遊戯王 デュエリストのお兄さん 蒼銀の導き   作:ひろやん(すぴ出身)

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第5話 2人目のヒロイン

 さて、青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)の回収は無事に済んだので後はアメリカに帰るだけになった。しかしせっかく日本に来たのだから日本のカードを買って帰りたい。

 

「と、言うわけでいいカードが手に入りそうな店は分かるか?」

 

 私は蒼銀に聞いてみた。カードの精霊の蒼銀なら精霊がたくさんいる場所を感知できると思ったからだ。

 

 蒼銀はちょっと考えると私に着いて来いと促した。そして私達は小さなおもちゃ屋にたどり着いた。そしておもちゃ屋の入り口で中の様子を伺っている不審な老人を見かけた。

 

「あの、何をしているんですか」

「孫を見守っているんだ。静かにしてほしい」

 

 私の方を見向きもせずに老人はそう答えた。

 

「孫?」

 

 気になって店の中を見てみると2人の子供がデュエルをしていた。

 

「武藤遊戯…、ともう1人はレベッカ・ホプキンス?」

 

 童実野町でカードの精霊が集まる店を探したら遊戯の実家にたどり着く可能性がある事を忘れていた。

 

「レベッカを知っているのか。まさか孫のストーカーか?」

 

 私がレベッカの名前を言ったので始めてレベッカのお爺さん、ホプキンス教授が私の方を見た。

 

「私はこういうものです」

 

 ストーカーと間違えられるのは嫌なので私は名詞を差し出した。

 

「これはインダストリアル・イリュージョン社の方でしたか。それなら全米チャンピオンのレベッカの事を知っていてもおかしくないですな」

 

 ちなみに原作知識は関係なく、各地の大きな大会の上位入賞者の顔を名前は覚えさせられている。

 

「でもなんで全米チャンピオンがこの時期日本に?」

 

 レベッカが日本に来るのは王国編が終わった後のはずだ。『今』ここにいるのは早すぎる。

 

「実はインダストリアル・イリュージョン社のペガサス会長が青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)のカードを破かれた事を知って激怒しているという噂を聞きましてな。気になって調べたらその破られたカードは双六…私の友人でこの店の店主のだと分かってそれを知った孫が私よりも先に日本に来てしまったんです」

 

 ああ、私の所為で起きたバタフライ効果が原因か。

 

「それでどうしてデュエルに?」

 

 青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)が破かれた事を知っているなら取り返すためのデュエルはしないはずだ。

 

「おそらくデュエルで双六を懲らしめてやろうと考えたのでしょう。それを遊戯くんが代わってデュエルを受けたと」

 

 なるほど、見る限り遊戯は表の方なのでその推測は間違っていない。デュエルの内容も原作とほぼ同じのようみたいだ。

 

「あ、武藤君がサレンダーした」

「そろそろ出番ですな」

 

 そう言うとホプキンス教授は店の中に入っていった。そして勝ち誇るレベッカの前で遊戯のデッキをめくり遊戯の勝ちだとレベッカに言った。

 

「…出遅れた」

 

 遊戯とレベッカは和解しているし、老人2人は友情を確かめ合っているし中に入りづらい。どうしようかを困っていると突然蒼銀が私の(パー)を使って実体化した。そして堂々と店の扉を開けて中に入った。

 

 それから双六じいさんと元に行くと彼の手を取った。どうやら双六じいさんの手に握られている青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)のカードに反応したようだ。

 

「なんじゃいお前さん?このカードが珍しいのか?」

 

 双六じいさんが話しかけても蒼銀は答えない。どうやら私が蒼銀の声を聞けないのではなく、蒼銀が喋れない状態になっているみたいだ。

 

「すいません、連れが迷惑をおかけしました」

 

 そう言って私は蒼銀を双六じいさんから引き離した。その時破られてテープでつながれた青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)のカードを見て蒼銀が反応した理由を理解した。

 

「このカード、まだ生きている」

「は?」

 

 2つに引き裂かれているのにカードに精霊がまだ宿っていた。そして精霊はまだ闘志を秘めていた。私は身に付けていた千年眼(ミレニアム・アイ)を取り出した。

 

「千年アイテム!レベッカ下がって!」

「え?ちょっと何よ」

 

 私が千年眼(ミレニアム・アイ)を取り出したので遊戯がそれに反応した。原作通り他の千年アイテムの所持者から碌な目に遭わされていたようだ。遊戯はレベッカを庇うよいうに前に出ると名も無きファラオの人格と交代した。

