遊戯王 デュエリストのお兄さん 蒼銀の導き   作:ひろやん(すぴ出身)

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第7話 決着、そして旅立ち

 覇王黒竜とのデュエルとの中、突然ソウが現れたので私は驚いた。

 

「予備のステルスボックスを(黙って)借りて付いてきたんです」

 

 まさか本当に気づかれずについて来れるとは。

 

「青子ちゃんから全部聞きました。キリノさんは未来の私…。精霊になった私に連れられて異世界からこの世界の未来に送られてきたのですね。そして未来からこの時代に跳ばされた…」

 

 霊堂の朽ち具合やアトランティスの沈没時期、そして青き眼の一族がキサラの先祖ならここは千年アイテムが出来上がる前の時代だ。そして私がこの時代にきた時点ではソウが蒼銀になる未来は確定してしなかった。だから蒼銀のカードは黒く塗りつぶされていた。

 

 そこまで理解して私は青子と相談して過去を変える事にした。タイム・パラドクスが発生して私と青子が消えるかもしれない事を覚悟してソウに人としての一生を全うさせようとしたのだ。

 

「私と一緒にいれば戦いに巻き込まれて命を落とす。だから置いてきたのにどうして付いてきた!」

「だってキリノさまと一緒に居たかったから。知っていますか?青き眼の一族の女は惚れっぽくて一途なんです」

 

 見た目は幼いのに見ほれるような笑顔でソウはそう言った。

 

「私の中に眠る白き竜…、『青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)』を解放します。でも私の力ではこの竜を操る事はできない。だからこの身を、魂を、心を全て『青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)』に捧げます。レベル8の『青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)』にレベル1の青き眼の乙女(わたし)をチューニング!」

 

「待て!やめるんだ!」

 

 しかしソウは自らが呼び出した青眼の白龍(せいれい)と1つになった。そして光の中から現れたのは蒼眼の銀龍(そうがんのぎんりゅう)だった。

 

「素晴らしい。その美しい龍も俺の物に…」

 

 成り行きを黙ってみていた覇王黒竜は蒼銀を自分のカードに封印しようとした。

 

「そうはさせない。『青眼の精霊龍(ブルーアイズ・スピリット・ドラゴン)』の効果を発動。S召喚したこのカードをリリースしてエクストラデッキから光属性ドラゴン族のシンクロモンスターを守備表示で特殊召喚!来い!『蒼眼の銀龍(そうがんのぎんりゅう)』!」

 

 その叫びと共にソウだったドラゴンは私の場に召喚された。

 

「特殊召喚に成功した『蒼眼の銀龍(そうがんのぎんりゅう)』の効果を発動。自分フィールドのドラゴン族モンスターは次のターンの終了時まで、効果の対象にならず、効果では破壊されない。これでダークリベリオンの効果は使えない」

「くくく。あっはっはっは!」

 

 蒼眼の銀龍(そうがんのぎんりゅう)の召喚を目にして覇王黒竜は盛大に笑った。

 

「たしかに、『ダークリベリオン・エクシーズ・ドラゴン』の効果は使えない。しかし私はまだその『ダークリベリオン・エクシーズ・ドラゴン』を召喚していない」

「まさか他にもランク4のエクシーズモンスターがいるのか」

 

 私の問いに覇王黒竜はエクシーズ召喚を行う事で答えた。

 

「俺はレベル4の『EMドクロバット・ジョーカー』とレベル4の『EMボットアイズ・リザード』でオーバーレイネットワークを構築。現れろ異世界のドラゴン!ランク4、『No.82 ハートランドラコ』(攻撃力2000)」

 

 ナンバ-ズ!。たしかゼアルのモンスターだったはず。

 

「俺がこの世界に来る前に見たモンスターの写し身だ。オリジナルのナンバーズ特有の効果、『No.』と名のついたモンスター以外との戦闘では破壊されないは持っていないがな。だがこのカードに関しては関係ない。『No.82 ハートランドラコ』は自分フィールド上に魔法カードが表側表示で存在する限り、相手はこのカードを攻撃対象にできないという効果を持つ。今俺のフィールドには『天空の虹彩』とペンデュラムゾーンの2枚、合計3枚の魔法カードが存在する。この3枚を破壊しない限りロックが発生してお前は攻撃できない」

 

