遊戯王 デュエリストのお兄さん 蒼銀の導き   作:ひろやん(すぴ出身)

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第9話 蘇るブルーアイズ

 ペガサス会長のお使いを無事に終えた私は前回と違いトラブルに巻き込まれることも無くインダストリアル・イリュージョン社に帰り着いた。

 

 遊戯の参加の報告と城之内の参加の手続きを事務に任せると私はペガサス会長の所へ向かった。そしてペガサス会長の部屋から飛び出してきた夜行くんとぶつかった。

 

「ごめんさい!大丈夫ですか」

「ああ、大丈夫だ。それより部屋から飛び出すだなんて一体どうした?」

「私が夜行に決闘者の王国(デュエリストキングダム)に参加するように言ったのデ~ス。ですが夜行は月光が出るべきだといって飛び出してしまいました。月光は私が決闘者の王国(デュエリストキングダム)で留守にしている間、インダストリアル・イリュージョン社を任せるので参加は無理なのデ~ス」

 

 私が話を聞こうとするとペガサス会長が部屋から出てきた。

 

「僕じゃ優勝は狙えません」

 

 うなだれる夜行くんに私は言った。

 

「今、参加者を1人追加でねじ込んできた。その少年は実績も実力は参加者の中では一番しただろう。でも彼は優勝を目指して戦い抜くつもりだ」

「どうして…」

「妹さんの手術の費用に大金が必要で、それで優勝賞金を狙っているんだ」

 

 そう言うと私はペガサス会長に勝手に参加者を増やした事を詫びた。

 

「その少年は自身の願いの為に戦う。決闘者の王国(デュエリストキングダム)に参加したくないならしなくていい。でもいつか自分の為に戦う日が来る。その時は逃げずに戦うんだ」

 

 私がそう言うと夜行くんはしばらく俯いた後ポツリと言った。

 

「やっぱり僕も参加します。霧野さんのいうその少年と戦ってみたい。戦ったら何かが変わる気がするんです」

「夜行くん…」

 

 夜行くんは決闘者の王国(デュエリストキングダム)で戦う事を決意した。ペガサス会長はそれを見て泣いていた。

 

「うう、妹さんを助けるために…。なんてけなげな」

「そっちですか」

「あとキリノ。預かった青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)の修復が終わったそうですので取りに言ってきてくださ~い」

「…行こうか」

「はい」

 

 私と夜行くんは未だに感動して泣いているペガサス会長を置いて青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)のカードを取りに向かった。

 

*****

 

「カードの修復は終わりました。ですが実際にソリッドビジョンシステムに反応するかどうかはまだ試していません」

 

 カードの修復士はそう言うと私に青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)のカードを渡した。たしかに表面は滑らかだが引き裂かれた後は残っている。まるで青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)そのものに傷が残っているようで痛々しかった。

 

 けれどもこの青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)は死んではいない。もといた世界のOGルールでは修復したカードは使えない。でもこの世界では違う。

 

「いまからテストしてみよう。夜行くん、私とデュエルしてくれるかい」

「はい、青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)と戦えるだなんて滅多にないことです」

 

 デュエルをする事が決まると私達はデュエルリングが有る場所に移動した。ちなみにこの世界はアニメ基準でソリッドビジョンシステムはデュエルリングが使われている。しかし原作漫画版のデュエルボックスも存在する。どうやらマンガとアニメ両方の設定が混ざっているようだ。

 

「じゃあルールはエイキパートルール、ライフは4000、先行ドロー有りで」

「はい問題ありません。それでは」

「「デュエル!!」」

 

 ルールの確認をすると私達はデュエルを始めた。先攻は夜行くんだ。

 

「僕のターン、ドロー。僕は(ダンディライオン 守備力300)を守備表示で召喚。カードを1枚伏せてターンエンド」

 

 ダンディライオンか、迂闊に破壊するとトークンを呼んでアドバンス召喚のリリース素材をそろえさせてしまう。が、私のデッキの場合、最上級が出てきても高火力で押し切れるのでガンガン攻めたほうがいい。

 

「私のターン、ドロー。(青き眼の乙女(あおきめのおとめ) 攻撃力0)を攻撃表示で召喚。そして装備魔法(磁力の指輪)を装備」

 

 青き眼の乙女(あおきめのおとめ)に指輪が装着された瞬間、悪寒がした。しかし周りを見ても誰もいなかったので気のせいとしてデュエルを続けた。

 

