ポケットモンスターNAVY ~暴投モンスターボール~ 作:サンダーゴリラ
「それケチャップかけすぎだぞ。絶対」
「このくらいが美味しいんですよ」
テンガン山の頂上を目指すためにクロガネシティへ飛ぶと、街でハンサムと合流できた。
気づけばとにかくお腹が減っていたふたりは、取り急ぎキッチンカーが販売していたホットドッグを食べる。
「プルートっていうおじいちゃんがなんか、厄介なことしそうだ。とっ捕まえられませんか?」
「うむ。ギンガ団の悪事について、今回の潜入で証拠は手に入れた。明日にでも摘発に動けるだろう!」
「よくわかんないけど、大丈夫なんですね」
手早く食事を終えて、ふたりは207番道路──テンガン山の入り口へ。
「……テンガン山の内部には、頂上への道を塞ぐ壁画があるらしい……」
「うーん、壊されてるでしょうね。カンナギタウンの壁画とかも爆破しようとしてたくらいだ」
「湖の3匹が捕えられてからなにかが狂い出しているのかもな。原因はギンガ団のアカギだ!」
「……なにをいまさら」
しかしハンサムは真剣な眼差しで、彼はアクタに向き直る。
「さて、そこでだ。きみがこれより先に進めるほどのトレーナーなのか、腕試しさせてもらおう!」
「だから、いまさらでしょう?」
と言いつつも、アクタは腰のモンスターボールに手をかけた。
「…………」
「…………」
「…………ははは、そんなに身構えなくてもいい」
ハンサムは手を上げて降参のポーズを取る。結局、冗談だったみたいだ。
「わかっているよ。わたしではきみには敵わないことは」
「なんですか、もう」
「そしてアカギにも、幹部たちにも敵わない……」
ハンサムの表情が曇る。そして顔を上げ、また真剣な眼差しを少年に向けた。こんどこそ冗談ではなさそうだ。
「頼む! ギンガ団を止められるのはきみだけだ! いまのわたしにできることは、任務先で手に入れたアイテムをきみにあげるぐらいだが……」
大量のアイテムを押しつけられた。使い道がわからないものもあるが、どうやら珍しいものもある。
「なに? ビードロとか、変な装置とか……とにかく、ここからは別行動ってことでいいんですね」
「ああ。わたしは仲間に連絡して、然るべき準備を整えてから向かう。きみひとりならば身軽だから、ギンガ団に追いつくことができるだろう」
「わかりました。ぶっちゃけハンサムさん、弱そうだから好都合です」
「……ほんとに、きみは果てしなく失礼なことを言うんだな」
わざとひどいことを言ってみたのは、すこし寂しかったからだ。
:
テンガン山の頂上に近づくにつれ、洞窟や山道は過酷になっていく。やがてギンガ団の下っ端も立ちはだかるようになるが──
「ワレワレ下っ端の仕事は2つ。頂上での作戦を無事に成功させること! もうひとつはジャマモノを徹底的に叩きのめすこと!」
「ドダイトス、“かみくだく”」
「ギンガ団は強い! 強いやつに逆らうのはバカのすることだろ!?」
「グレイシア、“れいとうビーム”」
「ギンガ団がすべてを奪う! お前ひとり追いかけてきても、どうすることもできないぜ!」
「リオル、“フェイント”」
どうにか撃退していく。いままでに比べてなかなか実力のあるギンガ団員たち。悔しいがすこしずつ足止めをされている状況だ。
「ハンサムさんと別れたのは正解だったな。ひとりでもしんどいし……」
そんな「果てしなく失礼なこと」を考えながら、アクタはポケモンたちに木の実やくすりで回復させる。
「……ひとりぼっちか」
ほんとうにそうか?
