ポケットモンスターNAVY ~暴投モンスターボール~   作:サンダーゴリラ

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レポート36 ポケモンリーグ/四天王戦

「ポリゴンZ、“はかいこうせん”!」

 カビゴンが“ねむる”で行動できない隙をついて、光線を発射する。カビゴンとの戦闘は長引いたが、ようやく倒すことができた。

「あー! ちくしょう! どこかで判断ミスったか!?」

「まあ、ほんとに紙一重だったな。カビゴンってやっぱり、しぶといや……」

 ジュンがつぎに繰り出したのは、フローゼル。ポリゴンZはでんき技を使えるので、そえで突破できるかと思ったが……

「フローゼル、“アクアジェット”!」

 先制技を喰らって、戦闘不能になってしまった。カビゴン戦でのダメージが大きかったのだ。

「みずタイプか。だったら……」

 アクタはドダイトスの入ったボールに手をかけるが。

「……嫌な予感」

 ノモセジムでの戦いを思い出し、ここはあえて、ラムパルドを選択した。みずタイプは得意ではないが、決して引けは取るまい。

「“アクアジェット”!」

 効果抜群の技は手痛いが、威力はそこまでのものではない。

「ラムパルド、“いわなだれ”!」

 攻撃力ならば、ラムパルドがまだ上だ。

「“もろはのずつき”!」

 続けざまに放った強烈な頭突きで、フローゼルは戦闘不能になった。ジュンはひるまず、つぎのポケモンを繰り出す。

「ロズレイド! “ギガドレイン”!」

 フローゼルからの攻撃と“もろはのずつき”で体力が激減していたラムパルドは、やはり一撃で『ひんし』になった。

「──ドダイトス!」

 考えた末、アクタはおなじくさタイプをぶつけることにした。

「よし! ロズレイド、“どくづき”!」

 どくタイプの技だったが、威力は通常。

「あ、そっか! じめんタイプ……」

「そうだよ。とはいえ、毒の状態異常が恐いけどね──“かみくだく”!」

 ドダイトスの牙がロズレイドを襲う。

「じゃあ……“くさぶえ”!」

 ロズレイドが奏でる音色に、ドダイトスの動きが止まり、そのまま目を閉じてしまった。『ねむり』の状態異常である。

「うお! 眠った!」

 声を上げるジュン。

「なんでそっちがびっくりしてんの?」

「いや、あんまり上手くいったことがなくて……って、驚いている場合か! ロズレイド、この隙に“シャドーボール”!」

 ドダイトスが起きるのを待っていたら、その間にどんどんダメージを与えられてしまう。アクタはドダイトスの鼻先に、『カゴのみ』を置いた。

 ばくん、と眠りつつもドダイトスは木の実にかじりつく。その『カゴのみ』の効果で、カッと目を開き、覚醒した。

「ドダイトス、“じしん”!」

 揺れるバトルフィールド。ロズレイドは倒れた。

「…………」

 ジュンは黙って、『ひんし』のロズレイドをモンスターボールに収めた。そして最後のボールを手に取る。

「オレはこいつを信じてる。だから騒がないぜ」

 現れたのは、煌々と頭部の炎が燃えている、長い手足を持つ俊敏なポケモン、ゴウカザル。

「ジュン。きみは──」

 否。まだ言うまい。

 ドダイトスとともに、彼らに向かい合う。

「“かえんほうしゃ”!」

「“じしん”」

 大地の揺らぎがゴウカザルを襲う──よりも先に、炎はドダイトスに到達した。その巨体は、やがて倒れる。戦闘不能だ。

「──強くなったね」

 思わず、言った。

「まだまだ、こんなもんじゃないぜ! お前だってそうだろ? さあ、つぎのポケモンを出せよ!」

「うん。──ルカリオ!」

 2体の格闘ポケモンが向かい合う。

「ゴウカザル、“つばめがえし”!」

「ルカリオ、“ボーンラッシュ”!」

 タイプ相性でいえば、ルカリオが圧倒的に不利だ。はがねタイプはほのおにもかくとうにも弱い。

「“はどうだん”!」

「“きあいだま”!」

 それでもこの場合、トレーナーのレベル、ポケモンのレベルが、勝敗を分けた。

「“ボーンラッシュ”!」

 棍棒による連撃に、ゴウカザルは膝をついた。その状態で、戦闘不能。

「よくやったね。おつかれさま!」

 アクタにもとに戻ったルカリオと、ハイタッチ。

 ジュンは手持ち6体を出し尽くした。もはや戦えるポケモンはいない。はっきりと勝敗がついたのだ。

「なんだってんだよーッ! まだ鍛え方、足りないのかよ!」

 ようやく、ジュンは騒いだ。

「お前に負けるようじゃ、ポケモンリーグはまだ早いってか! ちくしょう!」

「ジュン……ほんとにこのまま、リーグに挑戦しないつもり? 諦めるの?」

「まさか! ちゃんと挑戦するさ! でもいまじゃない!」

 笑みを浮かべるジュンの目には、涙が溜まっているように見えた。

「もっと強くなって、ポケモンリーグ勝ち抜いてやる! なんたってオレは、最強のポケモントレーナー、チャンピオンになるからな!」

 良かった。

 ジュンは打ちひしがれていない。ちゃんと前を向いている。彼の強い意志が、アクタには頼もしく思えた。

「アクタ! オレに負けるまでだれにも負けるんじゃねーぞ!!」

「いや、きみにも負けないね。つぎもぼくが勝つさ!」

 ジュンはポケモンリーグを後にした。

 この日の挑戦者は、アクタという少年ひとりである。

 

