ポケットモンスターNAVY ~暴投モンスターボール~   作:サンダーゴリラ

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レポート34 ナギサシティ/雷電

「オーッス! 未来のチャンピオン!」

 準備を整え、ナギサシティのジムを訪れる。眼鏡の男に迎えられるのも、なんだか久しぶりだ。

「バッジの数、7つあるよな?」

「そうですよ。ほら」

 アクタはバッジケースを見せる。

「ということはここのジムリーダーに勝てば、いよいよポケモンリーグだな」

「そうなります」

「ということはおれの最後のアドバイスということでもある! 気合いが入るぜ! 心して聞いてくれよ!」

「はい!」

「ここのジムリーダーはでんきタイプの使い手! 以上! あとはお前次第だ!」

「短っ!」

 まあ。

 7つもバッジを集めるトレーナーに、いまさらアドバイスすることは特にないということか。彼もアクタの実力を信用しているのだろう。

「でんきタイプ……じめんタイプのドダイトスもいるし、ほかのみんなも強いし、なにも不安はない」

 しかしいざジムチャレンジが始まってみると。

「うわあ」

 ジムの仕掛けに面食らった。

 スイッチを踏むたびに足場である歯車が回転する。改造に、街を停電させるほどの電力を要したというだけはある。大仰な仕掛けだった。

 歯車を操作し「道」を作るのに苦慮する。ぐるぐると回る足場に、気分が悪くなるほどだ。

 デンジのもとにたどり着くころには、アクタの足元はふらついていた。

「楽しんでくれたようじゃないか」

 気だるげに座っているデンジ。とてもじゃないが、ジムリーダーの風格は感じ取れない。

「……さて挑戦者。オレに戦いを挑んでくるトレーナーがたまにいるけど、みんなつまらないというか、手応えがないんだよ……」

「は、はあ」

「……ふう。オレがジムリーダーのデンジ。シンオウで一番のジムリーダーだといわれるが……まあいいや」

 なんて退屈そうなのだ。

 アクタがこれまで会ってきたジムリーダーは、挑戦者に対して少なからずのサービス精神というか、時に暖かく、時に熱く、時に手厚く歓迎してくれた。

「こんなに冷めた対応されるの、新鮮だけどちょっと傷つくな……」

 べつに、クレームを入れるつもりはない。問題は、デンジがちゃんと戦ってくれるのかどうかだ。

「まあとにかく……オレに、ポケモン勝負の楽しさを思い出させてくれるトレーナーであってくれ!」

 立ち上がるデンジ。目つきが鋭くなる。

「…………!」

 急に雰囲気が変わった。威圧感に、アクタの額に冷や汗が浮かぶ。思わず、合図を待たずにモンスターボールを投げてしまった。

「グレイシア!」

 投げたボールは天井に直撃したが、グレイシアは雪のようにふわりとバトルフィールドに降り立つ。

「変な投げ方だな。まあいい、さくっとやろう」

 デンジが投げたボールから飛び出したのは、黄色い体毛が逆立った、グレイシアとおなじくイーブイが進化したポケモンだ。

「サンダースだ!」

 アクタが歓喜の声を上げた。グレイシアは少年をジロリと睨む。

「あ、ごめん……じゃあ、やりましょう」

 咳払いして、戦闘態勢を取る。すぐに開始の合図が出された。

「グレイシア、“こおりのつぶて”!」

 先制攻撃。サンダースは氷の弾丸に身じろぎせず、

「“でんじは”」

 電波を放ち、グレイシアをマヒさせた。

「懐かしいなあ」

 カントー地方を思い出す。アクタ。グレイシアはまたジロリと睨む。

「あ、ごめん……それじゃあ、食べていいよ」

 グレイシアは事前に持たせていた『クラボのみ』を食べる。これでマヒ状態が回復する。

「なるほど、マヒには対策しているか」

「このくらいは予想できます。グレイシア、“れいとうビーム”!」

 冷凍光線がサンダースに大きなダメージを与える。しかしサンダースは駿足でグレイシアに近づき、

「“アイアンテール”」

 硬化させた尾を叩きつけた。はがねタイプの技だ。グレイシアに効果抜群である。

「でも、大丈夫」

 グレイシアはサンダースから目を離さない。

「“れいとうビーム”!」

 至近距離から、ふたたび光線の一撃。これにはサンダースの体力も尽き、戦闘不能になった。

「なるほど!」

 なぜかアクタより先に、デンジが歓喜の声を上げる。

「きみたちは強い! だけどオレたちだって強いぜッ!」

 2体目はライチュウ。アクタはグレイシアと交代で、ドダイトスを呼び出した。

 じめんタイプ。このまま一気に勝負を決めてしまおうと思ったのだ。

「ライチュウ、“シグナルビーム”!」

「あちゃあ」

 くさタイプのほうに効果抜群の技だ。もちろん一発、二発なら耐えられるが、いきなり大きなダメージを負うとは思わなかった。

「ちょっと油断してたかな……ドダイトス、“じしん”!」

 じめんタイプの強烈な攻撃で、ライチュウは戦闘不能になる。

「やはり“じしん”か……だが、こいつはクリアできるかな?」

 デンジの3体目は、黒いたてがみをなびかせる、四足歩行のポケモン。レントラーだ。

「もう一回、“じしん”……!」

「“こおりのキバ”!」

「そうきたかー!」

 こおりタイプに関しては、ドダイトスはめっぽう弱い。先の“シグナルビーム”のダメージもあり、4倍の威力はドダイトスを戦闘不能にした。

「その驚き様。ドダイトスがきみの切り札だったのかい? だとしたら、残念だなあ。これ以上、バトルがおもしろくなりそうもない……」