 本当ならダークリベリオンが召喚されてから蒼眼の銀龍を呼ぶべきだった。しかしソウを守るために私はダークリベリオンが召喚される前に蒼眼の銀龍を呼び出した。それが他のエクシーズモンスターを召喚させる事になるとは…

 

「そして『No.82 ハートランドラコ』のもう1つの効果を発動!オーバーレイユニットを一つ使い、相手プレイヤーに直接攻撃を可能にする。代償としてこのカード以外攻撃出来なくなるが俺の場にはこのモンスター1体だけで関係ない。バトル!『No.82 ハートランドラコ』(攻撃力2000)でダイレクトアタック!」

 

 キリノ ライフ 4000 - 2000 = 2000

 

「俺はこれでターンエンド。次のターン、3枚の魔法カードを破壊してハートランドラコを破壊できなければ。次の俺のターンで再びダイレクトアタックを決めて俺の勝利が確定する。その時はその美しい龍は俺のコレクションに加えてやろう」

 

 覇王黒竜がそう言ったので私の中で何かが切れた。拉致同然の形で遊戯王の世界に連れて来た事には思うことが有るが、今まで私の事を思って尽してきてくれた蒼銀をソウをあんな奴には渡したくないと強く思ったからだ。

 

 しかし手札のカードはこの状況では使えない。可能性が有るのは…、有った。まだこの状況を打開できる可能性が有った。後はそのカードをドローするのみ。それにしてもいい年をしてドロー1枚でここまで真剣になる日がこようとは。

 

 ふと問う思うと力が抜けて私は笑った。その私の笑顔を見て覇王黒竜は不気味そうに私を見た。そして私はドローした。

 

「スタンバイフェイズ!『蒼眼の銀龍(そうがんのぎんりゅう)』の効果を発動!墓地から墓地では通常モンスター扱いの『白き霊竜』を特殊召喚する。そして『白き霊竜』の効果で『天空の虹彩』を除外」

「だが俺の場には2枚の魔法カードが有る!」

「魔法カード『巨竜の羽ばたき』を発動!自分フィールドのレベル5以上のドラゴン族モンスター1体を選んで手札に戻し、フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊する。レベル5以上のドラゴン族モンスター1体を選んで手札に戻す効果は対象を取るものではない。よって『蒼眼の銀龍(そうがんのぎんりゅう)』の効果継続中でも発動可能!私はレベル8の『白き霊竜』を手札に戻してフィールド上の魔法・罠カードを全て破壊」

 

 白き霊竜が羽ばたきながら突風を起こして手札に戻り、覇王黒竜のペンデュラムソーンのカードは破壊された。

 

「これで『No.82 ハートランドラコ』に攻撃が可能になる。『蒼眼の銀龍(そうがんのぎんりゅう)』を攻撃表示に変更」

 

 蒼眼の銀龍(そうがんのぎんりゅう) 守3000 → 攻2500

 

「バトルフェイズ!『青眼の双爆裂龍(ブルーアイズ・ツイン・バースト・ドラゴン)』(攻3000)で『No.82 ハートランドラコ』(攻撃力2000)を攻撃!」

 

 覇王黒竜 ライフ 1500 - 1000 = 500

 

「まさかこの俺がこんな所で終わってしまうと言うのか!」

「とどめは任せた『|蒼眼の銀龍《そうがんのぎんりゅう』(攻2500)でダイレクトアタック!」

「こんな所でーーー!!!」

 

 覇王黒竜 ライフ 500 - 2500 = 0

 

 覇王黒竜は叫びながら倒れ、デッキのカードはばら撒かれた。

 

「終わったな」

「終わりました。でもまだ私には役目があります。『シャイニート・マジシャン』のカードを出してください」

 

 ソウに言われて私はカードを出した。

 

「今の私は通常モンスターなら蘇生できます。魔法使いではないただの女の子としてならノエルさんを生き返らせる事が出来ます。ただノエルさんのシャイニート・マジシャンとしての力はカードに封じられたままになります」

 

 そう言うとソウはカードからノエルの魂を抜いて抜け殻となった体に戻した。

 

「あれ?私は…」

 

 そして私達が見守る中ノエルは目を覚ました。

 

「ノエル、よかった」

「カードの中から全部見ていました。キリノ、敵をとってくれてありがとう。ソウも私を生き返らせてくれて本当にありがとう」

 

 ノエルがお礼を言うとソウは悲しげにある事実を告げた。

 

