ポケットモンスターNAVY ~暴投モンスターボール~   作:サンダーゴリラ

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レポート29 テンガン山/双肩

「それケチャップかけすぎだぞ。絶対」

「このくらいが美味しいんですよ」

 テンガン山の頂上を目指すためにクロガネシティへ飛ぶと、街でハンサムと合流できた。

 気づけばとにかくお腹が減っていたふたりは、取り急ぎキッチンカーが販売していたホットドッグを食べる。

「プルートっていうおじいちゃんがなんか、厄介なことしそうだ。とっ捕まえられませんか?」

「うむ。ギンガ団の悪事について、今回の潜入で証拠は手に入れた。明日にでも摘発に動けるだろう!」

「よくわかんないけど、大丈夫なんですね」

 手早く食事を終えて、ふたりは207番道路──テンガン山の入り口へ。

「……テンガン山の内部には、頂上への道を塞ぐ壁画があるらしい……」

「うーん、壊されてるでしょうね。カンナギタウンの壁画とかも爆破しようとしてたくらいだ」

「湖の3匹が捕えられてからなにかが狂い出しているのかもな。原因はギンガ団のアカギだ!」

「……なにをいまさら」

 しかしハンサムは真剣な眼差しで、彼はアクタに向き直る。

「さて、そこでだ。きみがこれより先に進めるほどのトレーナーなのか、腕試しさせてもらおう!」

「だから、いまさらでしょう?」

 と言いつつも、アクタは腰のモンスターボールに手をかけた。

「…………」

「…………」

「…………ははは、そんなに身構えなくてもいい」

 ハンサムは手を上げて降参のポーズを取る。結局、冗談だったみたいだ。

「わかっているよ。わたしではきみには敵わないことは」

「なんですか、もう」

「そしてアカギにも、幹部たちにも敵わない……」

 ハンサムの表情が曇る。そして顔を上げ、また真剣な眼差しを少年に向けた。こんどこそ冗談ではなさそうだ。

「頼む! ギンガ団を止められるのはきみだけだ! いまのわたしにできることは、任務先で手に入れたアイテムをきみにあげるぐらいだが……」

 大量のアイテムを押しつけられた。使い道がわからないものもあるが、どうやら珍しいものもある。

「なに? ビードロとか、変な装置とか……とにかく、ここからは別行動ってことでいいんですね」

「ああ。わたしは仲間に連絡して、然るべき準備を整えてから向かう。きみひとりならば身軽だから、ギンガ団に追いつくことができるだろう」

「わかりました。ぶっちゃけハンサムさん、弱そうだから好都合です」

「……ほんとに、きみは果てしなく失礼なことを言うんだな」

 わざとひどいことを言ってみたのは、すこし寂しかったからだ。

 

 

 テンガン山の頂上に近づくにつれ、洞窟や山道は過酷になっていく。やがてギンガ団の下っ端も立ちはだかるようになるが──

「ワレワレ下っ端の仕事は2つ。頂上での作戦を無事に成功させること! もうひとつはジャマモノを徹底的に叩きのめすこと!」

「ドダイトス、“かみくだく”」

「ギンガ団は強い! 強いやつに逆らうのはバカのすることだろ!?」

「グレイシア、“れいとうビーム”」

「ギンガ団がすべてを奪う! お前ひとり追いかけてきても、どうすることもできないぜ!」

「リオル、“フェイント”」

 どうにか撃退していく。いままでに比べてなかなか実力のあるギンガ団員たち。悔しいがすこしずつ足止めをされている状況だ。

「ハンサムさんと別れたのは正解だったな。ひとりでもしんどいし……」

 そんな「果てしなく失礼なこと」を考えながら、アクタはポケモンたちに木の実やくすりで回復させる。

「……ひとりぼっちか」

 ほんとうにそうか?

