ポケットモンスターNAVY ~暴投モンスターボール~   作:サンダーゴリラ

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レポート8 ウバメの森/月に泣く

『連れ歩き』というシステムで、ボールの外に出して連れられるポケモンは、原則として1匹。

 チリアはしばらく、トゲピーを連れ歩くことにしている。するとバトルの際、まずはトゲピーが戦いの場に出ることになるのだが、この際、すぐにマグマラシと交代する。

 一度でもバトルに顔を出したポケモンは、経験を積むことができる。これによりトゲピーのレベルアップを図るのだ。

 そしてマグマラシをボールから出す際は、開閉スイッチを押して、足元に落とす。さすがにこの動作にノーコンは発動しない。

「とりあえず、このやり方で戦っていきましょう」

 ヒワダジムが、マグマラシが有利なむしタイプのジムであったことは運が良かった。“ひのこ”一発で勝負を決められる。

「ジムリーダーもこの調子で楽勝だったらいいんだけど……さすがに油断できないわね」

 イトマルのライドに揺られて、トゲピーは楽しそうにしている。チリアは、ロープの行き先にいる少年──おそらくジムリーダーを、じっと見ていた。

「ぼく、ツクシ!」

 チリアより年上だとは思うが、恐らく十代前半の若いトレーナーだった。中性的な見た目である。

「むしポケモンのことならだれにも負けないよ! なんたって将来は、むしポケモン研究で偉い博士になるんだから!」

「そう。わたしはチリア。将来は……」

 すこし考えて。

「まだわかんないけど、とりあえず旅の目標は、最強のトレーナーになることよ」

「そ、それはすごいね……」

 引かれてしまった。

「とにかく、ジムチャレンジだよね! ぼくの研究の成果、見せてあげるよ」

 さっそく始まるジムリーダーとのバトル。ツクシが繰り出したのは、両手が刃物となっているかまきりポケモン、ストライク。

 対してチリアは、足元のトゲピーに「行ってきなさい」と命じた。

「ずいぶんかわいらしいポケモンだね。それでストライクと戦うつもりかい?」

「見た目で判断してもらっちゃ困るわ。ね、トゲピー?」

 チリアの問いかけに、トゲピーは元気よく鳴いた。

「じゃあ交代ね」

 そして元気よく、チリアの足元に戻って行った。

「ええ……?」

「マグマラシ」

 足元に落としたモンスターボールから、マグマラシが現れ、バトルフィールドに向かって行った。

「なにがしたいのかわかんないけど……ストライク、“とんぼがえり”!」

 高速でマグマラシを切りつけるストライク。むしタイプの技なので威力はいまひとつだ。

「マグマラシ、反撃を──」

 しようかと思ったが、ストライクは素早いスピードはそのままで、ツクシのモンスターボールに戻って行った。

「コクーン!」