「魂が戻るべき肉体が有るノエルさんは蘇生できました。しかし石版に魂を封じられた人たちは戻るべき肉体が存在せずに蘇生する事は出来ません」

「そんな、じゃあミアちゃんは…」

 

 ソウは何も言わずにただ首を振った。それを見てノエルは泣き出した。

 

『ノエル、泣かないで』

「ミアちゃん?」

 

 見ると1枚の石版が光り輝いていた。近づいて見てみるとノエルとよく似た格好の少女が彫られていた。この子がミアなのだろう。

 

『ノエルちゃんが無事でよかった』

「でもミアちゃんが!」

『大丈夫これからはずっと一緒だから。キリノさん白紙のカードに私を移して下さい。そうすればノエルちゃんと一緒にいられるよ』

「いいの?今なら魂を解放して有るべき場所に還る事が出来るのに」

『ノエルちゃんが天寿を全うしたら一緒に還ります』

 

 ソウの問いにミアは迷い無く答えた。それを聞いて私は(何故か無限に出てくる)白紙のカードを取り出した。その時だった。

 

『我も連れて行け』

 

 ミアの封じられた石版の近くに有る別の石版から声が聞こえた。

 

「神聖魔導王 エンディミオン様!」

『エンディミオンの生き残りよ我も連れて行け。最後の生き残りの行く末、王として守りたい』

『私も一緒に行きます』

『俺も』

『ワシも』

『それがしもだ』

 

 おそらくエンディミオンの魔導師たちなのだろう。多くの声が聞こえてきた。

 

「皆ありがとう。私人見知りで皆のこと避けてきたのに…」

 

 ノエルが感謝の涙を流す中私は同行を希望した魔導師たちの魂をカードに移した。

 

「とは言え帰る家も無いのに1人で生きていくのは大変だろう。ノエルさえ良ければ落ち着くまで私が面倒を見ようと思うのだけどどうする?」

「キリノさん。お願いします」

 

 カードの束を手渡されたノエルはカードの束を胸に当てると私に頭を下げてそう言った。

 

「じゃあ私は残りの人たちの魂を開放して有るべき場所に連れて行きます」

 

 ノエルが落ち着くのを待って。ソウがそう言った。

 

「キリノさま、私は必ず貴方を見つけます。だから元の時代に戻ってキリノさまと一緒にいる私が目覚めたらその時は…」

 

 それだけ言うとソウは羽ばたきで石版を破壊した。そして解放された魂を導いて飛び立とうとした。その時だった。

 

「こうなったらお前だけでも!」

 

 倒れていた覇王黒竜が起き上がりソウをカードに封印しようとして光を放った。

 

「そうはさせません」

「駄目なの!」

 

 しかしソウを庇って少女を背中に乗せたままセイバーは飛び出してきて2人はカードに封印された。そしてその間にソウの姿は見えなくなった。

 

「覇王黒竜!」

「まだ、終わらん!」

 

 悪あがきを使用とする覇王黒竜を取り押さえようと私が動くと、覇王黒竜はワームホールのようなものを開けて飛び込んでいった。同時にばら撒かれた覇王黒竜のデッキのカードも吸い込まれていった。

 

『あれは世界を超える次元の穴。覇王黒竜は元の世界に戻ったようだ。もうこの世界は安心だがどうする?』

 

 オベリスクが私に問いかけてきた。

 

「覇王黒竜を追いかけて事件を解決させたとして、元の時代に戻る時、私がこの時代に飛ばされた時の直後に戻す事は可能か?」

『可能だ』

「なら追いかける。このまま逃がしたらもっと多くの人が泣く事になる。ノエル、悪いけど」

「言わなくてもいいです。私も同じ考えですから」

 

 こうして私は覇王黒竜を追って別の世界に行くことになった。しかしこの先の物語はここでは語らない。話そうとするとかなり長くなるからだ。だからこの先の物語を話すのは別の機会にして元の時代に戻ってからの事を話そうと思う。




 次回よりバトルシティ編に入るためのインターバルに入ります。また準備編では芸がないので日常編にしようかと。

 そしてお知らせARC-V の世界を舞台にした番外編を別スレでやろうと思います。こっちはシンクロ、エクシーズ、ペンデュラム解禁。カードプール気にすることなくやりたい放題で行きます。とりあえず番外編を1話書いてからこっちの日常編を始めます。

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