとう。きっとポリゴンも喜ぶはずさ。そのポリゴン、もしかしたらギンガ団から逃げてきたのかもしれないしさ」

 老人はモンスターボールから、角ばった多面体のパーツで構成された、無機質なポケモンを出した。ポリゴン。カントー地方にもいたのでアクタも知っている。

 コンピュータ技術で造られた、人工のポケモンらしい。

 ポケモンを「造る」ことができるなんて眉唾物の話だが、とにかく生命としては成立しているようだ。ポリゴンは頭部、足、尾のパーツを動かし、目に当たる部位をアクタに向ける。

「ポリゴン、よろしく」

 アクタは微笑みかける。

 ポリゴンは特に反応はない。

「……うん、がんばってみます。とにかく大切に育てますので」

「ありがとう。ギンガ団にひどい目に遭わされているポケモンはたくさんいるそうだ。すこしでも多くのポケモンは救われるといいのだが……」

 その後、ポケモンセンターでもポリゴンのことを診察してもらう。異常はなし。無事、5体目の仲間としてアクタの手持ちに加わった。

「5体かあ……!」

 自分でモンスターボールを投げて捕まえる……という実績はいまだ果たせていない。それでも揃っていく手持ちに、感慨深さを覚えた。

「5体もいれば、もう負ける気しないなあ。ふふふ、バッジも残り半分。よーし、このメンバーでどんどん強くなろうね」

 嬉しさのあまり気持ち悪く笑うアクタ。それでもポリゴンは無反応だった。




ドダイトス ♂
 のんきな性格

トゲチック ♀
 むじゃきな性格

ズガイドス ♂
 やんちゃな性格

イーブイ ♀
 なまいきな性格

ポリゴン
 ひかえめな性格
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