覇王色って常識を逸脱した力だからこういうことも有り得るよね、という軽い気持ちで書いた作品です。息抜きなので続かない。

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太陽は至る

──偉大なる航路グランドラインにあるマリンフォード『海軍本部』。現在世界各地より招集された名のある海兵達、総勢約10万人の精鋭が集っていた。

 

 白ひげ海賊団二番隊隊長、ポートガス・D・エースの公開処刑。それに伴い予想された四皇の一角『白ひげ』との全面戦争。世界を揺るがすほどの頂上戦争が幕を上げた。

 

 互いに一歩も引かない激戦。海は凍りつき、空からはマグマの雨が降り注ぎ、光が弾丸となり貫く。白ひげが腕を振り起こせば世界が傾き、ミホークが刃を振り下ろせば世界が斬れる。もはや災害。世界中の人々はこの決戦の行く末をただ見届けることしか出来ない。

 もう何人の戦死者が出ているのかすら分からない。下を見れば死体が転がっている。

 

 空から振ってきた海軍の軍艦とともに現れたモンキー・D・ルフィにより、戦況は大きく変わる。戦闘能力だけで見れば今の彼では力不足。しかし彼には人を惹きつける力があった。

 白ひげも彼に引き寄せられた。マルコ達をルフィに付け、この戦場はルフィ中心に動き始める。

 

 そして、ついに。

 ポートガス・D・エースを解放することに成功する。

 あとは逃げるだけで白ひげ海賊団、並びにモンキー・D・ルフィの勝利が確定する。

 

 しかし──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◈◈◈◈◈◈

 

「──この時代の名が!!!"白ひげ"だァ!!!」

 

 激昂したエースが炎を纏った拳を握る。相対するは海軍本部大将赤犬。エースと同じように拳を突き出す。エースからは火が、そして赤犬からはマグマが吹き出した。拮抗を許さず、エースの火はマグマに焼き尽くされる。

 そのままマグマの勢いは消えず、エースの手が焼け、皮膚が溶ける。苦痛に顔を歪めながら手を抑えるエースに向かって赤犬は余裕の表情で詰め寄ってきた。

 

「"海賊王"ゴールド・ロジャー、"革命家"ドラゴン!!貴様らの血筋は既に大罪だ!!誰を取り逃がそうが、貴様ら兄弟だけは絶対に逃がさん!!」

 

 地に手をつけるエースを見下ろしていた赤犬は不意に視線をそらす。

 

「よう見ちょれ……」

 

 視線を辿る。そこには盃を交わした最愛の弟がいた。ルフィはまだ赤犬に気づいていない。

 

「……おい!!待て!!」

 

 エースの目が見開かれる。ターゲットが自分から弟に変わった事実は体中を駆け巡り、時間を止めた。極限まで遅くなった世界の中、エースは反射的にルフィの元まで走る。

 赤犬は一瞬でルフィの元まで移動し、既に拳が構えられている。

 

「ルフィ!!!」

 

「え────」

 

 右手から溢れ出るマグマは離れた距離にいてもなお体を焼くほどの熱量。呆然と赤犬を見上げるルフィに回避するすべなどなかった。白ひげも、マルコも、他の隊長格達は皆離れているか、海兵の対処で間に合わない。

 

 必死に手を伸ばす。赤犬を叩き飛ばすことも、ルフィとともに回避することも出来ない。だからエースは自分を身代わりにすることを決めた。

 そんなことは考えていなかったのかもしれない。もうエースの頭の中にはルフィを、弟を助けることしかなかったのだから。残った絞りカスのような力を全て足に注ぐ。

 

 ルフィ、エース、赤犬。それぞれの距離が縮まり、二人の間にエースの体が入り込む。間もなく赤犬の拳がエースを貫く。その瞬間。

 

 赤犬の拳が止まった。止めたのではなく、止まった。

 

「なんじゃァ、いったい」

 

 硬い壁にぶつかったように、拳はビクとも動かない。エースが何かしたのかと思えど、それは違う。エースもルフィも、周りにいる誰もが動きを止め、この不可思議な現象に視線を送っていた。そして、()()()

 

 パキッ、という音とともに赤犬とエースの間の空間に罅が入る。小さな罅は、たちまち大きく形を変えていき、ボロボロと剥がれ落ちていく。

 

「!?ルフィ!!」

 

 見聞色の覇気が危険を察知した。何かが見えた訳では無い。ただその場にいては危ない。まだ状況が呑み込めていないルフィを抱えてエースはその場から飛んだ。それは赤犬も同様だったようで、対象である二人から距離を取るという愚策にも見える行為に走る。しかし、それは最善だった。

 

 両者が飛び去った、瞬間。罅割れた空間は完全に瓦解し、何かが現れる。同時に、暴風が舞った。

 ルフィを抱えて飛んでいたエースは吹き飛ばされ、地面を転げ落ちる。その場で2本の足で立っているものはいなかった。誰もが吹き飛ばされないのを耐え、そして吹き飛ばされる。激闘でボロボロになっていた地面の瓦礫は吹き飛び、消えていく。

 

 なんとかその場で体を固定し、片手を顔の前に出して風から守りながらエースは先程まで自分がいた地点に目をやる。初めに見えたのは、視界を遮る自身の手からすらはみ出て見える黒い稲妻。

 

 かなりの距離を飛ばされたものの、自身の体をヒリつかせる感覚には覚えがあった。そして、ばたり、と倒れる音がする。それを皮切りに次から次へと海兵、海賊問わずに何人もが倒れていく。白目を向いて気絶する彼らと、自身が感じ取る覇気。

 

「覇王色……!?」

 