 そのまま、さなぎポケモンのコクーンと交代する。

「……“とんぼがえり”ね。攻撃そのまま、控えのポケモンと交代する技──ってところかしら?」

「一度見ただけでよくわかるね」

「天才だもの、わたし。──マグマラシ、“ひのこ”」

 火炎がコクーンを焼き、戦闘不能にする。

「自分で言うんだ……ストライク!」

 再度、バトルフィールドに現れるストライク。

「“とんぼがえ”……」

「“でんこうせっか”」

 ストライクの攻撃が始まる前に、マグマラシはより速いスピードで突撃する。

「先攻は取れる、と」

「くっ……“とんぼがえり”!」

 後手に回ってしまったが、またもやマグマラシを切りつけて控えのポケモンと交代する。3匹目もさなぎポケモンのトランセルだ。

「“ひのこ”」

 今回も一撃で倒されてしまう。特殊攻撃の“ひのこ”にかかれば、コクーンもトランセルも自慢の防御力を発揮することができない。

「……ストライク」

「もう交代できるポケモンはいないでしょ?」

「そうだね……でも、最後の1匹になっても、むしポケモンはしぶといよ!」

 ツクシは、ストライクに“きあいだめ”を命じた。技を急所に当たりやすくしたのだ。

「つぎの攻撃に持ち込ませるのは危険ね。マグマラシ、さっき覚えたばかりの技を使うわよ」

 マグマラシの背中の炎が激しくなり、やがてその身に炎をまとう。

「“かえんぐるま”!」

 そして身を丸めて、ストライクに突撃した。

「ううっ、耐えてくれ!」

 ツクシの願いも虚しく、ストライクは倒れた。戦闘不能。マグマラシは、ゆっくりと身を包む炎を鎮める。

「うーん、ここまでか……」

「わたしの勝ち。マグマラシは特殊攻撃のほうが得意なようだけど、まだ技そのものの威力だと、物理攻撃の“かえんぐるま”が強いのね」

 おさげをいじりつつ分析するチリアに、ツクシは「へえ」と感心した様子である。

「すごい! きみ、ポケモンに詳しいんだね!」

「この程度はふつうでしょ」

「あーあ、ぼくの研究もまだまだだ! うん! わかったよ、このバッジを持って行ってよ!」

 ツクシから差し出されたのは、赤いテントウムシを模したバッジだった。「どうも」と受け取って、バッジケースに収める。

「むしポケモンっていうのは奥が深いんだ。まだまだ研究することがいっぱいあるんだよ」

「研究ね……たしかに、ポケモンの本はたくさん読んだけど、まだ解明されていない点はたくさんあるわよね。どんなポケモンにしても、研究の余地は大いにあると思うわ」

「だよね!」

 興奮気味に頷くツクシ。自分の理解者となりそうなトレーナーを見つけて、嬉しいのだ。

「きみも好きなポケモン、徹底的に調べたらどう?」

「わたし、ポケモンって好きじゃないの。どちらかというと、嫌い」

 残念ながら、ふたりが理解し合うことはなかった。

 

 

