ポケットモンスターNAVY ~暴投モンスターボール~ 作:サンダーゴリラ
「ポリゴンZ、“はかいこうせん”!」
カビゴンが“ねむる”で行動できない隙をついて、光線を発射する。カビゴンとの戦闘は長引いたが、ようやく倒すことができた。
「あー! ちくしょう! どこかで判断ミスったか!?」
「まあ、ほんとに紙一重だったな。カビゴンってやっぱり、しぶといや……」
ジュンがつぎに繰り出したのは、フローゼル。ポリゴンZはでんき技を使えるので、そえで突破できるかと思ったが……
「フローゼル、“アクアジェット”!」
先制技を喰らって、戦闘不能になってしまった。カビゴン戦でのダメージが大きかったのだ。
「みずタイプか。だったら……」
アクタはドダイトスの入ったボールに手をかけるが。
「……嫌な予感」
ノモセジムでの戦いを思い出し、ここはあえて、ラムパルドを選択した。みずタイプは得意ではないが、決して引けは取るまい。
「“アクアジェット”!」
効果抜群の技は手痛いが、威力はそこまでのものではない。
「ラムパルド、“いわなだれ”!」
攻撃力ならば、ラムパルドがまだ上だ。
「“もろはのずつき”!」
続けざまに放った強烈な頭突きで、フローゼルは戦闘不能になった。ジュンはひるまず、つぎのポケモンを繰り出す。
「ロズレイド! “ギガドレイン”!」
フローゼルからの攻撃と“もろはのずつき”で体力が激減していたラムパルドは、やはり一撃で『ひんし』になった。
「──ドダイトス!」
考えた末、アクタはおなじくさタイプをぶつけることにした。
「よし! ロズレイド、“どくづき”!」
どくタイプの技だったが、威力は通常。
「あ、そっか! じめんタイプ……」
「そうだよ。とはいえ、毒の状態異常が恐いけどね──“かみくだく”!」
ドダイトスの牙がロズレイドを襲う。
「じゃあ……“くさぶえ”!」
ロズレイドが奏でる音色に、ドダイトスの動きが止まり、そのまま目を閉じてしまった。『ねむり』の状態異常である。
「うお! 眠った!」
声を上げるジュン。
「なんでそっちがびっくりしてんの?」
「いや、あんまり上手くいったことがなくて……って、驚いている場合か! ロズレイド、この隙に“シャドーボール”!」
ドダイトスが起きるのを待っていたら、その間にどんどんダメージを与えられてしまう。アクタはドダイトスの鼻先に、『カゴのみ』を置いた。
ばくん、と眠りつつもドダイトスは木の実にかじりつく。その『カゴのみ』の効果で、カッと目を開き、覚醒した。
「ドダイトス、“じしん”!」
揺れるバトルフィールド。ロズレイドは倒れた。
「…………」
ジュンは黙って、『ひんし』のロズレイドをモンスターボールに収めた。そして最後のボールを手に取る。
「オレはこいつを信じてる。だから騒がないぜ」
現れたのは、煌々と頭部の炎が燃えている、長い手足を持つ俊敏なポケモン、ゴウカザル。
「ジュン。きみは──」
否。まだ言うまい。
ドダイトスとともに、彼らに向かい合う。
「“かえんほうしゃ”!」
「“じしん”」
大地の揺らぎがゴウカザルを襲う──よりも先に、炎はドダイトスに到達した。その巨体は、やがて倒れる。戦闘不能だ。
「──強くなったね」
思わず、言った。
「まだまだ、こんなもんじゃないぜ! お前だってそうだろ? さあ、つぎのポケモンを出せよ!」
「うん。──ルカリオ!」
2体の格闘ポケモンが向かい合う。
「ゴウカザル、“つばめがえし”!」
「ルカリオ、“ボーンラッシュ”!」
タイプ相性でいえば、ルカリオが圧倒的に不利だ。はがねタイプはほのおにもかくとうにも弱い。
「“はどうだん”!」
「“きあいだま”!」
それでもこの場合、トレーナーのレベル、ポケモンのレベルが、勝敗を分けた。
「“ボーンラッシュ”!」
棍棒による連撃に、ゴウカザルは膝をついた。その状態で、戦闘不能。
「よくやったね。おつかれさま!」
アクタにもとに戻ったルカリオと、ハイタッチ。
ジュンは手持ち6体を出し尽くした。もはや戦えるポケモンはいない。はっきりと勝敗がついたのだ。
「なんだってんだよーッ! まだ鍛え方、足りないのかよ!」
ようやく、ジュンは騒いだ。
「お前に負けるようじゃ、ポケモンリーグはまだ早いってか! ちくしょう!」
「ジュン……ほんとにこのまま、リーグに挑戦しないつもり? 諦めるの?」
「まさか! ちゃんと挑戦するさ! でもいまじゃない!」
笑みを浮かべるジュンの目には、涙が溜まっているように見えた。
