ポケットモンスターNAVY ~暴投モンスターボール~   作:サンダーゴリラ

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レポート33 送りの泉/旅路の再開

 それから。

 破れた世界、ギラティナと戦った場所にできた穴から、シロナとアクタはすんなりと、表側の世界に帰ってきた。

「送りの泉……」

 周囲が崖に囲まれた、小さな湖だった。

「あの世と繋がっていると言われている場所……ギラティナはこの世の裏側に棲んでいると伝えられていた……」

 足元は小さな花畑。見上げた空は青。ユクシー、アグノム、エムリットの3体が、まるでアクタたちを迎えるように飛んでいる。

「帰ってきたんだ……」

 アクタはその場にへたり込む。

「ごめんなさい、大事なことを忘れていたわ。アクタくん、あなたって……アクタくん?」

 そのまま気を失ってしまったらしい。

 つぎに目覚めたのは、マサゴタウンのポケモンセンターの医務室だった。

「アクタ!」

 少年の目覚めの報を聞いて、すぐにナナカマド博士とヒカリはポケモンセンターを訪れる。

 その頃にはアクタは立ち上がれるようになっており、ポケモンたちとじゃれ合っていた。

「あ、博士。どうも。──ルカリオ、重いって。もう抱っこはムリ。進化してずいぶん大きくなったもの」

「お前はなんという……よくやってくれた! ほんとうによくやってくれた! これほどドキドキしたことは、60年の人生で初めてだ!」

 のんきにルカリオと戯れるアクタとは逆に、ナナカマド博士は涙を流さんばかりに興奮していた。

 今回の一件で、アクタは伝説のポケモンたちのデータを図鑑に記録したのだが、それが理由ではない。

 ただ、アクタがアカギの野望を打ち破り、ギラティナとの戦いの末、世界の崩壊を防いだこと。なにより無事に帰ってきたことを、喜んでいるのだ。

 それはヒカリもおなじらしい。

「博士ったら、あのあといろいろ調べて……それでアクタくんのことすっごい心配して、知り合いに連絡したりして……」

「そっか。だからジュンやシロナさんが駆けつけてくれたんだ」

「とにかくアクタくん、無事で良かったね! おかえり」

「……うん」

 ルカリオを羨ましがって、トゲキッスも出てきてアクタにのしかかったが、とりあえずいまのところ、アクタは無事だった。

 

 

「……ねえアクタくん、これ大丈夫なの?」

「え? どうみても大丈夫じゃん。あはは、強そうになったなあ」

 アクタが撫でるのは、胴体から首が浮き上がり、進化前とは胴体の向きすらひっくり返っている形状になった、ポリゴンZというポケモンだ。

 ハンサムからいくつか貰ったアイテムの中にあった『あやしいパッチ』というアイテム。それをポリゴン2に持たせ、通信交換をさせることでこの姿に進化したのだ。

「ねえ博士、これ、進化は成功してます? 通信交換に手を貸した手前、あたしなんだか責任が……」

「心配するな。ポリゴンZとはこういうポケモンだ。まあ、学会では疑問視する声もあるが……」

「疑問視て」

 当のアクタはポリゴンZに不満は持っていないようだし、ポリゴンZのほうも、アクタの隣で落ち着いている。──のかどうかわからない。ポリゴンZの黄色い無機質な目から、ヒカリは感情を読み取ることができなかった。

「そうだ、アクタ。お前に言うことがあった」

「はい?」

 ナナカマド博士に話を振られて、アクタはポリゴンZをボールに戻す。

「3匹のポケモンだが、どうやら湖に戻ったようだ」

「エムリットたちですね。リッシ湖の様子はどうです? ギンガ爆弾で干上がっちゃってましたけど……」

「すでに復興しているよ。アグノムも戻っている」

 良かった、とアクタは胸を撫で下ろした。

「ポケモン図鑑の様子も見させてもらったが、かなりのポケモンと出会っているな。……捕まえた数はともかく」

「うっ……はい」

「で、ジムバッジの数は?」

 トレーナーカードのバッジケースを開いて見せる。埋まっていないのは、1つだけ。

「なんと、もう7個持っているのか。あとナギサのジムバッジだけだな」

「はい。そういうわけで、ナギサのジムバッジを手に入れて、ポケモンリーグに挑んでみようと思います」

 帽子を被って、コートを羽織って、リュックを背負う。

「む、もう行くのか?」

「はい、身体は問題ないし」

 それに。

 なにか目的を見つけて気を紛らわせないと、アカギのことを考えてしまう。

「……ああ、そうするといい。旅をつづけることで、お前の世界はいま以上に広がるし、さらに多くのポケモンとも出会えるだろう」

 ナナカマドは、アクタの心に「傷」があることに感づいていたが、それでも送り出すことにした。少年の旅路に救いがあることを願っていたからだ。

 

