ポケットモンスターNAVY ~暴投モンスターボール~ 作:サンダーゴリラ
トバリシティから南下し、214番道路へ。長い草が生い茂ったこの道路には多くのポケモントレーナーがいて、バトルの修行には事欠かなかった。
「ドダイトス、“じしん”!」
新たな姿、新たな技を得たドダイトスは強力だった。
「ポリゴン、“サイケこうせん”!」
新たな仲間であるポリゴンは、アクタの指示に忠実である。
そして──
「──よし、ラムパルド。おつかれさま」
アクタを越える体躯に、鋭いトゲに鋭い目つきを持つ、ラムパルド。野生ポケモンを打ち倒し、主人のもとに戻ってきた。
ズガイドスが進化したのだ。ラムパルドはアクタに頭頂部を差し出す。少年が両手で頭頂部を撫でると、ラムパルドはそのまま頭部を押し付け、転ばせてきた。
「あはは、もう」
そのまま南へ進み、『リッシ湖のほとり』という区画に。
「うーん、こんどでいいや。先を急ごう」
その東には、ナギサシティという街に続く道があるのだが、なんでもナギサシティでは大きな停電があったそうで、道路も封鎖されていた。
「うーん、こんどでいいや。先を急ごう」
ホテルグランドレイクという、高級ホテル。宿泊施設以外の立ち入りは自由なので、雰囲気だけでも見て回ったが、アクタにはどうも不釣り合いな世界だ。ただでさえ、トバリシティやゲームで散財しているのに。
ダメ元で、フロントに部屋が取れるか聞いてみたところ、宿代以前に施設が満室のため、泊まることはできなかった。
「うーん、こんどでいいや。先を急ごう」
その夜は213番道路で野宿した。
ポケモンたちと一緒に寝たので、アクタは幸せだった。
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ここはノモセシティ。
大湿原と生きる街。
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ノモセジムの前を通りかかったところで、
「おっと!!」
走ってきたジュンとぶつか──らなかった。
彼はアクタに接触する寸前で、急ブレーキをかけて停止したのだ。
「ヘヘヘ! いつもぶつかってばかりじゃないぜ!」
「わざとじゃなかったんだ……」
成長しているようで、なによりである。
「さあアクタ! ポケモン鍛えてるか! お前とポケモン、どれぐらい強くなったかオレがたしかめてやるぜ!」
「バトル? そういうのは相変わらず、急だなあ。いいよ、やろう」
というわけで広場で始まるバトル。
ジュンの手持ちは、以前209番道路で戦ったときと変わりなかった。
対してアクタのほうは。
「ラムパルド、“げんしのちから”」
「トゲチック、“マジカルリーフ”」
「イーブイ、“でんこうせっか”」
「ドダイトス、“じしん”」
「ポリゴン、“サイケこうせん”」
いくつのパワーアップがあった。なにげに手持ちの数もアクタが1体だけ多い。
「……まっ、ちょっとは強くなってるかもな。そこんとこに驚いて、うっかり負けてしまったぜ……」
どうにか負け惜しみを絞り出すジュン。
「ジュンくん、トバリシティのジムに行ってないんじゃない?」
「呼び捨てにしろっての。──トバリならまだ行ってないけど……なんかこう、ズイタウンの先で迷っちゃってさあ。カンナギとかいう町まで遠回りしちゃって。どうにかこうにか、ノモセまでたどり着いてジムにチャレンジしたぜ」
「へえ。大冒険だったんだね」
「そうだ! オレ、マキシさんに弟子入りしたぜ! だってオレも自分だけのテーマソングほしいからさ!」
マキシさんという名前には、聞き覚えがあるようなないような。
「ここのジムリーダーだよ」
「……マキシマム仮面、マキシさんっていう名前なんだ」
