ポケットモンスターNAVY ~暴投モンスターボール~ 作:サンダーゴリラ
トバリシティ。
ギンガ団の本部、ギンガトバリビルにて。
「サターンさん」
「お前か……」
アクタの顔を見るなり、青い髪を立てた細身の男、サターンは苦々しく表情を歪めた。
「元気ですか?」
「元気そうに見えるか?」
「それは……」
アクタは部屋を見渡す。物が少ない、簡素は空間。部屋のすみにはいくつかの段ボールが積み上がっていて、その上にドクロッグが寝そべっている。
引っ越し、ではない。
トバリシティ、ハクタイシティのギンガ団のビルには連日、警察組織の捜査部隊が出入りしている。
表向きにはエネルギー開発を行う研究団体。
しかして、その実態は組織犯罪のグループ。
それが明るみになった以上、証拠を押収されたり、団員の聞き取りが行われたりと、ギンガ団はかつてないほどの繁忙と混乱に見舞われている。
「お前のせいだぞ」
「悪いことしたのはそっちでしょ」
サターンの恨み言も、アクタはどこ吹く風だ。なんだか物腰柔らかな少年の様子が、サターンはおもしろくなかった。
怒るなり、悲しむなり、動揺させてみたかったのだが。
「ところで、アカギさんはまだ見つからないんですよね」
「ああ。マーズとジュピターが捜索に行ったっきりだが、なんの報告もない」
サターンは深いため息をついて、椅子に深く座る。
「聞いたぞ、槍の柱でのこと」
「……うん」
「あのひと……アカギ様は心という不完全な存在を憎んでいた。そのくせ、熱い言葉で他人の心を自在に操るという矛盾を見せる」
洗脳。扇動。人心掌握。
「ギンガ団に栄光あれ」だなんて思ってもない言葉で、団員たちに演説していたことを思い出す。
「わたしはそれが気になり、あのひとがなにをするのか、そばにいて見定めようとしていた」
「サターンさんは、最初からわかってたんですね。アカギさんの……恐いところを」
「だけどそれも終わった……心の無い世界など、だれが望むというのだ!?」
アカギの野望は結局、サターンにとって同調できるものではなかったのだ。
「これから、どうするんです? ギンガ団のこと。サターンさん、ここに残っているっていうことは……」
「残った団員たちのこともある。放っておくわけにはいくまい。さて、どうするか……?」
サターンは苦笑する。
「こんな状況じゃ、新しくなにかを始めるのも難しいかもな。なにせギンガ団は犯罪組織の扱いだ」
「……やり直せると思いますよ」
「はっ! 他人事だと思って」
「そんなこと言わないでよ。いまはまだ、はっきりとした展望は見えないだろうけどさ。これまで悪いことに使ってきた技術も、良いほうに切り替えていけばいいんだ。サターンさんたちなら、きっとそれができるって思うよ」
サターンはふたたび、深いため息をつく。
「なにをやるにしても──やりすぎは良くない。そのことは教えられたからな」
少年から目を逸らして、彼は窓の外に目を遣った。なんだか照れているみたいに見えた。
「ウソだったコマーシャルだが、ほんとうに新しいエネルギーでも探してみるか」
しばらく後。
サターンをリーダーとして、ギンガ団は新エネルギーの開発を再開することになる。
:
「ひとりで大丈夫か?」
その部屋を前にして、ハンサムはアクタを気遣う。
「うん、大丈夫です」
「一応、隣の部屋で会話の様子は聞いているからな。なにかあったら呼んでくれ」
「大丈夫ですってば。ぼくはあのおじいちゃんと、ちょっとお話をするだけです」
扉を開けて、アクタは取調室に通された。
「プルートさん、でしたよね」
パイプ椅子に縮こまって座った老人は、うつむいた顔を上げて少年に目を遣る。
「そういうお前さんは……アクタと言ったかね」
アクタは、机をはさんだプルートの向かいに座る。
「気分が良いじゃろ? アカギの計画、そしてわしの計画まで止めたんじゃ。さながらヒーローじゃないか」
「……気分、良くないですよ。ぼくはあなたに、もう悪いことしないでほしかったな。サターンさんもマーズさんもジュピターさんも、それぞれの形でケジメをつけようとしているのに」