 

 クロガネのコールバッジ。

 ハクタイのフォレストバッジ。

 ヨスガのレリックバッジ。

 トバリのコボルバッジ。

 ノモセのフェンバッジ。

 ミオのマインバッジ。

 キッサキのグレイシャバッジ。

 ナギサのビーコンバッジ。

「よろしい! シンオウ地方のジムバッジをすべて持つトレーナーよ。その力をここでも発揮し、栄光を勝ち取って見よ!」

 バッジのチェックが終わり、いよいよアクタのポケモンリーグの挑戦が始まった。

 まずは四天王と呼ばれる四人のトレーナーとの戦い。彼らに勝利できなければ、チャンピオンへの挑戦権は得られない。

「ハーイ! ようこそ! ポケモンリーグへ!」

 ひとり目。アクタを迎えたのは、緑色の髪の男だった。

「ボクは四天王のリョウです。ヨロシク!」

「あ、はい。アクタです。よろしく……」

 手を広げて明るく迎えられてしまい、アクタは面食らってしまう。てっきり、威圧的な態度を取られるものかと……少なくとも威厳を感じるトレーナーが出てくるものと思ったからだ。

 リョウと名乗った男は、アクタと歳がひと回りほどしか離れていなさそうだ。とにかく若い。そしてなんとなく、輝いている。なんだかアイドルみたいだな、と思った。

「あっ、ボク、むしポケモン大好きなんで!」

「むしポケモンが?」

「だってむしポケモン、かっこいいし、きれいでしょ!」

 ぜんぶのポケモンがそうではないだろうか、とアクタは思ったが、ややこしくなりそうなので口には出さなかった。

「そう! ボク、むしポケモンのようにパーフェクトになるため、ここで挑戦者と戦っています!」

「…………」

 変なひとだ。だが、アクタは好感を持った。

「ぼく、むしタイプのポケモンって捕まえたことがなくて……」

「ええ!? そんな人間がいるの!?」

 大げさに驚くリョウ。

「だったらぜひ、きみにむしポケモンの魅力をわかってもらわなくっちゃ! では、相手させてもらいます!」

 アクタはむしタイプに魅力を感じていないわけではない。単純に、ノーコンだから捕まえられないだけだ。

 そういうわけで、ポケモンリーグ四天王第一戦目が始まった。

 メガヤンマ。ヘラクロス。ビークイン。リョウの繰り出すむしポケモンは強力だったものの、ひこうタイプやいわタイプの技で攻略した。

 はがねタイプを持つハッサムが強敵だったが、どうにか撃破する。

「まだまだ! ポケモンリーグ初勝利は軽いもんじゃない!」

 リョウが最後に繰り出したのは、鋭利な両腕と尾の爪が特徴の、化けサソリポケモン、ドラピオン。

「……ん? むしタイプは?」

 首を傾げるアクタ。ドラピオンのタイプは、どく・あくタイプだった。

「まあ、そこは言いっこなしでしょ。進化前のスコルピのときは、むしタイプが入ってたんだけど……」

 対峙するトゲキッスは、まずはこれまでのようにひこうタイプの技で攻める。

「“エアスラッシュ”!」

「“こおりのキバ”!」

「ええ~?」

 前の戦いのダメージもあり、トゲキッスは戦闘不能になる。

「困ったな。“こおりのキバ”を使うのか……」

 トゲキッスをモンスターボールに戻す。ドラピオンのタイプにはじめんタイプが有効だが、ドダイトスにこおりタイプは不利だ。

「しっかり対策されてるってことか……じゃあ、ポリゴンZ!」

 悩んだ末に、アクタはノーマルタイプで特殊攻撃が高い、ポリゴンZを選択した。

「“トライアタック”!」

 光線を受けて、ドラピオンは凍結した。『こおり』の状態異常だ。

「うわっ」

「うおお」

 アクタもリョウも驚いた。“トライアタック”は低確率で『まひ』、『やけど』、『こおり』のいずれかの状態異常を与える技だ。そのうち『こおり』はもっとも拘束力が高い。

「くっ! ドラピオン、しっかり!」

 リョウは『なんでもなおし』を使用してドラピオンを回復するが、遅い。アクタはすでに、ポリゴンZとドダイトスを交代させていた。

「“じしん”!」

 揺れる大地に呑まれ、ドラピオンは戦闘不能になった。

「ボクの負けだ。だけどむしポケモンの素晴らしさ、ポケモンリーグのすごさ……そしてポケモン勝負の奥深さ、きみに伝わったと思う」

 ポケモンリーグの初戦は、どうにか勝利を収めた。

「いちばん美しく、いちばん強いむしポケモンで負けたのは、ボクが甘いからだ。よし!鍛えなおします! ということで応援ヨロシクです!」

「……えっと、応援ですか」

「じゃなかった……つぎの部屋にどうぞ! あと3人、ボクよりも強いトレーナーが待ってますから!」

 やはりリョウはおもしろい。アクタはすこしこの部屋を名残惜しく思いつつ、つぎの部屋へ進んだ。

 