あの覆面レスラーのパーソナリティが見えてしまったことで、すこしアクタは落胆した。
:
ノモセジムにて、またもや眼鏡の男が案内をしてくれる。
「ここのジムリーダー、マキシさん……いやマキシマム仮面はみずタイプの使い手! みずタイプのポケモンに、ほのおやじめんタイプで戦いのはいい度胸と言えるだろうな!」
「大丈夫です、ぼくにはほのおタイプもじめんタイプも……おっと」
アクタは腰のモンスターボールに目線を落とす。そういえば、ドダイトスにはじめんタイプが追加されたのだ。失念しないようにしないと。
「じゃあいいファイト、よろしくな!」
ノモセジムは巨大なプールに囲まれている。
「もし手持ちにみずポケモンがいたら、ここで遊ばせてあげたいなあ」
などと呑気に呟きながらも、ジムトレーナーのみずタイプポケモンの猛攻をかいくぐり、プールの水位を操作する仕掛けを解き──マキシマム仮面のもとにたどり着いた。
「よぉーく来たッ!! おれさまこそがノモセシティ、ポケモンジムのジムリーダーでぇ、その名もマキシマム仮面!」
たくましい筋肉を持つ覆面レスラー、マキシマム仮面。アクタは「歌ってくれないかな」と期待したが、
「水の力で鍛えたおれさまのポケモンはぁ! お前の攻撃を全部受け止めた上で勝利するから、かかってこぉい!」
いまは歌ってくれないようだ。
「はい……」
「なんでがっかりしてるんだぁ!?」
「いえ、べつに……」
アクタとマキシは、モンスターボールを手にする。
「行けぇッ! ギャラドス!」
マキシの最初のポケモンは、龍のように空を舞う青い鱗のポケモン、ギャラドス。
「わあ! ギャラドスだあ!」
アクタのテンションが急に上がる。
「なんだか嬉しそうだな?」
「はい! ギャラドス好きなんです! ──おっと、それじゃこっちは……」
アクタが投げたモンスターボールは、背後のプールに落ちた。
「やべっ」
プールから浮かび上がってくる、ポリゴン。アクタはその角ばったポケモンを引き上げて、バトルフィールドに戻る。
マキシは目をぱちくりさせていた。なにが起きたのかわかっていないようだ。
「すいません、ぼくちょっと、ボール投げるの下手で……」
「う、うむ、そうか! 下手とかそういう次元じゃなかったような気もするが……とにかく始めよう!」
合図によってバトルが始まる。最初に動いたのはアクタだ。
「ポリゴン、“テクスチャー”!」
自分のタイプを変える珍しい技だ。これにより、ポリゴンはエスパーになる。
「そして“サイケこうせん”!」
エスパータイプの技。つまりタイプが一致した“サイケこうせん”は、効果抜群ではないにしても、ギャラドスに十分なダメージを与える。
「ほほお! これはなかなかのテクニシャン! だがタイプを変えたことが仇になったな!」
顎を開ける。ギャラドス。
「あ」
アクタは自らの失策に気づいた。
「“かみつく”!」
あくタイプのその技は、エスパータイプに効果抜群だ。ポリゴンは手痛いダメージを受ける。一撃で『ひんし』になることは避けたが──
「くっ……! “じこさいせい”!」
ギャラドスがどんな技を使えるか、想像できたはずだ。テンションが上がって考えが足りなかった。
「……ポリゴンごめん、交代!」
このまま続けてもポリゴンを苦しめるだけだ。代わりにトゲチックを出す。
「“げんしのちから”!」
ギャラドスはひこうタイプを持っている。いわタイプの攻撃は効果抜群だ。ギャラドスの巨体は沈み、戦闘不能になった。
「おお、持ち直したな! 目を見ればわかる。ちょこーっと慌てたが、すぐに冷静になった! 若いくせに場数を踏んでいるようだなあ!」
「ど、どうも……」
鋭いな。アクタは苦笑して、トゲチックをボールに戻す。
「さあ、仕切り直しだ。とことんまでやろうや」
