ポケットモンスターNAVY ~暴投モンスターボール~   作:サンダーゴリラ

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レポート19 ノモセシティ/ギンガ爆弾

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 耳がキンとする。

 眩暈を覚えるほどに。

 アクタが、ジュンが、マキシが事態を把握する前に──謎の轟音にうろたえる前に。

「ふえー、参ったぜ」

 大湿原から出てきたギンガ団員が「原因」であることを、その場の全員が理解した。

「貴様! なにをしたあ!!」

 先ほどの轟音ほどではないにせよ、マキシはギンガ団員に大声で吠える。

「な、なにをしたって、なんにもしてないぞ」

 だれよりも状況がわかってないのは、皮肉にもこのギンガ団の男らしい。

「届いた荷物が爆弾で……()()()()()っていうんだけどな。ボタンを押せって言われてたから、『ポチッとな!』って押しただけだ!」

 敵ながらなんと馬鹿な男だ。ぺらぺらと所業を話すギンガ団員に、アクタは怒りよりも戦慄を覚えた。

「そうだった! 実験結果を報告しないと……あばよ! 変なマスクのおっさん!」

 走り去っていくギンガ団員。

 マキシは追いかけようともせず、ただ拳を握って震える。

「大切な大湿原を……お前たち! 来るなよ! だれも入れるなよ! もし爆弾が残っていたら大変だからな!!」

 ノモセ大湿原に入って行くマキシ。犯人を追うより、現場の被害状況を確認するほうが先だ。怒っている様子だが、見かけよりもずっと冷静らしい。

 ならば。

「アクタ! ギンガ団を追いかけてくれよ!」

「言われなくてもそうするよ! ジュンはどうする!?」

 アクタは自転車を組み立てる。

「オレ! 師匠に言われたとーり、なかにだれも入らないようにする! だけどギンガ団、ほっとけないから……」

「わかった。任せて!」

 自転車を4速にして、ペダルを漕ぐ。ノモセシティから213番道路に出るゲートで、すぐにギンガ団員に追いついた。

「おい、待て! 爆弾ってなんなんだ! 大湿原で爆発させたのか!?」

「な、なんだよ、追いかけてくるなよ」

 ギンガ団員は身をひるがえして、少年を睨む。

「ほんとうなら、ポケモン使ってひねり潰してやるところだが、オレは湖に行くのに忙しいのでサヨナラだ! いいか! 追いかけてくるなよ!!」

 ゲートから逃げ出すギンガ団。自転車では追いかけられないように、狭い道を選んで走っている。

「……たぶん追いつこうと思えば追いつくな。湖っていうのは、リッシ湖のことかな?」

 自転車を3速に。先回りできないだろうか。アクタはそろりそろりと、ギンガ団員の後を追う。

「このギンガ爆弾を作るため、ワレワレは発電所のエネルギーを奪っていたのだ。そしてこれを作ったワレワレのボスは、科学機械の天才だな!」

 大声で独り言が聞こえてくる。どうやらこの下っ端、とんでもない粗忽者らしい。息をひそめて、独り言に耳を澄ませる。

「それにしてもこのギンガ爆弾、すごい威力だったぜ。これさえあればなんでも吹っ飛ばせるけど、一体なにに使うんだ?」

 男は荷物を背負っている。あれが「ギンガ爆弾」という代物のようだ。恐らく複数あって、ひとつをノモセ大湿原で爆発させたようだが──なぜそんなことを? 思案するアクタの方向を、不意にギンガ団員が振り返って、ぎょっとする。