「いや──来るよ。
砂ぼこりや雪にまみれ、ようやく頂上と呼ばれる場所にたどり着いた。
まるで、さびれた神殿。屋根はないが、折れて槍のように尖った柱が並んでいる。
どれほどむかしに造られたのかわからないが、こんな山頂にも過去、建造物が存在していたことは事実らしい。
「よく来たものね。邪魔しないなら居てもいいわよ」
階段の上でアクタを見下ろすのは、マーズ。
「……これからボスがすることを、黙って見ていなさい」
そしてジュピター。
「そういうわけには、いかない……!」
階段を上るアクタ。やはり、マーズとジュピターのふたりが立ちはだかる。
「どこ行くつもり? ボスの邪魔はさせないわよ。この先に進みたいならあたしが相手するわ! あなたにはいままでさんざん、コケにされてきたしね!」
「そのつぎはあたし。あなた強いかもしれないけど、あたしたちも本気出すよ!」
「…………」
幹部と連戦となれば、分が悪い。マーズとジュピターの実力は知っている。万全の状態だとしても確実に勝てるとは限らない。
でも。
だからといって、ここでまで来て引き下がるわけにはいかない。
「……上等だ」
そうアクタが啖呵を切ろうとしたところで。
「待てってんだよ!
跳ねた金髪。緑のマフラー。白とオレンジのボーダーシャツ。
「オレがいないのに、勝手におもしろそうなこと始めるな!」
「ジュン!」
やっぱりだ。やっぱり来た。期待していて良かった。
「どうしてここに?」
「あー! お前!」
ジュンは、アクタの問いに答えず、腕を組んで佇むジュピターを指さす。
「はあ?」
「あのときの! リベンジしてやるッてんだよ!」
「……ハッ! だれかと思えば、エイチ湖で泣いてた男の子じゃない」
数日前。
エイチ湖にてジュンをへこませたのは、ほかでもないジュピターなのだ。
「ちょっとは強くなったの? いいわ、2対2で戦いましょ!」
「はあ!? ちょっとジュピター、なにを勝手に……!」
マーズは苦言と呈するが。
「いいねえ! そうしましょう!」
同時にアクタが賛成の声を上げた。
「ええ……?」
「いいじゃないですか。そのほうが手っ取り早い。マーズさんもジュピターさんも、ぼくらのことを早く片づけたいんでしょ。じゃないと、アカギさんに置いていかれるかもしれない」
「…………」
「…………」
マーズとジュピターの沈黙を同意とみなす。アクタはジュンの隣に並ぶ。
「ジュン、そういうわけだ。やるよ」
「ええと、ダブルバトルってことでいいのか!?」
「うん。まずは自由にやってみよう。適宜、お互いに合わせる感じでさ」
打ち合わせはそこそこ、4人は対峙する。
「リオル!」
「ゴンべ!」
「ゴルバット!」
「ドーミラー!」
リオルだけが、階段の下に現れた。
「おいノーコン!」
「ご、ごめん……リオル、登って来られるかな? そうそう、上手だねえ」
「……ドーミラー、“じんつうりき”」
公式試合ではない。呑気なアクタにしびれを切らしたジュピターは、開始の合図を待たずゴンベを攻撃した。
「もたもたするな! あなたたちの相手をしていること自体、時間の無駄なのよ!」
「あはは! ジュピター、キレてるわね! まあ同感だけど──ゴルバット、“エアカッター”!」
「こ、このっ! ゴンべ、“たくわえる”! ──まだかよアクタ!」
「はいはい、お待たせ。リオル、“はっけい”」
飛び上がったリオルは、ドーミラーに重い掌底を繰り出す。幸運なことに、『まひ』状態を与えた。
「よし。リオル、交代ね」
「え、もう戻すのか?」
「まだあんまりレベル高くないからさ。『ひんし』になったらかわいそうだし」
代わりにポリゴン2を呼ぶ。
「ジュン、ゴンベの守りをもう一度上げて」
「え? ああ、“たくわえる”」
「なにを小細工している! ドーミラー、“いわなだれ”!」
「ゴルバット、“かみつく”!」
ポリゴン2は2体の攻撃に耐え、
「“ほうでん”!」
