ポケットモンスターNAVY ~暴投モンスターボール~   作:サンダーゴリラ

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レポート18 ノモセシティ/決闘!マキシマム仮面!

 トバリシティから南下し、214番道路へ。長い草が生い茂ったこの道路には多くのポケモントレーナーがいて、バトルの修行には事欠かなかった。

「ドダイトス、“じしん”!」

 新たな姿、新たな技を得たドダイトスは強力だった。

「ポリゴン、“サイケこうせん”!」

 新たな仲間であるポリゴンは、アクタの指示に忠実である。

 そして──

「──よし、ラムパルド。おつかれさま」

 アクタを越える体躯に、鋭いトゲに鋭い目つきを持つ、ラムパルド。野生ポケモンを打ち倒し、主人のもとに戻ってきた。

 ズガイドスが進化したのだ。ラムパルドはアクタに頭頂部を差し出す。少年が両手で頭頂部を撫でると、ラムパルドはそのまま頭部を押し付け、転ばせてきた。

「あはは、もう」

 そのまま南へ進み、『リッシ湖のほとり』という区画に。()()()というわりに、実際にリッシ湖を見ることは叶わなかった。どうもテレビの撮影らしく、カメラクルーで道が塞がれていたのだ。

「うーん、こんどでいいや。先を急ごう」

 その東には、ナギサシティという街に続く道があるのだが、なんでもナギサシティでは大きな停電があったそうで、道路も封鎖されていた。

「うーん、こんどでいいや。先を急ごう」

 ホテルグランドレイクという、高級ホテル。宿泊施設以外の立ち入りは自由なので、雰囲気だけでも見て回ったが、アクタにはどうも不釣り合いな世界だ。ただでさえ、トバリシティやゲームで散財しているのに。

 ダメ元で、フロントに部屋が取れるか聞いてみたところ、宿代以前に施設が満室のため、泊まることはできなかった。

「うーん、こんどでいいや。先を急ごう」

 その夜は213番道路で野宿した。

 ポケモンたちと一緒に寝たので、アクタは幸せだった。

 

 

────

 ここはノモセシティ。

 大湿原と生きる街。

────

 

 ノモセジムの前を通りかかったところで、

「おっと!!」

 走ってきたジュンとぶつか──らなかった。

 彼はアクタに接触する寸前で、急ブレーキをかけて停止したのだ。

「ヘヘヘ! いつもぶつかってばかりじゃないぜ!」

「わざとじゃなかったんだ……」

 成長しているようで、なによりである。

「さあアクタ! ポケモン鍛えてるか! お前とポケモン、どれぐらい強くなったかオレがたしかめてやるぜ!」

「バトル? そういうのは相変わらず、急だなあ。いいよ、やろう」

 というわけで広場で始まるバトル。

 ジュンの手持ちは、以前209番道路で戦ったときと変わりなかった。

 対してアクタのほうは。

「ラムパルド、“げんしのちから”」

「トゲチック、“マジカルリーフ”」

「イーブイ、“でんこうせっか”」

「ドダイトス、“じしん”」

「ポリゴン、“サイケこうせん”」

 いくつのパワーアップがあった。なにげに手持ちの数もアクタが1体だけ多い。

「……まっ、ちょっとは強くなってるかもな。そこんとこに驚いて、うっかり負けてしまったぜ……」

 どうにか負け惜しみを絞り出すジュン。

「ジュンくん、トバリシティのジムに行ってないんじゃない?」

「呼び捨てにしろっての。──トバリならまだ行ってないけど……なんかこう、ズイタウンの先で迷っちゃってさあ。カンナギとかいう町まで遠回りしちゃって。どうにかこうにか、ノモセまでたどり着いてジムにチャレンジしたぜ」

「へえ。大冒険だったんだね」

「そうだ! オレ、マキシさんに弟子入りしたぜ! だってオレも自分だけのテーマソングほしいからさ!」

 マキシさんという名前には、聞き覚えがあるようなないような。

「ここのジムリーダーだよ」

「……マキシマム仮面、マキシさんっていう名前なんだ」

 あの覆面レスラーのパーソナリティが見えてしまったことで、すこしアクタは落胆した。

 