 自分では無い誰かが驚きの色が混じった声を上げた。

「覇王色の覇気」。エース自身、そして今回発覚した弟も、白ひげも持っている数百万人に一人の王の素質がある者のみに許された3つ目の覇気。エースは今まで同じ覇王色持ちと戦った経験が少ない。しかし、見覚えがある黒い稲妻は、少なくとも印象的だった。あれは一人で起こせるものでは無い。

 

 すなわち、"覇王色の衝突"である。

 

 海軍側ならば中将以上ならば誰もが知っている。白ひげ海賊団ならば全員知っていてもおかしくない。故に、その事実は実力者達に衝撃を与えた。

 

 あの場には、覇王色が()()いる。

 

 壮絶なぶつかり合いは間もなく終わりを告げ、バチンという甲高い音とともに二人は弾かれたように距離を取る。誰もが動きをとめ、そちらへと意識を向けている。今ならば相手を倒すのは容易い。しかしそんな思考にはなる者はいなかった。

 それは、突如現れた存在の、圧倒的な存在感。目をそらすことなど考えることが出来ない。

 

 暴風は止まり、視界が晴れたことにより一同は顔を上げ────口を開いて驚愕した。

 

 巨人族には劣るものの、はるかに巨大な体。頭から生えるは鋭く長い2対のツノ。ニヤリと不気味に歪む口からは鋭い牙が見え、しっぽのようなもの、さらに体は鱗のような模様で覆われており、何より目につくのは手に携えられた巨大な金棒。

 

 手配書の写真とは少し姿が変わっている。しかしすぐに理解した。何より、白ひげやマルコ、そしてガープにセンゴクは知っている。その人獣型を。

 

「カイドウだと!?何故ここにいる!?」

 

 四皇、百獣のカイドウ。最強の生物と言われている男がそこにはいた。海軍に捕まり、死刑が執行されるも死ぬことはなく、強靱な肉体に傷をつけることさえ出来ない。彼にダメージを与えることができるのは、それこそ四皇クラス、最低でも幹部級の実力者でないと難しい。

 そんな男の体には、深い切り傷が刻まれており、生々しい血が垂れていることからその傷は新しいものだとわかる。

 

 しかも、カイドウは現在赤髪との小競り合いによりこの場には来ることが出来ないはずだ。

 何故、あの男がこの場にいるのか。そして、()()()()()()()()()()()()()。切り傷の他にも打撲傷が多く、口からも血が少し溢れていた。

 

 誰もがカイドウに意識を奪われる中で、ガープやエースを初めとする一部のものたちは別の方向を向いていた。

 カイドウと競り合っていたであろう相手。身長は一般的な男性と言えるものだろう。開かれた胸元には深い古傷のようなものが浮かんでいるだけの、青年。しかし、注意をひきつけるものがあった。

 

 それは────麦わら帽子。

 

 エースも、ガープも。目の前にいる存在が信じられないと言うように瞳を揺らす。愕然と、ただ見つめていた。

 そんなエースに抱えられていたルフィは、エースの拘束から逃れ、顔を出す。愕然とした表情で固まったエースの視線の先を自然と追った。

 

「────おれ?」

 

 視線の先に立つのは、時分と全く同じ顔、そして麦わら帽子を携えた──モンキー・D・ルフィそのものだった。

 目の前にいる瓜二つの存在は、カイドウの方を見つめている。周りは目に入っていないだろう。しかし、見聞色の覇気で周りに複数の気配があることはわかっていた。それは、カイドウも同様。

 

「……あ?」と言う言葉と共に顔を揺らすカイドウ。海兵達も、海賊達も同様に武器を構える。溢れる圧が弱者の神経を刺激し、自然と汗を流させた。カイドウは、心底不快そうに、浮かべていた笑みを歪めた。

 

「なんだ、テメェら……引っ込んでろッ!!!!!」

 

「「「!!?」」」

 

 カイドウを中心に、強烈な圧が押し寄せる。近くにいたものから順に倒れていくそれは、覇王色の覇気の解放だった。老いた白ひげと比べ、カイドウは全盛期とも言えるほどに力を持っている。故に、その覇気は文字通り次元が違った。

 加えて、戦争により体力を消耗している両陣営には効果が絶大だ。少将以下は壊滅、中将すらも飲み込む勢いだ。

 気絶しないものたちも、強烈な覇気に体が痺れ動かなくなる。

 

 そして。

 

「「「!!?」」」

 

 カイドウと同クラスと言える程の密度の覇王色が激突する。目で見ることが出来るほどまでに極まっている両者の覇気の衝突はそれだけで兵器。その衝撃は空間を揺らし、大地をも揺るがした。

 カイドウとぶつかる覇王色の持ち主。モンキー・D・ルフィは腕を黒く染め上げる。そして覇王色の衝突が相殺という形で終わりを告げると、ルフィの拳に黒い稲妻がまとわりついた。それを見た白ひげ、センゴク、ガープは何度目かも分からない驚愕を顕にした。

 

「纏えるのか……覇王色を!?」

 

 ニヤリと笑うカイドウは金棒を振り上げ、ルフィと同じく黒い稲妻を纏わせる。合図などないが、示し合わせたかのように同時に姿をかき消した両者は片や拳を、片や金棒を繰り出す。瞬間移動とも誤認するほどの超スピードでの移動から繰り出された互いの一撃は、もうまもなく衝突する──というところで、止まる。

 

 互いの攻撃は触れることはなく、空間を空けながら両者は拮抗する。黒い稲妻は勢いをまし、落雷のごとく降り注ぐ。そして。

 

 空が、割れた。

 

 

 

 

 




ちなみに過去ではなく並行世界です

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