「いや──来るよ。()()()は来る。()()()()も来る。ぼくがひとりなもんか。ギンガ団なんて連中に怒ってるのが──ぼくだけなわけがない」

 砂ぼこりや雪にまみれ、ようやく頂上と呼ばれる場所にたどり着いた。

 まるで、さびれた神殿。屋根はないが、折れて槍のように尖った柱が並んでいる。

 どれほどむかしに造られたのかわからないが、こんな山頂にも過去、建造物が存在していたことは事実らしい。

「よく来たものね。邪魔しないなら居てもいいわよ」

 階段の上でアクタを見下ろすのは、マーズ。

「……これからボスがすることを、黙って見ていなさい」

 そしてジュピター。

「そういうわけには、いかない……!」

 階段を上るアクタ。やはり、マーズとジュピターのふたりが立ちはだかる。

「どこ行くつもり? ボスの邪魔はさせないわよ。この先に進みたいならあたしが相手するわ! あなたにはいままでさんざん、コケにされてきたしね!」

「そのつぎはあたし。あなた強いかもしれないけど、あたしたちも本気出すよ!」

「…………」

 幹部と連戦となれば、分が悪い。マーズとジュピターの実力は知っている。万全の状態だとしても確実に勝てるとは限らない。

 でも。

 だからといって、ここでまで来て引き下がるわけにはいかない。

「……上等だ」

 そうアクタが啖呵を切ろうとしたところで。

「待てってんだよ!

 跳ねた金髪。緑のマフラー。白とオレンジのボーダーシャツ。

「オレがいないのに、勝手におもしろそうなこと始めるな!」

「ジュン!」

 やっぱりだ。やっぱり来た。期待していて良かった。

「どうしてここに?」

「あー! お前!」

 ジュンは、アクタの問いに答えず、腕を組んで佇むジュピターを指さす。

「はあ?」

「あのときの! リベンジしてやるッてんだよ!」

「……ハッ! だれかと思えば、エイチ湖で泣いてた男の子じゃない」

 数日前。

 エイチ湖にてジュンをへこませたのは、ほかでもないジュピターなのだ。

「ちょっとは強くなったの? いいわ、2対2で戦いましょ!」

「はあ!? ちょっとジュピター、なにを勝手に……!」

 マーズは苦言と呈するが。

「いいねえ! そうしましょう!」

 同時にアクタが賛成の声を上げた。

「ええ……?」

「いいじゃないですか。そのほうが手っ取り早い。マーズさんもジュピターさんも、ぼくらのことを早く片づけたいんでしょ。じゃないと、アカギさんに置いていかれるかもしれない」