 

 ノモセジムにて、またもや眼鏡の男が案内をしてくれる。

「ここのジムリーダー、マキシさん……いやマキシマム仮面はみずタイプの使い手! みずタイプのポケモンに、ほのおやじめんタイプで戦いのはいい度胸と言えるだろうな!」

「大丈夫です、ぼくにはほのおタイプもじめんタイプも……おっと」

 アクタは腰のモンスターボールに目線を落とす。そういえば、ドダイトスにはじめんタイプが追加されたのだ。失念しないようにしないと。

「じゃあいいファイト、よろしくな!」

 ノモセジムは巨大なプールに囲まれている。

「もし手持ちにみずポケモンがいたら、ここで遊ばせてあげたいなあ」

 などと呑気に呟きながらも、ジムトレーナーのみずタイプポケモンの猛攻をかいくぐり、プールの水位を操作する仕掛けを解き──マキシマム仮面のもとにたどり着いた。

「よぉーく来たッ!! おれさまこそがノモセシティ、ポケモンジムのジムリーダーでぇ、その名もマキシマム仮面!」

 たくましい筋肉を持つ覆面レスラー、マキシマム仮面。アクタは「歌ってくれないかな」と期待したが、

「水の力で鍛えたおれさまのポケモンはぁ! お前の攻撃を全部受け止めた上で勝利するから、かかってこぉい!」

 いまは歌ってくれないようだ。

「はい……」

「なんでがっかりしてるんだぁ!?」

「いえ、べつに……」

 アクタとマキシは、モンスターボールを手にする。

「行けぇッ! ギャラドス!」

 マキシの最初のポケモンは、龍のように空を舞う青い鱗のポケモン、ギャラドス。

「わあ! ギャラドスだあ!」

 アクタのテンションが急に上がる。

「なんだか嬉しそうだな?」

「はい! ギャラドス好きなんです! ──おっと、それじゃこっちは……」

 アクタが投げたモンスターボールは、背後のプールに落ちた。

「やべっ」

 プールから浮かび上がってくる、ポリゴン。アクタはその角ばったポケモンを引き上げて、バトルフィールドに戻る。

 マキシは目をぱちくりさせていた。なにが起きたのかわかっていないようだ。

「すいません、ぼくちょっと、ボール投げるの下手で……」

「う、うむ、そうか! 下手とかそういう次元じゃなかったような気もするが……とにかく始めよう!」

 合図によってバトルが始まる。最初に動いたのはアクタだ。

「ポリゴン、“テクスチャー”!」

 自分のタイプを変える珍しい技だ。これにより、ポリゴンはエスパーになる。

「そして“サイケこうせん”!」

 エスパータイプの技。つまりタイプが一致した“サイケこうせん”は、効果抜群ではないにしても、ギャラドスに十分なダメージを与える。

「ほほお! これはなかなかのテクニシャン! だがタイプを変えたことが仇になったな!」

 顎を開ける。ギャラドス。

「あ」

 アクタは自らの失策に気づいた。

「“かみつく”!」

 あくタイプのその技は、エスパータイプに効果抜群だ。ポリゴンは手痛いダメージを受ける。一撃で『ひんし』になることは避けたが──

「くっ……! “じこさいせい”!」

 ギャラドスがどんな技を使えるか、想像できたはずだ。テンションが上がって考えが足りなかった。

「……ポリゴンごめん、交代!」

 このまま続けてもポリゴンを苦しめるだけだ。代わりにトゲチックを出す。

「“げんしのちから”!」

 ギャラドスはひこうタイプを持っている。いわタイプの攻撃は効果抜群だ。ギャラドスの巨体は沈み、戦闘不能になった。

「おお、持ち直したな! 目を見ればわかる。ちょこーっと慌てたが、すぐに冷静になった! 若いくせに場数を踏んでいるようだなあ!」

「ど、どうも……」

 鋭いな。アクタは苦笑して、トゲチックをボールに戻す。

