戦姫絶唱シンフォギアGM   作:超高校級の切望

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プロローグ

 神を倒した後も、世界は平和になどならなかった。

 言葉の呪いが消えようと、人々は己の欲望のために制限なく他者と己を区別し、故に誰かを傷つける。

 パヴァリアの残党が良い例だ。一般人には対処不可能なアルカ・ノイズを使用、あるいは売買し、己の研究を進める。他者がどうなろうと、彼等には関係ない。

 そして、それは同時に彼等にどれだけの野望があろうと巻き込まれた者達には関係ないのである。

 

 

 

 

 

「ま、まて………待ってくれ! た、頼む、助けてくれ!」

「………………」

 

 とある会社の地下。暴力団と通じ、その資金に目をつけた錬金術と手を組み邪魔者を殺し勢力を広げようとして、しかし錬金術師自慢のアルカ・ノイズは全て破壊された。

 

「助けてくれ、だと………俺の家族を、奪っておいて!」

「や、やったのは俺じゃない! 俺じゃないんだ、だから………た、頼む!」

『Bomb!!』

 

 錬金術師の命乞いに、男は『B』と爆弾を模した模様が書かれたUSBメモリのようなものを取り出すと己の頬に押し当てる。

 頬に刻まれていた奇妙な模様に触れると同時にメモリは飲み込まれていく。

 

『さあ、死ね!』

 

 その日都市を揺るがす爆音が響き、一つのビルが地下室ごと崩れ去った。

 

 

 

 

 

「昨晩起きた都市部での爆発事故。それに異端技術が関わっている可能性が高い」

 

 『S・O・N・G』本部の潜水艦内部、司令室にて風鳴弦十郎はモニターに映った倒壊したビルを見せながら言う。

 

「あ、それ朝のニュースで見ました! あれ、でもガス爆発って話じゃ」

「表向きはそうです。ただ、事件の直前の一瞬、アルカ・ノイズの反応が検知されたんです」

「アルカ・ノイズの?」

 

 流石に世界全体の同時監視などできず、網を張った範囲でしか探知はできないが今回はたまたま範囲内で事件が起こった。

 

「調べてみるとここ最近、何件かの失踪事件が起きている。アルカ・ノイズに襲われたか、あるいは死体処理に使ったか………被害者達が巻き込まれている可能性もある」

 

 更に目撃証言では、怪物を見たと。

 

「怪物ってのはアルカ・ノイズとはちげえのか?」

「おそらくな。今回の調査の結果、異端技術が使われた可能性が高いだろう」

「現場に残された火薬反応は、既存の科学物質に酷似していて、けれど全くの別物だったそうよ」

「未知の爆弾というわけですか」

 

 錬金術か、あるいは聖遺物や哲学兵装。そういった何かが人の生活を脅かしている。

 

「パヴァリアの残党にしろ、そうでないにしろ錬金術師が関わっている以上油断はできん。まずは付近を調べる、各自敵の出現に備えてくれ」

「「はい!」」

「了解デース!」

「おう」

 

 

 

 

 

 倒壊したビルを一目見ようと集まる野次馬。おかげで避難命令が出されてない範囲で様子が見れる距離の周囲の飲食店が儲かるのは、なんとも皮肉な話だ。

 まあ彼等からすればみかじめ料などと時代錯誤も甚だしい行為を行っていた者達の支部だから、どの道これで余分な出費はしなくてすむわけだが。

 

「う〜ん。なんか町の人達が非協力的?」

『怪物に感謝してるみたいですからね…………』

 

 現場に聞き込みに行った響の呟きに通信機越しに聞いていたエルフナインも落ち込んだような声を出す。

 襲われたのは暴力団と繋がっていた小規模な会社。正しく虎の威を借る狐のごとく振る舞っていた彼等は、町の嫌われものの一つだ。

 

「よーしよしよし、ほうら、チュールだぞ」

「ん?」

 

 と、公園を歩いていると不意に上から聞こえてきた声に顔を上げると、木の上に枝にしがみついた青年がいた。その枝の先には一匹の猫。その上の枝にカラスが一羽。カァカァ泣きながら猫に近付こうとして青年が止めている。

 

「落ち着け落ち着け。ほら、これをやろう」

 