 

「おやおや。かわいらしい、それでいて頼もしいトレーナーだね」

 ふたり目の四天王は、コートを羽織った白髪の老婆。アクタは思わず、彼女をじっと見つめた。

「あら、なにか?」

「いや、すいません。なんだか知ってるひとに似てて……」

「まあ、口説かれるのなんて何年振りでしょう。ドキドキしてしまいますわ」

 笑う老婆。アクタは否定してしまうのも失礼な気がして、「いやあそんな」なんて曖昧に笑って流した。

 実際、似ている。カントー地方の四天王である彼女に。

「おほほ! あたしはキクノ。特に大事にしているのは、じめんタイプのポケモンね」

 ゴーストタイプではないようだ。じゃあ、気のせいだ。

「ぼくはアクタっていいます。よろしくお願いします」

「ほほほ! じゃあ、おばあさんがどれだけやれるか、見てあげますよ」

 穏やかな雰囲気と裏腹に、キクノのポケモンたちはじつにパワフルだった。ナマズン。グライオン。ゴローニャ。アクタにはドダイトスやグレイシアといった、じめんタイプに有利なポケモンたちがいたので、一応優勢ではある。

「グレイシア、“れいとうビーム”!」

 キクノの4体目、カバルドンも撃破。老婆は落ち着いた様子で、しかし真剣な眼差しで、最後のポケモンを繰り出す。

「お願いね、ドサイドン」

 岩の装甲をまとった──サイドン? アクタは首を傾げる。

「ま、まさかサイドンが進化……?」

「そうよ。ドサイドンを見るのは初めて? 『プロテクター』という道具が必要なのよ」

 その両腕がグレイシアに向けられる。掌に穴が空いていて、まるで大砲だ。

「“こおりのつぶて”!」

 先制攻撃。氷の弾丸は効果抜群なはずなのに、ドサイドンは一切、ひるまない。

「“がんせきほう”」

 ドサイドンの腕から、大岩が発射された。超強力ないわタイプの技に、グレイシアは宙を舞って戦闘不能になった。

「つ、つよ……!」

 急いでグレイシアをモンスターボールに戻す。つぎに出すポケモンは──ドダイトスは先の戦いで『ひんし』状態。ほかのポケモンたちでドサイドンに有利なのは……

「──ルカリオ!」

 いわタイプの弱点を狙うことにした。

 ドサイドンはこちらに目線を向けつつも、その大砲の腕はぎしぎしと軋み、動こうとしない。

「あ、さっきの“がんせきほう”っていう技、もしかして……」

「ええそうなのよ。一発使うと、すこし動きが止まってしまうの。あなたにとっては大きな好機ね」

 キクノにとってはピンチなはずなのに、彼女に動揺の色はなかった。まるでアクタを試しているように、穏やかかつ冷徹な目をしている。

「だからといって、ここで勝てると思って油断しないことですよ。ドサイドンが動けるようになったとき、“じしん”がルカリオを襲うでしょう」

 そう。ルカリオははがねタイプを持っている。キクノの得意なじめんタイプには、本来相性は悪いのだ。

 実質、これがルカリオに許された最後のターンというわけだ。

「ルカリオ──」

 熟考している暇はない。ルカリオが使える技でもっとも威力が高いのは、“インファイト”。

 ──でも、それが正解か?

 少年のトレーナーとしての経験は、やがて閃きにつながる。

「──“はどうだん”!」

 青い光球。

 その一撃を受けて、ドサイドンの巨体が沈む。

「やっぱりだ。サイドンとおなじで、特防はあまり高くない……ですよね」

「正解です」

 もしも物理攻撃の“インファイト”を選択していたら、耐えられたかもしれない。そうなったら、技の影響で防御が下がったルカリオは、間違いなく“じしん”に葬られただろう。

「あなたの指示は的確で、ポケモンたちは迷いなくそれに従った。大したものですよ。ポケモンがあなたを信じて、力を出し切っての勝利。負けたのに思わず微笑んじゃうわ」

 微笑む──どころか、キクノは楽しそうに声を上げて笑った。

「おほほほ! あなたたちならどこまででもいけますよ」




ドダイトス ♂
 のんきな性格

トゲキッス ♀
 むじゃきな性格

ラムパルド ♂
 やんちゃな性格

グレイシア ♀
 なまいきな性格

ポリゴンZ
 ひかえめな性格

ルカリオ ♀
 わんぱくな性格
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