「さあ、仕切り直しだ。とことんまでやろうや」

 2つ目のモンスターボールを手にするマキシは、あまりにも格好いい。アクタは「やっぱり歌ってほしいな」なんて思いながら、モンスターボールを投げた。

 ボールは上空に打ち上がり、重量級のドダイトスは、フィールドを震撼させながら登場した。

「ほんとうにボール投げるの下手なんだな!」

 マキシが繰り出したのは、ヌオー。みず、じめんタイプのポケモンだ。

「勝った」──と確信したアクタが、すぐにドダイトスへ指示を飛ばす。

「“はっぱカッター”!」

 ドダイトスも、ヌオーも、どこかのんびりとした挙動のポケモンだったが、のんびりながらも適切なリズムで動いていた。

 そして今回に至っては、ドダイトスは比較的早いリズムで指示を受け取り、早いリズムで技を発動した。

 みずとじめんタイプに対し、くさタイプは4倍ものダメージを見込める。“はっぱカッター”も例外ではない。緑の刃は適切にヌオーを切り裂き、戦闘不能にした。

「いまの! 良い攻撃だったな!」

 2匹目を倒されたというのに、マキシマム仮面は快活に笑う。

「だがまだまだ! これから盛り上がるところ! フローゼル!」

 ブイゼルの進化系、オレンジの毛並みを持つ海イタチポケモン。首には浮袋のような器官がある。

 アクタはフローゼルに対し、くさタイプの“はっぱカッター”を選択しようとしたが、素早さに関しては相手のほうが上だった。フローゼルが繰り出したのは──

「“こおりのキバ”!」

 アクタが危機感を覚えたのは、すでに技を喰らった後だった。

 ドダイトスの巨体が倒れ、『ひんし』になる。

「……そうか。こおりタイプの技は」

 くさとじめんタイプを持つドダイトスに、4倍もの効果を持つ。

 先ほど、みず・じめんタイプのヌオーにくさタイプの技が絶大な効果を出したものとおなじだ。タイプを2つ持つポケモンは、弱点さえも2つ持つ可能性を持っている。共通する弱点ならば、すなわち4倍。

「そうか、こおりタイプ……対策としてはこれ以上ないですもんね。しまった。きょうはほんとうに迂闊だ」

 倒れたドダイトスをボールに戻し、迷いあぐねた結果、トゲチックを再度呼び出した。

「さあ勝負だ! マキシマム仮面!」

 まるでプロレス。声高に向かってくる少年たちに。

「うわはははは! かかってこい!」

 当然ながらマキシマム仮面は応えるのだった、

「トゲチック、“マジカルリーフ”!」

「フローゼル、“こおりのキバ”!」

 どちらも互いに効果抜群の技だ。その差を生み出したのは、素早さか、技の威力か、はたまた「気持ち」という曖昧なものか。

 しかしバトルの結果ははっきりとしている。

 最後まで立っていたのは──空を飛んでいたのは、アクタのトゲチックだった。

「おわっ! 終わっちまったか! なんというか、もっともっと戦いたかった。そんな気分だ!」

 戦闘不能になったフローゼル。バトルに敗北したというのに、マキシは呵々大笑した。

「まぁ結果はこのとおりだが、お前と戦えてものすごぉく楽しかった! なのでこれを渡そう!」

 ノモセジムのバッジ、フェンバッジを受け取る。

「こちらこそ、楽しかったです。ありがとうございます、マキシ……マム仮面さん」

 少年は気を遣った。

 なんとなく、名前で呼ぶのは失礼な気がしたのだ。それにアクタ自身、マキシマム仮面というレスラーのことが気に入っている。

「うむ! 楽しかったのならば大いに結構! どんな戦い方でどんなふうに勝つかはトレーナーそれぞれだぁ! そのなかでおれさまはぁ、勝ったほうも負けたほうも、『楽しかった!』──そう言えるポケモン勝負をしたい!」