 青年が手品のようにガラス玉を取り出すとカラスは無言でそれを見つめ、嘴で加えると上に飛んでいく。巣があった。

 おそらくは雛を狙った猫に反撃し、猫があの枝まで落ちたのだろう。それを青年が助けようとしている。

 

「あのー! なにか手伝いますか!?」

「ん? あ!」

「ふみゃ!」

 

 響が声をかけると猫が僅かに身を震わせ、結果枝が折れる。青年が慌てて枝から飛び降り猫を腕に抱えるも下の響を見て空中で身を捻る。

 

「うっ、ぎ!」

 

 背中から落ち肺の空気を吐き出す青年。猫が青年の頬を引っ掻くと逃げていった。

 

「いつつ………やれやれ、つれない女だ」

「あ、あの! 大丈夫ですか!? すいません、私が声をかけたから!」

 

 猫が元気に走り去ったのを見て微笑む青年に響が慌てて手を差し伸べ、青年がその手を掴み立ち上がる。

 

「悪いね、お嬢ちゃん。怪我はない?」

「は、はい………私は大丈夫ですけど、お兄さんは?」

「腰とほっぺがすんげえ痛い………俺も年だね……いっ、てて」

 

 腰を押さえながらち老人みたいなことを言いながら立ち上がる青年。ふらつく彼を響が慌てて支える。

 

「悪いねお嬢ちゃん…………近くで見ると可愛いね、君」

「そ、そうですか? いやあ、えへへへへ。ありがとうございます。あの、ベンチで休んでてください!」

 

 響は青年をベンチに座らせてから自販機でジュースを買い、水道でハンカチを水で湿らせ青年のもとに戻る。

 

「おまたせしました! 傷、平気ですか?」

 

 頰の泥を拭ってやり絆創膏を貼る。ジュースを渡すと青年がお金を払おうとしたので慌てて止め、青年がジュースを飲んでくれるまでじっと見つめる。

 

「面倒見が良いねえ、若いのに関心だ」

「そんな年寄りみたいな…」

「これでも俺は娘を育てた経験もある年齢なんだがね」

「ええ!? み、見えない………あ、す、すいません!」

「若く見られるのは嬉しいことさ。気にしなくていい」

「は、はい………あの、私立花響って言います!」

 

 と、響は元気よく挨拶する。

 

「年は17歳! 誕生日は9月の13日で血液型はO型、身長はこの間の測定では158cmで、た、体重はもう少し仲良くなったら教えます。趣味は人助けで、好きなものはごはん&ごはん。後は、彼氏いない歴は年齢と同じ!」

「……………ふむ?」

「よろしくおねがいします!」

「……ああ、自己紹介ね。俺はザガン………ザガン・エイネス・グェル。年は、どんぐらいだろうね? 歳を取ると意識しなくなる。誕生日も祝ってくれる人もいなくて忘れてしまったよ。血液型はAB型。身長は176cm、体重は70で、趣味は研究。好きなものは人の未来、宜しく」

 

 困惑しながらも乗ってくれた青年、ザガンに響はぱぁ、と顔をほころばせる。

 

「そういえば響ちゃん。人助けが趣味ならちょっと頼まれごとを受けてくれないかな?」

「はい、なんですか?」

「娘とはぐれちゃったんだ。久々の外だから、はしゃいじゃったのかな。しっかりした子だから大丈夫だとは思うんだけど」

「じゃあ、探してきます!」

 

 響は元気よく飛び出した。

 

「……まだ特徴も言ってないんだけどな。言葉を尽くそうぜ、()()()()()()は消えたってのに」

 

 そんな響の背をザガンは呆れながらも、しかし面白そうに見送った。

 

 

 

 

 暴対法によりその勢いを失いつつある暴力団ではあるが、とある忍者が壊滅させた暴力団のように未だ違法に銃器を所持している者達も居る。ここは、そんな暴力団の一つ。

 そこに近付く一人の影。

 

「ああん? 何だ、てめぇ。ここをどこだと思ってんだ、さっさと帰りな!」

「…………あんたら、2週間前ノイズに襲われて死んだっていう警察官、知ってるか?」

「はあ? 知るかよバァカ。ノイズに襲われて死んだ奴が何人いると思ってやがる」

「……表向きには行方不明のはずだ。やはりお前達か………あの会社が関わってる時点で、そうだとは思っていたがな!」

「っ! てめぇが犯人か!?」

 