「もっと強くなって、ポケモンリーグ勝ち抜いてやる! なんたってオレは、最強のポケモントレーナー、チャンピオンになるからな!」
良かった。
ジュンは打ちひしがれていない。ちゃんと前を向いている。彼の強い意志が、アクタには頼もしく思えた。
「アクタ! オレに負けるまでだれにも負けるんじゃねーぞ!!」
「いや、きみにも負けないね。つぎもぼくが勝つさ!」
ジュンはポケモンリーグを後にした。
この日の挑戦者は、アクタという少年ひとりである。
:
クロガネのコールバッジ。
ハクタイのフォレストバッジ。
ヨスガのレリックバッジ。
トバリのコボルバッジ。
ノモセのフェンバッジ。
ミオのマインバッジ。
キッサキのグレイシャバッジ。
ナギサのビーコンバッジ。
「よろしい! シンオウ地方のジムバッジをすべて持つトレーナーよ。その力をここでも発揮し、栄光を勝ち取って見よ!」
バッジのチェックが終わり、いよいよアクタのポケモンリーグの挑戦が始まった。
まずは四天王と呼ばれる四人のトレーナーとの戦い。彼らに勝利できなければ、チャンピオンへの挑戦権は得られない。
「ハーイ! ようこそ! ポケモンリーグへ!」
ひとり目。アクタを迎えたのは、緑色の髪の男だった。
「ボクは四天王のリョウです。ヨロシク!」
「あ、はい。アクタです。よろしく……」
手を広げて明るく迎えられてしまい、アクタは面食らってしまう。てっきり、威圧的な態度を取られるものかと……少なくとも威厳を感じるトレーナーが出てくるものと思ったからだ。
リョウと名乗った男は、アクタと歳がひと回りほどしか離れていなさそうだ。とにかく若い。そしてなんとなく、輝いている。なんだかアイドルみたいだな、と思った。
「あっ、ボク、むしポケモン大好きなんで!」
「むしポケモンが?」
「だってむしポケモン、かっこいいし、きれいでしょ!」
ぜんぶのポケモンがそうではないだろうか、とアクタは思ったが、ややこしくなりそうなので口には出さなかった。
「そう! ボク、むしポケモンのようにパーフェクトになるため、ここで挑戦者と戦っています!」
「…………」
変なひとだ。だが、アクタは好感を持った。
「ぼく、むしタイプのポケモンって捕まえたことがなくて……」
「ええ!? そんな人間がいるの!?」
大げさに驚くリョウ。
「だったらぜひ、きみにむしポケモンの魅力をわかってもらわなくっちゃ! では、相手させてもらいます!」
アクタはむしタイプに魅力を感じていないわけではない。単純に、ノーコンだから捕まえられないだけだ。
そういうわけで、ポケモンリーグ四天王第一戦目が始まった。
メガヤンマ。ヘラクロス。ビークイン。リョウの繰り出すむしポケモンは強力だったものの、ひこうタイプやいわタイプの技で攻略した。
はがねタイプを持つハッサムが強敵だったが、どうにか撃破する。
「まだまだ! ポケモンリーグ初勝利は軽いもんじゃない!」
リョウが最後に繰り出したのは、鋭利な両腕と尾の爪が特徴の、化けサソリポケモン、ドラピオン。
「……ん? むしタイプは?」
首を傾げるアクタ。ドラピオンのタイプは、どく・あくタイプだった。
「まあ、そこは言いっこなしでしょ。進化前のスコルピのときは、むしタイプが入ってたんだけど……」
対峙するトゲキッスは、まずはこれまでのようにひこうタイプの技で攻める。
「“エアスラッシュ”!」
「“こおりのキバ”!」
「ええ~?」
前の戦いのダメージもあり、トゲキッスは戦闘不能になる。
「困ったな。“こおりのキバ”を使うのか……」
トゲキッスをモンスターボールに戻す。ドラピオンのタイプにはじめんタイプが有効だが、ドダイトスにこおりタイプは不利だ。
「しっかり対策されてるってことか……じゃあ、ポリゴンZ!」
悩んだ末に、アクタはノーマルタイプで特殊攻撃が高い、ポリゴンZを選択した。
「“トライアタック”!」
光線を受けて、ドラピオンは凍結した。『こおり』の状態異常だ。
「うわっ」
「うおお」
アクタもリョウも驚いた。“トライアタック”は低確率で『まひ』、『やけど』、『こおり』のいずれかの状態異常を与える技だ。そのうち『こおり』はもっとも拘束力が高い。
「くっ! ドラピオン、しっかり!」
リョウは『なんでもなおし』を使用してドラピオンを回復するが、遅い。アクタはすでに、ポリゴンZとドダイトスを交代させていた。
「“じしん”!」
揺れる大地に呑まれ、ドラピオンは戦闘不能になった。
「ボクの負けだ。だけどむしポケモンの素晴らしさ、ポケモンリーグのすごさ……そしてポケモン勝負の奥深さ、きみに伝わったと思う」