「聞いていたな! オレの大声の独り言を」

「あんた、いろいろ向いてないですよ」

「しつこいガキだな……走り疲れたぞ……! でもお前の相手などしてやらないのだ……」

 ぜえぜえと息を上げつつ、男はスピードを上げて走る。アクタもペダルを踏みこもうとしたのだが──

「よお! トバリシティから運ばれた荷物が気になってここに来たのだが……」

 背後からハンサムが現れた。

「いや、タイミング悪っ!!」

「へ?」

 呆けた顔で首を傾げるハンサム。無視してしまってもいいのだが、こんなんでもこの男は国際警察だ。アクタはノモセであったことを早口かつ手短に説明した。

「なにっ!? 荷物は爆弾で、大湿原で爆発があった? で、きみが追いかけているのは変なおかっばで、変な格好をしている……すなわちギンガ団なんだな!」

「そうです。ぼくはそいつを追っかけてたんですけど、途中であなたに話しかけられて、足止めを喰らっている状況です」

「しまったー!! このハンサム、一生に一度の不覚。さっき走って行ったやつがその爆弾を持って行ったのか!!」

 頭を抱えるハンサム。すこし意地悪な言い方をしてしまっただろうか。

「えーい、待て待てーっ!!」

 名誉を挽回するかのように、ハンサムはギンガ団員を追って走り出す。

 逃走劇は、ホテルグランドレイクへ。

 ハンサムはホテルの受付で聞き込みをしている。あのギンガ団員はとにかく先を急いでいたので、すでにホテルの敷地から抜けているかもしれない

「なにい? ここにはホウエン地方のチャンピオンも泊まったことがあるのか!? ──って関係ないだろう! 自慢話はいいんだよ!!」

 一生懸命に聞き込みしているハンサムをしり目に、アクタは施設を通り過ぎる。

「はあはあ……なんでオレはこんなに走っているのだ!?」

 いた。

 アクタはよろよろと走る男の跡をつける。

「ボスの言っていた新しい世界、新しい宇宙、か……ふふふ、すごくわくわくしてくる。そのためにもこれを使って……」

 追いかけているうちに、ついにリッシ湖に迫った。

「なんと……まだ追いかけてきたのか。湖は目の前なのに……」

 ギンガ団員はようやくアクタに気づいた。重そうな荷物を背負ったまま、ふらついた足取りで少年に向き直る。

「しかたない……ポケモンでこてんぱんに……」

「危ないなあ。爆弾を背負ったまま戦うなんて」

「ふふふ! ギンガ団の技術力を甘く見るな! この爆弾は頑丈で、スイッチを押さないと起動しないのだ!」

 良いことを聞いた。アクタはモンスターボールを、手元で開ける。

「じゃあ、手加減しなくっていいですね」

 ポリゴンは、ギンガ団員が繰り出したグレッグルに狙いを定める。

「“サイケこうせん”」

 一撃で、グレッグルは戦闘不能になった。どく、かくとうタイプのグレッグルに、エスパータイプの技は4倍の威力だ。

「フヒ……走って逃げなければ、もっと戦えたのに……」

「いやそういう問題じゃないでしょ」

「もう戦えない……それにへとへとだ……」

 尻もちをつくギンガ団員。

「じゃあそれ、こっちに渡してもらえます? いまいち頼りにならないけど、国際警察っていうひとに預かってもらうんで」

「そ、そうはいくか……これはおれが……」

 這って逃げようとするギンガ団の下っ端。乱暴に奪ったりはしたくないものだが──と、アクタが迷いあぐねているうちに。

 突如として、空から黒い影が現れた。

「なっ!?」

「うわああっ!?」

 ゴルバットだった。その足で「ギンガ爆弾」が入った荷物を団員ごと掴み、飛翔。ふわりと浮かび上がったギンガ団員は悲鳴を上げる。

「しまった! 待って!」

 主人でもないアクタのいうことを、ゴルバットが聞き入れるはずもなく──ギンガ爆弾は空へと去って行った。

「……くそっ」

「やられたわね」

「はい……って、ええ!?」

 いつの間にか、隣にシロナがいた。

「久し振り。ポケモン図鑑の調子はどう?」

 金髪をたなびかせ、シロナはアクタににこやかな笑顔を向ける。

「一部始終を見てたけど、あのゴルバットはギンガ団幹部の手持ちで間違いないでしょうね。どうやらあの荷物が重要だったようだけど……きみ、中身は知ってる?」

「それが……」

「おーいアクタ! 逃げたギンガ団どうなった?」

 ジュンが駆けつけてきた。彼はまず、シロナに気づく。

「あれ? お前にネーチャンいたっけ」

「なんでだよ。違うって。このひとは……ええと……」

 アクタは、シロナのことをよく知らない。神話について調べている研究者らしいが……すくなくとも、強いひとであることは、なんとなく察している。

「ま、いいや! 大湿原の爆発さ、そんなに大したことなかったってよ。マキシさんがお前にそう伝えてくれってさ。それにしてもさ、ギンガ団って無茶苦茶だよな! こんど見つけたらオレがボコボコにやっつけてやるぜーッ!! じゃなー!!」

 ジュンは走り去って行った。

 ほんとうに、マキシの伝言を届けに来ただけらしい。逃げたギンガ団について、もうちょっと関心を持ってくれてもいいのに。

「きみの友だち? 元気というかせっかちさんね」

「はい、とても……」

「それにしても、爆弾? 物騒ねえ」

 シロナがどういった立場の人間なのかは知らない。だけどたぶん、今回の事情くらいは話しておいたほうがいいだろう。

「とりあえずノモセに行こうか。さっきの子の話だと大した被害ではないらしいけど、それにしたって大湿原の様子は気になるわよね。それに、きみも疲れてるみたいだし」

「え? ああ、たしかに……」

 言われてようやく気付いた。きょうは、疲れた。

 