 

「そんな臨戦態勢に入らなくても戦う気は無いですよ」

「どうだか、お前も闇のゲームの使い手だろ」

「え、遊戯どうしたの?」

 

 どうやらレベッカは遊戯の人格の交代を感じたようだ。

 

「この千年眼(ミレニアム・アイ)には人格は宿っていない。宿っていた邪念は払ったし、私には君『達』と争う理由が無い。味方とは言わないけれど敵対する理由も無い。私が千年眼(ミレニアム・アイ)を取り出したのは見せたい物が有ったからだ」

「見せたい物?」

 

 遊戯が怪訝な顔をすると私は双六じいさんの青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)を実体化させた。…元の大きさだと店が壊れるし(パー)の消耗も激しいのでミニアムサイズでだが。

 

「これはブルーアイズ…」

「千年パズルの持ち主ならこの子がまやかしではない事くらい分かるだろ。この子はこのカードの精霊…カードにやどった魂だ。引き裂かれても尚闘志を失っていない。もう一度戦いたいという思いが私には伝わってきた」

 

 そう言うと私は千年眼(ミレニアム・アイ)をしまった。蒼銀の助けを借りて何とか使える程度のレベルのせいか消耗が激しい。

 

「何今の、ソリッドビジョンじゃないの?」

 

 レベッカはよく分かっていない様子だ。一方老人2人は知識と経験から今のトリックでは無い事を理解したようだ。

 

「さて、申し送れました。私はこういうものです」

 

 誰もが動けない中、私は名詞を双六じいさんに渡した。

 

「インダストリアル・イリュージョン社…」

「我が社の技術を持ってすればこのカードの修復も可能のはずです。私にこの青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)のカードを預けては貰えませんか?」

 

 私がそう言うと双六じいさんはホプキンス教授を見た。そして教授が頷くと私にカードを差し出した。

 

「わかった。この青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)のカード、霧野さんに預けよう」

「ありがとうございます。必ず修復してもう一度デュエルできる状態にして見せます」

 

 そう言って私はカードを預かるのだった。

 

 

 

 おまけ

 

 

「そう言えばここにはカードを買いに来たんだった」

 

 青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)のカードを受け取った後私は本来の用件を思い出した。

 

「インダストリアル・イリュージョン社の社員なのに?」

「アメリカのインダストリアル・イリュージョン社の社員だから日本のカードは手に入れる機会は少ないんだ。今日だって出張で日本にいるわけだし。と言う訳で、蒼銀いいの感じる?」

 

 私がそう言うと蒼銀は首を振った。どうやら店の商品の中に精霊がついているカードは無いようだ。遊戯のデッキには精霊が付いているカードはたくさん入っているのでそれに反応しただけのようだ。

 

「じゃあ適当に…、これとこれとこれ、かな」

 

 適当に選んで代金を支払うと私はパックを空けた。このパックは無事に開けられた。そして中をみて絶句した。

 

「石の巨人トークン」

「「なんじゃ(だ)と」」

 

 石の巨人トークンに老人2人が反応した。古代竜-エンシェント・ドラゴンを呼び出すのに必要で2人とも探し散るカードだった。

 

「桐野さんワシにこのカードを譲ってはくれんかの」

「いいや、私にゆずってくれ」

「…」

「…」

「「デュエルだ!」」

「じいちゃん…」

「もお、何やっているんだか」

 

 子供よりも子供な老人達だった。




 さて、登場したのは『誰』のヒロインだったのでしょうか

 補足説明 古代竜-エンシェント・ドラゴンって何?

 今回名前だけ出てきた古代竜-エンシェント・ドラゴンはアニメオリジナルのカードです。OGカード化されておらず(エンシェントドラゴンとは別のカード)、10年以上昔のカードなので簡単に説明を入れておきます。

 古代竜-エンシェント・ドラゴンは召喚条件がかなり特殊で召喚の為に古の巨人、古の鍵、石の巨人トークン(トークンといいながら実はカード)、古の書物、古の扉、古の都-エンシェント・シティーが必要で、双六じいさんとホプキンス教授は宝探しと称して古代竜-エンシェント・ドラゴンの召喚に必要なカードをどちらが早くそろえることが出来るのか競争していました。

 2人とも今回出てきた石の巨人トークンのカードだけ見つける事が出来ず、今回カードの所有権をめぐって争う事になりました。ちなみに石の巨人トークンだけ2枚必要なので今回の1枚だけではまだ古代竜-エンシェント・ドラゴンは召喚できません。

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