 

「なんだか、こうして急がずに旅するのも久しぶりだなあ」

 222番道路。

 波打ち際を歩くアクタ。抜いだコートを片手に、隣にはドダイトス。ゆっくりとナギサシティを目指す。

 ナナカマド博士の話では、その後、警察組織の動きもあり、ギンガ団の活動は鎮圧したらしい。数人の幹部、下っ端は取り逃してしまったが、アカギが行方知れずな現在、彼らがなにか行動を起こすことはないだろう。

「まあそのあたりは、ハンサムさんたちに任せようか。ね、ドダイトス」

 ドダイトスの頭を撫でる。そしてその口元に手をかざして。

「痛たたたた。えへへっ」

 噛ませた。わざとだった。

 そんな感じて緩やかに道を進んで、アクタは街にたどり着いた。

 

────

 ここはナギサシティ。

 太陽が照らす街。

────

 

「おっ! ポケモントレーナー!」

 突然、赤いアフロヘアーの男に話しかけられた。

「はい、ポケモントレーナーです」

「ボールのなかのポケモン、強そうなのが伝わってくるぜ!」

 急に褒められて照れるが、それよりもこの男が話しかけてきた理由を知りたい。

「あなたもトレーナーなんですか?」

「おっと自己紹介! オレの名前はオーバ! ポケモンリーグの四天王 さ!」

「四天王!?」

 まさかの大物だ。「あなたもトレーナーなんですか?」なんて間抜けな質問をしてしまった。

 オーバはすこし考えて。

「そうだな! きみならできるかもな!」

「な、なにがですか?」

「この街のジムリーダーだけどさ。久しく手ごわい挑戦者が来ないからって、ポケモンジムの改造ばかり。挙句に停電だからな。ったく、世話が焼けるぜ!」

 そういえば数日前、ナギサシティで大きな停電があったという話を聞いた。それで当時はこの街を訪れることができなかったのだ。

「きみ! 熱いポケモン勝負で、あいつのハートをがんがんに燃やしてくれよ! 頼むぜ!」

 熱い笑顔とサムズアップを少年に向けて、オーバは去って行った。

 一方的ではあったが、たしかにアクタはポケモントレーナーで、このジムに挑戦するつもりだ。ゆくゆくはポケモンリーグで、四天王であるオーバとも戦うことになるのだろう。

「あのひと、ほのおタイプ使うんだろうなあ……」

 オーバの口調から、なんとなくそう感じた。

 

 

 なにはともあれ、新しい街を訪れたらまずはポケモンセンターで回復。そして観光だ。

「太陽が照らす街」といわれるだけあって、日当たりが良い。コートやマフラーをリュックにしまって、薄着で街を歩く。

 まず気になったのは、道の一部がソーラーパネルになっていることだ。聞くところによると、ポケモンジムや灯台への電気供給のため日差しを利用しているらしい。

 ナギサ市場ではシールを何枚か買った。あとでモンスターボールに貼るつもりだ。

 街の南東には、「ポケモンいわ」という岩礁がある。ナギサシティの有名なシンボルだ。

「ああ、たしかにゴンベみたいな形をしてる……」

 ジュンの手持ちのゴンベを思い出す。彼は元気にしているだろうか。

 シルベの灯台。ここもまた、ナギサシティのシンボルだ。灯台からの景色は壮観だった。青い海。そして北に見える山々に、ポケモンリーグがあるらしい。

 設置された双眼鏡は、すでに先客が使っていた。金髪の男だ。その後ろでアクタは順番を待つ。

「…………ポケモントレーナー。ナギサジムへの挑戦者か」

「え? あ、はい」

 唐突に話しかけられ、反射的に返事をする。男は双眼鏡から目を離して、こちらを振り返った。

「決めた! きみが弱ければ、オレはポケモンリーグで戦わせてもらうとしよう。ポケモンジムの改造は終わったし、なによりポケモントレーナーとして、痺れる勝負を望むからさ!」

「いや、話が見えないんですけど……」

 否。

 すこし考えれば、わかる。この男こそが──

「シンオウ地方最強のジムリーダーとしての実力。余すところなく発揮する!」

 ナギサシティのジムリーダー、デンジだ。




ドダイトス ♂
 のんきな性格

トゲキッス ♀
 むじゃきな性格

ラムパルド ♂
 やんちゃな性格

グレイシア ♀
 なまいきな性格

ポリゴンZ
 ひかえめな性格

ルカリオ ♀
 わんぱくな性格
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