「…………」

「…………」

 マーズとジュピターの沈黙を同意とみなす。アクタはジュンの隣に並ぶ。

「ジュン、そういうわけだ。やるよ」

「ええと、ダブルバトルってことでいいのか!?」

「うん。まずは自由にやってみよう。適宜、お互いに合わせる感じでさ」

 打ち合わせはそこそこ、4人は対峙する。

「リオル!」

「ゴンべ!」

「ゴルバット!」

「ドーミラー!」

 リオルだけが、階段の下に現れた。

「おいノーコン!」

「ご、ごめん……リオル、登って来られるかな? そうそう、上手だねえ」

「……ドーミラー、“じんつうりき”」

 公式試合ではない。呑気なアクタにしびれを切らしたジュピターは、開始の合図を待たずゴンベを攻撃した。

「もたもたするな! あなたたちの相手をしていること自体、時間の無駄なのよ!」

「あはは! ジュピター、キレてるわね! まあ同感だけど──ゴルバット、“エアカッター”!」

「こ、このっ! ゴンべ、“たくわえる”! ──まだかよアクタ!」

「はいはい、お待たせ。リオル、“はっけい”」

 飛び上がったリオルは、ドーミラーに重い掌底を繰り出す。幸運なことに、『まひ』状態を与えた。

「よし。リオル、交代ね」

「え、もう戻すのか?」

「まだあんまりレベル高くないからさ。『ひんし』になったらかわいそうだし」

 代わりにポリゴン2を呼ぶ。

「ジュン、ゴンベの守りをもう一度上げて」

「え? ああ、“たくわえる”」

「なにを小細工している! ドーミラー、“いわなだれ”!」

「ゴルバット、“かみつく”!」

 ポリゴン2は2体の攻撃に耐え、

「“ほうでん”!」

 周囲に電撃を放つ。電撃はゴルバットとドーミラーを戦闘不能にする──

「よし!」

「よしじゃねえよ! なにするんだ!」

 ──だけではなく、技はゴンベにも及んだ。

「ごめんね。でも『ひんし』にはならなかったし、許してくれよ。技で回復できるでしょ」

「まあ、そうだけど……ゴンベ、“のみこむ”」

 ゴンベは“たくわえる”で防御を上げるために貯蓄したエネルギーを、体力の回復に充てた。

「ふん! ここまで来るだけのことはある。だが──」

「こっからは本気も本気よ! 泣いたって許してあげないんだから!」

 マーズはブニャットを。ジュピターはスカタンクを、それぞれ繰り出した。ふたりにとって切り札のポケモンだ。

「ジュン」

「ああ! こっちもとっておきだ!」

 ドダイトス。ゴウカザル。アクタとジュンが繰り出したのは、旅の初めにナナカマド博士から受け取ったポケモンたちだ。

 ブニャットの“つばめがえし”がドダイトスを。スカタンクの“どくづき”がゴウカザルを襲う。

「なあアクタ。オレ、強くなりたいんだ……」

 ゴウカザルは“かえんぐるま”を。

「なんか、勝ち負けとかそーゆーのじゃなくて、強くならないとダメなんだ……」

 ドダイトスは“かみくだく”を放つ。

「最強のトレーナーって、なりたいだけじゃダメなんだよ……。地道な努力……そして折れない強い心」

「言うだけなら簡単だよ」

 4体の力は拮抗していた。

「わかってる。結局オレは、これからも負けるし、悩むだろうな」

 勝負を分けたのは、タイミングか、運か、それとも「想い」といった曖昧なものか。

「それでも最強を目指す。いつか、お前に追いつきたいんだ」

 ふたりの少年のポケモンは、最後の技を放つ。

「ゴウカザル、“インファイト”!」

 スカタンクが倒れ、

「ドダイトス、“ウッドハンマー”!」

 ブニャットも戦闘不能になった。

 アクタとジュンは互いの拳を合わせて、静かに勝利を喜んだ。

 

 

「これならあたしひとりで戦えばよかったわ!」

 悪態をつくマーズだが、ジュピターは彼女の言葉を意に介することなく、ジュンを一瞥する。

「フン! 強くなったわね」

「お、おう……」

「だけどボスには敵わない」

「いいや。アカギさんにも勝つさ」

 アクタは神殿の奥に目を向ける。

「ジュン。ほんとに助かった」

「……へっ、オレのポケモン強いだろ! オレも強くなれるんだよ!

 笑うジュンだが。

「……とはいえ、いまはこれが限界かな……」

 そのままへたり込んでしまった。バトルで疲れてしまったのだろう。

「十分だよ。ナナカマド博士に、今回のことを伝えてくれる? ギンガ団のボスは『あかいくさり』っていうのを使って悪いことをしようとしているみたいなんだ」

 アカギの持つ手段について、アクタもジュンもさっぱりだったが、ナナカマド博士ならば何らかの情報を持っているかもしれない。

「わかった。えっと、『たかいくすり』?」

「『あかいくさり』! レッドなチェーン! 頼むよ!?」

「わ、わかったって! 『あかいくさり』な? たしかに伝えるよ」

 ジュンは立ち上がって、踵を返す。

「じゃあ、アクタ! あとは任せるからな!」

 走り去って行くジュン。とりあえず安心だ。

「気に入らなーい」

 マーズが間延びした声を上げる。

「あんた、ここが危険になるかもって思って、わざとあの子を逃がしたでしょ」

「……あんたたちも逃げれば。なにがあっても、ぼくは助けませんよ」

 アクタは、マーズとジュピターの間を素通りする。

「馬鹿な子。自分が一番、危険なのよ」

「あたしたちだって、あんたなんて助けてあげないんだからね!」

 負け惜しみのような、声援のような言葉を受け、アクタは整然と並んだ「槍の柱」の奥──アカギのもとにたどり着いた。




ドダイトス ♂
 のんきな性格

トゲキッス ♀
 むじゃきな性格

ラムパルド ♂
 やんちゃな性格

グレイシア ♀
 なまいきな性格

ポリゴン2
 ひかえめな性格

リオル ♀
 わんぱくな性格
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