2つ目のモンスターボールを手にするマキシは、あまりにも格好いい。アクタは「やっぱり歌ってほしいな」なんて思いながら、モンスターボールを投げた。
ボールは上空に打ち上がり、重量級のドダイトスは、フィールドを震撼させながら登場した。
「ほんとうにボール投げるの下手なんだな!」
マキシが繰り出したのは、ヌオー。みず、じめんタイプのポケモンだ。
「勝った」──と確信したアクタが、すぐにドダイトスへ指示を飛ばす。
「“はっぱカッター”!」
ドダイトスも、ヌオーも、どこかのんびりとした挙動のポケモンだったが、のんびりながらも適切なリズムで動いていた。
そして今回に至っては、ドダイトスは比較的早いリズムで指示を受け取り、早いリズムで技を発動した。
みずとじめんタイプに対し、くさタイプは4倍ものダメージを見込める。“はっぱカッター”も例外ではない。緑の刃は適切にヌオーを切り裂き、戦闘不能にした。
「いまの! 良い攻撃だったな!」
2匹目を倒されたというのに、マキシマム仮面は快活に笑う。
「だがまだまだ! これから盛り上がるところ! フローゼル!」
ブイゼルの進化系、オレンジの毛並みを持つ海イタチポケモン。首には浮袋のような器官がある。
アクタはフローゼルに対し、くさタイプの“はっぱカッター”を選択しようとしたが、素早さに関しては相手のほうが上だった。フローゼルが繰り出したのは──
「“こおりのキバ”!」
アクタが危機感を覚えたのは、すでに技を喰らった後だった。
ドダイトスの巨体が倒れ、『ひんし』になる。
「……そうか。こおりタイプの技は」
くさとじめんタイプを持つドダイトスに、4倍もの効果を持つ。
先ほど、みず・じめんタイプのヌオーにくさタイプの技が絶大な効果を出したものとおなじだ。タイプを2つ持つポケモンは、弱点さえも2つ持つ可能性を持っている。共通する弱点ならば、すなわち4倍。
「そうか、こおりタイプ……対策としてはこれ以上ないですもんね。しまった。きょうはほんとうに迂闊だ」
倒れたドダイトスをボールに戻し、迷いあぐねた結果、トゲチックを再度呼び出した。
「さあ勝負だ! マキシマム仮面!」
まるでプロレス。声高に向かってくる少年たちに。
「うわはははは! かかってこい!」
当然ながらマキシマム仮面は応えるのだった、
「トゲチック、“マジカルリーフ”!」
「フローゼル、“こおりのキバ”!」
どちらも互いに効果抜群の技だ。その差を生み出したのは、素早さか、技の威力か、はたまた「気持ち」という曖昧なものか。
しかしバトルの結果ははっきりとしている。
最後まで立っていたのは──空を飛んでいたのは、アクタのトゲチックだった。
「おわっ! 終わっちまったか! なんというか、もっともっと戦いたかった。そんな気分だ!」
戦闘不能になったフローゼル。バトルに敗北したというのに、マキシは呵々大笑した。
「まぁ結果はこのとおりだが、お前と戦えてものすごぉく楽しかった! なのでこれを渡そう!」
ノモセジムのバッジ、フェンバッジを受け取る。
「こちらこそ、楽しかったです。ありがとうございます、マキシ……マム仮面さん」
少年は気を遣った。
なんとなく、名前で呼ぶのは失礼な気がしたのだ。それにアクタ自身、マキシマム仮面というレスラーのことが気に入っている。
「うむ! 楽しかったのならば大いに結構! どんな戦い方でどんなふうに勝つかはトレーナーそれぞれだぁ! そのなかでおれさまはぁ、勝ったほうも負けたほうも、『楽しかった!』──そう言えるポケモン勝負をしたい!」
アクタは、マキシの器の大きさを改めて感じた。相手も自分も『楽しかった』というバトルは理想形だ。だが同時に「理想論」でもある。
「それってすごく、ステキなことですね」