 人の目がある場所では銃器は出せない。だが無理やり連れて行くことは出来ると男に近づこうとする暴力団の男達。

 と、男がUSBメモリのようなものを取り出す。

 

「お前達も殺してやるよ、社会のゴミ共め!」

『Bomb!!』

 

 スイッチを押すとメモリから音声が流れ、頬に奇妙な紋様が現れる。それを頬に突き刺すと男の姿が爆炎に包まれた。

 

「な、何だ!?」

『はあああああ…………』

 

 炎の中から現れたのは一回り程大きくなった人影。黒鉄のよう光沢で、しかし一歩踏み出す動きは生物の皮膚のそれ。左肩は盛り上がり穴が空いて、右手には指がなく黒い鉄球のようになっていた。

 

『死ね』

 

 異形の姿となった男が暴力団の男の片割れを殴りつける。爆音が響き暴力団の男の肉片が飛び散った。

 

「ひ、ひやああああ!?」

 

 その光景に逃げ出した片割れは肩の穴から飛び出した黒い球体に当たると同時に、先程同様爆炎に飲まれ焦げた肉片が辺りを汚した。

 

 

 

 

「はっ! ど、どうしよう子供の特徴聞いてない!」

 

 女の子という事しか解らない。こんな情報でどうやって迷子を探せというのか。

 慌てるのは自分の悪い癖だ。

 

「うう、名前とか特徴とか聞いておけばよかった」

 

 トボトボと俯きながら歩く響。今から公園に戻るべきだろうか? でももう移動してるかも。と………

 

「っ!」

「わっ!?」

 

 駆け足の子供とぶつかる。フードを深く被っていて、周りが見えなかったのだろう。

 

「大丈夫? ごめんね、ボーッとしてて」

「大丈夫よ……立花響!?」

「へ?」

 

 顔を上げた子供は、少女だった。とても可愛い。が、誰だ?

 どこかで見たことがあるような気はするのだが、思い出せない。

 

「えっと、貴方は?」

「私は…………っ!?」

 

 響が視線を合わせるようにしゃがみ、少女が口を開こうとした瞬間爆発音が響く。1つや2つではない、何度も何度も爆発音が響き、街の住人の悲鳴が聞こえる。

 

「ごめんなさい、後で!」

「あ、そ、そっちは!」

 

 と、少女が爆発音の響く方向へと走っていく。

 

「っ! 師匠!」

『ああ、こちらでも未知のエネルギー波動を捉えた。 翼達も向かっている!アルカ・ノイズの反応もある、十分に注意しろ!』

「はい!」

 

 

 

 

 爆音のする方へ走ると先程の少女が居た。アルカ・ノイズと………見たこともない怪物も。

 

「ひ、ひいい! 嘘だ、嘘だぁ! なんで、アルカ・ノイズがやられるんだよぉ!?」

『あああああ!!』

 

 怪物がアルカ・ノイズを殴りつけるとアルカ・ノイズが爆発し粉々に吹き飛ぶ。怪物が分解された様子はない。

 

『後は、お前だけだ』

「しゃべっ!? でも、今はあああ!」

『っ!?』

 

 自分に駆け寄ってくる響に気付き怪物が動きを止める。

 

「〜〜〜〜♪」

 

 聖唱(ウタ)を歌う響に困惑しながらもガードの構えを取る。

 光の粒子が響を包み、その装いを変える。

 シンフォギア……聖遺物と呼ばれる古代先史文明の遺産の力を歌により活性化させ、そのエネルギーを纏う技術。現在の既存の兵器を大きく上回るその力はノイズを始め、ギャラルホルンや異世界の未知の技術がが繋げた様々な怪物にも打ち勝ってきた。

 

『ぐぅ! 何だ、お前は!』

「これ以上、誰も傷つけさせない!」

『ヒーロー気取りか? 目障りだ!!』

 

 響の言葉に怪物は怒りを顕に地面を殴り付ける。拳が爆発し、衝撃と爆炎が四方に飛ぶ。

 

「ひやあああ!?」

「あ!?」

 

 それは襲われていた男にも迫る。ここからでは、間に合わない!