「やるじゃないか! 若いトレーナー同士の激しいバトル……ポケモン世界の未来は明るい!」

「妙な期待を寄せないで」

 眼鏡の男に見送られ、チリアとトゲピーはヒワダジムを後にした。

 ポケモンセンターでの回復がてら、ランチで必要なエネルギーを接種する。

「そろそろ町を出るか……ヤドンの井戸の件に関わったせいか、思ったよりも町に長居しちゃってるし」

 旅路を急いでいるわけではないが、あまりスローペースだと、シルバーに追いつけなくなる。それに、どうせ長居するならば都会のほうがいい。

「ウバメの森、そして34番道路を抜ければ、いよいよ大都会コガネシティね。まだ日も高いし、今日中には到着できるでしょう」

 一度、コガネシティには行ってみたかったのだ。大きなデパートで買い物がしたい、というチリアにしては珍しい、平凡な女子らしい理由だが。

 ポケモンセンターからマグマラシと、泣くトゲピーを引き取って、少女は旅を再開する。ヒワダタウンを後にして、ウバメの森というダンジョンに足を踏み入れた。

 木がうっそうと茂る、深い森である。昼間だというのに薄暗い。

「トゲピー、はぐれるんじゃないわよ」

 落ち着かない様子で周囲を見渡すトゲピーは、主人の声に応え、ぴったりと付いてきた。

「けっこう入り組んでるわね。このわたしでも迷いそう」

 方位磁石を片手に、北の方角を目指して森を進むチリアたち。

「ああ、どうしよう……親方に怒られるー!」

 しばらく歩いたところで、なにやら嘆く男に遭遇した。

「困りごと?」

 無視しようかと思ったが、こんな寂しい森で声を上げる人間から目を背けるのは、あまりにも無情だ。

「スミ焼きの材料の木を切ってくれるカモネギが、森に逃げちゃったんだ! きみ、捕まえられるかい?」

「無理。ノーコンだから」

「え……?」

「ポケモンのゲットができない女の子と思ってちょうだい。それ以外のことならできるけど」

「ああ、ゲットではなくて、ふつうに、動きを押さえてくれればいいんだ! きみ、そんなことできる?」

 それこそ、チリアにしてみれば容易いことであった。

 薄茶色の羽をも持つ、小柄なかるがもポケモン。カモネギは飛び立とうともせず、気ままに森を歩いている。

 足音を立てず。

 枝を踏まず。

 気配を殺して背後から忍び寄り、そして……

「はい、捕まえた」

 ふわりと、カモネギを抱え上げる。

 少女に捕獲されたカモネギは、なにが起こったのかわからない様子で、「くわー」なんて鳴いている。

「わお! きみ、カモネギを捕まえてきてくれたんだね! ありがとうありがとう!」

 男は感動した様子で、チリアからカモネギを受け取る。カモネギはおとなしいが、不満そうであった。

「あなたのポケモンじゃないのよね? 親方が……とか言ってたけど」

「そうだよ。おれ、ジムバッジ持ってないから、親方のカモネギ、おれの言うこと聞かないんだよ……」

「だからって、他人の手を煩わせて良い理由にはならないよなあ?」

 唐突に、大柄の男がぬっと現れて、カモネギを抱く男の頭にゴチンと拳骨を落とした。

「痛っ……!? お、親方!?

 彼が噂の「親方」らしい。カモネギは嬉しそうに、大柄の男に飛びつく。

「お前さんがこいつを見つけてくれたんか?」

 親方はチリアを一瞥する。

「そうよ」

「木を切るこいつらがいないと、わしらはスミが作れねえ! ありがとうよ!」

 威圧的な外見だが、義理堅い男のようだ。親方は深く頭を下げて、少女に礼を述べた。

「礼をしないといけねえな……」

「気にしないで。じゃあわたし、急ぐから」

「待った待った、お嬢ちゃん! それじゃこっちの気が済まねえよ!」

「そんなの、あなたの都合じゃないの。……じゃあ、近道とか知らない? 早くコガネシティに行きたいんだけど」

 少々、無茶な提案ではないかと思ったが。

「おお! そういうことなら協力できるかもな! カモネギの得意技だ!」

 親方は困る様子もなく、快諾した。

 

 

 カモネギの“いあいぎり”が細木を切り裂き、ウバメの森の近道を開く。

「これが『ひでんわざ』ってやつ。便利ね」

 ポケモンバトル以外でも、地形を移動する際に使われる技である。道を塞ぐ細木を切る“いあいぎり”といった技や、海を渡ったり空を飛んだりするものもあるらしい。

「きみは持っていないのか? “いあいぎり”は良い技だぞ! 良かったら『ひでんマシン』を……」

「使えるポケモンがいないから、結構。とにかく助かったわ」

 チリアは、炭焼き職人のふたりに手を振る。

「お弟子さんも、がんばりなさい。失敗って、繰り返すほど信用を失うわよ」

「うっ、手厳しい……!」

 ひと助けをしたおかげで、なかなかの近道はできたようだが、それでもウバメの森の道は複雑である。徐々に日も暮れてきた。

「野宿は嫌だ、野宿は嫌だ……」

 うわごとのように呟くチリア。

 なにも、準備がないわけではない。

 食料もシュラフもある。一晩くらいは過ごせるだろう。それでも可能な限り、屋根のある衛生的な場所で過ごしたい。チリアは、繊細かつ潔癖な女子なのだ。

「……なにあれ、看板?」

 薄暗い森には珍しい人工物。古びた木製のそれは、看板などではない。

 どうやら、森の神様を祀った祠らしい。かなり年季の入ったものだ。

「こんなものがあるってことは、まだまだここは森の中腹か……あるいは位置なんて関係ないのか。なんにしても、人の手で造られたものがあるってことは、迷ったというほどでもないわね」