「いやいや、気を緩めないでくださいよ。頼むから」

 アクタはつぎのモンスターボールを手にする。

「油断してたのは認めます。ドダイトスで無双しようとしてたのも事実です。でもほかのみんなも、ちゃんと強いんですよ」

 アクタが投げたボールは、幸いにも足元に。現れたのはポリゴンZ。

「……珍しいポケモンだな」

「えへへ。さて、ポリゴンZ。どんどん攻めるよ」

 ヒカリからは「大丈夫なのか」なんて言われたが、その心配は意外と的外れではなく、すこし防御関連の能力が下がったようだ。しかし反面、素早さと特殊攻撃は向上している。

「“トライアタック”!」

 三角形を形づくる光線。以前より威力を増しており、レントラーは思わずのけ反る。

「くっ! “かみなりのキバ”!」

 反撃で、電撃をまとった牙に襲われる。いつもならばここで“じこさいせい”による回復を図るのだが、今回は攻撃的だ。

「ポリゴンZ、“はかいこうせん”!」

 絶大な威力を持つ光線。ノーマルタイプの特殊攻撃技としては最強の威力を誇る。光線を真正面から浴びて、レントラーは戦闘不能になった。

「いいね! 痺れてきた!」

 ほくそ笑むデンジ。追い詰められているのに、この男が一番楽しそうだ。

「こいつが! オレの! 最後の切り札ッ!!」

 巨体がバトルフィールドに降り立つ。危機感を覚えさせるような黄色と黒の虎模様。二又の尻尾と指には電気を帯びている。

「さあ行こうぜ、エレキブル!!」

「くっ、ポリゴンZ……!」

 は。

「あ、動けないんだった」

 “はかいこうせん”の反動だ。あまりに威力が高いために、使用後は動きが止まる。そんなポリゴンZに、エレキブルの拳が迫る。

「“かみなりパンチ”!」

 強烈な一撃に、ポリゴンZは倒れた。

「うーん、力押しが過ぎたな。もうちょっと考えなきゃだったか……おつかれさま、ポリゴンZ」

 交代。アクタの4体目は、ルカリオだった。

「“ボーンラッシュ”!」

 ルカリオは「波動」で棍棒を形成する。そしてエレキブルに突撃し、連続攻撃を仕掛けた。じめんタイプの技だ。1発、2発と当たるたびに、エレキブルの体力は削れていく。

 棍棒がヒットしたのは、4発。エレキブルは即座に反撃してきた。

「エレキブル、“ほのおのパンチ”だ!」

 その拳を炎が覆う。その一撃でルカリオの身体が吹き飛ぶ。

「なんだこの威力!? ──あ、そうか」

 ルカリオに進化したことで、はがねタイプが追加されたのだ。その分、ほのおタイプに弱くなっている。

「ここまで追い詰められるとは意外だったよ! なあ! まだやれるんだろ!」

 高揚するデンジ。彼の波動を読み取ったのか、呼応するようにルカリオは立ち上がった。

 あるいは、「立ち上がってくれ」と願いアクタの波動を呼んだのか。

「もう一度“ほのおのパンチ”を喰らわせれば、オレの勝ちだぜ。さて、きみはどうする?」

「体格はエレキブルが上。懐に潜り込んで、一気に決めたいところだけど……近づけば、カウンターでパンチを喰らうかも。じゃあ、ルカリオ」

 ルカリオは両手に波動を込めて、光球を形成する。

「──っ! “ほのおのパンチ”!」

 先に攻撃を仕掛けようとするデンジだが、間に合わない。ルカリオの攻撃準備はすでに完了していた。

「“はどうだん”!」

 青い光球を発射。迫りくるエレキブルに直撃する。

「エレキブル!」

 巨体の歩みは止まらない。

 ──と思われたが、ルカリオの手前で膝をつき、そのまま戦闘不能になった。

「……フッフッフ」

 デンジは肩を揺らす。その姿をアクタは不気味に感じた。

「あ、あの……!」

「ハッハッハ!」

 突然、デンジは笑いだす。大口を開けて、腹を抱えて、じつに爽やかな笑いだった。

「……久々に楽しいポケモン勝負だった! そしてこれからもポケモンが! きみが! どんな戦い方をするのか楽しみでたまらない」

 バトルが終わっても、デンジのテンションは下がらなかった。というより、あのローテンションがすっかり治ったみたいだ。

「……ほんとに、退屈だっただけなんですね」

「さあ8つめのジムバッジ、受け取ってくれ!」

 ビーコンバッジ。金色のジムバッジだ。これで、アクタのもとにシンオウ地方のジムバッジすべてが揃った。

「あ、そういえば名前を聞いていなかったね」

「いまですか!?」

 どれだけ挑戦者に興味を持っていないんだ。

「ぼくはアクタっていいます。よろしくお願いします」

 デンジは「うん」と頷いたあと。

「……アクタってきみか!?」

 なぜか驚かれた。

「ぼくのこと、知ってるんですか?」

「知ってるもなにも、待ってたんだぜ? カントーで殿堂入りしたトレーナーが、こんどはシンオウでジム巡りしてるっていうからさ。いつかうちにも来るだろうと、ジムを大改造したんだ」

「…………」

 アクタは絶句してしまった。

「すると、ぼくのために、このジムを?」

「楽しかった?」

「しんどかったです」

「そいつは良かった」

「停電したとか……」

「ああ、些細な話さ。気にするな」

 少年は、自分がナギサシティにとんでもない迷惑をかけてしまったのではないかと、とてつもない不安に駆られた。




ドダイトス ♂
 のんきな性格

トゲキッス ♀
 むじゃきな性格

ラムパルド ♂
 やんちゃな性格

グレイシア ♀
 なまいきな性格

ポリゴンZ
 ひかえめな性格

ルカリオ ♀
 わんぱくな性格
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