戦姫絶唱シンフォギアGM   作:超高校級の切望

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Bの轟音/伝説の錬金術師

 黒い怪物に殴りかかる響。

 迎え撃つように球体状の右腕を振るう怪物。ぶつかりあった瞬間、拳が爆発した。

 

「っあああ!?」

「立花! おのれぇ!」

『ふん!』

 

 翼が振るった剣が怪物を斬りつけるが刃が通り切る前に表面が爆発し剣を弾く。

 

「ぐっ!?」

『はあ!』

 

 振るわれた怪物の拳を剣で受けようとするも拳が爆発し吹き飛ばされる。

 

『イクスプロウシブリアクティブアーマーか!』

「いく………な、なんですかそれ!?」

『爆発反応装甲………外部から加わった衝撃に対して外殻を飛ばし本体への衝撃を減らしている』

 

 それどころか、むしろ装者達にダメージを与えいる。接近戦は不利だ。

 

「ならば、近づかぬまで!」

 

 無数の剣を生み出し放つ翼。

 あの爆発で本人にも多少ダメージは通っているなら、数で押し通す!

 

『っ! 鬱陶しい!!』

「なっ!?」

「うわわ!!」

 

 飛んでくる剣に対して怪物も爆弾を肩から放つ。空中でぶつかり合い、爆発によって砕けた破片が周囲に散らばる。

 

「は、は………なんなんだよ、なんなんだよぉ! 付き合ってられるかぁ!」

『っ! 逃がすか、小山大樹!』

 

 と、怪物に襲われていた男が逃げ出そうとし、怪物が追おうとするも無数の光が怪物に当たる。

 

『いかせん!』

「銃? 剣ではないのか?」

 

 見た目騎士の黄金の騎士であったが、武器は中距離型のようだ。そんなどうでもいいことに反応する翼。

 黄金の騎士はそのまま怪物に向かって駆け出す。

 

『馬鹿が!』

 

 自分に近接戦を挑もうとする黄金の騎士を迎え撃とうとする怪物。

 

『が!?』

 

 しかし爆発は怒らず、吹き飛ばされる怪物。

 

『今のうちに逃げなさい!』

「あ、ああ………! 助かった!!」

 

 黄金の騎士に感謝しながら逃げ出す男。怪物は立ち上がり地面を殴り付けるとやはり爆発した。

 

『んん!?』

 

 己の力が正常に作動することに首を傾げる怪物は、しかし逃げ出した男を追うために足裏を爆発させ高く飛び………

 

『がっ!?』

 

 無数の銃弾が降り注ぐ。表面が爆発し威力を殺したが、バランスを崩し地面に落ちる。爆発で衝撃を減らし、銃弾が飛んできた方向を睨む。

 

「ドンピシャ大当たりだ!」

「クリスちゃん!」

 

 そこにいたのは赤いギアをまとった銀髪の小柄な少女。名を雪音クリス、響達の仲間だ。

 

「人のトラウマ穿り返す嫌な音でドカンバカンの大騒ぎをしてくれやがって、覚悟できてんだろうな!」

「ひっひっ………!」

『!!』

 

 男が尚も逃げようとして、怪物はそちらに意識を割かれる。追おうとするも今度は丸鋸が飛んできた。

 

「食らうのデス!!」

 

 追加でジェットのついた大きな鎌が振るわれる。

 

「デェェェス!!」

 

 爆発反応装甲にて威力を一瞬殺すも推進装置のある鎌は勢いを取り戻し怪物を吹き飛ばした。

 

「調ちゃん! 切歌ちゃん!」

「おまたせ」

「したのデス!」

 

 ピンクのギアと緑のギア。外国に任務ででかけている最後の一人を除いた全装者がその場に揃う。

 

『………………はぁ!』

 

 怪物が力むと体が膨れ、爆発する。

 爆炎が晴れるとそこには何もなかった。

 

「…………じ、自爆?」

『……いや、逃げられた』

 

 黄金の騎士はそう言うと腰に手を持っていく。黄金のメモリが抜け出て、体が光り輪郭が溶けるように崩れ中から少女が現れる。

 