 アクタは、マキシの器の大きさを改めて感じた。相手も自分も『楽しかった』というバトルは理想形だ。だが同時に「理想論」でもある。

「それってすごく、ステキなことですね」

 そんな「理想論」を臆面もなく言ってくれるマキシに、アクタは頼もしさを覚えた。マスクで素顔すらわからぬ男だが、きっと信頼できる御仁だ。

「ジュンくんのこと、よろしくお願いします。弟子に取ってくれたんですよね」

 しかしマキシは、その覆面を首ごと横に傾けた。

「弟子……? あのジュンとかいう坊主が? 弟子入りを許した覚えはないぞ。あいつがどう言っているかは知らんが」

 ジュンが勝手に言っているだけらしい。アクタは「なるほど」と納得した。

 

 

「おお、アクタ! ジムリーダーに勝ったのか!」

 ジムを出る際、眼鏡の男が見送ってくれる。

「どうだマキシさん……いや、マキシマム仮面とのポケモン勝負は楽しかったか?」

「はい、とっても」

「勝ち負けは当然大事だが、楽しむ心も忘れるなよ! マキシさん……いや、マキシマム仮面はそのことを教えてくれたと思うぜ!」

「……結局あのひと、ジムリーダーとしての名義はなんなんですか?」

「ん? あー。それは『マキシ』さんだけど。『マキシマム仮面』っていうのは、プロレスのリングネームだ」

「…………またつぎのジムで会いましょう」

 ジムを出たところで。

「おっ! ジムバッジ貰えたか!」

 ジュンがやってきた。

「ジュンくん」

「だから呼び捨てでいいって! それで、どうだ! マキシさん、いやオレの師匠すごいだろ」

「それなんだけどさあ」

「騒がしいと思ったら、お前たちか」

 弟子入りできてないじゃん、と指摘しようとしたところで、ノモセジムからマキシマム仮面が現れた。

「あっ、師匠!」

「師匠じゃねえよ」とアクタは思った。

「……たしかにお前の父親とは知り合いだがなあ。弟子入りを認めた覚えなんぞ。これっぽっちもないぞ」

「じゃあ、ぼくとかどうですか?」

 ほんの好奇心で、アクタは場をかき乱そうとした。

 ちょっと自分の歌が欲しくなったというのもあるが。

「ダメだダメだ。だいたい、お前たちなら弟子入りなんかしなくても、自分で強くなれるだろ!」

「いいんだよ。オレが勝手に弟子入りするんだからさ!」

 すがすがしいまでに自分勝手なジュンに、アクタは尊敬さえ覚えてきた。

「それよりもさ、大変なんだよー!」

 どうやらジュンは、弟子入りの件とはべつにマキシに用があってここに来たらしい。

「展望台ゲートの前にさ、ギンガ団がいてさ。『爆弾を使う!』とか言ってたぜ」

「なんだとお!! ノモセを荒らすやつはこのおれさまが許さんッ!!」

 詳細を聞かないうちに、マキシは激昂して展望台の方向へ走って行ってしまった。なんとも豪快なひとだ。

「あっ! 師匠、待ってくれよー!!」

 ジュンはマキシの後を追っていく。アクタは彼らに続こうと思ったが、その前にポケモンセンターに行くことにした。

 

 

 ノモセ大湿原。

 ノモセシティの北に位置する、ひとの手により管理されている広大な湿原だ。ここに生息する野生ポケモンは、サファリゲームという限定的な方法でのみ、捕獲が許されている。

 もちろん、アクタはノモセシティに来てすぐに、この湿原のサファリゲームに挑戦した。そしてすぐに、配布されたサファリボールを使い切った。結果はゼロ匹だった。

 そのノモセ大湿原の前。

「どう、似合ってる? それにしても、グレッグルいいよなー」

 ジュンはグレッグルが描かれた顔出し看板から、のんきな顔を覗かせていた。

「いいなあ、代わってよ」

「おーい、お前たち!」

 ノモセ大湿原の入り口にいたマキシがふたりを呼ぶ。子どもらしく遊んでいる場合じゃない。

「で、ギンガ団はどこ……」

 そうマキシが言いかけたときだった。

 轟音とともに、空気が振動した。




ドダイトス ♂
 のんきな性格

トゲチック ♀
 むじゃきな性格

ラムパルド ♂
 やんちゃな性格

イーブイ ♀
 なまいきな性格

ポリゴン
 ひかえめな性格
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