周囲に電撃を放つ。電撃はゴルバットとドーミラーを戦闘不能にする──
「よし!」
「よしじゃねえよ! なにするんだ!」
──だけではなく、技はゴンベにも及んだ。
「ごめんね。でも『ひんし』にはならなかったし、許してくれよ。技で回復できるでしょ」
「まあ、そうだけど……ゴンベ、“のみこむ”」
ゴンベは“たくわえる”で防御を上げるために貯蓄したエネルギーを、体力の回復に充てた。
「ふん! ここまで来るだけのことはある。だが──」
「こっからは本気も本気よ! 泣いたって許してあげないんだから!」
マーズはブニャットを。ジュピターはスカタンクを、それぞれ繰り出した。ふたりにとって切り札のポケモンだ。
「ジュン」
「ああ! こっちもとっておきだ!」
ドダイトス。ゴウカザル。アクタとジュンが繰り出したのは、旅の初めにナナカマド博士から受け取ったポケモンたちだ。
ブニャットの“つばめがえし”がドダイトスを。スカタンクの“どくづき”がゴウカザルを襲う。
「なあアクタ。オレ、強くなりたいんだ……」
ゴウカザルは“かえんぐるま”を。
「なんか、勝ち負けとかそーゆーのじゃなくて、強くならないとダメなんだ……」
ドダイトスは“かみくだく”を放つ。
「最強のトレーナーって、なりたいだけじゃダメなんだよ……。地道な努力……そして折れない強い心」
「言うだけなら簡単だよ」
4体の力は拮抗していた。
「わかってる。結局オレは、これからも負けるし、悩むだろうな」
勝負を分けたのは、タイミングか、運か、それとも「想い」といった曖昧なものか。
「それでも最強を目指す。いつか、お前に追いつきたいんだ」
ふたりの少年のポケモンは、最後の技を放つ。
「ゴウカザル、“インファイト”!」
スカタンクが倒れ、
「ドダイトス、“ウッドハンマー”!」
ブニャットも戦闘不能になった。
アクタとジュンは互いの拳を合わせて、静かに勝利を喜んだ。
:
「これならあたしひとりで戦えばよかったわ!」
悪態をつくマーズだが、ジュピターは彼女の言葉を意に介することなく、ジュンを一瞥する。
「フン! 強くなったわね」
「お、おう……」
「だけどボスには敵わない」
「いいや。アカギさんにも勝つさ」
アクタは神殿の奥に目を向ける。
「ジュン。ほんとに助かった」
「……へっ、オレのポケモン強いだろ! オレも強くなれるんだよ!
笑うジュンだが。
「……とはいえ、いまはこれが限界かな……」
そのままへたり込んでしまった。バトルで疲れてしまったのだろう。
「十分だよ。ナナカマド博士に、今回のことを伝えてくれる? ギンガ団のボスは『あかいくさり』っていうのを使って悪いことをしようとしているみたいなんだ」
アカギの持つ手段について、アクタもジュンもさっぱりだったが、ナナカマド博士ならば何らかの情報を持っているかもしれない。
「わかった。えっと、『たかいくすり』?」
「『あかいくさり』! レッドなチェーン! 頼むよ!?」
「わ、わかったって! 『あかいくさり』な? たしかに伝えるよ」
ジュンは立ち上がって、踵を返す。
「じゃあ、アクタ! あとは任せるからな!」
走り去って行くジュン。とりあえず安心だ。
「気に入らなーい」
マーズが間延びした声を上げる。
「あんた、ここが危険になるかもって思って、わざとあの子を逃がしたでしょ」
「……あんたたちも逃げれば。なにがあっても、ぼくは助けませんよ」
アクタは、マーズとジュピターの間を素通りする。
「馬鹿な子。自分が一番、危険なのよ」
「あたしたちだって、あんたなんて助けてあげないんだからね!」
負け惜しみのような、声援のような言葉を受け、アクタは整然と並んだ「槍の柱」の奥──アカギのもとにたどり着いた。
ドダイトス ♂
のんきな性格
トゲキッス ♀
むじゃきな性格
ラムパルド ♂
やんちゃな性格
グレイシア ♀
なまいきな性格
ポリゴン2
ひかえめな性格
リオル ♀
わんぱくな性格