「なんと、騎士が女の子になったデス!?」

「サイズ間違いにもほどがある。どんな驚きトリックだ!?」

 

 クリスが言うように、先程まで成人男性と比べても遜色ない慎重であったはずなのに、今は調よりも小さい。フードを被り顔がよく見えないが、響は見覚えがあった。

 

「っ! 貴方は、さっきの!」

「知り合いか、立花」

 

 その少女は先程響とぶつかった少女だ。確かにこっちに走ってきていたが……そういうことだったのか。

 彼女はあの怪物を倒すために動いていたのだ。

 

「………………」

 

 翼達は警戒を解かず少女の行動を見張る。

 

「…………S.O.N.G……貴方達の力を貸してほしい」

「デデ!? な、なんで知ってるですか!?」

「こちら側の事情を知っているってことだよ、キリちゃん………貴方は、何者?」

「……………」

 

 少女が無言でフードを脱ぐ。白く長い髪がふわりと舞い、強い意志を感じる瞳が周囲を睥睨し最後に響を見つめる。

 

「「「!?」」」

 

 その顔を、この中で知らない者はいない。有名だから、ではない。直接見たことがある。あの時より、幼いが………。

 

「サ、サンジェルマンさん?」

「ええ………久し振りね、立花響」

 

 その顔は、嘗て立花響達装者と争い、和解し、最後にはアメリカから放たれた反応兵器から日本を守るために、仲間と共に命を散らしたはずの錬金術師、サンジェルマンの物だった。

 

 

 

 

「装者数人程度なら互角か。戦闘向けとは言え、なかなか良い戦いをしてくれる」

 

 パソコンに映った映像を見ながら感心したように言うザガンはそのままパソコンを閉じた。

 

「勝てないのでは意味ないのではないかね?」

「そう言うな。前総統時代に追い詰められたシンフォギアに復讐したい気持ちは分かるが、数は力だぜ? まあ、お前等が大枚はたいて手に入れたアルカ・ノイズは数を揃えても無駄だったけどな」

 

 ケラケラ笑うザガンに周りに控えていた黒服達が銃を向け、対面した男が手を振り諌める。

 

「失礼。我々としては、シンフォギアを圧倒できる力を欲しているからね。結局負けてしまうのであればアルカ・ノイズと変わらないのではないかな?」

「だがアルカ・ノイズと違い現場判断もできるし、何より個体の強さが違う。メモリ一本と同じコストで作ったアルカ・ノイズも数を圧倒できる………メモリには相性もある、それ次第ではシンフォギアも超えるだろう」

 

 そう言って机に置かれたアタッシュケースを開くと中には無数のメモリが入っていた。

 

「プロダクションモデルだ。物によってはこの国の設備でも十分複製可能だ」

「ほう……君が用意させたあの設備かね?」

「ああ………んでこれが生体コネクタの刻印装置。これも再現は簡単だ」

「なるほどなるほど、では君に頼る必要はないのだね?」

 

 と、その言葉に周囲の者達が再びザガンに銃を向ける。

 

「技術の独占が出来なければ、科学者に価値などないと思わないかい?」

「思うね。んで、すぐに思い上がって正しい判断を下せない支配者にも、上に立つ資格はないと思わないか?」

「何? っ、お前達、何を!?」

 

 ザガンに向けられた銃口全てが男に向き、ザガンは人差し指と親指を立て銃に見立てる。

 

「ここにいる人間は全員俺の支配下なのさ。本人の意志関係なくな」

 

 その言葉通り、銃を向ける男達の顔には困惑と恐怖が浮かんでいた。

 

「バン」

 

 と、人差し指を上に向けると同時に引き金が引かれ、男は一瞬で真っ赤な肉塊に姿を変えた。

 

「さて、この中で次に偉いのは?」

「わ、私です!!」

 

 体の自由が戻り、慌てて敬礼する男にザガンは良し、と笑みを向ける。

 

「じゃあ君今日から総統閣下な。よろしく」

「え? あ…………は、ははぁ! よよ、よろしくおねがいします! あ、有難き幸せ!」

「かったいねえ。ほら、就任祝いにこれやるよ」

「こ、これは?」

 