ポケモンリーグの初戦は、どうにか勝利を収めた。
「いちばん美しく、いちばん強いむしポケモンで負けたのは、ボクが甘いからだ。よし!鍛えなおします! ということで応援ヨロシクです!」
「……えっと、応援ですか」
「じゃなかった……つぎの部屋にどうぞ! あと3人、ボクよりも強いトレーナーが待ってますから!」
やはりリョウはおもしろい。アクタはすこしこの部屋を名残惜しく思いつつ、つぎの部屋へ進んだ。
:
「おやおや。かわいらしい、それでいて頼もしいトレーナーだね」
ふたり目の四天王は、コートを羽織った白髪の老婆。アクタは思わず、彼女をじっと見つめた。
「あら、なにか?」
「いや、すいません。なんだか知ってるひとに似てて……」
「まあ、口説かれるのなんて何年振りでしょう。ドキドキしてしまいますわ」
笑う老婆。アクタは否定してしまうのも失礼な気がして、「いやあそんな」なんて曖昧に笑って流した。
実際、似ている。カントー地方の四天王である彼女に。
「おほほ! あたしはキクノ。特に大事にしているのは、じめんタイプのポケモンね」
ゴーストタイプではないようだ。じゃあ、気のせいだ。
「ぼくはアクタっていいます。よろしくお願いします」
「ほほほ! じゃあ、おばあさんがどれだけやれるか、見てあげますよ」
穏やかな雰囲気と裏腹に、キクノのポケモンたちはじつにパワフルだった。ナマズン。グライオン。ゴローニャ。アクタにはドダイトスやグレイシアといった、じめんタイプに有利なポケモンたちがいたので、一応優勢ではある。
「グレイシア、“れいとうビーム”!」
キクノの4体目、カバルドンも撃破。老婆は落ち着いた様子で、しかし真剣な眼差しで、最後のポケモンを繰り出す。
「お願いね、ドサイドン」
岩の装甲をまとった──サイドン? アクタは首を傾げる。
「ま、まさかサイドンが進化……?」
「そうよ。ドサイドンを見るのは初めて? 『プロテクター』という道具が必要なのよ」
その両腕がグレイシアに向けられる。掌に穴が空いていて、まるで大砲だ。
「“こおりのつぶて”!」
先制攻撃。氷の弾丸は効果抜群なはずなのに、ドサイドンは一切、ひるまない。
「“がんせきほう”」
ドサイドンの腕から、大岩が発射された。超強力ないわタイプの技に、グレイシアは宙を舞って戦闘不能になった。
「つ、つよ……!」
急いでグレイシアをモンスターボールに戻す。つぎに出すポケモンは──ドダイトスは先の戦いで『ひんし』状態。ほかのポケモンたちでドサイドンに有利なのは……
「──ルカリオ!」
いわタイプの弱点を狙うことにした。
ドサイドンはこちらに目線を向けつつも、その大砲の腕はぎしぎしと軋み、動こうとしない。
「あ、さっきの“がんせきほう”っていう技、もしかして……」
「ええそうなのよ。一発使うと、すこし動きが止まってしまうの。あなたにとっては大きな好機ね」
キクノにとってはピンチなはずなのに、彼女に動揺の色はなかった。まるでアクタを試しているように、穏やかかつ冷徹な目をしている。
「だからといって、ここで勝てると思って油断しないことですよ。ドサイドンが動けるようになったとき、“じしん”がルカリオを襲うでしょう」
そう。ルカリオははがねタイプを持っている。キクノの得意なじめんタイプには、本来相性は悪いのだ。
実質、これがルカリオに許された最後のターンというわけだ。
「ルカリオ──」
熟考している暇はない。ルカリオが使える技でもっとも威力が高いのは、“インファイト”。
──でも、それが正解か?
少年のトレーナーとしての経験は、やがて閃きにつながる。
「──“はどうだん”!」
青い光球。
その一撃を受けて、ドサイドンの巨体が沈む。
「やっぱりだ。サイドンとおなじで、特防はあまり高くない……ですよね」
「正解です」
もしも物理攻撃の“インファイト”を選択していたら、耐えられたかもしれない。そうなったら、技の影響で防御が下がったルカリオは、間違いなく“じしん”に葬られただろう。
「あなたの指示は的確で、ポケモンたちは迷いなくそれに従った。大したものですよ。ポケモンがあなたを信じて、力を出し切っての勝利。負けたのに思わず微笑んじゃうわ」
微笑む──どころか、キクノは楽しそうに声を上げて笑った。
「おほほほ! あなたたちならどこまででもいけますよ」
ドダイトス ♂
のんきな性格
トゲキッス ♀
むじゃきな性格
ラムパルド ♂
やんちゃな性格
グレイシア ♀
なまいきな性格
ポリゴンZ
ひかえめな性格
ルカリオ ♀
わんぱくな性格