 

 事件から翌日のノモセ大湿原。線路に沿って、エリア移動用の列車・クイック号がゆっくり走る。

「だから言っただろ? 大したことはないって」

 アクタの隣で、マキシは呆れた様子で肩をすくめる。

「そうみたいですね。爆発の威力からして、不幸中の幸いだ」

 被害と呼べるものは、土砂崩れによる一部地形の変化。大きなケガを負ったポケモンもいない。

「ポケモンたちの様子は?」

「事件の直後はやはり動揺していたが、もう落ち着いたもんだ。ポケモンたちはたくましいな。あしたには大湿原のサファリゲームも再開できるだろう」

「…………」

「お前はどうだ?」

「え?」

 思わずマキシを見上げる。彼は、少年の肩を強く叩いた。痛い。

「元気を出せ! ポケモンたちのために怒り、悲しめるお前は立派だ! つぎに切り替えろ! ジムバッジを集めはまだ途中だろ!?」

「は、はい……」

「思いつめるなよ」

「はい」

「返事は元気よく!」

「はい!」

「よーし! 歌ってやる!」

「やった!」

 静かな大湿原で、マキシマム仮面とアクタの歌声が響いた。

 

 

「おかえりなさい、アクタくん」

 ノモセ大湿原からポケモンセンターに戻る。ノートパソコンに向かっていたシロナは、アクタに軽く手を振る。

 ノモセ大湿原を襲った爆発事件については、昨夜のうちにシロナに詳細を話した。ハンサムに口留めはされていなかったし。

「はい、ポリゴンのアップデート、無事に完了したわよ」

 シロナはアクタにモンスターボールを渡す。ノモセ大湿原に行く前に、「ポリゴンを強くしてあげる」と言われたので、恐る恐る預けたのだ。

 ボールを開ける。

 ポリゴンの身体は、滑らかな曲線になっていた。目には光があり、やはり人工ポケモンらしい無機質さもあるが、いくらか生物さながらのかわいらしさが増した。

「こ、これって……!」

「ポリゴン2に進化させたの。『アップグレード』というアイテムを持たせて、電気的な刺激を与えることで──一般的には通信交換による手段が主流かな。とにかく進化させたわけだから、確実に強くなってるはずよ」

「いいんですか!? こんなに良くしてもらって……」

 アクタはポリゴン2に抱き着く。機械音っぽい鳴く以外は無反応だ。

「いいのよ。きのう、ギンガ団とのバトルをちょこっと見てたわ。鮮やかな“サイケこうせん”だったわね。進化させないなんてもったいないわ」

「えへへ……なにか、お礼させてもらえませんか? 前、タマゴも貰っちゃったし……あ、生まれたトゲピーは、進化したんですよ」

 アクタはモンスターボールからトゲチックを呼び出す。首の『やすらぎのすず』を鳴らしながら、トゲチックはアクタにすり寄った。

「ちゃんと育ててくれてるのね。嬉しい! あたしとしては、それだけで十分にありがたいんだけど……」

 シロナはすこし考えて。

「そうだ! じゃあお届けものをお願いしたいんだけど、いいかな?」

「喜んで。どこになにを届ければ?」

 シロナが差し出したのは、勾玉だった。

「この『お守り』をカンナギにいるおばあちゃんに届けてほしいの。カンナギタウンってわかる? 210番道路からずっと北に行ったところにある町よ。カンナギに行く途中にも珍しいポケモンいるから、悪い話じゃないと思うけど」

「カンナギタウンのおばあさんですね。どんなひとなんですか?」

 アクタしっかりと頷いて、『こだいのおまもり』を受け取った。

「あたしのおばあちゃん、なんていうか偉そうなオーラ? そういうの出てるからわかると思うんだけど……」

「お、オーラ?」

「そうか。おばあちゃんカンナギの長老だから、すぐにわかるわよ」

 町の長老を訪ねればいいというのであれば、難しいことではなさそうだ。それにしても、オーラか。──アクタはシロナをじっと見る。

「なあに?」

「いえ、べつに」

 このひとの祖母ならば、すぐにわかりそうだな、と思った。




ドダイトス ♂
 のんきな性格

トゲチック ♀
 むじゃきな性格

ラムパルド ♂
 やんちゃな性格

イーブイ ♀
 なまいきな性格

ポリゴン2
 ひかえめな性格
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