 と、ザガンが男に渡したのは銀と紫の2色の何か。そこそこ大きい。

 

「ソロモンの杖」

「そ、ソロモンの杖!? 失われた筈では!?」

「ああ、バビロニアの宝物庫ごとな。とはいえ、別の宝物庫は無事だからな。ギャラルホルンの特性を利用してそっから扉を開いてノイズを呼ぶ……アルカ・ノイズより低コストで位相差障壁も上だ。まあ好きに使え」

 

 ポンと手渡された世界を変える力にゴクリと唾を飲む男に、ザガンはニッコリ笑う。

 

「それを起動させたが最後。人類の脅威が一つ消えた世界に、再び災禍を振りまく大罪人になるわけだ。そのことを良く考えておくんだな」

「………………」

「じゃ、約束の報酬頂戴」

「は、はい! おい、すぐにもってこい!」

 

 男の言葉に部下が慌てて走り去る。金を取りに行ったのだろう。ザガンは男が持ってきたケースを開き中の宝石を確認する。

 

「あ、あの……お金じゃなくて、よろしいのでしょうか?」

「急に行き先帰る必要ができても、換金用の宝石を持ってりゃ直ぐに金が用意できるからな。何より嵩張らない」

「な、なるほど」

 

 それじゃあな、と立ち上がるザガン。何時の間にかザガムが横に立ち、メモリを取り出す。

 

『Door!!』

 

 何もない空間に現れたドアをくぐり、二人は姿を消す。

 

「総統補佐……あ、いえ。総統閣下…………どうしますか?」

「まずはメモリの量産だ。我々の設備でも可能なメモリの選別…………それと設備の増築。より強力なメモリも量産できる設備を用意しろ」

 

 

 

 

 

「ヘルメス・トリスメギストス………それが、私を復活させた錬金術師の名前よ」

「へ、ヘルメス・トリスメギストス!?」

「ヘ、ヘル………誰ですか!? そのヘルストンメントスさんは!」

 

 サンジェルマンから齎された黒幕の名に驚愕するエルフナインと見当違いな名を呼ぶ響。クリスにぶん殴られた。

 

「ヘルメス・トリスメギストス………錬金術の祖と呼ばれるヘルメス神、トート神、錬金術師ヘルメスが同一視され複合した3倍偉大な錬金術師ですね」

 

 と、モニターに資料を移しながら説明してくれる藤尭。

 

「私も聞いた話だから真実なのか詐称なのか解らないけど、先史文明が滅びたばかりの時代、未だ神代とも取れる時代から生きていたらしいわ」

「ヘルメス・トリスメギストスは3人のヘルメスとしての特性もあります。第一のヘルメスはノアの洪水以前にいたと言われていますが……」

 

 そうなるとフィーネが天に届く塔を作る前、先史文明期と言う事になるが………いや、そもそもの大洪水も先史文明同士の争いの後の可能性もあると考えれば、永い歴史の中順序が出鱈目になったのか?

 

「で、その長生きの爺様がなんだってあんたを復活させたんだ?」

「パヴァリアの残党を纏めるため…………正直言って、局長は君臨するだけで実質的な指導者と問われればそれは間違いなく私達でしょうからね」

「メディカルチェックの結果、サンジェルマンさんの現在の肉体は極めて高度な技術を使われたホムンクルスです。キャロルの技術を……ボクの現在の体を上回っています」

 

 キャロルとて絶大な力を持つ錬金術師だ。しかし、錬金術師の祖には及ばないらしい。

 

「ヘルメスはパヴァリアの残党を纏め、何をするつもりなんだ?」

「……………最終的な目的はわからない。でも、錬金術師達を纏めようとしたのはメモリの量産」

「メモリとは、君が持っていた?」

 

 と、弦十郎の言葉にエルフナインがモニターに件のメモリを写し出す。

 

