遊戯王 デュエリストのお兄さん 蒼銀の導き   作:ひろやん(すぴ出身)

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遊戯の女難

 ペガサス会長からお使いを頼まれた私は菓子折りを買って遊戯の家に向かった。

 

「おや桐野さん。いらっしゃい」

「お久しぶりです。双六さん、このたび海馬コーポレーションへの出向となりまして近くに引っ越す事になりました」

 

 そう言って私は出迎えてくれた双六さんに菓子折りを渡した。

 

「それでですね、出向前の最後の命令としてペガサス会長から遊戯くんに届け物を預かっているのですが、遊戯くんはご在宅ですか?」

 

 私がそう聞くと双六さんは困った顔をした。

 

「遊戯か、家におるにはおるのですが…」

 

 詳しい説明をせずに双六さんは遊戯の部屋に案内してくれた。部屋の中を伺うと沈んで落ち込んだ遊戯の姿が有った。

 

「これは…。いったい何が有ったのですか?」

「それがの、ペガサス会長の所に行ってゲームで女の子にもみくちゃにされて羨ましい…、もとい大変な目に有ったのが原因なんじゃ」

 

 ああ、レベッカにお仕置きされたと言う話か。

 

「それはレベッカちゃんにお仕置きされたと言う」

「いや、違う。レベッカは別にそれで遊戯の事を嫌いになった訳では無い。それにお仕置きと言っても子供のする事、可愛いもんじゃったと聞いた。問題なのは杏ちゃんの方じゃ」

 

 杏?別にペガサス会長は何かしたとは言っていなかったけれども?

 

「杏ちゃんから『遊戯も男の子だったんだね』と笑って流されたのがショックじゃったらしい」

 

 ああ、女の子にそんな事を言われたら傷つくな。でも少し意外だった。遊戯は杏の事を大事とは思っていても異性として好きだとは思っていなかった。それがここまで落ちこむとは…。しかしこれでは仕事は果たせない。まずは遊戯を励まさないと。

 

「双六さん、ちょっと遊戯君と話をさせてください」

 

 そう言って双六さんの了承を得ると私は遊戯の部屋に入った。

 

「こんにちは遊戯くん」

「ああ、キリノさん。いらっしゃい」

 

 どうやら周りと会話をするだけの余裕はまだあるようだな。

 

「海馬くんは無事(?)に現実の世界に連れ戻すことが出来たよ」

「そうですか、僕は役に立てなかったから。海馬君が戻ってこれて良かったです」

 

 もみくちゃ画像を見て怒ったレベッカが遊戯を強制ログアウトさせて、そのせいで一緒にログインした城之内もゲームからはじき出され、そのせいでバグが生じて再ログイン出来なかったそうだからな。

 

「周りの人たちから話は聞いたよ。別に気にする事じゃない。ちょっとゲームで仮想の女の子に囲まれただけだろ。不可効力なんだし心の広い彼女ならそれくらい笑って許してくれるレベルだ。杏ちゃんの反応は正常だ。別に遊戯くんの事を子ども扱いしていたわけじゃない。それにレベッカちゃんにしても子供だからちょっと嫉妬したみたいだけどそれも可愛いもんだ」

 

 ここは人生の先輩らしく諭してみよう。

 

「キリノさん」

「昔私が付き合っていた彼女もゲームのヒロインにアイドルの名前を付けていた事を知っても笑って許してくれたよ」

「そ、そうなんですか」

 

 実体験を話して遊戯を励ますと遊戯は元気を取り戻し始めた。

 

(マスター、その話帰ったら詳しく聞かせてください)

 

 しかしカードの中で話を聞いていたソウが頭の中に話しかけてきた。青き目の一族の一件が終わって蒼銀がソウになってから話すようになり、ストーカーっぷりが上がっているような気がする。

 

「そう言うもんだよ」

「ありがとうございます。でも僕が落ち込んでいたのはそれが原因では無いんです」

 

 ん、遊戯の様子がおかしい。他にも何か有ったのだろうか。

 