そんな「理想論」を臆面もなく言ってくれるマキシに、アクタは頼もしさを覚えた。マスクで素顔すらわからぬ男だが、きっと信頼できる御仁だ。
「ジュンくんのこと、よろしくお願いします。弟子に取ってくれたんですよね」
しかしマキシは、その覆面を首ごと横に傾けた。
「弟子……? あのジュンとかいう坊主が? 弟子入りを許した覚えはないぞ。あいつがどう言っているかは知らんが」
ジュンが勝手に言っているだけらしい。アクタは「なるほど」と納得した。
:
「おお、アクタ! ジムリーダーに勝ったのか!」
ジムを出る際、眼鏡の男が見送ってくれる。
「どうだマキシさん……いや、マキシマム仮面とのポケモン勝負は楽しかったか?」
「はい、とっても」
「勝ち負けは当然大事だが、楽しむ心も忘れるなよ! マキシさん……いや、マキシマム仮面はそのことを教えてくれたと思うぜ!」
「……結局あのひと、ジムリーダーとしての名義はなんなんですか?」
「ん? あー。それは『マキシ』さんだけど。『マキシマム仮面』っていうのは、プロレスのリングネームだ」
「…………またつぎのジムで会いましょう」
ジムを出たところで。
「おっ! ジムバッジ貰えたか!」
ジュンがやってきた。
「ジュンくん」
「だから呼び捨てでいいって! それで、どうだ! マキシさん、いやオレの師匠すごいだろ」
「それなんだけどさあ」
「騒がしいと思ったら、お前たちか」
弟子入りできてないじゃん、と指摘しようとしたところで、ノモセジムからマキシマム仮面が現れた。
「あっ、師匠!」
「師匠じゃねえよ」とアクタは思った。
「……たしかにお前の父親とは知り合いだがなあ。弟子入りを認めた覚えなんぞ。これっぽっちもないぞ」
「じゃあ、ぼくとかどうですか?」
ほんの好奇心で、アクタは場をかき乱そうとした。
ちょっと自分の歌が欲しくなったというのもあるが。
「ダメだダメだ。だいたい、お前たちなら弟子入りなんかしなくても、自分で強くなれるだろ!」
「いいんだよ。オレが勝手に弟子入りするんだからさ!」
すがすがしいまでに自分勝手なジュンに、アクタは尊敬さえ覚えてきた。
「それよりもさ、大変なんだよー!」
どうやらジュンは、弟子入りの件とはべつにマキシに用があってここに来たらしい。
「展望台ゲートの前にさ、ギンガ団がいてさ。『爆弾を使う!』とか言ってたぜ」
「なんだとお!! ノモセを荒らすやつはこのおれさまが許さんッ!!」
詳細を聞かないうちに、マキシは激昂して展望台の方向へ走って行ってしまった。なんとも豪快なひとだ。
「あっ! 師匠、待ってくれよー!!」
ジュンはマキシの後を追っていく。アクタは彼らに続こうと思ったが、その前にポケモンセンターに行くことにした。
:
ノモセ大湿原。
ノモセシティの北に位置する、ひとの手により管理されている広大な湿原だ。ここに生息する野生ポケモンは、サファリゲームという限定的な方法でのみ、捕獲が許されている。
もちろん、アクタはノモセシティに来てすぐに、この湿原のサファリゲームに挑戦した。そしてすぐに、配布されたサファリボールを使い切った。結果はゼロ匹だった。
そのノモセ大湿原の前。
「どう、似合ってる? それにしても、グレッグルいいよなー」
ジュンはグレッグルが描かれた顔出し看板から、のんきな顔を覗かせていた。
「いいなあ、代わってよ」
「おーい、お前たち!」
ノモセ大湿原の入り口にいたマキシがふたりを呼ぶ。子どもらしく遊んでいる場合じゃない。
「で、ギンガ団はどこ……」
そうマキシが言いかけたときだった。
轟音とともに、空気が振動した。
ドダイトス ♂
のんきな性格
トゲチック ♀
むじゃきな性格
ラムパルド ♂
やんちゃな性格
イーブイ ♀
なまいきな性格
ポリゴン
ひかえめな性格