 響がそれでも駆け出そうとすると空から何かが降ってくる。

 

『っ! 壁!?』

「剣だ!」

「翼さん!」

 

 現れたのは風鳴翼。天羽々斬のシンフォギアを纏いし防人。アームドギアと呼ばれるシンフォギアのエネルギーを武器として扱う機能を利用し特大の剣を盾代わりに使ったのだ。

 

『邪魔をするな! 此奴等は、皆殺しにしてやるんだ! そこをどけ』

「断る! これ以上罪もない民草を殺されるものか!」

『…………罪が、ない? 何も知らないくせに自分達こそ正義みたいに』

 

 翼の言葉に左手をギリッと握り締める怪物。

 

『ならお前達から、爆ぜろ!!』

 

 怒りを顕にシンフォギア装者に向かう向かう怪物を見ながら、少女は逃げずに憐れむような視線を向ける。

 

「メモリの毒………あるいは、反撃の意志に飲まれたようね……………」

 

 そして、少女が取り出したのは黄金の端子を持つメモリ。インゴットを『A』の形に積んだかのようなイラストのメモリのスイッチを押す。

 

『Alchemy!!』

 

 音声が流れ、腰に巻かれていたベルトとバックルに突き刺す。溶けた金のようなものが少女を多い、形を変える。

 現れたのは黄金の鎧を戻った騎士。兜には赤い鬣と、2つの細長い板のようなものがついている。

 

「新手か!?」

『加勢する。信用してとは言わない、手を貸してほしい』

『何だ、次から次へと…………邪魔なんだよおおお!!』

 

 黄金の騎士の言葉に逡巡する翼。怪物がその隙を逃さず、全員まとめて排除しようと周囲に爆弾をばら撒く。

 

「っ! 少なくとも、奴の味方ではないようだ。話は後で聞かせてもらおう!」

『解ったわ』

 

 

 

 

 

「戦闘向きのメモリとはいえ、さてはて何処までやれるかねえ」

「ひっどいの。幼気な高校生騙してあんなもの」

 

 その光景を近くのビルの上から眺めるザガン。そんな彼に呆れたように非難するのはザガンをそのまま幼くしたかのような少年。

 

「騙したなんて人聞きの悪い事を言うなよザガム。力を望む者が居て、力を与える者がいた。ならばこれは必然さ」

「それで、この後の予定は?」

「バルベルデに売りに行く。軍事政権だし、良い金の宛だ…………ほらよ」

 

 と、端子の色が銀のメモリを渡すザガン。

 

「あの子は?」

「可愛い娘の二度目の家出だ。見た目こそ幼いが、ガキじゃないんだ。好きにさせてやるさ」

「いいの?」

「使えそうなの3割、残りは親心だ。構わねえよ」

 

 そっか、というとザガムはメモリを見つめる。

 

「これ、疲れるんだよね。ラプタやエアクラフトで飛んでくのは?」

「この距離だとドアより疲れるぞ」

「じゃ、我慢しますか」

『Door!!』

 

 スイッチを入れ左手の甲に差し込むと角張った異形に姿を変える少年。なにもない空間にドアを生み出すと開く。

 

「データはいくらあっても損にはならない。金が溜まったらまた量産して、少し安めの値段で売るぞ」

『はいはい。ほら、速く変身しなよ。生身じゃこのドア通れないよ?』

「解ってるよ」

『Language!!』

 

 取り出した金の端子のメモリを首筋に突き刺すザガン。額に紫の宝石、4本の角のような頭部のパーツ。

 白と紫の色合いの怪人へと姿を変えたザガンは扉を通り、ザガムもそれに続き扉を閉める。

 扉は消え、ビルの屋上に人影は一つもなかった。




ザガン
 子育て方針が放任主義のクソ野郎(育てられた人談)。
請えば何でも教えてくれるが子供から話しかけない限り自分からは一切関わらない。
 元々古代で妻とともに錬金術の基礎を生み出した後、不老となり長い年月を生きている。妻は100の目を持つ生体聖遺物を殺しに行く際に失う(昔の名前のヒント)。
 ただし妻は中身が別のになってたので悲しまなかった。
 その後名を変えながら世界各地を転々として、ローマの貴族の地位を得たあと戯れに拾ったとかる少女を育てることに。
 ただし子育てが壊滅的なので子供が頼まないと子供のために料理は作らない、子供が何も言わないと机の上においておいた料理も食べない、子供が帰ってこなくても誘拐されたと気づくまで探しもしないなど、子供は愛されてないと思っている。本人は愛しているつもりらしい。


ザガンは錬金術を操る悪魔の名前
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