「実は今レバッカ家にホームステイしていて」

「はぁ?」

 

 あまりにも予想外な出来事に思わず変な声をあげてしまった。レベッカが日本にいる事に違和感を感じてはいたがまさか遊戯の家にホームステイとは。

 

「一体、どうして?」

「レベッカは飛び級で大学を出ていて、ここに来る前はお爺さんのホプキンズ教授の所で手伝いをしていたんだ」

 

 ああ、アニメでもそんな生活をしていた。

 

「このままだと同世代との交流が出来なくて結婚相手も見つからず、一生独身か変な男に騙されるとレベッカの両親が心配していたんだ。そんな時にレベッカの両親が僕の事を知って、こっちの学校に通って子供らしく過ごすなら日本で暮らしてもいいって。僕の知らない間に語学留学のホームステイの話が決まっていた」

 

 一体何がどう変化してこうなった?私は何もしていないはず。なのにどうしてここまで変化した?

 

「レベッカの両親からは僕の事を信じていると言われて、もし何かあったら責任を取るように念書まで書かされたんです」

「大変だったね」

「いえ、レベッカも大人の女性を目指すと言って落ち着いた行動を心がけていますし、僕もレベッカに手を出そうとは思っていませんから(本当に危なくなったら相棒に代わって逃げてきましたし)。それだけならまだ何とかなったんです」

「それだけなら?」

 

 他に一体何が起きた!?

 

「僕たちが進級して2年生になり1年の後輩が出来たのですが、その家の1人に変な懐かれ方をされてしまいまして…」

 

 後輩?誰だ。まさか私以外にこの世界に来た来訪者か!

 

「レベッカも小学校に行かずに童実野高に入ってきて…。城之内くん達親しい友達は別として他の男子からはロリコン扱いされたり嫉妬されたりで…、本当にまずくなったらもう一人の僕が(闇のゲーム)で何とかしてくれていますけど、もう疲れて…」

 

 表の遊戯は子供に優しくて好かれやすいと思っていたけど、こじらせたのが2人…

 

「ちなみに杏の発言は僕が同世代や年上の魔法少女(幼女もいたけど)に囲まれて赤くなったことに対する発言なので気にはしていません」

 

 ひょっとして杏は『遊戯は健全な男の子だった』という意味合いで言ったのか。

 

「とりあえず、上手な年下のあしらい方を教えようか?」

 

 私もソウと青子がいるから他人ごとじゃない。

 

「本当ですか!教えてくださいお願いします!」

 

 どこまで役に立てるか分からないが相談に乗ろう。ようやく遊戯が元気を取り戻した時だった。

 

「ダーリンただいま!」

「お邪魔します、遊戯さん」

 

 2人の少女がやってきたのは。1人は童実野高の制服を着たレベッカ。そしてもう1人は…。彼女の姿を見て私は思わず身構えた。

 

「キリノさん?」

「遊戯くん、君は彼女を見て不審に思わなかったのか?」

 

 もう一人の少女は身長はレベッカと変わらなかった。この2人に懐かれたのならロリコン扱いされてもおかしくはない。

 

 だが問題はそこではない。エジプト人であろう褐色の肌。服装は童実野高の制服だけれども千年アイテムを彷彿とされる装飾品。これだけでも墓守の一族(千年アイテムの関係者)と思わしいのに、胸には千年リングがかかっていた。

 

「初めましてセラといいます。遊戯さんを高次の世界に導くためにやってきました」

「違う!ダーリンは私と一緒にアメリカに行くの!」

 

 しかしやっていることは男の取り合いだった。




アニメオリジナルのヒロインと原作漫画版終了後の世界のヒロイン。出会うはずの無い2人が出会う時、遊戯の女難が始まる。

 ちなみにこの世界に闇バクラは存在しません。キサラの一族である青き目の一族が現先よりも大勢生き残ったので歴史に変化が起きているという設定です。そしてキサラ復活も考えてあります。

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