 それにしても、暗い。

 チリアはトゲピーを引っ込めて、代わりにマグマラシを連れ歩くことにした。背中の炎が周囲を照らす。

「これでずいぶん歩きやすくなった。炎も暖かい。出口までしっかり頼むわよ」

 マグマラシは嬉しそうに鳴いて、少女の周囲を警備するように歩いた。

 トゲピーの歩幅を気にしなくてよくなった分、歩くペースも速くなったが、それでも出口にはたどり着かない。相変わらず「野宿は嫌だ」と呟きながら歩くチリアたちの前に。

「迷子の迷子の舞妓はん。森で迷ってさあ大変ー」

 踊る舞妓が現れた。

「………………」

 幻覚を見ているのかと思った。

 夕暮れの暗い森に、絢爛な着物の舞妓がいるなんて。

「なんどす?」

 舞妓は、チリアに気がついた。

「キキョウシティで会ったわよね?」

「うちに? キキョウの街で? それは気のせいと違いますかー」

 ひと違いだろうか。

 まあ、彼女たち舞妓のような白塗りの化粧をすれば、素人目からはみんながおなじように見えてしまうものだが。

 ただでさえ、この森は暗いのだし。

「ところであんさん、森の出口はどちらか教えてもらえまへんやろか?」

「それはこっちが教えてほしいわ。方角は合っていると思うのだけど」

「あれま、あんさんも出口がわかりまへんのどすか?」

 ふと、マグマラシが後ろ足で立ち上がり、鼻を鳴らす。

「マグマラシ?」

 マグマラシは短く鳴いて、チリアと舞妓を誘うように道を先行した。

「んまあ! うちに出口を教えてくれますのん? 賢いポケモンどすなあ……」

「わかるんなら早くしなさいよ。まったく」

 ポケモンの持つ、動物的な感覚は本物である。マップと方位磁石を頼りに慎重に歩くより、マグマラシが風の流れを読んで足早に駆けるほうが、速いのだ。

 マグマラシのあとをついていくだけで、しばらくして出口のゲートが見えた。

「ああ、助かった。おおきにねえ、マグマラシちゃん」

 舞妓の白魚のような指が、マグマラシの喉を撫でる。普段、撫でられることがなかなかないマグマラシは、気持ち良さそうに鳴く。

「あんさんも、ええポケモンを育ててはりますね」

「そうね。わたしに才能があるので」

「これからもがんばっておくれやす……ほな、お先にー」

 舞妓はくるりと一回転して、ゲートのほうへ去って行った。

「ずいぶんさっさと行っちゃうのね。やな感じ……べつにいいんだけど」

 チリアもゲートを通り、ようやくウバメの森を抜ける。

 34番道路は、すっかり夜だ。遠くのほうにコガネシティの街の光が見える。

「ああ、人工物の明かりが懐かしい……疲れたし、おなかが減ったわ。早く休もう」

 ゆっくりと34番道路を歩く少女。道中のポケモントレーナーとのバトルも断る。

「じいちゃーん!」

 街を目前にして、チリアは聞き覚えのある声に足を止めた。

「お仕事、おつかれさま! じいちゃんから貰ったポケモン、とても元気にしてるよ! じいちゃんも元気そうだね……」

「ほっほっほ、まだまだじいちゃんもばあちゃんも、若いもんに負けておらんわい! それで、きょうは泊っていくんじゃろう? ヒビキ」

 ワカバタウンの友人、ヒビキが、34番道路の民家の前で、老人と仲睦まじそうにしていた。

 彼の祖父母が「育て屋」を営んでいることは聞いたことがある。なるほど、ここか。

 ヒビキたちを眺めるチリアの存在に、いち早く気づいたのは、ヒビキのマリルだった。マリルはボールのように飛び跳ねて、チリアに向かって鳴く。

「おっ、チリア!」

「……ヒビキ、元気そうね」

 気づかれてしまったのは仕方ない。チリアはヒビキと老人に歩み寄った。

「じいちゃん、紹介するよ! トレーナーのチリア! ポケモンを育てるのがなかなか上手なんだ。じいちゃんには負けるけどね!」

「知ったふうな口を利くな。わたしはポケモンを育てるのはとても上手だし、そこのおじいちゃんにも負けているつもりはないわ」

「おっほっほっ、可愛らしいお嬢さんだ。孫がお世話になっております」

「チリア、ばあちゃんにも紹介する! ちょっとついておいでよ!」

「べつにいいわよ、通りがかっただけなんだから」

「いいからいいから!」

「あんたって、けっこう押しが強いわよね」

 