ハードマウンテンというダンジョンに、ヒードランという伝説のポケモンがいる。
プルートはヒードランを利用し、また新たな悪事を始めようとした。つい先日、ハンサムや、地元のトレーナーであるバクという少年と協力し、それを未然に防いだところだ。
結果として、プルートは国際警察により逮捕。こうして拘留されているわけだ。
「ふぅ……どいつもこいつも、勝手なことを。頭でっかちの青二才だったアカギのどこがいいのやら」
嘲笑するプルート。
「せっかくギンガ団を創りながら、最後はひとりで好き勝手に、わけのわからんことをしたんだろう? そのせいでいま、わしがこんな苦労をしとるというのに……」
「あんた、勝手なこと言うなあ」
「勝手? いやいや、現実的な意見じゃろ? 若い連中は夢を見るもんだが、わしは現実に生きる。そのためにはお金が大事」
「…………」
話に聞き入る少年に、妙に気を良くしたプルートは、つぎつぎに口が回る。
「……アカギは消えた。マーズとジュピターもいなくなった。サターンは残ったギンガ団の面倒を見ると言っておった。みんな愚かじゃなあ。せっかくギンガ団としてみんな集まったんだ。その力を利用して、金儲けをすればいいのになあ」
「それで?」
「……それで、とは?」
アクタもプルートも、互いに不思議そうに首を傾げる。
「お金を儲けて、それをどう使うんですか? さっきからプルートさん、お金が大事って話ばっかりだ。それはわかりますけど、お金の使い道の話が出てこないなって」
「…………」
「夢を見ていいのは、若者だけじゃないと思いますよ。ねえおじいちゃん。夢とか野望とかないんなら、あんたにアカギさんの代わりは無理だよ。──だからって、漁夫の利を狙っていい理由にはならないけど」
「お、お、お前になにがわかる! この疫病神の、怪物が!」
プルートは激昂する。この狼狽っぷり、どうやら図星を突いてしまったようである。
「お前と関わったギンガ団はみんな、ろくな目に遭わん! お前さえいなければ、いまごろ……そう! わたしこそが新しいギンガ団のボス、プルートさまなのだあ」
「おっと、お元気ですねえご老人!」
入室してきたハンサムに、途端にプルートは縮こまる。
「その調子で、新しいギンガ団について、国際警察のわたしにいろいろ教えてもらおうか! アカギもマーズもジュピターもいない。いまではあんたに聞くしかないようだしな」
「あー、それは、なんというか……わしは知らん!」
プルートはとうとう、机の下に隠れてしまった。
「なにも知らんぞ! 新しいギンガ団とか、ヒードランでお金儲けとか、年寄りの茶目っ気じゃん! それにわし、ギンガ団の幹部のなかでも一番の下っ端だったし……」
ハンサムに促されて、アクタは部屋の外に出る。
「あのじいさん、ただの小物らしいな……アカギの居場所だとか、有益な情報は持っていなさそうだ」
「うん。しょうがないから、ぼくらで地道に探しますよ」
「すまない。我々もなにか情報を掴めたら……ん、
アクタの言葉に、ハンサムは首を傾げる。
「マーズさんとジュピターさんと、一緒に旅をすることになりました」
「ナヌー!!」
:
それは、ハードマウンテンにてプルートの悪事を止めようとしたとき。
山の内部にて、アクタをふたりの女性が待ち構えていた。
「ちょっと! あなた! アカギ様の行方、教えなさい。槍の柱で消えてからどこに行ってたのよ!?」
赤毛の女性は、マーズ。長身の女性は、ジュピター。
「あ、マーズさん。ジュピターさん。お久しぶりです」
「お久しぶりじゃないわよ! 気安っ!」
「あなた、わたしたちのこと友だちかなにかだと思ってない……?」
どうやら、友だちだと思っていたのはアクタだけらしい。すこし、傷ついた。
「おふたりとも、どうしてここに? まさかプルートのおじいちゃんに協力してるんですか?」
「あなたが悪事を止めに来ると思ってね。そうじゃなきゃ、あんなじいさんについてこないわよ。──それより、こちらの質問に答えてもらおう」
「そうよ! アカギ様はどこ!?」
非情に難しい質問だ。すべて話すとなると、ずいぶんと時間がかかりそうだ。