「カード効果を受けたことで(青き眼の乙女(あおきめのおとめ))の効果を発動。デッキから(青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン))を1体特殊召喚!」

 

 私はデッキから双六じいさんの青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)を取り出すと攻撃表示でフィールドに置いた。

 

「もう一度戦うために蘇れ!青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)!」

 

 私の叫びと共にフィールド上に青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)は出現した。しかし青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)の体にはカード同じ位置に傷跡が有った。

 

「傷を持つブルーアイズ。さしずめ青眼の傷持白龍(ブルーアイズ・スカー・ホワイト・ドラゴン)と言った所でしょうか」

 

 青眼の傷持白龍(ブルーアイズ・スカー・ホワイト・ドラゴン)か。もちろんこのカードは青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)であり、他の青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)のカードとルール上の扱いは変わらない。でもこのカードに対する愛称としては良いかも知れない。

 

 もちろん双六爺さんに返すので私が本番のデュエルで使う事は無いだろうけど。

 

「いい呼び方だね、気に入ったよ。じゃあデュエルを続けよう(青眼の傷持白龍(ブルーアイズ・スカー・ホワイト・ドラゴン) 攻撃力3000)で(ダンディライオン 守備力300)を攻撃!」

 

 その後青眼の傷持白龍(ブルーアイズ・スカー・ホワイト・ドラゴン)の挙動が問題ないか確認しながらデュエルを終えた。 

 

 そしてその夜、私は決闘者の王国(デュエリストキングダム)の参加者リストをチェックしていた。

 

「レベッカに夜行くん。原作参加者以外にこの2人が参加。さらに海馬にも正式な招待状を送付。まだ意識が戻ったという情報はないから参加は不明。キースはこちら側で乱入はない。オマケに予選を勝ち抜けるのは最大で6人(・・)。本戦これにシード2人追加でシードの1人は遊戯か。ルールも違うし、原作とは違う展開になるな」

 

 ドーマやKCグランプリのオリジナルキャラの参加は無い。未知の実力者が出てくることもないだろう。さてこの先どうなることやら…

 

 

 おまけ 1

 

 桐野が青き眼の乙女(あおきめのおとめ)に磁力の指輪を装備させた同時刻。日本・海馬邸にて。

 

「キサラー!」

 

 叫び声を上げ海馬瀬戸は目を覚ました。

 

「兄さま!気がついたんだね!」

「木馬か、俺はどれくらい眠っていたんだ。それにあの悪夢…」

「悪夢?」

 

 心配する木馬を安心させるために海馬は言った。

 

「気にするな。いるはずの無い『嫁』誰かに奪われる夢を見ただけだ」

「あ…」

 

 『奪われる』という単語に反応して木馬は暗い顔をした。

 

「どうかしたのか?」

「兄さま、兄さまの青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)、インダストリアル・イリュージョン社に奪われてしまったんだ」

「何だと!」

 

 こうして役者はそろうのだった。

 

 

 おまけ 2

 

 桐野の部屋にて

 

 

 私は人間の少女の姿で実体化した青眼の傷持白龍(ブルーアイズ・スカー・ホワイト・ドラゴン)からある話を聞かされて落ち込んだ。

 

「女の子に傷持ちは酷いです。この姿の時は青子と呼んで下さい」

 

 心を読まれたのか地の文に突っ込みを入れられた。

 

 蒼銀とは違い会話可能な青子は自分を助けてくれたお礼を言うために実体化した。そして私に驚愕の事実を話した。

 

「それは本当なのか」

「本当よ。桐にい(桐野の事)はドラゴンを擬人化させて奉仕させる変態で。それを知った精霊は怖がってパックから出てこないの。それに彼女達はみんなきわどい格好をしているしね。真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)はうまく逃げたと評判よ。」

 

 よもやカードの精霊からそう思われていえるとは思わなかった。

 

「あ、私は噂を信じていないからね。あと銀ねえ(蒼銀の事)はブッ」

 

 青子はセリフを最後まで言う前に実体化した蒼銀に口をふさがれた。そして蒼銀は青子を連れてカードに戻った。

 

「お前達私の事をそんなふうに…」

 

 翌日幽鬼のような私を見たペガサス会長の悲鳴がインダストリアル・イリュージョン社本社ビルに響き渡った。 

 ちなみにペガサス会長が開ける事が出来なかったのは未知のカードなので弄られるのが怖かったそうだ。




 次回から王国編に入ります。

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