「異端技術たる錬金術こそ使用されてますが、その本体は完全に科学。設備さえ揃えば、内部のメモリーは兎も角本体は生産可能です」

「でしょうね。普通の錬金術師と違って、彼は自分にしか作れない技術に興味はないもの」

 

 完璧を目指し、完全を独占するために己の技術を秘匿することの多い錬金術師としては異様な在り方。しかし考えてみれば錬金術の祖がそういった感性だからこそ、錬金術は世界中に広がったのだろう。

 

「このメモリは、何なんですか?」

「ガイアメモリ……星の記憶にアクセスし、意思を持つ存在にドーピングしドーパントへと変える記録媒体」

 

 空気を読んだ友里の操作で画面に黄金の騎士と黒い怪物が映し出される。

 

「黒いのは『爆弾』の記憶を持つボム・ドーパント。そして私が変身したのが『錬金』の記憶を持つアルケミー・ドーパント………」

「『記憶』?」

「そう、星の記憶。あらゆる情報の詰まったアカシックレコード……この私も、そこに記録された情報をホムンクルスに移した、本物のサンジェルマンとは呼べない存在」

 

 あくまでサンジェルマンの記憶を持ったホムンクルス。それが今のサンジェルマンである。

 その話に何を思ったのか、エルフナインは何やら考え込む。

 

「人間を怪物に変える『記憶』の詰まった小箱か………そんな物を量産し、何を企んでいる」

「昔から、あの人の考えることなんて解らない。未来を見ているのか、今を見ているのかも」

「…………昔から?」

 

 古くからの知己であるかのような言葉に調が首を傾げ、サンジェルマンは昔を思い出すかのように虚空を見つめる。

 

「あの人は、私の父よ………血は繋がっていないけど、母さんを喪った私を育ててくれた」

 

 元々貴族が戯れで奴隷に産ませた子供。それがサンジェルマン。しかしその男は仮にも子を成したサンジェルマンの母にもまるで興味がなく、病を患った時も助けもしなかった。

 助けを求めたサンジェルマンを部下に殴らせ、蹴らせ………サンジェルマンが戻った頃には母はなくなっていた。

 その後も数々の辛辣を舐めるサンジェルマンを拾ったのが当時はシモンと名乗っていたヘルメスだ。

 

「食事を与え、文字を教え、錬金術についても教えてくれた。あの人が居なければ今の私はいない、そんな関係」

「そ、それって………あの、それじゃあその人がサンジェルマンさんを復活させたのは、父親だからとかは………」

「それは、ないわ。あの人は私を拾っただけで、愛してなんて居ないでしょうから」

 

 そう呟くサンジェルマンの顔は、どこか寂しそうで、姿も相まって迷子のように見えた。

 

「最終的な目的は不明、か。人物像から想像はできないか?」

「……………いいえ。ただ、目的が何せよ止めなくてはならないわ。ボム・ドーパントになった人間も、彼の命のために」

「どういうことデス?」

「ガイアメモリは未だ試作段階。使用すると、体に毒素が貯まるの」

「ど、毒?」

「ええ、ガイアメモリを使用すると体に毒素が流れ込む。思考能力を低下させ、メモリ使用による万能感が依存症へと発展する」

 

 その毒の効果が残るのを試作品と呼ぶあたり、ヘルメス・トリスメギストスとしては人体に害が残るのは本意では無いのだろう。

 

「あの、やっぱりあの怪物も人間……なんですか?」

「でしょうね………おそらくはメモリを購入した一般人………暴力団のようだし、怨恨の線が高い」

「い、一般人!? 一般人が、そんな…………」

「甘い考えは捨てなさい、立花響。人は、力を手にすれば人を殺せる」

 

 サンジェルマンの言葉は確信に満ちていた。永い時を生きる彼女はそれだけ人間を見てきた。人間という存在をよく知っている。

 

「犯人が一般人であるなら、むしろ行動を予測しやすい。あの時襲われていた男の情報と、それに伴う怨恨になる可能性を調べろ」

 

 弦十郎の言葉に各々作業を開始した。




相手がドーパントなら、当然立花響は嘗てないほど人の悪意に触れる

浮き立つような気持ちになりませぬか、兄上
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