「えっとね、槍の柱から、ぼくたち『破れた世界』ってところに行って」
「はあ、破れた世界……!?」
「ギラティナのいた場所で」
「ギラティナのいた場所? ぜんぜん意味不明よ! なに? あなたとぼけるつもりなのね」
これは困った。そもそも話を聞いてもらわなければ……
「いいわ! ポケモン勝負で痛めつけて白状させちゃう」
……まあ、それも有りか。
「ブニャット!」
マーズのとっておきのポケモンだ。腰元のモンスターボールの1つが軽く震えたので、アクタはそれを手に取った。
「ドダイトス!」
投げたボールは、後方の壁に当たった。
「あ、ごめんよドダイトス」
「……あんた、相変わらずよね」
肩をすくめるマーズ。ドダイトスとブニャットが向かい合い、ようやくバトルが始まった。
「ブニャット、“さいみんじゅつ”!」
しかし予想していたかのように、ドダイトスは身体を傾けて、技を回避する。
「“ウッドハンマー”!」
樹木の一撃が炸裂。
「“ギガドレイン”」
反動ダメージを補填。
「そんで、“リーフストーム”!」
緑の嵐で、ブニャットは倒れた。
「うそ……!?」
流れるような動きでブニャットが敗れたことに、マーズは絶句する。
「な、なんなのよッ! あたしのこと嫌いなの!?」
「いやあ、わりと好きですよ」
「うるさいマセガキ! もう! なんで負けちゃうのよ。これじゃアカギ様のこと、聞き出せないじゃないの! あたしったら」
この自分の感情に正直なマーズのことを、おもしろ……好意的に思っているのはたしかである。
「……マーズ、あなたってほんとうに弱いのね。おなじ幹部として恥ずかしい」
彼女を押しのけて、ジュピターがアクタの前に立つ。
「いいわ! つぎはあたしが相手よ。あたしもアカギ様のこと、知りたいと切実に思ってるしね」
「うん。ぼくもジュピターさんと戦いたいって、切実に思ってるんです」
「……生意気」
ジュピターが繰り出したのは、やはりスカタンク。
アクタはドダイトスを引っ込めて、代わりに──
「
カントー地方から呼び寄せた仲間を繰り出した。
ギャラドスはノーコンにより離れた呼び出されたあと、すぐにアクタのもとに駆けつけて、頬ずりをして甘えた。
「あはは、ほらほら、これからバトルなのに」
「……なんかあなた、油断してない?」
スカタンクの“どくづき”が襲いかかる。
「そんなことない。ギャラドス、“りゅうのまい”」
攻撃と素早さを上げるギャラドス。ジュピターは警戒し、スカタンクに“えんまく”を命じて命中率を下げるが……
「“アクアテール”!」
水気を帯びた尾は、スカタンクに命中した。
「くっ……!」
「もう一回、“アクアテール”!」
2撃目の尾で、スカタンクは戦闘不能となった。
「フン! 相変わらずの強さ。ちっともかわいくないわね!」
「え、ジュピターさん、ぼくのこと強いって思ってたんだ」
ジュピターとまともに戦って、勝利したのはこれが初めてだ。思わず嬉しくなって、アクタはジュピターの表情を覗き込むが。
「……なんなのよ!」
そっぽを向かれてしまった。
「決めた! あたし、アカギ様を探す」
黙ってバトルを観戦していた様子のマーズだが、急に意を決した。
「その、破れた世界? だっけ。そこに行けばいいんでしょ」
「いや、あの……」
「じゃ、あたしギンガ団、辞めるから。ジュピター、あとはよろしく!!」
「マーズとおなじことするの、ほんとイヤなんだけど、あたしも好きにさせてもらうわ。アカギ様がいないギンガ団……いてもつまんないしね」
ジュピターはマーズの隣に並ぶ。
「というわけであたしたち、ふつうの女の子に戻ります!」
「よく言うわ……ふつうの女の子はムリでしょ。──さて、こういうときは旅かしら?」
「だったらぼくも連れてってくれませんか?」
「「は?」」
少年の申し出に、女性ふたりは面食らう。
「ぼくもアカギさんを探してるんだ。ギンガ団には、あのひとが必要だもん」
ドダイトス ♂
のんきな性格
トゲキッス ♀
むじゃきな性格
グレイシア ♀
なまいきな性格
ポリゴンZ
ひかえめな性格
ギャラドス ♀
がんばりやな性格
サンダース ♂
きまぐれな性格