 

 結局、その晩はヒビキとともに、育て屋の老夫婦のもとに泊めてもらうことになった。

「ほうほう、孫ががーるふれんどを。いやー、なるほどなるほど」

 ヒビキの祖母は、嬉しそうに食事の準備をする。

「ばっ、ばあちゃ……! へ、変なことゆーなよ! そんなんじゃなくて、この娘はご近所の……」

「わかっとるわかっとる。ヒビキが連れてきたのだから、腕はたしかじゃろう。な、チリアちゃん」

「……ええ、腕はたしかよ」

 庭で遊ぶ、マグマラシとトゲピー、そしてヒビキのマリルを横目に、チリアは生返事をする。

 きょう生まれたばかりのトゲピーだが、ようやくマグマラシにも慣れて、マリルとも遊べるようになっている。バトルに参加した経験で、レベルもいくつか上がっている。

 ポケモンセンターがあるコガネシティを目の前に、育て屋に泊めてもらうことにしたのは、単純に疲れたからだ。

 シルバーと戦い、ヒワダジムを勝ち抜き、ウバメの森を抜ける。なによりトゲピーの世話も加わって、きょうはずいぶんと濃い一日であった。

 一刻も早く休む必要がある。ゆえに、幼馴染の「チリアも泊って行きなよ」という誘いに、若干いやいやながらも応じることにしたのだ。

「楽しいお話なんてできないわよ」

「わかっとるわかっとる、気をつかわんでもいいから、今夜はゆっくり休みなさい」

 突然の来客なのに、快く迎えてくれる育て屋夫婦は、正直ありがたい。

「そっかあ。チリアの旅の話、聞きたかったんだけどなあ」

「あんたはもっと気をつかいなさい。わたしに」

 能天気なヒビキがいなければ、もっと良かったのだが。

 その夜。

 ぐっすり眠るチリアの目を覚ましたのは、カタカタと揺れるモンスターボールの音であった。

 寝ぼけまなこのチリアは、揺れるボールを手にして、育て屋の庭に出る。

 ボールを開けると、泣きじゃくるトゲピーがチリアに抱き着いた。

「………………」

 どうしろと言うのだ。

 困惑というか、呆然というか、ただチリアは、トゲピーにされるがままに、じっと膝を抱えて座る。

「あらあら、恐い夢を見たのかのう?」

 そうしているうちに、ヒビキの祖母がやってきた。

「うるさかったかしら。ごめんなさい」

「気にせんでええ。育て屋ではよくあることじゃ。──ほら」

 老婆はチリアに、ホットミルクを差し出した。

「生まれたばかりの子なんじゃろ? まだまだ、この世界に慣れておらんのよ」

「世界に?」

 老婆は、チリアに抱き着いて鳴くトゲピーの背中を、そっと撫でる。

「心配せんでもええ。この世界は美しい。楽しいことはたーくさんある。なんにも心配は要らんよ」

 その言葉は、トゲピーに向けたものなのか、それとも──

「わしは先に寝るからの。チリアちゃんもぼちぼち休みなさい」

「……うん。おやすみなさい」

 いつしかトゲピーは泣き止んで、寝息を立て始めていた。

 ホットミルクを飲み干す。

 味は感じない。

 少女は眠るトゲピーを抱き上げて、月を見上げる。

「わたしはポケモンが好きじゃない。どちらかというと、嫌い」

 それはきっと、どうあっても変わることはない。

「ええ、逆恨みみたいなものなのよ。たまたまポケモンがきっかけで、やな感じの思いをしたというだけで──それでポケモン全体を嫌うなんて、馬鹿みたいよね」

 それでも。

 チリアは、ポケモンを愛する気持ちにはなれなかった。たとえそれが、自分に信頼を寄せる手持ちたちであったとしても。

 自分の大切なひとを奪ったポケモンが、許せないのだ。




マグマラシ ♂
 おくびょうな性格

トゲピー ♂
 さみしがりな性格
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